30 / 59
ヒナだけのもの(真那視点)
しおりを挟む
俺が一番出て欲しくなかったニュースが一番理不尽な形で露呈した。
すぐにヒナに連絡して説明しようと思ってたのに、最悪な事に事務所からストップがかかって何一つ言えないまま音信不通みたいになって、今もメッセージの一通も送れていない。
ヒナ、絶対不安になってる。こんな時こそ傍にいたいのに、大人たちが断固として許してくれない。おまけに水島さんと揉めてスマホも壊れるし、修理に出して貰ったけど代替機種は持たせて貰えないしでイライラが募る。
名前も見れない、声も聞けない。あの日まで毎日のようにメッセージのやり取りをしていたのに、突然唯一の繋がりを取り上げられて絶望している俺は、今は惰性だけで仕事をこなしている状況だ。
ヒナに会いたい、声が聞きたい、抱き締めたい。ヒナの笑顔が見たい。
「真那、今日はもう終わりだから送る。帰る支度をしなさい」
「……」
ソロ曲のレコーディングを終え、この後のスケジュールを水島さんに確認しようと思っていたら先にそう言われて気が抜けた。最近、仕事が終わった途端脱力する事が増えて、家に帰ると気力だけで入浴してベッドに倒れ込んでる。
きっと今日もそれは変わらない。
昨日からの雨は弱まる事なく、昼を過ぎた現在も建物の輪郭が揺らぐほど降りしきっている。
「今日はちゃんと飯食えよ。志摩も風音も心配してる」
「……ん」
「…すまないな」
「水島さんのせいじゃない。…俺が迂闊だっただけ」
あの写真が撮られた時、周りには他にスタッフがいた。そもそも俺はあの女と一緒に店に行った訳じゃないし、店の中でだって一言も話してないから完全に油断していたんだ。
まさかあんな切り取り方されるとは思わなかった。
「陽向くんの事もだよ」
「…………」
それこそ水島さんのせいじゃない。俺はアイドルで、ヒナは一般人。幼馴染みとはいえ線引きは必要だから仕方ないのも分かってる。
俺が、ヒナがいないと駄目なだけ。
マンションの前に車が停まり、傘を手に降りるとドアを閉める前に「明日は昼過ぎに迎えに来るから」と伝えられ、頷いて今度こそ閉める。今は仕事をしていた方が気が紛れていいんだけど、そうしなきゃいけないほど俺の様子がおかしいんだろう。
オートロックを解除し、エントランスを抜けてエレベーターホールに向かい、ちょうど一階で止まっていたやつに乗り込み最上階のボタンを押す。そういえば、近いうちに最上階へは鍵がないと入れないように改修するって言ってた。
ヒナに鍵、渡したいな。
振動も少なく、大した抵抗力を感じないまま目的階で停止したエレベーターから降り、奥の部屋へと進む。玄関前で鍵を開け、扉を開けるまでの動作が物凄く億劫だ。
家に帰って来たって何も変わらないのに。
「ひどい顔だな」
目を伏せたまま部屋に入った俺の耳に、聞きたくて堪らなかった声が聞こえてきた。ゆっくりと顔を上げると、微笑んで立っているヒナがいて驚きのあまり固まってしまう。
「美形が台無しだぞ」
「……ヒ、ナ…?」
「うん。おかえり、真那」
「…ヒナだ…ヒナがいる……もしかしてこれ、夢?」
「ほっぺた抓ってやろうか?」
躓きながらも靴を脱ぎ捨てて上がり震える手を伸ばして頬に触れるとちゃんと温かくて柔らかい。でもまだ不安で目尻や耳、唇に指を滑らせれば擽ったそうに笑ったヒナが抱き着いてきた。
「ちゃんと現実だから、ぎゅってしろ」
「……ッ、…ヒナ…っ」
