紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

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第十二章 二人の転生者

赤黒いゴーレム

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 ラーグ王国国王、クルストゲッバーミン三世の要請で、王国騎士団の詰め所の訓練所に長距離転送陣を刻んだグリゼルダは、王国魔導士団の団長に陣についての説明を行っていた。

「なるほど、あちらとこちら、対になる陣が無いと転移は出来ないのだな」
「ああ、以前、迷宮で作った物は転移者の想いに反応して何処へでも飛べる物だった。だがそれでは行先が転移者の意識を反映してバラバラになってしまうからな」
「後は魔力の問題か」
「そうだ。大規模になればなるほど転移に必要な魔力量は多くなる。だが今回は事態の収拾にどれ程の時が掛かるか分からない。追加の物資や人員を素早く送れるように王はこの方式を選んだ」
「承知した……しかし見事な物だな。さすが魔人族だ」

 団長はグリゼルダが地面に描いた魔法陣を眺めながら苦笑を浮かべる。

「この角のおかげだ。角によってより詳細に魔力の流れを感じられるようになった」

 グリゼルダはそう言うとルビーの角を指差し、微笑んだ。

「魔人に幻獣の角か……まるでドワーフに斧だな」
「ドワーフに斧か……フフッ、そうかもな」
「グリゼルダッ!! 終わったんならさっさと行こうぜッ!!」
「分かったッ!! では向こうの用意が済んだら何か送る。その後は手筈通りに」
「了解だ」

 グリゼルダは団長と頷きを交わし、自分を呼んだギャガンの下へと駆け寄った。
 その後、二人に上空から光が伸び、その姿は一瞬で掻き消える。

 見上げれば青黒い金属の船が南東へ向け飛んで行く。

「……王を動かす冒険者か……トラスの後を継ぐのはあいつ等かもな……」

 団長はそう呟き、しばしトラスの英雄譚に思いをはせた。


■◇■◇■◇■


 そんな団長の思いとは裏腹に、宇宙戦艦モードの健太郎けんたろうの中では混乱が起きていた。

「ミラルダぁ、お腹空いたぁ」
「はいはい、今用意してるから少し待っとくれ」
「ギャガン、今度はわたしッ!!」
「へいへい……これの何が楽しいんだ……」
「パムちゃん、見っけッ!!」
「あっ、見つかっちゃった。じゃあ今度は私が鬼だね」
「お姉ちゃん、次のお話ッ!!」
「うう、まだ聞きたいのか……」

 厨房のミラルダには腹を空かせたダークエルフの子供達がエプロンを引っ張り、ギャガンには高い高いしてと同じく子供達が群がっている。
 パムは何人かの子供達、それにリューと鬼ごっこに勤しみ、グリゼルダには女の子たちがお話をせがんでいた。

 ご飯を食べ、良く眠って元気を取り戻した子供達はミラルダ達を味方だと認識したらしく、親を連れ去られた寂しさを埋める様に彼らに甘えていた。

「ミシマ、もう一回ッ!!」
「ゴウンゴウン……」

 君、良く飽きないねぇ……。

 健太郎も戦艦内のディスプレイを使って子供の一人とオセロに興じていた。
 元気になったのは良いのだが、子供達のテンションに健太郎を始め全員が圧倒されていた。

 ミラルダの家の子達を相手にした時にも思ったけど、これに毎日付き合ってるんだから、世のお父さんやお母さんは大変だ。

 そんな感想を持ちながら、健太郎達は子供達が疲れて眠るまで彼らに付き合ってやった。
 やがてミラルダが作った昼ご飯を食べ、お昼寝の時間となった事でミラルダ達はようやく子供達から解放された。

「ふぃぃ……みんなお疲れさん」
「あー……ガキのパワーには付いてけねぇぜ」
「まったくだ……次から次へと新しい話をせがまれて困ったぞ」
「まぁ、でもみんな喜んでくれたみたいだし、良かったんじゃない?」
「そうだね。無理にはしゃいでる感じはあったけど……」

