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いつもの事(斗希視点)
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まさかこんな形で陽依の両親に会う事になるとは思いもしなかった。
親父さんに連れ出され、玄関から外に出た俺は何を言われるかと内心気が気じゃなく、今までした事がないくらい緊張してた。
最初は陽依からとはいえ結果的に手放せなくなったのは俺だから、男同士に関してはぶん殴られる覚悟はしてる。むしろそうならねぇ方がおかしいっつか。
俺からは何も言えなくて親父さんが話すのを待っていたら、扉に寄りかかった親父さんは深く息を吐いて口を開いた。
「いきなり申し訳ない。どうしても君と話がしたかったんだ」
「いえ、俺も同じなので」
なまじ住んでいる場所が遠い分、そう簡単に会いに行けない事は陽依から聞いて知っていた。俺自身なるべく早く挨拶もしたいとは思ってたし、突然だったとはいえ機会を設けて貰えたのは有り難い。
陽依の両親だからこそ普段よりも態度に気を付けねぇと。
「君と陽依が付き合い始めて1年半は経ったか?」
「そうですね」
「正直、すぐに別れると思っていた。男同士、そう長くは続かんだろうと。ああ、別に同性愛を否定している訳じゃない。ただ陽依はともかく、もし君が興味本位だったとしたらすぐに飽きるんじゃないかと思ったんだ」
「⋯⋯⋯」
興味本位というか、寄ってくる女共の盾にしていたとはとても言えない。
気まずくなって黙ってたら、親父さんは腕を組み俺を見上げてきた。
「だがこうして休日に一緒にいるところを見て、君がちゃんと、あの子を本気で好いてくれてるんだと分かって安心した」
最初よりは穏やかにも見える表情に、緊張とかじゃなく親父さんが俺を警戒していたんだって分かった。
そりゃあんだけ素直で純粋な息子が、こんな見た目からしてガラの悪ぃ男と付き合ってるっつったら気が気じゃねぇよな。心配にもなるし、騙されて遊ばれてんじゃねぇかって不安にもなるか。
「あの子には幸せになって欲しいんだ。その相手が男だろうと女だろうと、あの子が笑っていられる場所を作ってくれるなら何ら問題はない。風峯くんは、それが出来るか?」
「出来ます。むしろ、俺しか出来ないと思ってます」
俺がどれだけ陽依に惚れ込んでるか当然親父さんは知らないにしろ、少なくとも一生を添い遂げるくらいの気持ちで陽依の隣にいるんだ。
そこらへんの奴には絶対負けねぇし、負ける気もしねぇ。
親父さんを真っ直ぐ見返し断言すれば、親父さんは僅かに目を見瞠ったあと声を上げて笑った。
「はははっ、そうか、言い切るか。なら大丈夫だな。⋯陽依の事、よろしく頼む」
「はい」
最初、2人でと連れ出された時はどうなる事かと思ったけど、全部じゃなくても親父さんの不安は取り除けたようで安堵する。
頼むとも言われたし、これは親公認って事でいいんだよな?
にしても、こうして分かろうとしてくれていい親父さんだな。
「ところで、君は陽依のどんなところが好きなんだ?」
「⋯⋯⋯はい?」
ずいぶんと小っ恥ずかしくて慣れない事を言わされた気がする。
若干の疲れを感じつつ親父さんと中に入り、リビングへと戻ったら陽依が嬉しそうに駆け寄ってきた。
「斗希くん、おかえりなさい」
「ただいま」
「陽依、父さんには?」
「おかえり」
俺の服の裾を掴んで見上げてくる陽依に口元を緩め、頭を撫でてたら先に入った親父さんが不満げな顔をして振り向く。それににこっと笑って返した陽依に眉を顰めるも、おふくろさんに呼ばれた親父さんは緩く頭を振ってテーブルへと向かった。
今のは俺でも分かるくらい声色が違ったな。
「父さんと何の話をしてたの?」
「お前が幸せならそれでいいって話」
「え?」
最後の質問以外別に隠すような事でもねぇが、全部話すのも親父さんには悪い気がして要約して言えば、陽依はきょとんとして目を瞬く。
こういう気の抜けた顔を見るとキスしたくなるんだが、そこは我慢して軽く頬を抓るとますます変な顔になって眉尻を下げた。
ホント、表情豊かで見てて飽きねぇわ。
頬から手を離し背中を押して促せば、陽依は抓られた場所を撫でながらも足を動かし空いている場所へと腰を下ろした。
さっきみてぇに陽依の隣に座ろうかとも思ったんだが、俺が図体でけぇせいでわりと窮屈だったんだよな。
「斗希くん? 座らないの?」
「いや⋯」
「やっぱり、風峯くんには狭かったんじゃない?」
「そっか⋯⋯あ、じゃあここ座って」
ベッドはいろいろマズいと思い立ったままでいたら、気付いた陽依に聞かれ答えきる前におふくろさんが言ってくれたんだけど、それに納得した陽依は何故か立ち上がり自分が座っていたところを指差した。
不思議に思いつつ胡座を掻いて座れば、陽依は当たり前のようにその間に収まる。
親父さんもおふくろさんも目を丸くしてたけど、2人でいる時はくっついてる事多いから俺も座れるなら自分は〝ここ〟って考えなんだろうな。
でも、両親の前でする事じゃねぇ。
「本当に仲が良いわねぇ」
窘められるかと思ってたのに、おふくろさんは朗らかに笑うだけでそれ以上何も言わなかった。そういえば、この人は最初から俺に対して何かを言うとかなかったな。
親父さんは複雑そうではあったけど。
「でしょ?」
そんな親父さんには気付かず、何とも嬉しそうな陽依がそう言って俺に寄りかかってきた。
