学園最強と言われている術師に何故か好かれている

イケのタコ

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17 理解不能

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「黒兎、もう人を噛まないことを約束しろ」

仲が良いのか、悪いのか、不思議な関係の2人に会った帰り道の廊下、イーナは黒兎を抱き抱えて強く言う。
注意された黒兎は何故と言いたげに首を傾けた。

「それは、君の力だと簡単に人を殺してしまうからだ。いいか、俺は人を殺すために君の手助けが欲しいわけじゃない、人を守るために君の力が欲しいんだ」

魔物によって無惨にも破壊されていく町。あの悲劇を繰り返さないためにも、ずっと力をつけてきた。
魔物で人を傷つければ本末転倒もいいところだ。
そこまで言って、やっと黒兎は一つ頷く。会話をする事が出来ないから、ちゃんと意思疎通が出来ているのか心配だけど。
伝わったと信じて、歩きたいと足を動かす黒兎を下ろす。

せっかく手に入れた魔術。ーーー自分の物に出来ない感覚が煩わしい。使い魔すら上手く動かせない自身に呆れ、積もっていくのは不安と罪悪感だけ。

「しっかりしろ、俺。後ろ向きに考える時は本当に、本当に、最悪になった時だ」

自身を励ます為にも声に出して気合いを入れ直すイーナだったが、丁度廊下の曲がり角で腕を伸ばされて引き込まれた。
動揺の声に出す前に、自身に暗い影が落ちてきて目線を上げれば晴天の空のような青い瞳が最初に目に入るよう。

「イーナ、アイツら誰?」

イーナの上に影を作るのはレオンであり、両手を壁についてはイーナを腕の中に閉じ込める。

「何で制服じゃないの、何もされてないよね。どんな関係、どこの生徒」
「えっと、あの」
 
質問責めをしてくるレオンの一段と声は低い。ピリリっとした痺れの緊張感に、発する言葉がたじろぐ。

「イーナ、ちゃんと答えて」
「あの……2人は別になにもしていないです。その、今日会ったばかりで、知って」
「うん。それで」
「だから、心配されるようなことは……何もないです」
「うん、分かった」

アイツらとは、アルカナとヨモギの話で合っているのか。自身の起きた出来事だというのに疑うように、慎重に言葉を紡ぐくらい、レオンに責め立てられている。
あの2人が気に食わないのかもしれない。それでも、文句一つで済む話なのに壁の端に詰め寄られ凄まれている。

「あの俺……何かしましたか」
「うーん、何だろう」

指先を口元に当て考えるレオンはいつもの姿。考えた末に、ほんとうに軽く、ゆるりと、

「嫉妬かな」
「しっとですか? えっと……どう」

誰に対して?
レオンの言葉を繰り返しても、理解することを脳が拒絶する。
 
「だから、誰かと仲良く話さないで、近づかないで、俺嫉妬しちゃうから」

作られた笑顔のまま指先で優しく頬に触れてくるレオンが、何だか恐くて、背筋を突き刺すような寒気に襲われる。
魔物と対峙している時の気分。勝手に震えていく手を取られ、大きくて長い指が指の間に通ってはギュッと固く握られた。

「あの、何を言っているか……」
「全部壊したくなるから、全部奪いたくなるから」
 
重ねられた片手をレオンの方に寄せられては、手の甲に唇を当てられ、

「ねぇ、お願いだから俺だけを見てて」

軽くキスをされた。その瞬間、発火するように顔が熱くなり、目の前が渦巻くようにぐるぐるとする。

「こ、こ、これはえっと、ゆうじんてきな挨拶ですよね」

そうだ、この行為は特に意味はなくて友人に親愛を誓うものだと。きっと、異国だから文化の違いだと決めつけて、青い瞳から顔を逸らす。

「本当に、そう思う」
「そう、思いたいです」
「なら、残念」

「そうだ、この間さぁ」
生徒達がすぐ横を楽しそうに歩いて行く。

やばい、人が。

拘束された状態を見られればどう思われるか。イーナは思わず身を縮めたが、話に夢中なのか曲がり角にいる二人には気付かず通り過ぎて行く。
遠ざかっていく背中を見て良かったと安堵していると、絡め取られている手を上に持ち上げられ壁に押し付けられた。
何をするつもりなのか、焦って顔を再びレオンの方に向ければ、ドロドロとした赤く欲に染まった獣が笑う。

「レオン……先輩」
「イーナは、いつだって可愛いね」

顔を近づけられた。

初めては生暖かく柔らかい感触。甘酸っぱい味はしなかった。
初めてを簡単に奪われたその日、俺は黒兎の言ったことを全て台無しにするように、先輩相手に蹴りを入れるのだった。
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