背中に回された腕も、胸元に埋まる顔も、ふわりと舞った優しい香りも、確かに今が現実で、ここにヒナがいるんだと実感させてくれる。
ようやく安心出来た俺は、数週間ぶりにヒナを抱き締める事が出来たのだった。
「…っ、は…ん、ん…っ」
あのあとすぐにヒナを抱き上げてソファに移動した俺は、膝に座らせたヒナの唇をずっと貪っていた。触れ合わせるだけだったり、舌を絡め合って深く口付けたりしているとヒナに肩を叩かれる。
一度離れたけど、まだしていたくてもう一回キスしたら今度は顔を押し返された。
「…ヒナ…」
「ん…っ、ちょっ、と…ストップ…っ」
「もっとキスしたい」
「くるし…から…息、整えさせて…くれ…」
真っ赤な顔で全力疾走した並に荒い呼吸をするヒナの頬に手を当て反対の手で背中を撫でると、身体の力を抜いて肩に寄りかかってくる。
こうして俺に体重を預けてくれるヒナが可愛くて堪らない。
髪や額に口付けヒナの息が整うのを待っていれば、小ぶりな手が俺の手を握り自分の唇へと押し当てた。
「……真那…あの記事の事、教えてくれないか?」
「ん。ヒナにはちゃんと話すよ」
柔らかな唇を親指でなぞってから目元にキスをし、ヒナを抱いたまま立ち上がってキッチンに向かった俺は片手でグラスを取り出してウォーターサーバーから水を注ぐ。それをヒナに渡すと、目を瞬きながらも受け取って口を付けたから飲むのを待ってまたソファに戻った。
「その前に、連絡出来なくてごめんね。事務所からストップが掛かって…」
「あ、うん。志摩さんに聞いた。スマホも壊れたんだろ?」
「え? 何で志摩さんに?」
「俺をここに連れてきてくれたの、志摩さんだから」
「そうなんだ……」
まさか志摩さんが動いてくれてたとは思わなかった。俺、そこまでへこんでたのかな。
「あれ? でも鍵…」
「渡されたぞ? スペアじゃないのか?」
「そういえば水島さんに渡してた」
「じゃあ返した方がいいな」
「ヒナ、持っててくれない? 水島さんには別で渡すし」
「……いいのか?」
「ヒナに持ってて欲しい」
また断られるかなと思って聞いてみたら思わぬ反応が返って来て思わず被せ気味にそう言うと、嬉しそうにはにかんだヒナはこっくりと頷いた。
えー…すっごく可愛いんだけど。俺の理性、試されてる?
「ヒナならいつ来ても大歓迎だから」
「たまに来ないとこの部屋、腐海と化しそうだからな」
「それは今回だけだよ…」
今はヒナが片付けてくれたみたいで綺麗だけど、確かにひどい状態だったかもしれない。でもそれはヒナに連絡さえ取れなかったせいで、こうしてヒナに会えるならあそこまでにはならないと思う。
「で? あの写真は何だったんだ?」
「あれはたまたま。あの時、その日最後の仕事のスタッフにせっかくだからご飯食べに行きましょうって言われて断れなくて。入店してしばらくしたらあの子が入って来たんだけど、スタッフが顔見知りだったみたいで相席を勧めるから一緒に食べる流れになったんだ。……店から出て、別れようとしたらその子が躓いて俺を支えにしたところが撮られた」
「……色んな偶然が重なったのか」
「もう二度とスタッフとご飯行かない」
元々そういうのは避けてたのに、社長に付き合いは大事だって言われたから行ったらこんな事になって。正直この件に関しては社長を恨んでる。
「そんな事言うなって。スタッフさんだって真那と仲良くなりたいんだよ」
「俺はヒナだけいればいい」
「真那はホントに人付き合いが嫌いだな」
