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お揃い(鷹臣視点)
最近の遥斗は何か吹っ切れたようで、大学にしても勉強にしても前ほど沈んだ顔はしておらずむしろ笑顔な事も増えてきた。俺の話がどう作用したのかは分からないけど、前向きになれたならそれで良い。
甘え方も少しずつ覚えて、以前に決めた甘えたい時の方法をぎこちないながらも使ったりして明らかにくっついてくる事が増えたおかげで、俺は日々忍耐との戦いになっていた。
今だって抱き締めて欲しいらしく、頬を染めながら俺の服の裾を躊躇いがちに掴んでいる。
(可愛いな)
背中に腕を回し抱き寄せたら肩に頭を預けてくる遥斗が愛おしい。
柔らかな髪を撫で額に口付けるとこちらを見上げてきた。
「あの、鷹臣さん」
「ん?」
「お揃いの物についてなんですけど⋯」
「何か決まった?」
「一応⋯でも、本当に僕が選んで良かったんですか?」
物欲のない遥斗だからこそお揃いという名目を立ててお願いしたのに、やはりずっと気にしていたようだ。
それでも考えてはくれたみたいだから、最初に比べたらずいぶんと自我を出してくれるようにはなったと思う。
「もちろん。それで、何にしたの?」
「えっと⋯凄く悩んだんですけど⋯⋯あの、目に見える物がいいなって思って⋯あとペアだって分かりやすいもの⋯」
「うん」
「⋯⋯ゆ、指輪が、いいです⋯!」
正直、遥斗なら実用的な物を選ぶんだと思っていた。それこそ俺に合わせて腕時計やペンなんかを選ぶだろうなと。
でもそうか、ちゃんと〝恋人〟としての物を選んでくれたんだな。
きっと言葉通り頭を抱えるくらい悩んだんだろう遥斗を強く抱き締め、俺はブレスレットが着けられている左手を掬い薬指に口付けた。
「ここに着けてもいいの?」
「た、鷹臣さんが⋯いいなら⋯」
「むしろ着けてくれると嬉しいよ。次の休みの日に買いに行こうか」
「デート、ですか?」
「そのつもり」
最初こそデートだと言わなければ気付かない遥斗だったけど、もう何度もしているからさすがに分かるようになった。俺的には遥斗と二人で出掛けるなら、コンビニだろうと散歩だろうとデートにはなるんだけどな。
だから微笑んで頷けば遥斗は照れたようにはにかむと、「嬉しいです」と言って俺の背中に腕を回してきた。
もうすぐ付き合って一年が経とうとしているのに、いつまでもウブで可愛い俺の恋人には堪らない気持ちになる。
「遥斗」
「はい?」
安心しきった様子で俺に寄り掛かる遥斗の頬を撫でながら名前を呼べばすぐに返事をして見上げてくる。
その素直さに癒されつつ顔を寄せた俺は、彼の柔らかな唇へと自分の唇を触れ合わせた。
遥斗が指輪を選んでくれた事は、俺にとってはある意味僥倖だったのかもしれない。
(もし俺がプロポーズをしたら、遥斗はどういう反応をするんだろうか)
血の繋がりがなくとも、ある手続きをすれば法的には家族にはなれるからその事も踏まえて遥斗には伝えるつもりだが、彼がどう受け止めてくれるのかが分からない。
喜んでくれるなら俺も嬉しいんだけどな。
「鷹臣さん?」
建物の壁に寄り掛かり物思いに耽っていたら、手洗いから戻ってきた遥斗に不思議そうに名前を呼ばれた。
ハッとして見下ろすと可愛らしく小首を傾げていて思わず笑みが零れる。
「ああ、ごめんね。少しぼんやりしてた」
「どこか座って休みますか?」
「いや、大丈夫だよ」
「それならいいんですけど⋯」
遥斗に対しては俺もそうだが、遥斗も大概心配性で俺が疲れていないかを良く気にしてくれる。遥斗が傍にいるだけでそんなもの吹き飛ぶのに、この子は俺にとって自分がどれだけ大きな存在かを理解していない。
