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第十二章 二人の転生者
建前と本音
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「君達はリューを故郷に帰しに行ったのではないのかね?」
滞在していたホテルから荷物を引き上げ、王宮にいたクルストとリグナリオを拾ってラーグへの帰途に就いた健太郎達だったが、宇宙戦艦モードの船内にいるダークエルフの子供達を見たリグナリオには思い切り嫌味を言われてしまった。
「リグナリオ、まずは事情を聞こうではないか」
「はぁ……お爺様、この連中の事です。きっと困っていたからとか、そんな事に決まってますよ」
「それでもぢゃ。あの子達が何に困り、何に喘いでいるのか聞かねばミラルダ達の真意は知れぬ」
「ほんとに立派になって……悪戯小僧みたいだったのが信じられないよ」
「ハハ、苦労を掛けたな……して、何があった?」
「あの子達は……」
宇宙戦艦モードのサロンでミラルダ達はクルストとリグナリオにダークエルフの国、レミリシアで見た事、子供達から聞いた事を説明した。
「ミシマと同じ形のゴーレム……それが村の人々を……」
「ああ、子供達から聞いた話じゃ色は青じゃなくて赤だったらしいけど……」
「ふむ……攫われたのはその村の人々だけかね?」
「それは調べてないから分からないけど……」
「普通に考えれば、子供ではなく大人を攫う理由は労働力、つまり奴隷が欲しかったのではないか? その奴隷にさせる事業の規模にもよるが、人員は多い方がいい筈ぢゃ」
クルストは国王という立場から、赤いゴーレムが攫った人々を奴隷にしているのではと推測した。
「じゃあロベット以外の集落も襲われて……」
「うむ、満足に働けない子供を除外し、無差別に攫ったなら目的は特定の誰かという事ではあるまい。であれば周辺の集落も襲われたと考えるの妥当ぢゃろう」
顔を歪めたリューにクルストは冷静に返した。
「ミラルダ、今後の方針は?」
「方針って言っても相手がどんな奴で、何が目的なのか分からないからねぇ……ともかく、他の村にも子供達だけが残されているんだったら、その子達も助けたいけど……」
「助けるつっても多分俺達だけじゃ金も手も足りねぇぞ」
「ふむ……グリゼルダ。ギルドからの報告書で読んだが、お前は遠距離転移陣が描けるのぢゃったな?」
「描けるが、それが?」
首を傾げたグリゼルダにクルストは笑みを浮かべる。
「ではハイラッドの王国騎士団の詰め所に大型の転移陣を描いてくれ」
「騎士団詰め所……派兵するのか?」
「目的は戦争では無く、救援ぢゃがな。レミリシアとは現状で国交は無いが、事態を治めれば友好国として新たに手を結べる筈ぢゃ。冒険者ギルドの仕事にも有利に働くぢゃろう」
「あくまで国の都合って訳か?」
ギャガンの目がギロリとクルストを睨む。
「まあの」
それに動じた様子も無く、クルストは苦笑を浮かべた。
そんなクルストを五対の目がじっと見つめる。
「…………はぁ……本当は見過ごせんだけぢゃ……幼子が飢える等、あってはならん」
一旦は肩を竦めたクルストだったが、ミラルダ達の真剣な視線に耐え兼ねたのか、ため息を吐いて本音を吐露した。
「最初っからそう言えよ」
「ギャガン、それに他の者もいい加減、言葉遣いを改めたらどうかね?」
ギャガンの言葉を聞いてそれまで黙っていたリグナリオが苦言を呈した。
「あっ、そうだよね、王様だもんね……でもクルストの顔を見てるとどうもねぇ……」
「ハハハッ、そのままで構わんよ」
「お爺様、それでは王の権威が……」
「彼らには散々、好き放題している所を見られたのぢゃ、今更、王の権威もあるまい」
そう言って笑みを浮かべると、クルストは再度ギャガンに目を向けた。
「すまんなギャガン、王として貴族達と話していると、何を為すにも国益に沿う建前が必要でな」
「分からなくはねぇが、俺達にそういうのは不要だぜ」
「ハハッ、分かった。君らには今後、腹を割って話す様にしよう」
笑みを浮かべたクルストを見て、パムが口を開く。
「えっと、じゃあ、クルストに騎士団を派遣してもらって周辺の村の子達を助ける感じかな?」