嫌いというか、俺の見た目で寄って来る奴がほとんどだからただ煩わしいだけだ。小さい頃からヒナ一筋だった俺に他の人なんて必要なくて、だからこそずっとヒナと一緒にいた。ヒナだけが俺のすべてなんだ。
ぎゅっとヒナを抱き締め一度も染めた事のない綺麗な黒髪に頬擦りすると、小さな手が俺の首に触れそのまま腕を回して抱き着いてきた。
「オレも、ごめんな」
「?」
「真那の事信じてるのに、連絡が途絶えたからちょっと…不安になった」
やっぱり……恋人の他人との熱愛報道なんて見たくもなかったよね。改めてあの女と写真を撮った記者に腹が立ってきた。
「ごめんね、ヒナ」
「真那は悪くないだろ。……でも、おかげで気付いた事あるんだ」
「気付いた事?」
「オレ、自分が思ってる以上に真那の事が好きなんだなって。真那が〝触らせないで〟とか、〝俺だけ見て〟って言う気持ちよく分かった」
「ヒナ……」
腕を降ろし、持ったままだったグラスをテーブルに置いたヒナは、今度は両腕を俺の首に回すと唇が触れ合いそうなほど顔を近付け、熱っぽい視線で見上げてきた。
「仕事上無理なのは分かってるけど、あんま他の人に触らせんな。真那が触っていいのはオレだけ。オレに触っていいのも真那だけ。オレは真那だけのものだから、真那もオレだけの真那でいてな?」
そう言ってヒナは目を瞬く俺に口付けてきた。
初めて明確な独占欲を露わにしたヒナにどうしようもない嬉しさが込み上げてくる。
「ヒナ…好きだよ、ヒナ。約束する。この先どんな事があっても、俺はヒナだけのものだから」
「ん、絶対だぞ」
「うん」
ヒナから贈られる拙いキスに応えながら誓い合う。息が上がるまで唇を触れ合わせてたんだけど、我慢出来なくてズボン越しに丸いお尻を撫でるとピクっと肩が跳ねた。
「ヒナ…したい」
「でも、明日も仕事だろ?」
「明日は昼から。それに、ヒナを抱いたらもっと元気になる」
「……どっちの意味で?」
「どっちの意味でも?」
「それはダメだろ。こっちが元気なのは…オレの前だけじゃないと怒る」
少しだけ意地悪に返したらムッとしたヒナが既に反応している俺の中心を指差して上目遣いに見てきた。恥ずかしがり屋のヒナがさっきから大胆な事を言ったりしたりするおかげで、自身がどんどん膨らんでいくのが分かり俺は片手で額を押さえた。
「……可愛すぎて困る」
「オレは死ぬほど恥ずかしい」
あ、恥ずかしいは恥ずかしいんだ。見事に首まで真っ赤になってるヒナに微笑んだ俺は火照った頬に触れ額に口付ける。
「安心して、ヒナ以外には勃たないから」
「勃っ…たないとか、そんな恥ずかしい事言うな…っ」
「だって本当の事だし。ヒナも、そんな可愛い顔は俺の前でだけにして」
「……真那だけに決まってるだろ…」
本当に、今日は可愛さが振り切れてる。
これを天然でやってるんだから、ヒナも性質が悪いよね。こうやってどんどん俺を深みにハメていく。
「愛してるよ、陽向」
「……!」
せめて年上の余裕は見せたくて耳元でちゃんと名前を呼べば、ヒナはあんぐりと口を開けてこれ以上ないほど真っ赤になった。
恥ずかしすぎるのか少しだけ目が潤んでる。
何も言えなくなった代わりか、体当たり並の勢いで再び抱き着いてきたヒナを抱き締めた俺は、細い首筋に鼻を寄せヒナの香りを思いっきり吸い込んだ。
すぐにヒナに連絡して説明しようと思ってたのに、最悪な事に事務所からストップがかかって何一つ言えないまま音信不通みたいになって、今もメッセージの一通も送れていない。