まだまだ自己評価が低いから仕方ないのかもしれないが。
手の平を上に向けて差し出すとはにかんで自分の手を乗せてくれたから、いつものように握って歩き出す。
「お腹は空いてない?」
「大丈夫です」
「なら、空いたらちゃんと言うんだよ?」
「はい」
空いている手で目にかかる前髪を避けながら言えばこくりと頷く。
そういえば、出会った頃に比べて遥斗もずいぶんと髪が伸びた。美容院に行ける子ではないから、うちに呼んで切って貰うのもありかもしれないな。
目を合わせられるようになれば真っ直ぐに見てくれる遥斗に微笑み、俺たちは目的の場所へと向かって歩き出した。
今から行くお店に、遥斗のお眼鏡に適う物があればいいんだが。
指輪は既製品ではなく遥斗の華奢な指に合うよう細身の物をオーダーし、内側にお互いのイニシャルと付き合った日を刻印して貰う事にした。
俺の事を知っているオーナーが最優先で仕上げてくれると言っていたが、他にも待っている人がいるだろうしとお断りした結果、およそ一ヶ月後の仕上がりになるそうだ。
その日は俺が受け取りに行き、役所から貰ってきた書類を渡すと共に遥斗にプロポーズしようと思っている。
断られる心配はしていないけど、遥斗は凄く驚くだろうな。
あの子の歩む先が幸せであるように、俺が傍にいて支えてあげられたらと思っている。遥斗が望む事なら、俺の全てを賭けてでも叶えてあげたいとも。
自分が誰かに対してこんな気持ちになるとは思わなかった。
俺にとって遥斗は、出会うべくして出会った唯一なのかもしれない。
それなのに。
「鷹臣さん⋯」
俺が君を悲しませているなんて⋯。
目を開けたくても、身体ごとどんどん暗い方へと沈んでいく感覚がする。
手に遥斗の温もりを感じながらも、俺の意識は深い深い場所へと落ちていった。
甘え方も少しずつ覚えて、以前に決めた甘えたい時の方法をぎこちないながらも使ったりして明らかにくっついてくる事が増えたおかげで、俺は日々忍耐との戦いになっていた。
今だって抱き締めて欲しいらしく、頬を染めながら俺の服の裾を躊躇いがちに掴んでいる。
(可愛いな)
背中に腕を回し抱き寄せたら肩に頭を預けてくる遥斗が愛おしい。
柔らかな髪を撫で額に口付けるとこちらを見上げてきた。
「あの、鷹臣さん」
「ん?」
「お揃いの物についてなんですけど⋯」
「何か決まった?」
「一応⋯でも、本当に僕が選んで良かったんですか?」
物欲のない遥斗だからこそお揃いという名目を立ててお願いしたのに、やはりずっと気にしていたようだ。
それでも考えてはくれたみたいだから、最初に比べたらずいぶんと自我を出してくれるようにはなったと思う。
「もちろん。それで、何にしたの?」
「えっと⋯凄く悩んだんですけど⋯⋯あの、目に見える物がいいなって思って⋯あとペアだって分かりやすいもの⋯」
「うん」
「⋯⋯ゆ、指輪が、いいです⋯!」
正直、遥斗なら実用的な物を選ぶんだと思っていた。それこそ俺に合わせて腕時計やペンなんかを選ぶだろうなと。
でもそうか、ちゃんと〝恋人〟としての物を選んでくれたんだな。
きっと言葉通り頭を抱えるくらい悩んだんだろう遥斗を強く抱き締め、俺はブレスレットが着けられている左手を掬い薬指に口付けた。
「ここに着けてもいいの?」
「た、鷹臣さんが⋯いいなら⋯」
「むしろ着けてくれると嬉しいよ。次の休みの日に買いに行こうか」
「デート、ですか?」
「そのつもり」
