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第六章 青い子竜と竜人の国
世襲制
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スケイルに追いついた健太郎達はその日はそのまま宿に部屋を取り一泊し、翌日、ファング達の拠点である地方都市ランズへ向けて出発した。
健太郎が変形したトラックにはミラルダ、ギャガン、グリゼルダの他、骨折の治療を終え、治癒魔法を受けたキューと自由になったタニア、タニアを攫ったファングとスケイルの計七名が乗っていた。
「キュエーッ(タニア無事で良かったのッ)」
「クルルッ(お兄ちゃんも翼が治って良かったッ)」
「赤竜と青竜は性質の違いから相容れない筈だが……」
仲の良さそうなキューとタニアを見てファングがボソリと呟く。
「いやファング、そんな事よりこの鉄の車は何なんだよ? あのミシマって奴、どうなってんのかよく分かんねぇ変形して、他の奴らも驚きもせずにそれ受け入れてるけど……おかしいだろ、コレ?」
「俺もそう思うが……スケイル、そういう物だと受け入れろ」
「いや絶対変だって」
「別に変でもいいじゃねぇか、便利なんだしよぉ」
「便利だからで片付けていい事じゃねぇと思うんだが……」
今一つ納得のいっていない様子のスケイルを乗せて、トラックモードの健太郎は快調に高原を走り抜け、ランズの一つ手前の街まで半日ほどで辿り着いた。
空の飛べる竜人族の暮らすベルドルグではあったが、山羊の出荷の為、荷馬車の通る道は整備されている。
その道を使えた事が移動時間の短縮に繋がっていた。
そんな感じで移動は順調に進み、ランズ手前の街でファングとスケイル、タニアとは別れ、健太郎達は彼らとは別にランズへ入る手はずとなった。
そして現在、街で手配した宿の一室で健太郎達はファング達とタニアを送り出していた。
「いいか、裏切りやがったら必ず見つけ出してバラバラに刻むからな」
「これが上手く行けば危ない仕事が一つ減るんだ、裏切りはしないさ。それより貴様らの方こそ面倒を起こすなよ。特にギャガン」
「そうだな、短い付き合いだけど、あんたチンピラみたいだもんな」
「ああ? 誰がチンピラだぁ?」
「そういうトコだよ」
ギャガンがスケイルに絡んでいる横では、袋に入れられファングの前にいるタニアにキューが声を掛けている。
「キュエーッ(キューがすぐに助けてあげるの、それまで待ってるのッ)」
「クルルルッ(分かったッ、待ってるから早く来てねッ)」
袋から顔を出したタニアの頭を撫でるキューの姿に微笑みを浮かべ、ミラルダはファングに声を掛ける。
「待ち合わせはルッグス亭って宿だったね」
「ああ、行商人が使う宿だ。俺かスケイルのどちらかが掴んだ情報を伝えに行く……もし現れなかった場合は失敗したと踏んでミシマのアレでタニアの位置を割り出せ」
「今更だが、そんなに危険な組織なのか?」
「非合法な事もやる組織だからな。探っている事が知られれば消される可能性もある」
グリゼルダの問い掛けにファングは何の事も無いようにサラリと答えた。
「コホーッ」
よくそんな組織に所属してるね……。
「確かにね、ファング、他に仕事は無いのかい?」
「他の仕事か……この国は基本、世襲制なんだ。牧童は親から山羊と土地を引き継ぎ、職人や商人、役人、貴族等も基本、代々同じ仕事を引き継ぐ。俺やスケイルの様に親が病や事故で倒れ財産を失った者は、仕事にあぶれ組合の様な危険な仕事に就く以外道は無いのさ」
「……何でも屋もラーグの冒険者と同じで他に仕事の無い者の最後の砦って訳かい?」
「そんないいものじゃないけどな。でもまぁ、俺達みたいなのがいないと回らない部分もあるから、非合法でも黙認してるって感じかな」
ミラルダの問い掛けにスケイルがおどけた様子で答えた。
「コホー……」
職業が固定されてるのか……合わない人もいるだろうに……。
健太郎は以前勤めていた会社の事を思い出し、少し暗い気持になった。
別に日本は職業が選べない訳では無かったが、大学時代、就職活動に苦労した健太郎はいくらブラックでも転職しようとは考えていなかった。
結果的に首になるならさっさと別の道を模索しても良かったのかもしれないが……。
「コホーッ?」
ねぇ、ファング、スケイル。もしこの国に未練が無いなら、ラーグの冒険者になるってのはどうかな?