ヒナ、絶対不安になってる。こんな時こそ傍にいたいのに、大人たちが断固として許してくれない。おまけに水島さんと揉めてスマホも壊れるし、修理に出して貰ったけど代替機種は持たせて貰えないしでイライラが募る。
名前も見れない、声も聞けない。あの日まで毎日のようにメッセージのやり取りをしていたのに、突然唯一の繋がりを取り上げられて絶望している俺は、今は惰性だけで仕事をこなしている状況だ。
ヒナに会いたい、声が聞きたい、抱き締めたい。ヒナの笑顔が見たい。
「真那、今日はもう終わりだから送る。帰る支度をしなさい」
「……」
ソロ曲のレコーディングを終え、この後のスケジュールを水島さんに確認しようと思っていたら先にそう言われて気が抜けた。最近、仕事が終わった途端脱力する事が増えて、家に帰ると気力だけで入浴してベッドに倒れ込んでる。
きっと今日もそれは変わらない。
昨日からの雨は弱まる事なく、昼を過ぎた現在も建物の輪郭が揺らぐほど降りしきっている。
「今日はちゃんと飯食えよ。志摩も風音も心配してる」
「……ん」
「…すまないな」
「水島さんのせいじゃない。…俺が迂闊だっただけ」
あの写真が撮られた時、周りには他にスタッフがいた。そもそも俺はあの女と一緒に店に行った訳じゃないし、店の中でだって一言も話してないから完全に油断していたんだ。
まさかあんな切り取り方されるとは思わなかった。
「陽向くんの事もだよ」
「…………」
それこそ水島さんのせいじゃない。俺はアイドルで、ヒナは一般人。幼馴染みとはいえ線引きは必要だから仕方ないのも分かってる。
俺が、ヒナがいないと駄目なだけ。
マンションの前に車が停まり、傘を手に降りるとドアを閉める前に「明日は昼過ぎに迎えに来るから」と伝えられ、頷いて今度こそ閉める。今は仕事をしていた方が気が紛れていいんだけど、そうしなきゃいけないほど俺の様子がおかしいんだろう。
オートロックを解除し、エントランスを抜けてエレベーターホールに向かい、ちょうど一階で止まっていたやつに乗り込み最上階のボタンを押す。そういえば、近いうちに最上階へは鍵がないと入れないように改修するって言ってた。
ヒナに鍵、渡したいな。
振動も少なく、大した抵抗力を感じないまま目的階で停止したエレベーターから降り、奥の部屋へと進む。玄関前で鍵を開け、扉を開けるまでの動作が物凄く億劫だ。
家に帰って来たって何も変わらないのに。
「ひどい顔だな」
目を伏せたまま部屋に入った俺の耳に、聞きたくて堪らなかった声が聞こえてきた。ゆっくりと顔を上げると、微笑んで立っているヒナがいて驚きのあまり固まってしまう。
「美形が台無しだぞ」
「……ヒ、ナ…?」
「うん。おかえり、真那」
「…ヒナだ…ヒナがいる……もしかしてこれ、夢?」
「ほっぺた抓ってやろうか?」
躓きながらも靴を脱ぎ捨てて上がり震える手を伸ばして頬に触れるとちゃんと温かくて柔らかい。でもまだ不安で目尻や耳、唇に指を滑らせれば擽ったそうに笑ったヒナが抱き着いてきた。
「ちゃんと現実だから、ぎゅってしろ」
「……ッ、…ヒナ…っ」
背中に回された腕も、胸元に埋まる顔も、ふわりと舞った優しい香りも、確かに今が現実で、ここにヒナがいるんだと実感させてくれる。
ようやく安心出来た俺は、数週間ぶりにヒナを抱き締める事が出来たのだった。
「…っ、は…ん、ん…っ」
あのあとすぐにヒナを抱き上げてソファに移動した俺は、膝に座らせたヒナの唇をずっと貪っていた。触れ合わせるだけだったり、舌を絡め合って深く口付けたりしているとヒナに肩を叩かれる。