最初こそデートだと言わなければ気付かない遥斗だったけど、もう何度もしているからさすがに分かるようになった。俺的には遥斗と二人で出掛けるなら、コンビニだろうと散歩だろうとデートにはなるんだけどな。
だから微笑んで頷けば遥斗は照れたようにはにかむと、「嬉しいです」と言って俺の背中に腕を回してきた。
もうすぐ付き合って一年が経とうとしているのに、いつまでもウブで可愛い俺の恋人には堪らない気持ちになる。
「遥斗」
「はい?」
安心しきった様子で俺に寄り掛かる遥斗の頬を撫でながら名前を呼べばすぐに返事をして見上げてくる。
その素直さに癒されつつ顔を寄せた俺は、彼の柔らかな唇へと自分の唇を触れ合わせた。
遥斗が指輪を選んでくれた事は、俺にとってはある意味僥倖だったのかもしれない。
(もし俺がプロポーズをしたら、遥斗はどういう反応をするんだろうか)
血の繋がりがなくとも、ある手続きをすれば法的には家族にはなれるからその事も踏まえて遥斗には伝えるつもりだが、彼がどう受け止めてくれるのかが分からない。
喜んでくれるなら俺も嬉しいんだけどな。
「鷹臣さん?」
建物の壁に寄り掛かり物思いに耽っていたら、手洗いから戻ってきた遥斗に不思議そうに名前を呼ばれた。
ハッとして見下ろすと可愛らしく小首を傾げていて思わず笑みが零れる。
「ああ、ごめんね。少しぼんやりしてた」
「どこか座って休みますか?」
「いや、大丈夫だよ」
「それならいいんですけど⋯」
遥斗に対しては俺もそうだが、遥斗も大概心配性で俺が疲れていないかを良く気にしてくれる。遥斗が傍にいるだけでそんなもの吹き飛ぶのに、この子は俺にとって自分がどれだけ大きな存在かを理解していない。
まだまだ自己評価が低いから仕方ないのかもしれないが。
手の平を上に向けて差し出すとはにかんで自分の手を乗せてくれたから、いつものように握って歩き出す。
「お腹は空いてない?」
「大丈夫です」
「なら、空いたらちゃんと言うんだよ?」
「はい」
空いている手で目にかかる前髪を避けながら言えばこくりと頷く。
そういえば、出会った頃に比べて遥斗もずいぶんと髪が伸びた。美容院に行ける子ではないから、うちに呼んで切って貰うのもありかもしれないな。
目を合わせられるようになれば真っ直ぐに見てくれる遥斗に微笑み、俺たちは目的の場所へと向かって歩き出した。
今から行くお店に、遥斗のお眼鏡に適う物があればいいんだが。
指輪は既製品ではなく遥斗の華奢な指に合うよう細身の物をオーダーし、内側にお互いのイニシャルと付き合った日を刻印して貰う事にした。
俺の事を知っているオーナーが最優先で仕上げてくれると言っていたが、他にも待っている人がいるだろうしとお断りした結果、およそ一ヶ月後の仕上がりになるそうだ。
その日は俺が受け取りに行き、役所から貰ってきた書類を渡すと共に遥斗にプロポーズしようと思っている。
断られる心配はしていないけど、遥斗は凄く驚くだろうな。
あの子の歩む先が幸せであるように、俺が傍にいて支えてあげられたらと思っている。遥斗が望む事なら、俺の全てを賭けてでも叶えてあげたいとも。
自分が誰かに対してこんな気持ちになるとは思わなかった。
俺にとって遥斗は、出会うべくして出会った唯一なのかもしれない。
それなのに。
「鷹臣さん⋯」
俺が君を悲しませているなんて⋯。
目を開けたくても、身体ごとどんどん暗い方へと沈んでいく感覚がする。
手に遥斗の温もりを感じながらも、俺の意識は深い深い場所へと落ちていった。
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