「なんだ? ミラルダ、ミシマは何と言っている?」
「国に未練が無いなら、ラーグで冒険者をやってもいいんじゃないかって」
「冒険者……」
「ああ、何でも屋と同じで何の保証も無いけど、少なくとも非合法な仕事はさせられない筈だよ」
「何でも屋のお前達なら冒険者として十分にやって行けるだろう」
「ラーグは人間が主体だから、竜人族なら簡単にテストにも受かると思うぜ」
ミラルダの言葉を国を出て冒険者となったグリゼルダとギャガンが補足する。
「この国を出るかぁ……考えた事無かったけどそれも楽しいかもなぁ」
「スケイル…………そうだな、一考する価値はあるかもな……だが今は目の前の仕事に集中するとしよう。では手はず通りに」
「ギャガン、ランズに着いたら喧嘩売られても買うなよ」
「うるせぇよ」
ファングはタニアの頭を袋にいれると担ぎ上げ、手を振りギャガンを揶揄っていたスケイルを連れ部屋を後にした。
「ふぅ……ベルドルグも生きていくのは面倒そうだねぇ」
「だな、ロガエストも種族によって仕事が決まっていたが、国を出てお前らと付き合う様になってから馬鹿馬鹿しいと思う様になったぜ」
「ほう、お前も少しは成長しているのだな?」
「どういう意味だコラ?」
「褒めているのだから凄むな」
「褒めてる様に聞こえねぇんだよぉ?」
いつもの様に言い合いを始めたギャガン達を見て、ミラルダ、健太郎、キューの三人は肩を竦め苦笑を浮かべた。
健太郎が変形したトラックにはミラルダ、ギャガン、グリゼルダの他、骨折の治療を終え、治癒魔法を受けたキューと自由になったタニア、タニアを攫ったファングとスケイルの計七名が乗っていた。
「キュエーッ(タニア無事で良かったのッ)」
「クルルッ(お兄ちゃんも翼が治って良かったッ)」
「赤竜と青竜は性質の違いから相容れない筈だが……」
仲の良さそうなキューとタニアを見てファングがボソリと呟く。
「いやファング、そんな事よりこの鉄の車は何なんだよ? あのミシマって奴、どうなってんのかよく分かんねぇ変形して、他の奴らも驚きもせずにそれ受け入れてるけど……おかしいだろ、コレ?」
「俺もそう思うが……スケイル、そういう物だと受け入れろ」
「いや絶対変だって」
「別に変でもいいじゃねぇか、便利なんだしよぉ」
「便利だからで片付けていい事じゃねぇと思うんだが……」
今一つ納得のいっていない様子のスケイルを乗せて、トラックモードの健太郎は快調に高原を走り抜け、ランズの一つ手前の街まで半日ほどで辿り着いた。
空の飛べる竜人族の暮らすベルドルグではあったが、山羊の出荷の為、荷馬車の通る道は整備されている。
その道を使えた事が移動時間の短縮に繋がっていた。
そんな感じで移動は順調に進み、ランズ手前の街でファングとスケイル、タニアとは別れ、健太郎達は彼らとは別にランズへ入る手はずとなった。
そして現在、街で手配した宿の一室で健太郎達はファング達とタニアを送り出していた。
「いいか、裏切りやがったら必ず見つけ出してバラバラに刻むからな」
「これが上手く行けば危ない仕事が一つ減るんだ、裏切りはしないさ。それより貴様らの方こそ面倒を起こすなよ。特にギャガン」
「そうだな、短い付き合いだけど、あんたチンピラみたいだもんな」
「ああ? 誰がチンピラだぁ?」
「そういうトコだよ」
ギャガンがスケイルに絡んでいる横では、袋に入れられファングの前にいるタニアにキューが声を掛けている。
