人気アイドルになった美形幼馴染みに溺愛されています

ミヅハ

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ヒナだけのもの(真那視点)

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 俺が一番出て欲しくなかったニュースが一番理不尽な形で露呈した。
 すぐにヒナに連絡して説明しようと思ってたのに、最悪な事に事務所からストップがかかって何一つ言えないまま音信不通みたいになって、今もメッセージの一通も送れていない。
 ヒナ、絶対不安になってる。こんな時こそ傍にいたいのに、大人たちが断固として許してくれない。おまけに水島さんと揉めてスマホも壊れるし、修理に出して貰ったけど代替機種は持たせて貰えないしでイライラが募る。

 名前も見れない、声も聞けない。あの日まで毎日のようにメッセージのやり取りをしていたのに、突然唯一の繋がりを取り上げられて絶望している俺は、今は惰性だけで仕事をこなしている状況だ。
 ヒナに会いたい、声が聞きたい、抱き締めたい。ヒナの笑顔が見たい。

「真那、今日はもう終わりだから送る。帰る支度をしなさい」
「……」

 ソロ曲のレコーディングを終え、この後のスケジュールを水島さんに確認しようと思っていたら先にそう言われて気が抜けた。最近、仕事が終わった途端脱力する事が増えて、家に帰ると気力だけで入浴してベッドに倒れ込んでる。
 きっと今日もそれは変わらない。
 昨日からの雨は弱まる事なく、昼を過ぎた現在も建物の輪郭が揺らぐほど降りしきっている。

「今日はちゃんと飯食えよ。志摩も風音も心配してる」
「……ん」
「…すまないな」
「水島さんのせいじゃない。…俺が迂闊だっただけ」

 あの写真が撮られた時、周りには他にスタッフがいた。そもそも俺はあの女と一緒に店に行った訳じゃないし、店の中でだって一言も話してないから完全に油断していたんだ。
 まさかあんな切り取り方されるとは思わなかった。

「陽向くんの事もだよ」
「…………」

 それこそ水島さんのせいじゃない。俺はアイドルで、ヒナは一般人。幼馴染みとはいえ線引きは必要だから仕方ないのも分かってる。
 俺が、ヒナがいないと駄目なだけ。

 マンションの前に車が停まり、傘を手に降りるとドアを閉める前に「明日は昼過ぎに迎えに来るから」と伝えられ、頷いて今度こそ閉める。今は仕事をしていた方が気が紛れていいんだけど、そうしなきゃいけないほど俺の様子がおかしいんだろう。
 オートロックを解除し、エントランスを抜けてエレベーターホールに向かい、ちょうど一階で止まっていたやつに乗り込み最上階のボタンを押す。そういえば、近いうちに最上階へは鍵がないと入れないように改修するって言ってた。
 ヒナに鍵、渡したいな。
 振動も少なく、大した抵抗力を感じないまま目的階で停止したエレベーターから降り、奥の部屋へと進む。玄関前で鍵を開け、扉を開けるまでの動作が物凄く億劫だ。
 家に帰って来たって何も変わらないのに。

「ひどい顔だな」

 目を伏せたまま部屋に入った俺の耳に、聞きたくて堪らなかった声が聞こえてきた。ゆっくりと顔を上げると、微笑んで立っているヒナがいて驚きのあまり固まってしまう。

「美形が台無しだぞ」
「……ヒ、ナ…?」
「うん。おかえり、真那」
「…ヒナだ…ヒナがいる……もしかしてこれ、夢?」
「ほっぺた抓ってやろうか?」

 躓きながらも靴を脱ぎ捨てて上がり震える手を伸ばして頬に触れるとちゃんと温かくて柔らかい。でもまだ不安で目尻や耳、唇に指を滑らせれば擽ったそうに笑ったヒナが抱き着いてきた。

「ちゃんと現実だから、ぎゅってしろ」
「……ッ、…ヒナ…っ」

 背中に回された腕も、胸元に埋まる顔も、ふわりと舞った優しい香りも、確かに今が現実で、ここにヒナがいるんだと実感させてくれる。
 ようやく安心出来た俺は、数週間ぶりにヒナを抱き締める事が出来たのだった。




「…っ、は…ん、ん…っ」

 あのあとすぐにヒナを抱き上げてソファに移動した俺は、膝に座らせたヒナの唇をずっと貪っていた。触れ合わせるだけだったり、舌を絡め合って深く口付けたりしているとヒナに肩を叩かれる。
 一度離れたけど、まだしていたくてもう一回キスしたら今度は顔を押し返された。

「…ヒナ…」
「ん…っ、ちょっ、と…ストップ…っ」
「もっとキスしたい」
「くるし…から…息、整えさせて…くれ…」

 真っ赤な顔で全力疾走した並に荒い呼吸をするヒナの頬に手を当て反対の手で背中を撫でると、身体の力を抜いて肩に寄りかかってくる。
 こうして俺に体重を預けてくれるヒナが可愛くて堪らない。
 髪や額に口付けヒナの息が整うのを待っていれば、小ぶりな手が俺の手を握り自分の唇へと押し当てた。

「……真那…あの記事の事、教えてくれないか?」
「ん。ヒナにはちゃんと話すよ」

 柔らかな唇を親指でなぞってから目元にキスをし、ヒナを抱いたまま立ち上がってキッチンに向かった俺は片手でグラスを取り出してウォーターサーバーから水を注ぐ。それをヒナに渡すと、目を瞬きながらも受け取って口を付けたから飲むのを待ってまたソファに戻った。

「その前に、連絡出来なくてごめんね。事務所からストップが掛かって…」
「あ、うん。志摩さんに聞いた。スマホも壊れたんだろ?」
「え? 何で志摩さんに?」
「俺をここに連れてきてくれたの、志摩さんだから」
「そうなんだ……」

 まさか志摩さんが動いてくれてたとは思わなかった。俺、そこまでへこんでたのかな。

「あれ? でも鍵…」
「渡されたぞ? スペアじゃないのか?」
「そういえば水島さんに渡してた」
「じゃあ返した方がいいな」
「ヒナ、持っててくれない? 水島さんには別で渡すし」
「……いいのか?」
「ヒナに持ってて欲しい」

 また断られるかなと思って聞いてみたら思わぬ反応が返って来て思わず被せ気味にそう言うと、嬉しそうにはにかんだヒナはこっくりと頷いた。
 えー…すっごく可愛いんだけど。俺の理性、試されてる?

