ガラス玉のように

イケのタコ

文字の大きさ
13 / 22

おまけ

しおりを挟む
「ただいま、戻りました」
「おかえり」

出迎えに来たのは勿論、義宗さんだ。帰りのタクシー、アオが彼奴絶対に機嫌が悪いから気をつけろと散々煽っていたけど、いつも通りの優しい笑顔の義宗さんがいる。

「良かった。もっと夜遅くなると思ってたから」
「すみません、何も言わずに行ってしまった」
「いいよ、スズ君のせいじゃないから。何より無事で本当に良かった。傷一つでも付いてたら、どうケジメつけさせるか考えてたから」

いや、アオの言った通りかもしれない。笑顔の奥に薄らと隙間越しに見える目は鋭く、その眼光で睨まれているせいか、アオが一向に玄関に入って来ない。

「玄関で立ち話もなんだから、中に入って」

俺と三船は靴を脱いでさっさと中に入る。

「アオ」
「はいはい」

当然、義宗さんにアオが呼び止められていた。怒られると思いきや、一度指を指されるだけでお咎めはなし。
それでも、アオには何かが伝わっているようで『すいませんね』と平謝りして家の中に入ってくる。

「今から夜ご飯の用意するけど、食べられる人いる?」

やはり、義宗さんはアオがなにをしていたのかお見通しのようだ。
俺は店には入ったけどハンバーガーはあまり食べていなかったから、お腹にまだ入りそうだ。食べますと手を挙げた。

「スズ君あんまり無理しなくてもいいからね。三船はお腹空いてる?」
「空いてる」
「分かった、用意するからスズ君と三船は居間で待ってて」

三船は頷くと、義宗さんは着物の袖をまくり上げ炊事場の方に向かう。

「俺も腹減ったんですけど」
「お前は食べただろ」
「それはそれ、これはこれ。あれだけで足りるかっての」

不満を言いながらアオは気怠げについていく。

「意外にアオさん怒られなかった。やっぱり義宗さんって優しい?」

仲が良さそうな二人、もっと険悪な空気になると身構えていたが全く無さそうで安心した。

「いや、あれは一回目の警告だな」
「えっ」
「次すれば分かってるなって、言ってたから」
「えー」

平然と三船は言う。義宗さんを絶対に怒らせないようにしようと誓った夜だった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】浮薄な文官は嘘をつく

七咲陸
BL
『薄幸文官志望は嘘をつく』 続編。 イヴ=スタームは王立騎士団の経理部の文官であった。 父に「スターム家再興のため、カシミール=グランティーノに近づき、篭絡し、金を引き出せ」と命令を受ける。 イヴはスターム家特有の治癒の力を使って、頭痛に悩んでいたカシミールに近づくことに成功してしまう。 カシミールに、「どうして俺の治癒をするのか教えてくれ」と言われ、焦ったイヴは『カシミールを好きだから』と嘘をついてしまった。 そう、これは─── 浮薄で、浅はかな文官が、嘘をついたせいで全てを失った物語。 □『薄幸文官志望は嘘をつく』を読まなくても出来る限り大丈夫なようにしています。 □全17話

【完結】言えない言葉

未希かずは(Miki)
BL
 双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。  同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。  ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。  兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。  すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。 第1回青春BLカップ参加作品です。 1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。 2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)

【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《根暗の根本君》である地味男である<根本 源(ねもと げん)>には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染<空野 翔(そらの かける)>がいる。 ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない?? イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

六日の菖蒲

あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。 落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。 ▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。 ▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず) ▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。 ▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。 ▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。 ▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。

ラベンダーに想いを乗せて

光海 流星
BL
付き合っていた彼氏から突然の別れを告げられ ショックなうえにいじめられて精神的に追い詰められる 数年後まさかの再会をし、そしていじめられた真相を知った時

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない

豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。 とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ! 神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。 そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。 □チャラ王子攻め □天然おとぼけ受け □ほのぼのスクールBL タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。 ◆…葛西視点 ◇…てっちゃん視点 pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。 所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。

君さえ笑ってくれれば最高

大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。 (クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け) 異世界BLです。

処理中です...