「その前に、まずは転移陣を刻んで、我々で出来る限り周辺の集落の状況を調べよう……ミシマ、リューの村の周囲……いや、レミリシアの村や街の様子は見れるか?」
「ゴウンゴウン」
多分いけると思う。
健太郎は意識を衛星に向け、ロベット村を中心にレミリシア全土を見たいと強く思った。
その意志を受け、衛星はリューが黒い森と呼ぶ樹林地帯の衛星画像を視界に表示させる。
その映像はサロンに設置されていたディスプレイにも投影された。
「これは地図か? 便利なもんぢゃのう」
「しかしこれでは広く映し過ぎて、人が何処にいるか分からないぞ」
「ゴウンゴウン……」
確かにそうだな……人間がいる場所を特定出来れば、その場所をピックアップする事も出来そうだが……。
リグナリオの言葉を聞いて健太郎が答えたと同時に、広域図から複数ラインが伸びその先に拡大マップと思われる絵映像が別ウインドウの形で表示された。
ウインドウの中では小さな人影が動いているのが確認出来た。
「これはやっぱり子供かねぇ……?」
「集落の数は百程か……中央の一番大きな物にも大人の姿は無いようだな」
「そんな……中央集落には族長や戦士がいた筈なのに……」
不安げなリューの声が響く中、クルストが画面を見ながら口を開く。
「ふむ……ミラルダ、お前達はこの地図を元に先行して子供を中央集落に集めるのぢゃ。この拡大図を見る限り、建物は多いし一か所で対応する方が良さそうぢゃからな。グリゼルダは中央集落に転移陣を刻んでくれ。こちらは準備が出来次第、騎士団を派遣し食料供給を始めるとしよう」
「やる事は決りだね」
ミラルダはそう言うと、サロンに集まった面々を見回しゆっくりと頷いた。
■◇■◇■◇■
ラーグの王都ハイラッド、その王宮にある会議室で金髪の男が議長であるクルストに声を上げている。
「お待ち下さい、父上ッ!! 国交も何も無い、今後、友好関係が結べるかどうかも分からない遠い異国に騎士団を派遣してどうしますッ!?」
「ロレント、予はエルダガンドで鉄道を見た」
「鉄道? 魔人が作った魔法の馬車ですな。それがどうしたというのです?」
「予はエルダガンドのホースロイド王とも話した。王は今後、ミシマが変形する鉄の鳥に似た、飛行機という名の乗り物の開発も進めるそうぢゃ」
ラーグに戻ったクルストは早速、王国議員を招集し南部大陸にあるダークエルフの国、レミリシアへの救援の為の騎士団派遣を議会に掛けた。
その議会で現在、軍部の長である第一王子のロレントは派遣に反対していた。
そんなロレントにクルストが振った話にロレントのみならず、他の議員も困惑していた。
「父上、何を仰りたいのか……」
「鉄道や飛行機は魔力のある無しに関わらず使えるモノぢゃ。アレはきっと世界を縮めるぞ。遠い異国とお前は言ったが、遠からずレミリシアとは隣国と変わらぬ関係になるぢゃろう。そうなった時、今回の派遣が外交上活きて来るとは思わんか?」
「それは……」
確かにな……魔力が無くても使えるなら……。
議会場にそんな議員達の囁きが響く。
ギルドからの報告でグリゼルダが開発した長距離転移陣の事は貴族の間でも噂になっていた。
だが、その転移陣の使用には距離と規模が大きくなればなるほど、使用する魔力量も膨大になり、永続的な人員や物資の輸送には適しているとは言い難かったのだ。
「今回、エルダガンドを見た事で、ラーグが魔導技術的に遅れている事もよく分かった。これまでラーグが他国の侵略を受けなかったのは、この国が冒険者の国ぢゃからぢゃ。ぢゃが、エルダガンドの技術が世界に広がり、鉄道や飛行機の様な物が軍事転用されればラーグも安泰とはいかんぢゃろう。ロレント、レミリシアを助ける事は融和によってラーグを守る事に繋がる……かつてトラスが行った事を国を挙げてやるのぢゃよ」
冒険者による軍隊の設立を考えていたロレントは、クルストの言葉に顔を歪めた。
彼も名誉騎士のお披露目会で、VTOLモードの健太郎がクルストに操られマシンガンを乱射した事は聞いていた。
あんな物が量産されれば一騎当千の冒険者だろうが相手にならないだろう。
「俺は爺さんの案に賛成だ」
「私も陛下の案はいいと思う。仕事的にも融和の方がやりやすい」
議会に参加していたアドルフと外交担当のガッドもクルストの支持に回った。
