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12 夢
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連絡を消してから数日が経ったが、雪久と会っていない。
学校を知られている以上、急に連絡を断てば直接文句を言われると構えていた音沙汰がない。
もう会えないのか。
自ら縁を切ったのだから仕方ないと頭では理解しているのに、心に隙間が空いて冷たい隙間風が通っていく。
しっかりしろ、俺。
あの日、海北に言われたこともそうだが、長年の遺物を取り払うために逃げてきたのだろと、目の前に置いてあったジュースに口をつけては勢い良く飲み込んだ。
「あっ……」
騒がしい部屋の中で、斜めに座っていた男が抜けた声と共にこちらを気まずそうに見ていた。
そのジュースの味は甘くて苦かった。
*
……なるほど。
と思ったのはファミレス帰り。また彼女、綾に誘われて集まりに参加したものの、今日はタチが悪い奴が紛れていたようだ。
遊びだったのか、本気だったのか、一体誰に飲ませる気だったのか、足が右に出したのに左へ、左が右へ、おぼつかない足取りになってきた。
頭ら左右に揺れて中心が取れなくなり、暑いわけではないのに汗が流れ体に熱がこもっていく。
さらには、景色が回り始めて気持ち悪くなってきた。
顔は真っ赤、足元はフラフラ、こんな状態で家に帰れば勘違いされて親に怒られるのが目に見えている。
最悪、遊びにいくのを禁止にされるかもしれない。
どうしようかと悩んでいたら、丁度、公園を通りかかり少し休んでから帰ることに決めた。
自販機で水を買い、腰から落ちるようにベンチに腰掛けた。
陽が落ちて行く。だんだんと橙色から深い青に変わっていく空を眺めながら、ペットボトルの口を開けては水を舐める。
丁度、心地よいくらいの冷たい風が流れ込んできて目を瞑り、ペットボトルを持っていた腕を下す。
だるい背をベンチに預け。ここのまま眠りそうと煽られていたら、隣に誰かが腰を下ろした。
足元は浮き、薄茶髪の毛は跳ね、ご機嫌良く座ったのは団子屋の娘だった。
「あれ? 赤橋くんだよね。偶然だね」
こちらに気がついた陽菜はにっこりといつもの笑顔で話しかけてきた。
黄色い着物の裾が揺れ……、目元を擦れば白いワンピースを着た女の子に戻っていた。
今のは、幻覚?
「どうしたの、大丈夫? なんだか、顔が赤い気がする」
返事が遅れたせいで、心配そうにこちらの顔を覗いてくる陽菜。体が重く、逃げる気力もないので、愛想笑いで返した。
「ぜんぜん平気。さっきまで友人と遊んでいたから、疲れただけだよ」
「そう、それなら良いんだけど」
姿勢を戻す彼女の顔には、まだ不安が残っている。
「陽菜、お待たせ」と近づいてきたのは陽菜の友人だったか、その女の子はお菓子が入ったビニール袋を手に下げていた。
陽菜の友人は俺を見た途端に、目を見開いては怪訝そうに目を細くする。
「って、知らない男……陽菜、またストーカーとかじゃないよね」
「違うよ。勘違いしないで、この人は私の命の恩人です」
「本当に? 前もそういうこと言っていたよね。厳しい言い方するけど、私は何でもかんでも信じるのは良くないと思うよ」
「だから~違うって、良い人なの。兄さんと同じこと言わないでよ」
「雪久が? 雪久に心配されているようじゃ、まだまだね」
困ったように頬を膨らませた陽菜は、友人を指で突く。
友人の言っていることはその通りで、形は違うが椿であり、日の浅い他人、もう少し警戒した方が良いと本人ながら思う。
ほんと……前世では殺しかけて、今世では助けて命の恩人と呼ばれるなんて、皮肉なものだ。
「みんな、過保護なんだから、私は一人で大丈夫だから」
