紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

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第十一章 名誉騎士と宝石の角

ビビとシャーリア

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 エルダガンドの軍人、ビビ・コラウネルと元金竜のシャーリアと再会した健太郎達はオープンカフェで、お茶を飲みつつ彼女達の話を聞いた。
 ビビ達の座った四人掛けのテーブルにはミラルダとグリゼルダが座り、その左隣りにはギャガン、パム、健太郎が、右隣りにはクルストとリグナリオが腰かけている。

「実はあれから色々あって、シャーリアは今、俺の家で暮らしてるっス」
「色々って、何があったらそうなるんだい? シャーリアの面倒はバッツがみるって決めてたじゃないか?」
「ビビさんがバッツの家で暮らすのは、やっぱり認められないと言い出しまして……」
「色々も何も、お前が原因じゃねぇか」
「わっ!? ビビさん急に何を!?」

 ビビはシャーリアの両肩を掴んで、隣のテーブルに座っていたギャガンに示しながら鼻を膨らませた。



「だってギャガンさん、こんな美人が一つ屋根の下で暮らしてたら、いくら朴念仁の隊長でも間違いの一つや二つ起こすかもじゃないスかッ!」
「……かもな。んで、お前らは何で仲良く買い物してたんだ?」
「実はシャーリアがオーグルから食事に誘われたんス。で、それはデートだから女の子らしい服を着ろって言ったんスが、服が分からないからアドバイスをって」
「あの、どうも人族の方々の着る服という物がよく分からなくて……これまではバッツさんが買って来てくれた服を着ていたのですが、街行く人を見ていると女の子らしいというのとは、なにか違うんじゃないかと……」

 そう言われてシャーリアの服を改めて見ると、ファーの付いたアウターにTシャツ、下はカーゴパンツに似たボトムスで似合ってはいたが、確かに女性らしいとは言い難い。

「それでお前が服を?」
「そうっス」
「お前の着ている物も女らしいとは言えんと思うがな」

 グリゼルダはそう言ってビビの私服に目を向けた。
 ビビが着ていたのはフード付きのパーカーとジーンズの様なパンツ、足元はハイカットのスニーカーだった。

「これは隊長にあんまり女らしい恰好はするなって言われているからで、元々の趣味じゃ無いっス」
「……それは軍にいる時の事じゃないのか?」
「普段からやってないと、いざという時、ボロが出るッスッ!!」
「ふぅ……そんなもんかねぇ。それでシャーリアさんはオーグルと付き合うのかい?」
「……どうなんでしょうか? オーグルさんは良くしてくれるんですが、恋愛というのは良く分からなくて……」
「ニヒヒ、これでシャーリアがオーグルとくっつけば、隊長とシャーリアがどうにかなる事は無くなるッス」

 ビビは本音を隠そうともせず歯を見せ笑った。

「それで、ミラルダさん達は何でクーリエにいるッスか?」
「実は……」

 グリゼルダは角を繋げていたアクセサリーを外し、折れた角をビビ達に示した。

「……マジっスか」
「……角が」

 ビビもシャーリアも魔人にとって角の存在がどれ程大きいか知っている。
 その為、驚きのあまり二の句を接げない様だった。

「そんな顔をするな。心配しなくとも治療法はあるし、これからその為の素材を手に入れに行く予定だ」
「ホントっスかッ!? ……うーん……」

 ビビは視線を上に向け腕組みしてなにやら考えていたが、やがてグリゼルダに向き直り口を開いた。

「その素材の収集について行ってもいいっスか?」
「何?」

 グリゼルダはビビの言葉に何故だと首を捻った。

「その、グリゼルダ達には隊長や仲間を救ってくれた恩があるッス。正直、依頼料だけじゃその恩は返し切れてないと思ってたっス」

 ビビは健太郎達の探索の手助けをしたいようだ。

「しかし……軍の仕事はどうするんだ?」
「グリゼルダはエルダガンドに鉄道が導入されたのは知ってるっスか?」
「ああ、話だけだが……」
「実はその鉄道の敷設と、トンネル造りで暫く休みが無かったんス。それで二週間非番なんスよ」