「クッ……分かりました」
「ふむ、では決を取ろう」
反対派の中心だった王子のロレントが折れた事で、騎士団派遣は全会一致で可決される事になった。
滞在していたホテルから荷物を引き上げ、王宮にいたクルストとリグナリオを拾ってラーグへの帰途に就いた健太郎達だったが、宇宙戦艦モードの船内にいるダークエルフの子供達を見たリグナリオには思い切り嫌味を言われてしまった。
「リグナリオ、まずは事情を聞こうではないか」
「はぁ……お爺様、この連中の事です。きっと困っていたからとか、そんな事に決まってますよ」
「それでもぢゃ。あの子達が何に困り、何に喘いでいるのか聞かねばミラルダ達の真意は知れぬ」
「ほんとに立派になって……悪戯小僧みたいだったのが信じられないよ」
「ハハ、苦労を掛けたな……して、何があった?」
「あの子達は……」
宇宙戦艦モードのサロンでミラルダ達はクルストとリグナリオにダークエルフの国、レミリシアで見た事、子供達から聞いた事を説明した。
「ミシマと同じ形のゴーレム……それが村の人々を……」
「ああ、子供達から聞いた話じゃ色は青じゃなくて赤だったらしいけど……」
「ふむ……攫われたのはその村の人々だけかね?」
「それは調べてないから分からないけど……」
「普通に考えれば、子供ではなく大人を攫う理由は労働力、つまり奴隷が欲しかったのではないか? その奴隷にさせる事業の規模にもよるが、人員は多い方がいい筈ぢゃ」
クルストは国王という立場から、赤いゴーレムが攫った人々を奴隷にしているのではと推測した。
「じゃあロベット以外の集落も襲われて……」
「うむ、満足に働けない子供を除外し、無差別に攫ったなら目的は特定の誰かという事ではあるまい。であれば周辺の集落も襲われたと考えるの妥当ぢゃろう」
顔を歪めたリューにクルストは冷静に返した。
「ミラルダ、今後の方針は?」
「方針って言っても相手がどんな奴で、何が目的なのか分からないからねぇ……ともかく、他の村にも子供達だけが残されているんだったら、その子達も助けたいけど……」
「助けるつっても多分俺達だけじゃ金も手も足りねぇぞ」
「ふむ……グリゼルダ。ギルドからの報告書で読んだが、お前は遠距離転移陣が描けるのぢゃったな?」
「描けるが、それが?」
首を傾げたグリゼルダにクルストは笑みを浮かべる。
「ではハイラッドの王国騎士団の詰め所に大型の転移陣を描いてくれ」
「騎士団詰め所……派兵するのか?」
「目的は戦争では無く、救援ぢゃがな。レミリシアとは現状で国交は無いが、事態を治めれば友好国として新たに手を結べる筈ぢゃ。冒険者ギルドの仕事にも有利に働くぢゃろう」
「あくまで国の都合って訳か?」
ギャガンの目がギロリとクルストを睨む。
「まあの」
それに動じた様子も無く、クルストは苦笑を浮かべた。
そんなクルストを五対の目がじっと見つめる。
「…………はぁ……本当は見過ごせんだけぢゃ……幼子が飢える等、あってはならん」
一旦は肩を竦めたクルストだったが、ミラルダ達の真剣な視線に耐え兼ねたのか、ため息を吐いて本音を吐露した。
「最初っからそう言えよ」
「ギャガン、それに他の者もいい加減、言葉遣いを改めたらどうかね?」
ギャガンの言葉を聞いてそれまで黙っていたリグナリオが苦言を呈した。
「あっ、そうだよね、王様だもんね……でもクルストの顔を見てるとどうもねぇ……」
「ハハハッ、そのままで構わんよ」
「お爺様、それでは王の権威が……」
「彼らには散々、好き放題している所を見られたのぢゃ、今更、王の権威もあるまい」
そう言って笑みを浮かべると、クルストは再度ギャガンに目を向けた。
「すまんなギャガン、王として貴族達と話していると、何を為すにも国益に沿う建前が必要でな」
「分からなくはねぇが、俺達にそういうのは不要だぜ」
「ハハッ、分かった。君らには今後、腹を割って話す様にしよう」
笑みを浮かべたクルストを見て、パムが口を開く。
「えっと、じゃあ、クルストに騎士団を派遣してもらって周辺の村の子達を助ける感じかな?」
「その前に、まずは転移陣を刻んで、我々で出来る限り周辺の集落の状況を調べよう……ミシマ、リューの村の周囲……いや、レミリシアの村や街の様子は見れるか?」
「ゴウンゴウン」