「キュエーッ(キューがすぐに助けてあげるの、それまで待ってるのッ)」
「クルルルッ(分かったッ、待ってるから早く来てねッ)」
袋から顔を出したタニアの頭を撫でるキューの姿に微笑みを浮かべ、ミラルダはファングに声を掛ける。
「待ち合わせはルッグス亭って宿だったね」
「ああ、行商人が使う宿だ。俺かスケイルのどちらかが掴んだ情報を伝えに行く……もし現れなかった場合は失敗したと踏んでミシマのアレでタニアの位置を割り出せ」
「今更だが、そんなに危険な組織なのか?」
「非合法な事もやる組織だからな。探っている事が知られれば消される可能性もある」
グリゼルダの問い掛けにファングは何の事も無いようにサラリと答えた。
「コホーッ」
よくそんな組織に所属してるね……。
「確かにね、ファング、他に仕事は無いのかい?」
「他の仕事か……この国は基本、世襲制なんだ。牧童は親から山羊と土地を引き継ぎ、職人や商人、役人、貴族等も基本、代々同じ仕事を引き継ぐ。俺やスケイルの様に親が病や事故で倒れ財産を失った者は、仕事にあぶれ組合の様な危険な仕事に就く以外道は無いのさ」
「……何でも屋もラーグの冒険者と同じで他に仕事の無い者の最後の砦って訳かい?」
「そんないいものじゃないけどな。でもまぁ、俺達みたいなのがいないと回らない部分もあるから、非合法でも黙認してるって感じかな」
ミラルダの問い掛けにスケイルがおどけた様子で答えた。
「コホー……」
職業が固定されてるのか……合わない人もいるだろうに……。
健太郎は以前勤めていた会社の事を思い出し、少し暗い気持になった。
別に日本は職業が選べない訳では無かったが、大学時代、就職活動に苦労した健太郎はいくらブラックでも転職しようとは考えていなかった。
結果的に首になるならさっさと別の道を模索しても良かったのかもしれないが……。
「コホーッ?」
ねぇ、ファング、スケイル。もしこの国に未練が無いなら、ラーグの冒険者になるってのはどうかな?
「なんだ? ミラルダ、ミシマは何と言っている?」
「国に未練が無いなら、ラーグで冒険者をやってもいいんじゃないかって」
「冒険者……」
「ああ、何でも屋と同じで何の保証も無いけど、少なくとも非合法な仕事はさせられない筈だよ」
「何でも屋のお前達なら冒険者として十分にやって行けるだろう」
「ラーグは人間が主体だから、竜人族なら簡単にテストにも受かると思うぜ」
ミラルダの言葉を国を出て冒険者となったグリゼルダとギャガンが補足する。
「この国を出るかぁ……考えた事無かったけどそれも楽しいかもなぁ」
「スケイル…………そうだな、一考する価値はあるかもな……だが今は目の前の仕事に集中するとしよう。では手はず通りに」
「ギャガン、ランズに着いたら喧嘩売られても買うなよ」
「うるせぇよ」
ファングはタニアの頭を袋にいれると担ぎ上げ、手を振りギャガンを揶揄っていたスケイルを連れ部屋を後にした。
「ふぅ……ベルドルグも生きていくのは面倒そうだねぇ」
「だな、ロガエストも種族によって仕事が決まっていたが、国を出てお前らと付き合う様になってから馬鹿馬鹿しいと思う様になったぜ」
「ほう、お前も少しは成長しているのだな?」
「どういう意味だコラ?」
「褒めているのだから凄むな」
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