「はい、はい。そろそろ、家に帰ろ。帰る頃には陽が落ちてるよ」
「だね。もう、陽が暮れるね……」
夜になる時間かと、ベンチから陽菜は立ち上がるのを見ていたら、一歩前に行きこちらに振り向いた。
「あの、私のお家近いんだけど、一緒に来ない」
「えっ、いや」「陽菜、なにを言って」
陽菜の突飛な提案は、俺と陽菜の友人は同時に困惑と驚きの声を上げさせた。
陽菜の提案は頷くことは出来ない。
「どう見たって、気分悪そうだし。少しだけでも、休んで帰らない?」
「いや、本当に大丈夫だから。俺も家近いし、もう少しすれば、帰るから」
「でも、このまま夜になりそうだし、一人はだめだよ」
「その前に、帰るから安心してよ。ほら、友達さん待っているから行って」
「でも」と陽菜は引き下がらなかったが、友人が彼女の手首を掴んで「彼も、そう言っているし、逆に邪魔してるから」引き離しくれた。
友人の説得のおかげで、今度こそ陽菜は自宅に足を向け。
それでも後ろを何度も確認するから、いつでも誰かと連絡できるとスマホを持ちながら手を振った。
出来るだけ背筋を伸ばし、二人の背中が見えなくなったところで、やっと一人になる事ができた俺はベンチの膝掛けに項垂れた。
ーーーここで少し寝ても怒られないよな。親には、ちゃんと遅くなるって連絡しているし。
夕暮れを浴びながら、ゆっくりと瞼を閉じる。
「ーーーあらた。赤橋新、聞こえるか」
目を閉じていたら、休む暇もなく下の方から呼ぶ声が耳に入る。
面倒だなと、目を薄く開けて見えてきた景色はすっかり暗くなった公園と、オレンジ色の電灯に光る銀色髪、雪久がいた。
座る前で腰を下ろし、真っ黒な瞳がこちらを伺うが、驚くことはない。
何故なら、高校生とは思えない大人びた顔に、紺色の着物を着て、長い髪を後ろで束ねていたからだ。
現代の雪久ではないし、これは現実ではなく夢だと理解した。
理想できた夢。だから俺の指先をやんわりと包み込んでは穏やかな表情で尋ねくる。
「手が冷たいな。新、この指が何本に見える」
雪久は目の前で手を掲げるが、雪久自体がぶれて残像で二人いるように見える。
「二体……」
「分かった。だいぶ、きてるな。立てるか」
指先から腕に手を回し雪久が立ち上がり、俺をどこかに連れて行こうするから首を横に振り、後ろに体重をかけた。
「やだ、ここにいる」
「……と言われてもな。もう、夜なんだが」
「俺は一人で帰れる……、アンタは無視して……皆のところに帰れば良い……」
「……面倒なこと言い始めたな。何があったかは知らないが、いい加減帰るぞ」
どうしようか、そんな心の声が聞こえてくるかのように後頭部を掻く雪久。
自分が面倒……なのは分かっている。
この人の世界に俺は要らないけれど、それでも一緒にいたくて、この人を守りたいとずっと想っている。
何故俺は俺なのか。ずっと側にいたいのにいれないのが、苦しくて、痛くて、目尻が熱くなる。
「って、おい。泣くなよ、急にどうした」
「ないっ……てない。もう、あっちに行ってください、一人でいたい」
「……」
頬から熱い涙の粒が伝っていく。夢の中なのに恥ずかしくなっては、体を丸くして顔を伏せる。
夢でも雪久から背き。さっさとこんな夢から覚めたいのに、現実だろうと、夢だろうとこの人前だと涙腺が崩壊してしまう。
そうやって塞ぎこんでいると、雪久は疲れたようにため息を吐きながら距離を詰めてきては、俺の頭に触れる。
近づく気配に何か言われると体がビクッと飛び跳ねたが、触れた手は柔らかく温かった。
「俺……人と会話するのが苦手というか言葉選びが下手なんだ。だから。人の慰め方がいまいち分からなくてな。友人にも、言葉には気をつけろと散々言われている」
言葉を詰まらせながら雪久は乱れた俺の髪の毛を一本、一本、解くように指で撫でてくる。