多分いけると思う。
健太郎は意識を衛星に向け、ロベット村を中心にレミリシア全土を見たいと強く思った。
その意志を受け、衛星はリューが黒い森と呼ぶ樹林地帯の衛星画像を視界に表示させる。
その映像はサロンに設置されていたディスプレイにも投影された。
「これは地図か? 便利なもんぢゃのう」
「しかしこれでは広く映し過ぎて、人が何処にいるか分からないぞ」
「ゴウンゴウン……」
確かにそうだな……人間がいる場所を特定出来れば、その場所をピックアップする事も出来そうだが……。
リグナリオの言葉を聞いて健太郎が答えたと同時に、広域図から複数ラインが伸びその先に拡大マップと思われる絵映像が別ウインドウの形で表示された。
ウインドウの中では小さな人影が動いているのが確認出来た。
「これはやっぱり子供かねぇ……?」
「集落の数は百程か……中央の一番大きな物にも大人の姿は無いようだな」
「そんな……中央集落には族長や戦士がいた筈なのに……」
不安げなリューの声が響く中、クルストが画面を見ながら口を開く。
「ふむ……ミラルダ、お前達はこの地図を元に先行して子供を中央集落に集めるのぢゃ。この拡大図を見る限り、建物は多いし一か所で対応する方が良さそうぢゃからな。グリゼルダは中央集落に転移陣を刻んでくれ。こちらは準備が出来次第、騎士団を派遣し食料供給を始めるとしよう」
「やる事は決りだね」
ミラルダはそう言うと、サロンに集まった面々を見回しゆっくりと頷いた。
■◇■◇■◇■
ラーグの王都ハイラッド、その王宮にある会議室で金髪の男が議長であるクルストに声を上げている。
「お待ち下さい、父上ッ!! 国交も何も無い、今後、友好関係が結べるかどうかも分からない遠い異国に騎士団を派遣してどうしますッ!?」
「ロレント、予はエルダガンドで鉄道を見た」
「鉄道? 魔人が作った魔法の馬車ですな。それがどうしたというのです?」
「予はエルダガンドのホースロイド王とも話した。王は今後、ミシマが変形する鉄の鳥に似た、飛行機という名の乗り物の開発も進めるそうぢゃ」
ラーグに戻ったクルストは早速、王国議員を招集し南部大陸にあるダークエルフの国、レミリシアへの救援の為の騎士団派遣を議会に掛けた。
その議会で現在、軍部の長である第一王子のロレントは派遣に反対していた。
そんなロレントにクルストが振った話にロレントのみならず、他の議員も困惑していた。
「父上、何を仰りたいのか……」
「鉄道や飛行機は魔力のある無しに関わらず使えるモノぢゃ。アレはきっと世界を縮めるぞ。遠い異国とお前は言ったが、遠からずレミリシアとは隣国と変わらぬ関係になるぢゃろう。そうなった時、今回の派遣が外交上活きて来るとは思わんか?」
「それは……」
確かにな……魔力が無くても使えるなら……。
議会場にそんな議員達の囁きが響く。
ギルドからの報告でグリゼルダが開発した長距離転移陣の事は貴族の間でも噂になっていた。
だが、その転移陣の使用には距離と規模が大きくなればなるほど、使用する魔力量も膨大になり、永続的な人員や物資の輸送には適しているとは言い難かったのだ。
「今回、エルダガンドを見た事で、ラーグが魔導技術的に遅れている事もよく分かった。これまでラーグが他国の侵略を受けなかったのは、この国が冒険者の国ぢゃからぢゃ。ぢゃが、エルダガンドの技術が世界に広がり、鉄道や飛行機の様な物が軍事転用されればラーグも安泰とはいかんぢゃろう。ロレント、レミリシアを助ける事は融和によってラーグを守る事に繋がる……かつてトラスが行った事を国を挙げてやるのぢゃよ」
冒険者による軍隊の設立を考えていたロレントは、クルストの言葉に顔を歪めた。
彼も名誉騎士のお披露目会で、VTOLモードの健太郎がクルストに操られマシンガンを乱射した事は聞いていた。
あんな物が量産されれば一騎当千の冒険者だろうが相手にならないだろう。
「俺は爺さんの案に賛成だ」
「私も陛下の案はいいと思う。仕事的にも融和の方がやりやすい」
議会に参加していたアドルフと外交担当のガッドもクルストの支持に回った。
「クッ……分かりました」
「ふむ、では決を取ろう」
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