 リューの言葉でミラルダ達の顔も沈んだ物となる。
 彼ら自身も子供達がわざと明るく元気に振舞っているのには気付いていた。
 そうしないと不安が押し寄せ耐えられないのだろう。

「ゴウンゴウン……」

 もうすぐレミリシアだ。ついたら早速、行動を開始しよう……。

「だね。まずはグリゼルダに陣を描いてもらって、それからみんなで各地を廻ろう」

 子供達をラーグに置いて来なかったのは、その方がレミリシア各地に残された子供達に信用してもらえると思ったからだ。
 彼らには、みんなと同じ様に置き去りにされた子達を集めるのに協力して欲しいと頼んである。

「子供を中央集落に集め保護するのはいいが、その後はどうする?」
「そうだねぇ……ミシマに似た赤いゴーレム……ミシマ、似たゴーレムって事でそいつが何処にいるのか分からないかい?」
「ゴウンゴウン……」

 似たゴーレム……同型のロボット……赤い俺……。

 赤い体の自分を健太郎は想像したが、情報が足りないのか衛星が反応する事は無かった。

「ゴウンゴウン……」

 駄目みたいだ。カーバンクルの時みたく、カルディナの記憶的な物があれば反応するかもだけど……。

「記憶ねぇ……」
「記憶か……私が覗いてもいいがカルディナに止められててな」
「カルディナさんに?」
「ああ、角を使った記憶の共有は人格面に影響を及ぼす可能性がある。記憶の混同が原因でな。カーバンクルの角によってより深く潜る事が可能になった。影響もより大きくなると考えて間違いない」
「そっか。別人の記憶を体験するんだもんね……こんがらがっちゃっても仕方ないよね」
「んじゃ、記憶を見るのは無しだな……あとは保護したガキ共に情報を貰うしかねぇか……」
「辛い記憶を話させるのは可愛そうだけど……大人たちを助けるにはそれしかないみたいだね……」

 赤いゴーレムが動ける大人だけ連れ去った目的は何なのか。
 クルストが推測した様に奴隷にする為なのか。

 様々な疑問が健太郎達の中に浮かんでは消えた。


■◇■◇■◇■


 ラーグ王国のあるバルシア大陸から海を挟んで赤道を超えた先、南部のルミオン大陸の中心部。
 かつて人族の王が座っていた玉座に赤黒いロボットが腰を下ろしていた。



 彼の前には人族の他、オーガやゴブリン、ダークエルフ等、元々ルミオン大陸に暮らしていた者達が跪き頭を垂れている。

「コホーッ」

 ハハッ、いい気分だ。やっぱり力があるって最高だな。

 彼の名は高木修一たかぎしゅういち、いじめを苦に自殺しこの世界にやって来た転生者だ。
 死の間際、彼は力のある肉体を強く望みながら亡くなった。

 力があれば自分を虐めていたクソ共も全員返り討ちに出来る。
 前の世界では小柄で痩せた体に生まれ付いた為、反抗する事さえ出来なかった。
 力の無い者は殴られ奪われ、その様を嘲笑われるだけだ。

 そんなのは二度と御免だッ!! 僕は次に生まれ変わったら絶対に誰にも負けない、無敵の体を持った存在になってやるッ!! そう絶対にッ!! 僕は誰にも支配されず、奪われる事無く、絶対に自由に生きてやるッ!!