「……自分なりに努力してきたつもりだが、やっぱり駄目だな」
会話がくそ下手なの、随分昔から知っている。
それでも、涙を止めようと頭を撫でる優しい手が、絡まって詰まっていた息が自然と解けていく。
「俺のこと、信用ないか」
と訊いてきたから頷く。
「だろうな……、それはそれとしてだ。こんな所に知人を置いていくほど、俺は薄情じゃないからな」
再び腰を下ろす雪久は、顔を伏せる俺を構うことなく手を取った。
「心配だから、一緒に来てくれるか」
「……」
また、あの言葉をくれる。
俺がずっと欲しかった言葉を、あの人は差し出してくれる。
貴方は何も思ってなかったのかもしれないけど、あの日、あの時に、私は救われたのだと知ってほしい。
俺は涙に濡れた顔を上げて、深く頷いた。
「なら、帰るぞ」
彼は嬉しそうに俺の腕を取り、共に立ち上がる。
立ち上がった途端に体に力は入らず倒れそうになるけれど、すかさず雪久が腕と腰を掴んで支えてくれる。
「背負った方が早いな」
俺の体を支えながら雪久は後ろを向き、倒れてくる体を背中で受け止めては俺を軽々と背負う。
ぶらりと宙に浮く足、お香のような懐かしい匂いが鼻にくすぶり、穴が空いていた胸が満たされていく。
「どこでもいいから、しっかりと持てよ」
夢の中くらい、身勝手に幸せになってもいいよなと俺は肩に手を回しては背中に引っ付いた。
「お前、熱いな。熱あるんじゃないか」
「うん……」
「帰ったら体温を測らないと、だな。いや、その前にお前の親に連絡か」
「はい……」
掴んだのを確認すると一度だけ揺らし、体勢を整えて雪久はゆっくりと静かに歩き始める。
暖かい。夢特有のふんわりとした空気の中で、再び暗闇に引き込まれるのだった。
学校を知られている以上、急に連絡を断てば直接文句を言われると構えていた音沙汰がない。
もう会えないのか。
自ら縁を切ったのだから仕方ないと頭では理解しているのに、心に隙間が空いて冷たい隙間風が通っていく。
しっかりしろ、俺。
あの日、海北に言われたこともそうだが、長年の遺物を取り払うために逃げてきたのだろと、目の前に置いてあったジュースに口をつけては勢い良く飲み込んだ。
「あっ……」
騒がしい部屋の中で、斜めに座っていた男が抜けた声と共にこちらを気まずそうに見ていた。
そのジュースの味は甘くて苦かった。
*
……なるほど。
と思ったのはファミレス帰り。また彼女、綾に誘われて集まりに参加したものの、今日はタチが悪い奴が紛れていたようだ。
遊びだったのか、本気だったのか、一体誰に飲ませる気だったのか、足が右に出したのに左へ、左が右へ、おぼつかない足取りになってきた。
頭ら左右に揺れて中心が取れなくなり、暑いわけではないのに汗が流れ体に熱がこもっていく。
さらには、景色が回り始めて気持ち悪くなってきた。
顔は真っ赤、足元はフラフラ、こんな状態で家に帰れば勘違いされて親に怒られるのが目に見えている。
最悪、遊びにいくのを禁止にされるかもしれない。
どうしようかと悩んでいたら、丁度、公園を通りかかり少し休んでから帰ることに決めた。
自販機で水を買い、腰から落ちるようにベンチに腰掛けた。
陽が落ちて行く。だんだんと橙色から深い青に変わっていく空を眺めながら、ペットボトルの口を開けては水を舐める。
丁度、心地よいくらいの冷たい風が流れ込んできて目を瞑り、ペットボトルを持っていた腕を下す。
だるい背をベンチに預け。ここのまま眠りそうと煽られていたら、隣に誰かが腰を下ろした。
足元は浮き、薄茶髪の毛は跳ね、ご機嫌良く座ったのは団子屋の娘だった。
「あれ? 赤橋くんだよね。偶然だね」
こちらに気がついた陽菜はにっこりといつもの笑顔で話しかけてきた。
黄色い着物の裾が揺れ……、目元を擦れば白いワンピースを着た女の子に戻っていた。
今のは、幻覚?
