学園最強と言われている術師に何故か好かれている

イケのタコ

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24 探して

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事務の人と相談し、特別に一日だけ弟が泊まれる事となった。 

その前に片付けないといけない問題がある。
使い魔に顔面蹴られてから、笛で呼んでも灰色の兎だけ見ていない。
黒兎達は自身の感情で勝手に動くとはいえ、必ず笛の命令には従い、こちらを攻撃する事はない。灰色の兎は笛の命令に従わないし、一度とはいえこちらを攻撃してきた。
やはり、劣化したとしか思えない。
今後、灰色の兎がもっと増えるとなると、もう自身では制御できず。学園どころか、国から追い出されてしまう。
早く見つけて対処しないと、思い立ち数日が経っていた。

黒兎達にも命令して探させ、ゴミ箱、棚や、兎しか入れない隙間など、学園のありとあらゆる所を探したが見つからず。もう学園の外に出たのかと誤ったが、不思議とまだ近くにいると否定する。
あと、なんとなく付かず、離れず、灰色の兎にずっと見張られているような気がするのは、憂慮しているからだろうか。

「どこに行ったんだ。出てこーい」

建物との隙間に話しかけても、何も出てこなければ、自身の声が響くだけ。

「レオン様、最近ご気分が優れないようにお見えします、一度休まれては」
「こちらの心配は無用だ」
「ですが」
「そんな事を気にしていないで、自身の役割を専念しろ」
「はい」

向こう側から聞こえくるのは、レオンとカナリヤの声。レオンという名が発せられた時点で、壁の角に隠れたイーナは息をころす。

「どうかされましたか」
「……いや、なんでもない。行こう」

レオンはその場に少し止まりイーナが隠れた壁の辺りを見たが、頭を横に振ってカナリヤと共に去っていく。
二人が見えなくなったところで、イーナは肩を下ろして息を吐いた。
また隠れてしまったと思ってしまうほどに、あれから顔を見られれば自身も灰色の兎のように身を隠して、逃げている。
立て続けに起きた出来事が重くかさなり、整理がついてからと避けていたら、話すことが億劫になっていた。
 
でも、あんな事があってどういう顔で会話すれば分からない。このまま、逃げ切れないかなーーー。イーナは指先で自身の唇に触れては、頬を少し赤らめ。
ザラザラとか一切なくて、柔らかくてフニフニでと思い出した時点で、頭を壁に押し付ける。

「落ち着けイーナ、お前はここに何しに来た。兄は勉強をするためにわざわざ来たんだろ。だから、それは違う、絶対に違うからな」

傍から見れば壁にぶつぶつと呟く変人となっていたが、通り過ぎていく生徒達の会話で目が覚める。

「だから、兎に踏まれたんだって」
「はいはい、負け惜しみの嘘はいいから。女に振られたんだろ」
「本当だって。良いところだったのに、兎が空から降ってきて全部台無しになったんだ。女には逃げられるし」
「はいはい」

兎に踏まれたと訴える生徒。その謎の兎は、灰色の兎だと確信したイーナは生徒の前に飛び出した。

「その兎、どこで見たんだ!」
「えっ、えっと、あっちの方に逃げってたけど」

勢いに圧倒された生徒達、震えながらも兎が向かった方角を指す。

「そう、ありがとう!」
「あっ、はい」

指した方向に走っていくイーナ。なんだあれはと、生徒二人はポカーンと口を開け、イーナという嵐が過ぎ去っていくのを見送った。





 



本当にいた! 

生徒が指した方角に走っていくと、確かに灰色の兎が飛び跳ね、ちょうど窓から校内に入って行くのが見えた。
イーナも、少し戻って扉から校内に入る。
校内に入れば灰色のウサギが窓から飛び降りるところで、着地した途端に顔をこちらに向ける。
 
「もう、逃さないからな」

逃さないように窓側から攻めれば、魔物と人間の追いかけっこが始まった。
廊下を滑るように走る一人と一匹。足の速さは灰色の兎の方が断然早く、全力で追いかけてもいずれは引き離される。
イーナも、それは分かっていたから胸元から笛を出しては軽く吹く。
すると、どこからやって来たのか黒兎達が現れては、灰色の兎の退路を塞ぐ。
それでも灰色の兎は次々飛んでくる黒兎達を上手く避けていく。
捕まえる事は出来ないが、その一手間のおかげでイーナは兎達についていけるし、建物から逃げ出す余裕を無くしていく。
だから、始めた時からこの対決は決着がついていた。

「早く走れるからといっても、流石に学園内の地図は把握できてないだろ」

追い詰めた先は、行き止まり。灰色の兎は道がないことに気づき急停止する。
後ろには俺と黒兎、前には壁。困惑したように辺りを見渡し、もう行き場がないと悟り灰色の兎は振り向いて、その場に堂々と座る。

「さて、もういいんだろ。追いかけっこはここまでだ」

俺はゆっくりと近づき捕まえようとしたが、灰色の兎は後ろ足に力を込めた。
そして、地面を蹴っては球のように突撃してきた。
また顔を蹴られる。同じ轍を踏まないと顔あたりに手を構えたが、灰色の兎は球のように丸くなり顔の横をスルッと通り過ぎていく。

「あっ」

背中側で綺麗に着地する音。
 
「ふんっ」
振り向くと、灰色の兎はこちらに目線を向け嘲笑うかのように息を鳴らしては、背中を向けて再び走り出す。

「~~~っ」
イーナは、言葉にならない怒りが込み上げてくるのだった。
 
どんなに自身の使い魔を嫌悪しても、自分が捕まえなければいけないので走る。
何を目的に灰色の兎は逃げ回り、イーナを避けるのか。いつまで続くか分からない追いかけっこは、イーナの方が体力が尽きかけていた。
 
大勢の生徒に紛れられては、また見失ってしまう。そうなる前に決着をつけたいと思っていたら、丁度十字路に差し掛かると灰色の兎は両足を地面につけてブレーキをかける。
十字路の真ん中に止まったと思えば、横を向き見上げた。
まるで見惚れているような動き。そんな数秒の時間も見逃さず、滑り込むように灰色の兎の体を掴む。

「やっと、捕まえたぁ。散々、暴れやがって」

立ち上がり、逃げないように兎を腕で囲う。

「イーナ……」

弱々しく小さな声に聞こえイーナが横を向けば、レオンと目が合った。

「先輩っ、ーーーいてッ」

曲がった所にまさか先輩がいると思わず、呆気にとられて腕の力が緩み、少し自由になった灰色の兎に腕を噛まれた。
さらに緩んだところを、暴れて腕の中から脱出する。

「またっ、この」

今日で何度目か。再び逃げていく灰色の兎を追いかけようとしたところ、グッと後ろから腕を引っ張られた。

「あの、レオン先輩、離してください」
「……」
「この前の事はすいませんでした。あの、責任はちゃんと取りますから……今は」

レオンの手を弾いて、俺は灰色の兎を追いかけた。
……まだ向き合える気がしなかった。
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