学園最強と言われている術師に何故か好かれている

イケのタコ

文字の大きさ
18 / 29
2

16

しおりを挟む

会いに来ると言っても、赤髪の人がいつ来るのか分からない。約束したわけではないから、今日かもしれないし、明日かもしれない。
期待通りに赤髪のアルカナという人は来るのか不安だったが、

「大丈夫、必ず来るから。アイツのしつこさはここの誰よりも知っているつもりだから」

とヨモギには迷いはなかった。
その言葉を信じて学園に再び帰ってきたイナミは、一人校内の外を歩いていた。
ヨモギの方は、授業があるので一旦抜けている。そのためイナミは、ヨモギの授業が終わるまでの間は近くで暇を潰していた。

「アハッ、いたいた。探したぜ。あまりにもいないから寮に帰ったのかと思った」

木の上から陽気な笑声が降ってきて、イーナが顔を上げるとそこには赤髪をもった男子生徒が一人、揚々と木の枝に立っていた。ヨモギの言う通りに、アルカナは現れた。

「そうだ一応、自己紹介しておかないとな。俺の名前はアルカナ・カージナルだ、よろしく~」
「えっと……、俺の名前はイーナ・メーゲンハイムと言います」
「うんじゃあー、メーゲンハイムさんでいいか」
「どちらでも、呼びやすい方でいいです」
「うーん、イーナさんで」

自己紹介を終えたアルカナは木の上から飛び降りてきては、腰に備えている鎖鎌が鳴る。

「お互いの名前知ったしさ、良いよね。ーーー俺と戦ってよ。限界ギリギリまでさ、やろうよ。体が擦り切れるまでさぁー」
「ッ……」

鎖鎌を手に持ち替えるアルカナの目は狩をする獣のよう、イーナは喉に唾を詰めて音を立てて飲み込んだ。
 
明確な暴力を向けられている。
 
どちらが動けば戦いの合図。暴れる黒兎を抑えながらイーナは仰け反るように一歩、後ろ下がる。

「よしっと」

そして、軽い声と共に、赤髪のアルカナは棒のようなもので上から殴られた。
倒れていく赤髪を見届け、その背後に堂々と立っているのは槍を持ったヨモギである。

「やっと、捕まえた」

うつ伏せに倒れるアルカナの間に立っては、頬スレスレに槍を地面に突き立てる。

「ご協力感謝いたします」

ヨモギはイーナに頭を下げた。すると、下から息を漏らし悔しそうな声が聞こえる。
 
「気配を消す術か……ヨモギ、お前は授業に出てるはずだろ」
「ええ、いつもなら出ていますね。突然体調不良なったため休みました」

ヨモギは授業に行っていると見せかけて、ずっとアルカナが来るまで気配を消して待ち構えていた。案の定、アルカナはイーナの前に現れたので、ヨモギは背後から槍で殴ったというわけだ。

「図られたわけか」
「無駄に一緒にいるわけでは無いので。いい加減にしてください。生徒を付け狙うような事、何度謹慎処分になれば学ぶのですか」

槍を突き刺したまま話すヨモギは、一切アルカナから手を緩める事はない。それだけ危険人物だと言っているようだ。

「お前に関係ないだろ。俺は強いやつと戦いたいの、わかる?」
「関係あるから言っているんです。お前が何をやらかす度に私の評価も下がっている事を分かっていますか」
「なんでぇ」
「お前と常に一緒だからだぁ! その度に、その度に巻き添いを」
「そんな照れるなぁ、あぶなっ」

ヨモギに槍を持ち上げられ、顔に突き刺されそうになったアルカナは転がるように避ける。

「殺すぞ」
「槍、動かす前に言ってくれない」

避けたついでにヨモギから抜けたアルカナは、飛び跳ねて立ち上がり土埃を払う。

「戦えると思ったのに……残念」

肩を落とし大袈裟に落胆するアルカナはイーナと目線を合わせては、手に持っていた鎖鎌を腰に仕舞う。目線あった際にイーナの内心はドキッと跳ねて、戦わないといけないのかとハラハラと体が震えた。

「イーナさんは戦わないし、戦うな。いいか、許可のない武器や術等の使用は禁止だ」
「今のお前に言われなくないけど」
「うるさい」

地面から槍を引き抜くと、指先で回して先についた土を払う。

「イーナさん、ありがとうございます。貴方がいなければどうなっていたことか」
「ここに、立っていただけだから」
「あの時話しかけくださった事、貴方がいないと捕まえる事が出来なかった。だから、礼は必ずお返します」

再度、ヨモギは礼を言う。何もしていないとイーナは困惑しつつも、頬を指先で軽く掻いては照れる。

「あっ」

一瞬の気の緩み。それが仇となって腕の中で暴れていた黒兎を逃し、黒兎はある者に向かって迷う事なく一直線に走る。

「イッだぁ!!」

飛び跳ねてはアルカナの頭に被りついた。

「また、黒兎!」
「いいご身分じゃないですか」

草食の兎ではなく兎に似た魔物。噛まれたアルカナは痛みで必死に頭から離そうとわさわさと動く。何度目か、イーナは急いで黒兎を人から引き離した。

「ごめんなさい。血っが、すぐに治癒師を呼んできます」
「因果応報、包帯を自分で巻いてどうにかしろ」

黒兎に強く噛まれた事で頭から血を流すアルカナに対して、イーナとヨモギは真反対の対応した。

「目の前で、天使と悪魔するのをやめてくれない。いってぇ、ヨモギなんかない、このまま学校入ったら教師にまた追いかけ回される」

制服のポケットを探るとヨモギは無言でアルカナにハンカチを渡す。アルカナも礼は言わずに受け取り、流れてくる血を拭った。

「アルカナ、とりあえず文句は後で聴くから教師に謝りに行くぞ」
「今回は、俺じゃないんだけど」

口を尖らせるアルカナ。

「ただ謝って済むならいいだろ。そのあと、イーナさんの事をやりますから」
「そんな、いいですよ。俺のせいで、ずっとお二人に怪我をさせてますし」
「そんな気になさらずに。100パーセントコイツが悪いので」

「行くぞ」とヨモギに首根っこを掴まれたアルカナは仕方なく足を動かしてついて行く。

「イーナさん、またね」
「えっ、うんまた」

どうにかイーナの方に体を向けながら、大きく手を振るアルカナ。そこには敵意はなく、まるで無垢な子供のようだった。

恐い人だけどお茶目な人だなと、去って行く二人に手を振り返した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は未定 ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い ・本格的に嫌われ始めるのは2章から

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

α主人公の友人モブαのはずが、なぜか俺が迫られている。

宵のうさぎ
BL
 異世界に転生したと思ったら、オメガバースの世界でした。  しかも、どうやらここは前世の姉ちゃんが読んでいたBL漫画の世界らしい。  漫画の主人公であるハイスぺアルファ・レオンの友人モブアルファ・カイルとして過ごしていたはずなのに、なぜか俺が迫られている。 「カイル、君の為なら僕は全てを捨てられる」  え、後天的Ω?ビッチング!? 「カイル、僕を君のオメガにしてくれ」  この小説は主人公攻め、受けのビッチング(後天的Ω)の要素が含まれていますのでご注意を!  騎士団長子息モブアルファ×原作主人公アルファ(後天的Ωになる)

処理中です...