 そして気が付けば彼は森の中で赤黒いロボットの体で立っていた。
 視界にはこの体の説明がなされている。
 それによればこの機械の体はある銀河を支配する種族が作った、居住可能な惑星から原住民を排除する為の兵器らしい。
 これまでその種族が作ったあらゆる物の設計データを持ち、それを再現する為のマテリアルを亜空間に蓄積していて、考えただけで蓄積したマテリアルからボディを作り出す事が出来るそうだ。

 また兵器という性格上、そのボディは非常に堅牢で、さらには装甲表面を次元断層で覆う事で通常の攻撃、それは核爆弾であっても破壊する事は不可能らしい。

 一通り説明を読んだ修一は狂喜乱舞した。
 自分の願いをどこの誰かは知らないが叶えてくれた。喜ばない者はいないだろう。

 ただ、この体にも不満な点はある。
 一つは普通に喋れない事、そして二つ目は性交渉の必要が無い事だ。

 修一も精神は十代の若者だ。当たり前だが異性に興味を持っているし、そういう事もしたい。
 だが機械の体はそもそもが原住民の排除、つまり殺害が目的だ。
 食事もSEXもその目的とは関わり合いが無い。

 そういう訳でその満たされない欲求を彼は人々を支配する事で埋める事にした。

 玉座から立ち上がり胸を叩き、胸部装甲を開いて暴徒鎮圧用のスピーカーを露出させる。
 それを見た者達は一斉に耳を塞ぎ、体を縮めた。

『今回集まって貰ったのは他でもない、大陸北部、レミリシアを取り込んだ事で僕はこの南部大陸の支配者となったッ!!!! 今後は残った北部のバルシア大陸、西の魔大陸と呼ばれる大陸にも侵略の手を伸ばすッ!!!!』
「…………あの、陛下。お言葉ですがバルシア大陸には魔法に通じた魔人や武に優れた獣人の国、それに冒険者の国として名高いラーグという王国があると聞きます。わざわざ出向かなくても……」

 怯えながらも進言をしたオーガの老人に近づき、修一は問答無用で彼の顔面を蹴りつけた。

「グハッ!!」
「長ッ!?」
『お前達の中で誰か一人でも僕に勝てる奴がいるのかッ!!!?』
「……おりません」

 部下に支えられながら蹴り飛ばされた鼻を押さえつつ老人は答える。

『そうだッ!!!! ここにいる誰よりも僕は強いッ!!!! きっと北部にも西にも僕を止められる者はいないッ!!!!』
「……こんな事、いつまでも続く訳がない」

 呟かれた言葉でひれ伏す者達の顔が一斉に青ざめる。
 その言葉を口にしたのは直近で無理矢理、配下に引き入れたダークエルフの青年だった。

 修一はその力によって恐怖を与えルミオン大陸にある種族の国を支配して来た。
 大概の者は修一が荷電粒子砲に変形して放った光弾の威力に怯え軍門に下っていたが、ダークエルフ達は数が少なく戦闘でその力を見せる前に捕らえた為、恐怖による支配が十分では無かったようだ。

『そうか!!! お前らにはまだ教育が出来て無かったな!!!』
「教育だと?」
『反乱を企てた者がいただろうッ!!!? そいつらを王城の前の広場に並べろッ!!!!』
「ハッ!!」

 オークの兵士が修一の命令で部屋を駆けだしていく。
 修一は胸部装甲を閉じると、人差し指をチョイチョイと動かし、ダークエルフ達に付いて来るように指示を出した。

「……死にたくなかったら逆らうな」

 兵士の一人が先程のダークエルフの青年に囁く。

「何を見せられるんだ?」
「力だよ……陛下は力で俺達を支配してる。お前達もアレを見れば逆らおうって気は無くなる筈だ」

 そう言った人族の兵士の顔には諦めの感情が浮かび上がっていた。


■◇■◇■◇■


「嘘だろ……」

 王城前の広場、高台に作られたそこには先程まで千人程の囚人が集められていた。
 その囚人たちは赤黒いゴーレムが額から放った青白い閃光によって、一撃で薙ぎ払われ蒸発していた。

『どうだッ!!!! これは僕の力の一端だッ!!!! お前達も全員蒸発させてやっても良かったが、お情けで配下に加えてやろうというのだッ!!!! 有難くて涙が出るだろうッ!!!!』

 そう言って高笑いを上げる赤黒いゴーレムをダークエルフ達は怯えた目で見つめていた。
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