「ヒナならいつ来ても大歓迎だから」
「たまに来ないとこの部屋、腐海と化しそうだからな」
「それは今回だけだよ…」

 今はヒナが片付けてくれたみたいで綺麗だけど、確かにひどい状態だったかもしれない。でもそれはヒナに連絡さえ取れなかったせいで、こうしてヒナに会えるならあそこまでにはならないと思う。

「で? あの写真は何だったんだ?」
「あれはたまたま。あの時、その日最後の仕事のスタッフにせっかくだからご飯食べに行きましょうって言われて断れなくて。入店してしばらくしたらあの子が入って来たんだけど、スタッフが顔見知りだったみたいで相席を勧めるから一緒に食べる流れになったんだ。……店から出て、別れようとしたらその子が躓いて俺を支えにしたところが撮られた」
「……色んな偶然が重なったのか」
「もう二度とスタッフとご飯行かない」

 元々そういうのは避けてたのに、社長に付き合いは大事だって言われたから行ったらこんな事になって。正直この件に関しては社長を恨んでる。

「そんな事言うなって。スタッフさんだって真那と仲良くなりたいんだよ」
「俺はヒナだけいればいい」
「真那はホントに人付き合いが嫌いだな」

 嫌いというか、俺の見た目で寄って来る奴がほとんどだからただ煩わしいだけだ。小さい頃からヒナ一筋だった俺に他の人なんて必要なくて、だからこそずっとヒナと一緒にいた。ヒナだけが俺のすべてなんだ。
 ぎゅっとヒナを抱き締め一度も染めた事のない綺麗な黒髪に頬擦りすると、小さな手が俺の首に触れそのまま腕を回して抱き着いてきた。

「オレも、ごめんな」
「?」
「真那の事信じてるのに、連絡が途絶えたからちょっと…不安になった」

 やっぱり……恋人の他人との熱愛報道なんて見たくもなかったよね。改めてあの女と写真を撮った記者に腹が立ってきた。

「ごめんね、ヒナ」
「真那は悪くないだろ。……でも、おかげで気付いた事あるんだ」
「気付いた事?」
「オレ、自分が思ってる以上に真那の事が好きなんだなって。真那が〝触らせないで〟とか、〝俺だけ見て〟って言う気持ちよく分かった」
「ヒナ……」

 腕を降ろし、持ったままだったグラスをテーブルに置いたヒナは、今度は両腕を俺の首に回すと唇が触れ合いそうなほど顔を近付け、熱っぽい視線で見上げてきた。

「仕事上無理なのは分かってるけど、あんま他の人に触らせんな。真那が触っていいのはオレだけ。オレに触っていいのも真那だけ。オレは真那だけのものだから、真那もオレだけの真那でいてな?」

 そう言ってヒナは目を瞬く俺に口付けてきた。
 初めて明確な独占欲を露わにしたヒナにどうしようもない嬉しさが込み上げてくる。

「ヒナ…好きだよ、ヒナ。約束する。この先どんな事があっても、俺はヒナだけのものだから」
「ん、絶対だぞ」
「うん」

 ヒナから贈られる拙いキスに応えながら誓い合う。息が上がるまで唇を触れ合わせてたんだけど、我慢出来なくてズボン越しに丸いお尻を撫でるとピクっと肩が跳ねた。

「ヒナ…したい」
「でも、明日も仕事だろ?」
「明日は昼から。それに、ヒナを抱いたらもっと元気になる」
「……どっちの意味で?」
「どっちの意味でも?」
「それはダメだろ。こっちが元気なのは…オレの前だけじゃないと怒る」

 少しだけ意地悪に返したらムッとしたヒナが既に反応している俺の中心を指差して上目遣いに見てきた。恥ずかしがり屋のヒナがさっきから大胆な事を言ったりしたりするおかげで、自身がどんどん膨らんでいくのが分かり俺は片手で額を押さえた。

「……可愛すぎて困る」
「オレは死ぬほど恥ずかしい」

 あ、恥ずかしいは恥ずかしいんだ。見事に首まで真っ赤になってるヒナに微笑んだ俺は火照った頬に触れ額に口付ける。

「安心して、ヒナ以外には勃たないから」
「勃っ…たないとか、そんな恥ずかしい事言うな…っ」
「だって本当の事だし。ヒナも、そんな可愛い顔は俺の前でだけにして」
「……真那だけに決まってるだろ…」

 本当に、今日は可愛さが振り切れてる。
 これを天然でやってるんだから、ヒナも性質が悪いよね。こうやってどんどん俺を深みにハメていく。

「愛してるよ、陽向」
「……!」

 せめて年上の余裕は見せたくて耳元でちゃんと名前を呼べば、ヒナはあんぐりと口を開けてこれ以上ないほど真っ赤になった。
 恥ずかしすぎるのか少しだけ目が潤んでる。
 何も言えなくなった代わりか、体当たり並の勢いで再び抱き着いてきたヒナを抱き締めた俺は、細い首筋に鼻を寄せヒナの香りを思いっきり吸い込んだ。
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