 アドルフが言っていた鉄道造りはビビ達、正規軍が行ったらしい。
 シャーリアがいた神殿を直したバッツの腕を見る限り、エルダガンドの作り出した鉄道はかなりレベルが高い物になっているだろう事が彼女の話から健太郎にも窺えた。

「お前達が鉄道を作ったのかよ」
「そうっス。いやー、大変だったっスよ。ロビー山脈をぶち抜いて南の国境近くまで線路を引いたんスから」
「ロビー山脈を……ビビ、あたし等の目的は、そのロビー山脈の洞窟にいるカーバンクルと交渉して角を貰う事なんだ」
「カーバンクルッ!? メチャメチャ、レアな幻獣じゃないっスかッ!? そんなのどうやって見つけるんスかッ!?」
「場所はミシマが特定した」
「場所を特定って……グリゼルダ。前も聞きましたけど、ミシマさんって何なんスか?」

 ビビはジトっとした目を健太郎に向ける。

「コホー……?」

 うっ、なんだ、その犯罪者でも見る様な目は……?

「前も説明したと思うが、異世界から来たゴーレムモドキ……ミシマは自分の事をロボットと言っているな」

 ロボット……そう呟き、ビビは改めて健太郎を不気味そうに見つめた。

「マジ、ミステリアスっスねぇ」
「あっ、ビビちゃんもそう思うッ!?」
「思うっス。パムさんもスか?」
「うん、出会ってからビックリしっ放しだよう」

 ビビとパムは健太郎という存在に対する認識で意気投合したようだ。
 そんな二人の横からあのーとシャーリアが小さく手を上げる。

「私も同行していいでしょうか? ビビさんがいないと食事の用意もままならないので……」
「そうなのかい?」
「シャーリアは基本、何も出来ないっス。料理は今、練習中って感じっスね」
「すいません。竜だった時は基本、獲物を丸かじりだったもので……」

 申し訳なさそうに眉根を寄せたシャーリアを見て、それまで黙っていたリグナリオが口を開く。

「ミラルダ、その二人を連れていくのか?」
「そうだねぇ……ビビがいてくれりゃあ、仮にグリゼルダがカーバンクルと話せない場合に助かるねぇ」
「……信用出来るんだろうな?」
「二人とも悪い子じゃないよ。それは断言出来る」
「……分かった」

 そんなリグナリオの言動を聞いたビビは、小声でパムに問い掛ける。

「なんか感じが悪いっスけど、あの爺ちゃんと兄ちゃんは依頼人っスか?」
「うん、お爺ちゃんが子供に戻っちゃって、治療する為にクーリエまで来たの。わたし達はグリゼルダの角の事のついでに護衛を任されたんだよ」
「子供に……」

 ビビが目を向けたクルストは注文したパフェに似たスイーツを一心不乱に食べていた。
 生クリームが口の周りに飛び散り、恐らく苺のジャムだろう赤い染みが服に幾つもついている。

「……大変そうっスね」
「まぁね。でも子供に戻る前はすっごく優秀だったみたいだよ」
「そこッ!! さっきから何をコソコソ話しているッ!?」
「そんなにカリカリしないでよう。クルスの事、大変そうだなって言ってただけだよ」
「……そうか……すまない。慣れない異国で過敏になっていたようだ……」

 声を荒げた事で客から注目を浴びたリグナリオはそう言うと、きまり悪そうに押し黙った。

「ふぅ……それじゃあ明日、ビビとシャーリアが同行するって事でいいね?」

 ミラルダが話を纏めると、健太郎達は頷きを返した。

「あっ、ロビー山脈が目的地なら鉄道で行かないっスか? あの山の麓にも駅があるッスし、俺達の仕事も見て欲しいっス」
「鉄道か……正直、ミシマで動いた方が早ぇと思うが」
「まぁまぁ、鉄道を見て来てくれって頼まれてるし、いい機会じゃないか」
「だねだね。鉄道かぁ……どんなのか楽しみだねぇ」
「コホーッ!」

 だなッ!

 健太郎は異世界の鉄道がどんな物かワクワクしつつ、右手の親指を立てた手をギュッと突き出した。
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