「どうしたの、大丈夫? なんだか、顔が赤い気がする」
返事が遅れたせいで、心配そうにこちらの顔を覗いてくる陽菜。体が重く、逃げる気力もないので、愛想笑いで返した。
「ぜんぜん平気。さっきまで友人と遊んでいたから、疲れただけだよ」
「そう、それなら良いんだけど」
姿勢を戻す彼女の顔には、まだ不安が残っている。
「陽菜、お待たせ」と近づいてきたのは陽菜の友人だったか、その女の子はお菓子が入ったビニール袋を手に下げていた。
陽菜の友人は俺を見た途端に、目を見開いては怪訝そうに目を細くする。
「って、知らない男……陽菜、またストーカーとかじゃないよね」
「違うよ。勘違いしないで、この人は私の命の恩人です」
「本当に? 前もそういうこと言っていたよね。厳しい言い方するけど、私は何でもかんでも信じるのは良くないと思うよ」
「だから~違うって、良い人なの。兄さんと同じこと言わないでよ」
「雪久が? 雪久に心配されているようじゃ、まだまだね」
困ったように頬を膨らませた陽菜は、友人を指で突く。
友人の言っていることはその通りで、形は違うが椿であり、日の浅い他人、もう少し警戒した方が良いと本人ながら思う。
ほんと……前世では殺しかけて、今世では助けて命の恩人と呼ばれるなんて、皮肉なものだ。
「みんな、過保護なんだから、私は一人で大丈夫だから」
「はい、はい。そろそろ、家に帰ろ。帰る頃には陽が落ちてるよ」
「だね。もう、陽が暮れるね……」
夜になる時間かと、ベンチから陽菜は立ち上がるのを見ていたら、一歩前に行きこちらに振り向いた。
「あの、私のお家近いんだけど、一緒に来ない」
「えっ、いや」「陽菜、なにを言って」
陽菜の突飛な提案は、俺と陽菜の友人は同時に困惑と驚きの声を上げさせた。
陽菜の提案は頷くことは出来ない。
「どう見たって、気分悪そうだし。少しだけでも、休んで帰らない?」
「いや、本当に大丈夫だから。俺も家近いし、もう少しすれば、帰るから」
「でも、このまま夜になりそうだし、一人はだめだよ」
「その前に、帰るから安心してよ。ほら、友達さん待っているから行って」
「でも」と陽菜は引き下がらなかったが、友人が彼女の手首を掴んで「彼も、そう言っているし、逆に邪魔してるから」引き離しくれた。
友人の説得のおかげで、今度こそ陽菜は自宅に足を向け。
それでも後ろを何度も確認するから、いつでも誰かと連絡できるとスマホを持ちながら手を振った。
出来るだけ背筋を伸ばし、二人の背中が見えなくなったところで、やっと一人になる事ができた俺はベンチの膝掛けに項垂れた。
ーーーここで少し寝ても怒られないよな。親には、ちゃんと遅くなるって連絡しているし。
夕暮れを浴びながら、ゆっくりと瞼を閉じる。
「ーーーあらた。赤橋新、聞こえるか」
目を閉じていたら、休む暇もなく下の方から呼ぶ声が耳に入る。
面倒だなと、目を薄く開けて見えてきた景色はすっかり暗くなった公園と、オレンジ色の電灯に光る銀色髪、雪久がいた。
座る前で腰を下ろし、真っ黒な瞳がこちらを伺うが、驚くことはない。
何故なら、高校生とは思えない大人びた顔に、紺色の着物を着て、長い髪を後ろで束ねていたからだ。
現代の雪久ではないし、これは現実ではなく夢だと理解した。
理想できた夢。だから俺の指先をやんわりと包み込んでは穏やかな表情で尋ねくる。
「手が冷たいな。新、この指が何本に見える」
雪久は目の前で手を掲げるが、雪久自体がぶれて残像で二人いるように見える。
