紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

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第十一章 名誉騎士と宝石の角

王子様だけどお姫様だっこ

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 魔人族の国、エルダガンドの首都、クーリエから鉄道に乗り南下する事、三時間。
 山脈を抜けるトンネルを抜けた先の南側、すぐの駅で健太郎けんたろう達は列車を降りた。

「さて、ここからどうするっスか?」
「ミシマの話じゃ目的のカーバンクルは西側の洞窟にいるって事だから、その近くまでは鉄馬車で行こうかねぇ」
「コホーッ」

 トラックモードだな。了解だ。

 カシャカシャとその身を変える健太郎を見て、麓駅で降りた乗客たちが目を丸くしている。

「……何回見ても、意味が分かんないっスねぇ」
「だよねだよね。どうして人サイズから、あんなに大きくなれるのか意味不明だよね」
「ブルブルブル……」

 俺だって素材が何処から来てんのか訳が分かんないよ……。

「フフッ、まぁいいじゃないか。それじゃあみんな乗り込んでおくれ」

 ミラルダの言葉で一行が健太郎達に乗り込み走り去った後を、一人の魔人の男がじっと見つめていた。

「カーバンクル……魔力よ、我に自在に空を舞う翼を、飛翔フライト

 魔法の翼を纏ったその男は走り去った健太郎の後を静かに追い始めた。


■◇■◇■◇■


 トラックモードで目的地近くまで到達した健太郎達は、山に分け入り基本、徒歩で洞窟を目指した。
 これはカルディナが言っていたカーバンクルの習性。臆病で人の気配を察知すると姿を隠し逃亡する性質を考慮した為であった。
 VTOLモードを使えば容易に洞窟まで辿り着けるが、それではプロペラの出す爆音でカーバンクルは逃げてしまうだろう。

 そんな訳で防寒具を着込み森を抜け段々と雪深くなる山を登っていたのだが、途中、シャーリアとリグナリオがへばったので仕方なく、健太郎がリグナリオを、ギャガンがシャーリアを背負い進む事となった。

「すいません、ギャガンさん。人の姿になってほぼ食べて寝るしかしていなかったもので……」
「元竜が情けないこと言ってんじゃねぇよ……せめて走り込みぐらいしろ」
「はい、街に戻ったらそうします……」

 反省した様子のシャーリアとは正反対に、リグナリオはブツブツと文句を言っていた。

「ミシマ、お前の腕が硬すぎて太ももが痛いんだがッ?」
「コホーッ」

 そんな事、言われても俺の体は柔らかくはならないんだから、しょうがないだろ。

「クッ、何を言っているか全くわからん……クソ、せめて痛くないかかえ方をしろ」
「コホー? ……コホー?」

 えー、痛くないかかえ方? ……えーっと、お姫様だっこでもする?

「ええい、あの半獣人はまだ戻らんのかッ?」

 ミラルダ、グリゼルダ、ビビの三人には、先行して歩きやすいルートを飛翔を使い探して貰っていた。
 現在は健太郎、パム、ギャガン、クルスト、リグナリオ、シャーリアの六人で北に向かって進んでいる。

「文句ばっか言ってないで、お爺ちゃんを見習って自分の足で歩けばいいじゃん」

 パムの言葉が示す通り、クルストは弱音一つ吐かず嬉しそうに周囲の景色を眺めながら、サクサクと積もった雪を踏み進んでいる。

「なんだと貴様、この僕に向かって……」
「ここじゃ、あんたはただの依頼人の孫だよ」
「クッ、いいだろう。ミシマ下ろせ」
「おい、無理すんな。体力は温存しとけって」
「やかましいッ! 自分で歩くと言っているッ!」
「コホーッ? ……コホーッ?」

 あっ、そう? ……辛くなったら言うんだよ?

 健太郎は苛立つリグナリオを雪の腕に下ろし、ポンポンと彼の左腕を叩き、頑張れと左拳を握って見せた。

「貴様に応援されなくても、このくらいの雪で……ガッ!?」

 勢い良く歩き始めたリグナリオだったが、新雪に足を取られ二、三歩、歩いた所で前のめりに転んでしまった。
 ぶわっとパウダースノウが舞い上がり、彼の周囲を白く染める。

「コホーッ」

 もう、しょうがないなぁ。

「クソッ……雪は……嫌いだッ!!」

 健太郎は倒れたリグナリオを抱き起こすと、先程自分が提案したお姫様抱っこで抱え上げた。



「なっ、何をするッ!? これではまるでか弱い娘ではないかッ!?」
「コホー」

 おんぶが痛いって言うからだよ。

「ふぅ……爺が静かになったと思ったら、今度は孫かよ……」
「大変な依頼人ですねぇ」
「だねだね……でもまぁ、しょうがないか……お坊ちゃまだもん」
「誰がお坊ちゃまだッ!!」

 そんな風に健太郎達が雪の大地を進んでいると、防寒具を着込んだミラルダ達がフワリと空から舞い降りた。

「ざっと見て来たけど正面は結構な崖になってて、最短ルートだけど風が強いし、あたし等が抱えて登るにゃきつそうだねぇ」
「東側はクレバスがいっぱい出来てたんで、行かない方が無難っスね」
「西は迂回すれば崖の上に進めそうだった。そこを超えれば洞窟は目の前だ」
「んじゃ、西だな」
「ああ、ただ、上空から見ただけだからな。雪に隠された割れ目があるかもしれん。慎重に行こう」
「コホーッ」

 了解だ。

「……ところでリグはどうしてそんな抱えられ方をしてるんだい?」
「うるさいッ! ミシマが勝手にこんな抱き方を……僕の指示じゃないッ!!」
「コホー……」

 おんぶは痛いって言うから……。

「なるほどねぇ……まっ、帰りは鉄の鳥で一ッ飛びだから辛抱するんだねぇ」
「クソッ、屈辱だッ!」
「まぁまぁ、雪山で無理は禁物っス。体力無くなると凍死とかもあるッスから。それよりミラルダさん、鉄の鳥って。ミシマさん、そんな物にもなれるんスねぇ」
「ああ、あの後、色々、なれる物が増えてねぇ。いつも助かってるよ」
「コホーッ」

 えへへ、そう言ってもらえると嬉しいぜ。

「暢気な事を言っていないで早く進めッ!」
「はいはい、クルス、行くよ」
「分かったのぢゃッ!!」
「あんたは大丈夫なのかい?」
「平気なのぢゃッ! 全部、真っ白でこんな景色は初めて見たのぢゃッ!!」
「ラーグは平野部じゃあんまり雪は積もらないもんねぇ……」

 クルスは見た事の無い景色に興奮しているのか、疲れた様子も無く先導するグリゼルダを追って駆け出した。

「お爺様……なんであんなに元気なんだ……」
「コホー」

 気持ちが若いと体も元気になるのかなぁ。

「フフッ、かもしれないねぇ」

 そう言って笑ったミラルダを木の影から黒い瞳が見つめていた。
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