孤独な青年はひだまりの愛に包まれる

ミヅハ

文字の大きさ
45 / 54

報せ

しおりを挟む
 鷹臣さんからお揃いの物と言われて凄く凄く悩んだ僕は、最終的には指輪とネックレスの二択にまで絞れたんだけどそこからなかなか決められずにいて、叶くんと茉莉ちゃんに相談したら絶対に指輪って言われたから指輪に決めた。
 僕も指輪の方がいいかもって思ってたから背中を押された感じだ。
 鷹臣さんと同じ物って嬉しいな。

「指輪の受け取り、今日だっけ?」
「うん」
「やっぱり恋人がいるなら、ペアリングには憧れるよね」
「二人もお揃いの指輪着けてるもんね」
「三年目ならいいかなーって」
「良く言うよ。一年過ぎてからずっと欲しいっつってたくせに」
「それはそれ、これはこれ」

 二人は中学の時から付き合ってるそうだから、その時からの友達から夫婦って言われてるのを何度も見てる。
 大きな喧嘩もした事ないみたいで、本当に仲が良いんだよね。
 ついにこにこして見てたら、それに気付いた叶くんが照れ臭そうに僕の頭をチョップしてきた。

「その顔やめろ」
「ごめんね」

 全然痛くないし、ムッとした顔が面白くてクスクス笑いながら謝ったら今度は乱暴に撫でられて髪がぐちゃぐちゃになる。すかさず茉莉ちゃんが手櫛で直してくれて、その連携力に二人なら餅つきの息もピッタリかもしれないって思った。

「あ、ありがとう。茉莉ちゃん」
「遥斗くん、猫っ毛だからすぐもつれるね」
「強い風が吹いた日とか凄い事になる」
「細いから無理に梳いたら切れちゃうしねぇ」

 冬は静電気で広がるし、乾かさなかったら爆発しちゃうしで本当に大変だ。今は鷹臣さんが丁寧に乾かしてくれるから朝起きてもちょっとした寝癖で収まってるけど、うっかり寝ちゃった次の日は悲惨だったなぁ。
 茉莉ちゃんのおかげで綺麗になった髪の毛の先を弄ってたら、叶くんが頬杖をついてスマホを開いた。

「そうだ。茉莉、今年は何が欲しい?」
「誕プレ? えー、どうしようかな」
「そっか、茉莉ちゃんもうすぐ誕生日だ」
「うん。遥斗くんは、またドリンク奢ってね」
「今年も? ちゃんと選んで欲しいのに」
「お祝いしてくれる気持ちだけで嬉しいんだから」

 茉莉ちゃんの誕生日は去年知って、何がいいって聞いたらコーヒーショップに連れて行かれて何か難しい名前のドリンクを選ばれたんだよね。他にない? って聞いてもこれが嬉しいって言うばっかりで、今年こそはプレゼントらしいプレゼントをあげようと思ってたのに。
 ちなみに僕はこれまで女の子にプレゼントをあげた事がないから、何を選べばいいか分からない。
 ⋯⋯あれ、そういえば。

「鷹臣さんももうすぐ誕生日だ」
「あ、そうなんだ! 何あげるの?」
「な、何あげたらいいかな?」

 大人な鷹臣さんに安易な物はプレゼント出来ないし、果たして僕のセンスで選んでいいのかどうか。その日暮らしをしていた僕にはそんな素敵な感性は備わってないような気がするし。

「仕事で使う物とかは? 基本スーツみたいだし、ネクタイとかタイピンとか」
「ネクタイ⋯無地ならまだ」
「遥斗からなら何でも喜んでくれそうだけどな」
「頭にリボン巻いて、〝僕がプレゼント〟って言う?」
「? 僕がプレゼント?    歌も苦手だし手品も出来ないよ?」

 むしろ僕をプレゼントにしたところで鷹臣さんは困るだけなんじゃないかな。それに何の使い道もないし⋯あ、でも、力仕事は無理でもお茶入れたりは出来るかも。
 つまりは労働力って事かと一人納得してたら、茉莉ちゃんが僕の頭を撫でながらしんみりと頷いた。

「遥斗くんはそのままでいてね」
「う、うん?」
「お前が変な事教えなきゃ大丈夫だよ」

 結局何が言いたかったんだろうと首を傾げると、机に置いていたスマホが震えて鷹臣さんからのメッセージが入った。

『少し用事があるから、迎えに行くまでお店で待ってて』

 珍しいと思いつつも『分かりました』と返事をしてスマホを戻した僕は、今日受け取れる指輪が楽しみで仕方なくて、茉莉ちゃんの誕生日プレゼントの話をしている二人に視線を戻してふっと表情を緩めた。
 長年付き合ってると、プレゼント選びも大変なんだなぁ。


 バイトを終え、言われた通り鷹臣さんを待ってた僕は少しだけ不安になってた。
 連絡があったからいつもより遅いのは理解してたけど、それが三十分を過ぎても一時間近く経っても音沙汰さえなくて、カウンターに座ってずっとスマホと睨めっこしてる。

「遥斗さん、店閉めて大丈夫ですか?」
「あ、うん。ごめんね。大丈夫だよ」
「連絡してみました?」
「メッセージは送ったんだけど、既読にならないんだ」

 こんな事付き合ってからは初めてで、どんな時だって連絡をくれてた鷹臣さんの優しさを改めて思い知る。
 ただ忙しいならそれでいい。何事もないなら、無事ならそれでいい。
 ぎゅっとスマホを握ったら不意に着信画面に代わりビクッとする。でも発信者は鷹臣さんじゃなくて、どうしてか町田さんの名前が出てた。
 目を瞬きつつも応答すると、焦ったような町田さんの声が「遥斗さん」と呼ぶ。

『こんばんは。ご連絡が遅くなってしまい、申し訳ございません』
「え? あの⋯どういう意味ですか?」

 町田さんと電話をする約束はしてなかったから、困惑しつつも返す僕の横にお店を閉め終わった岡野くんが立つ。
 静かな店内にいるからか電話口の向こうが聞こえてくるんだけど、誰かを呼び出す声がところどころでしてる。⋯⋯町田さん、病院にいる?

『遥斗さん、落ち着いて聞いて下さい』
「は、はい」

 聞こえてくる環境音に何だか嫌な予感がする。
 ぎゅっと服を握り町田さんの言葉を待っていると、信じられない事を言われた。

『社長が病院に運ばれました。お迎えに上がりますので、今いらっしゃる場所を教えて頂いても宜しいでしょうか』
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました

こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

ずっと二人で。ー俺と大好きな幼なじみとの20年間の恋の物語ー

紗々
BL
俺は小さな頃からずっとずっと、そうちゃんのことが大好きだった───。 立本樹と滝宮颯太は、物心ついた頃からの幼なじみ。いつも一緒で、だけど離れて、傷付けあって、すれ違って、また近づいて。泣いたり笑ったりしながら、お互いをずっと想い合い大人になっていく二人の物語です。 ※攻めと女性との絡みが何度かあります。 ※展開かなり遅いと思います。

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

処理中です...