「二体……」
「分かった。だいぶ、きてるな。立てるか」
指先から腕に手を回し雪久が立ち上がり、俺をどこかに連れて行こうするから首を横に振り、後ろに体重をかけた。
「やだ、ここにいる」
「……と言われてもな。もう、夜なんだが」
「俺は一人で帰れる……、アンタは無視して……皆のところに帰れば良い……」
「……面倒なこと言い始めたな。何があったかは知らないが、いい加減帰るぞ」
どうしようか、そんな心の声が聞こえてくるかのように後頭部を掻く雪久。
自分が面倒……なのは分かっている。
この人の世界に俺は要らないけれど、それでも一緒にいたくて、この人を守りたいとずっと想っている。
何故俺は俺なのか。ずっと側にいたいのにいれないのが、苦しくて、痛くて、目尻が熱くなる。
「って、おい。泣くなよ、急にどうした」
「ないっ……てない。もう、あっちに行ってください、一人でいたい」
「……」
頬から熱い涙の粒が伝っていく。夢の中なのに恥ずかしくなっては、体を丸くして顔を伏せる。
夢でも雪久から背き。さっさとこんな夢から覚めたいのに、現実だろうと、夢だろうとこの人前だと涙腺が崩壊してしまう。
そうやって塞ぎこんでいると、雪久は疲れたようにため息を吐きながら距離を詰めてきては、俺の頭に触れる。
近づく気配に何か言われると体がビクッと飛び跳ねたが、触れた手は柔らかく温かった。
「俺……人と会話するのが苦手というか言葉選びが下手なんだ。だから。人の慰め方がいまいち分からなくてな。友人にも、言葉には気をつけろと散々言われている」
言葉を詰まらせながら雪久は乱れた俺の髪の毛を一本、一本、解くように指で撫でてくる。
「……自分なりに努力してきたつもりだが、やっぱり駄目だな」
会話がくそ下手なの、随分昔から知っている。
それでも、涙を止めようと頭を撫でる優しい手が、絡まって詰まっていた息が自然と解けていく。
「俺のこと、信用ないか」
と訊いてきたから頷く。
「だろうな……、それはそれとしてだ。こんな所に知人を置いていくほど、俺は薄情じゃないからな」
再び腰を下ろす雪久は、顔を伏せる俺を構うことなく手を取った。
「心配だから、一緒に来てくれるか」
「……」
また、あの言葉をくれる。
俺がずっと欲しかった言葉を、あの人は差し出してくれる。
貴方は何も思ってなかったのかもしれないけど、あの日、あの時に、私は救われたのだと知ってほしい。
俺は涙に濡れた顔を上げて、深く頷いた。
「なら、帰るぞ」
彼は嬉しそうに俺の腕を取り、共に立ち上がる。
立ち上がった途端に体に力は入らず倒れそうになるけれど、すかさず雪久が腕と腰を掴んで支えてくれる。
「背負った方が早いな」
俺の体を支えながら雪久は後ろを向き、倒れてくる体を背中で受け止めては俺を軽々と背負う。
ぶらりと宙に浮く足、お香のような懐かしい匂いが鼻にくすぶり、穴が空いていた胸が満たされていく。
「どこでもいいから、しっかりと持てよ」
夢の中くらい、身勝手に幸せになってもいいよなと俺は肩に手を回しては背中に引っ付いた。
「お前、熱いな。熱あるんじゃないか」
「うん……」
「帰ったら体温を測らないと、だな。いや、その前にお前の親に連絡か」
「はい……」
掴んだのを確認すると一度だけ揺らし、体勢を整えて雪久はゆっくりと静かに歩き始める。
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