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2 (薮内)
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『最近、ノリ悪いな』と書かれたのはいつ頃か。
梅子という人が刺された事件から、夜に遊びに行くのが途端に面倒になった。
決して心が病んだとかではなく、何もかも無意味だったと気がついたからだ。危険な夜遊びをしようと、見た目を派手にしようが、親も、誰も見てくれないし、俺が欲しかったのは違うものだったと、充分理解できたから着飾るのはやめた。
素のままでいよう。
そんな考えを鼻で笑いながら、沢山つけていたピアスを外し、買ってきた染め粉を手にして洗面所の鏡と向き合った。
*
世莉を迎えに行った帰り道、夕焼けに照らされながら電車の中で揺られていた。俺と、柊悟と、世莉の三人揃って横並びで座る。学校で疲れた世莉は柊悟にもたれ掛かり寝ていた。
「随分、すっきりしたね」
黒髪になった俺の横髪をかきあげるのは柊悟。
「ピアスも取って、不良はやめたの」
「格好だけでは意味がないと分かったので、やめました」
「結構、似合ってたのに」
「それに、あの格好保つの結構面倒なんですよね」
「あはは、全く君は」
髪から手を下ろしては柊悟は乾いた笑いを飛ばす。
「心境変化があったようだし、弥生にとっては良いことなのかな」
「……そうですね。親が見てくれないとか、こんなのは世間のせいだとか、ずっと誰かに怒りをぶつけてた。でも、それは間違いだったと気づきましたから」
「それはよかった」
そう、俺の問題は親とか、世間の評価とかではなかった。ただ寂しくて、暗闇を当てなく彷徨って、あの人達を見つけられなかったことがただ悲しかった。悲しかった理由が見つけられたから、もう俺は大丈夫だ。
「だって探してたものは、ずっと近くにあったんですよ。こういうの灯台下暗しって言うんでしたか」
「よく分からないけど、探し物が見つかって良かったよ」
「はい」
自分でも何を言っているか分からないのでこの話はやめるが、この人なら分かってくれるはずだ。痛みや、悲しみは同じだと思うから。
だから、これは言っておかなくてはいけない。
「赤橋には、雪久がいるので駄目ですよ」
「……なんの、話」
「分かりますよ。こう気が合って、話しやすいのは分かりますけど、横取りは人としてどうかと思うので、一応言っておかないと思って」
長い沈黙だった。一駅通り過ぎたくらいに、柊悟は赤い瞳を細めては俺を見る。
「まって、弥生は私のことをなんだと思ってるの。赤橋君は高校生だし、男の子だし、色々間違っているし、色々無いからね」
「間違ってませんよ。だって、俺が話しやすくて、傍にいたいと思うんですよ。柊悟さんがそう思わないはずないじゃないですか」
「すごい、決めつけ。そういうこというのは良くないよ」
「柊悟さんって素直じゃ無いくせに、こう、嫁に出すってなったら全力で止めそうだし、面倒そう」
「……」
「でも、赤橋の恋人が雪久ならギリセーフと思ったりしてますよね」
柊悟は表情を隠すようにこめかみを手で押さえては「一度、黙ろうか」と静かに怒る。
だが、赤橋と話している時嬉しそうだったし、俺は間違ってないはずなので問題ない。
「弥生は年々、堂々してきて父親に似てきたね。昔はたどたどしくて母親似で可愛かったのに」
「それは残念ですね」
「ほんとにね。でも、私達には君が必要だったんだと理解したよ。無茶苦茶になってしまったことが今更後悔するくらいには」
「?」
色々含んだ言い方は柊悟は何を思い出したのだろうか。
「とりあえず、男子高校生には手出さないでくださいね。好きなのは分かりますけど」
「……出さないってば。だから、私をなんだと思ってるの」
柊悟は頭を抱えるのだった。
梅子という人が刺された事件から、夜に遊びに行くのが途端に面倒になった。
決して心が病んだとかではなく、何もかも無意味だったと気がついたからだ。危険な夜遊びをしようと、見た目を派手にしようが、親も、誰も見てくれないし、俺が欲しかったのは違うものだったと、充分理解できたから着飾るのはやめた。
素のままでいよう。
そんな考えを鼻で笑いながら、沢山つけていたピアスを外し、買ってきた染め粉を手にして洗面所の鏡と向き合った。
*
世莉を迎えに行った帰り道、夕焼けに照らされながら電車の中で揺られていた。俺と、柊悟と、世莉の三人揃って横並びで座る。学校で疲れた世莉は柊悟にもたれ掛かり寝ていた。
「随分、すっきりしたね」
黒髪になった俺の横髪をかきあげるのは柊悟。
「ピアスも取って、不良はやめたの」
「格好だけでは意味がないと分かったので、やめました」
「結構、似合ってたのに」
「それに、あの格好保つの結構面倒なんですよね」
「あはは、全く君は」
髪から手を下ろしては柊悟は乾いた笑いを飛ばす。
「心境変化があったようだし、弥生にとっては良いことなのかな」
「……そうですね。親が見てくれないとか、こんなのは世間のせいだとか、ずっと誰かに怒りをぶつけてた。でも、それは間違いだったと気づきましたから」
「それはよかった」
そう、俺の問題は親とか、世間の評価とかではなかった。ただ寂しくて、暗闇を当てなく彷徨って、あの人達を見つけられなかったことがただ悲しかった。悲しかった理由が見つけられたから、もう俺は大丈夫だ。
「だって探してたものは、ずっと近くにあったんですよ。こういうの灯台下暗しって言うんでしたか」
「よく分からないけど、探し物が見つかって良かったよ」
「はい」
自分でも何を言っているか分からないのでこの話はやめるが、この人なら分かってくれるはずだ。痛みや、悲しみは同じだと思うから。
だから、これは言っておかなくてはいけない。
「赤橋には、雪久がいるので駄目ですよ」
「……なんの、話」
「分かりますよ。こう気が合って、話しやすいのは分かりますけど、横取りは人としてどうかと思うので、一応言っておかないと思って」
長い沈黙だった。一駅通り過ぎたくらいに、柊悟は赤い瞳を細めては俺を見る。
「まって、弥生は私のことをなんだと思ってるの。赤橋君は高校生だし、男の子だし、色々間違っているし、色々無いからね」
「間違ってませんよ。だって、俺が話しやすくて、傍にいたいと思うんですよ。柊悟さんがそう思わないはずないじゃないですか」
「すごい、決めつけ。そういうこというのは良くないよ」
「柊悟さんって素直じゃ無いくせに、こう、嫁に出すってなったら全力で止めそうだし、面倒そう」
「……」
「でも、赤橋の恋人が雪久ならギリセーフと思ったりしてますよね」
柊悟は表情を隠すようにこめかみを手で押さえては「一度、黙ろうか」と静かに怒る。
だが、赤橋と話している時嬉しそうだったし、俺は間違ってないはずなので問題ない。
「弥生は年々、堂々してきて父親に似てきたね。昔はたどたどしくて母親似で可愛かったのに」
「それは残念ですね」
「ほんとにね。でも、私達には君が必要だったんだと理解したよ。無茶苦茶になってしまったことが今更後悔するくらいには」
「?」
色々含んだ言い方は柊悟は何を思い出したのだろうか。
「とりあえず、男子高校生には手出さないでくださいね。好きなのは分かりますけど」
「……出さないってば。だから、私をなんだと思ってるの」
柊悟は頭を抱えるのだった。
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読んでくださりありがとうございます😊
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コメントありがとうございます
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コメントありがとうございます!
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