陽依はある意味、小悪魔的なところがあんのかもしんねぇな。
親父さんに連れ出され、玄関から外に出た俺は何を言われるかと内心気が気じゃなく、今までした事がないくらい緊張してた。
最初は陽依からとはいえ結果的に手放せなくなったのは俺だから、男同士に関してはぶん殴られる覚悟はしてる。むしろそうならねぇ方がおかしいっつか。
俺からは何も言えなくて親父さんが話すのを待っていたら、扉に寄りかかった親父さんは深く息を吐いて口を開いた。
「いきなり申し訳ない。どうしても君と話がしたかったんだ」
「いえ、俺も同じなので」
なまじ住んでいる場所が遠い分、そう簡単に会いに行けない事は陽依から聞いて知っていた。俺自身なるべく早く挨拶もしたいとは思ってたし、突然だったとはいえ機会を設けて貰えたのは有り難い。
陽依の両親だからこそ普段よりも態度に気を付けねぇと。
「君と陽依が付き合い始めて1年半は経ったか?」
「そうですね」
「正直、すぐに別れると思っていた。男同士、そう長くは続かんだろうと。ああ、別に同性愛を否定している訳じゃない。ただ陽依はともかく、もし君が興味本位だったとしたらすぐに飽きるんじゃないかと思ったんだ」
「⋯⋯⋯」
興味本位というか、寄ってくる女共の盾にしていたとはとても言えない。
気まずくなって黙ってたら、親父さんは腕を組み俺を見上げてきた。
「だがこうして休日に一緒にいるところを見て、君がちゃんと、あの子を本気で好いてくれてるんだと分かって安心した」
最初よりは穏やかにも見える表情に、緊張とかじゃなく親父さんが俺を警戒していたんだって分かった。
そりゃあんだけ素直で純粋な息子が、こんな見た目からしてガラの悪ぃ男と付き合ってるっつったら気が気じゃねぇよな。心配にもなるし、騙されて遊ばれてんじゃねぇかって不安にもなるか。
「あの子には幸せになって欲しいんだ。その相手が男だろうと女だろうと、あの子が笑っていられる場所を作ってくれるなら何ら問題はない。風峯くんは、それが出来るか?」
「出来ます。むしろ、俺しか出来ないと思ってます」
俺がどれだけ陽依に惚れ込んでるか当然親父さんは知らないにしろ、少なくとも一生を添い遂げるくらいの気持ちで陽依の隣にいるんだ。
そこらへんの奴には絶対負けねぇし、負ける気もしねぇ。
親父さんを真っ直ぐ見返し断言すれば、親父さんは僅かに目を見瞠ったあと声を上げて笑った。
「はははっ、そうか、言い切るか。なら大丈夫だな。⋯陽依の事、よろしく頼む」
「はい」
最初、2人でと連れ出された時はどうなる事かと思ったけど、全部じゃなくても親父さんの不安は取り除けたようで安堵する。
頼むとも言われたし、これは親公認って事でいいんだよな?
にしても、こうして分かろうとしてくれていい親父さんだな。
「ところで、君は陽依のどんなところが好きなんだ?」
「⋯⋯⋯はい?」
ずいぶんと小っ恥ずかしくて慣れない事を言わされた気がする。
若干の疲れを感じつつ親父さんと中に入り、リビングへと戻ったら陽依が嬉しそうに駆け寄ってきた。
「斗希くん、おかえりなさい」
「ただいま」
「陽依、父さんには?」
「おかえり」
俺の服の裾を掴んで見上げてくる陽依に口元を緩め、頭を撫でてたら先に入った親父さんが不満げな顔をして振り向く。それににこっと笑って返した陽依に眉を顰めるも、おふくろさんに呼ばれた親父さんは緩く頭を振ってテーブルへと向かった。
今のは俺でも分かるくらい声色が違ったな。
「父さんと何の話をしてたの?」
「お前が幸せならそれでいいって話」
「え?」
最後の質問以外別に隠すような事でもねぇが、全部話すのも親父さんには悪い気がして要約して言えば、陽依はきょとんとして目を瞬く。
こういう気の抜けた顔を見るとキスしたくなるんだが、そこは我慢して軽く頬を抓るとますます変な顔になって眉尻を下げた。
ホント、表情豊かで見てて飽きねぇわ。
頬から手を離し背中を押して促せば、陽依は抓られた場所を撫でながらも足を動かし空いている場所へと腰を下ろした。
さっきみてぇに陽依の隣に座ろうかとも思ったんだが、俺が図体でけぇせいでわりと窮屈だったんだよな。
「斗希くん? 座らないの?」
「いや⋯」
「やっぱり、風峯くんには狭かったんじゃない?」
「そっか⋯⋯あ、じゃあここ座って」
ベッドはいろいろマズいと思い立ったままでいたら、気付いた陽依に聞かれ答えきる前におふくろさんが言ってくれたんだけど、それに納得した陽依は何故か立ち上がり自分が座っていたところを指差した。
不思議に思いつつ胡座を掻いて座れば、陽依は当たり前のようにその間に収まる。
親父さんもおふくろさんも目を丸くしてたけど、2人でいる時はくっついてる事多いから俺も座れるなら自分は〝ここ〟って考えなんだろうな。
でも、両親の前でする事じゃねぇ。
「本当に仲が良いわねぇ」
窘められるかと思ってたのに、おふくろさんは朗らかに笑うだけでそれ以上何も言わなかった。そういえば、この人は最初から俺に対して何かを言うとかなかったな。
親父さんは複雑そうではあったけど。
「でしょ?」
そんな親父さんには気付かず、何とも嬉しそうな陽依がそう言って俺に寄りかかってきた。
陽依はある意味、小悪魔的なところがあんのかもしんねぇな。
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