一度離れたけど、まだしていたくてもう一回キスしたら今度は顔を押し返された。
「…ヒナ…」
「ん…っ、ちょっ、と…ストップ…っ」
「もっとキスしたい」
「くるし…から…息、整えさせて…くれ…」
真っ赤な顔で全力疾走した並に荒い呼吸をするヒナの頬に手を当て反対の手で背中を撫でると、身体の力を抜いて肩に寄りかかってくる。
こうして俺に体重を預けてくれるヒナが可愛くて堪らない。
髪や額に口付けヒナの息が整うのを待っていれば、小ぶりな手が俺の手を握り自分の唇へと押し当てた。
「……真那…あの記事の事、教えてくれないか?」
「ん。ヒナにはちゃんと話すよ」
柔らかな唇を親指でなぞってから目元にキスをし、ヒナを抱いたまま立ち上がってキッチンに向かった俺は片手でグラスを取り出してウォーターサーバーから水を注ぐ。それをヒナに渡すと、目を瞬きながらも受け取って口を付けたから飲むのを待ってまたソファに戻った。
「その前に、連絡出来なくてごめんね。事務所からストップが掛かって…」
「あ、うん。志摩さんに聞いた。スマホも壊れたんだろ?」
「え? 何で志摩さんに?」
「俺をここに連れてきてくれたの、志摩さんだから」
「そうなんだ……」
まさか志摩さんが動いてくれてたとは思わなかった。俺、そこまでへこんでたのかな。
「あれ? でも鍵…」
「渡されたぞ? スペアじゃないのか?」
「そういえば水島さんに渡してた」
「じゃあ返した方がいいな」
「ヒナ、持っててくれない? 水島さんには別で渡すし」
「……いいのか?」
「ヒナに持ってて欲しい」
また断られるかなと思って聞いてみたら思わぬ反応が返って来て思わず被せ気味にそう言うと、嬉しそうにはにかんだヒナはこっくりと頷いた。
えー…すっごく可愛いんだけど。俺の理性、試されてる?
「ヒナならいつ来ても大歓迎だから」
「たまに来ないとこの部屋、腐海と化しそうだからな」
「それは今回だけだよ…」
今はヒナが片付けてくれたみたいで綺麗だけど、確かにひどい状態だったかもしれない。でもそれはヒナに連絡さえ取れなかったせいで、こうしてヒナに会えるならあそこまでにはならないと思う。
「で? あの写真は何だったんだ?」
「あれはたまたま。あの時、その日最後の仕事のスタッフにせっかくだからご飯食べに行きましょうって言われて断れなくて。入店してしばらくしたらあの子が入って来たんだけど、スタッフが顔見知りだったみたいで相席を勧めるから一緒に食べる流れになったんだ。……店から出て、別れようとしたらその子が躓いて俺を支えにしたところが撮られた」
「……色んな偶然が重なったのか」
「もう二度とスタッフとご飯行かない」
元々そういうのは避けてたのに、社長に付き合いは大事だって言われたから行ったらこんな事になって。正直この件に関しては社長を恨んでる。
「そんな事言うなって。スタッフさんだって真那と仲良くなりたいんだよ」
「俺はヒナだけいればいい」
「真那はホントに人付き合いが嫌いだな」
嫌いというか、俺の見た目で寄って来る奴がほとんどだからただ煩わしいだけだ。小さい頃からヒナ一筋だった俺に他の人なんて必要なくて、だからこそずっとヒナと一緒にいた。ヒナだけが俺のすべてなんだ。
ぎゅっとヒナを抱き締め一度も染めた事のない綺麗な黒髪に頬擦りすると、小さな手が俺の首に触れそのまま腕を回して抱き着いてきた。
「オレも、ごめんな」
「?」
「真那の事信じてるのに、連絡が途絶えたからちょっと…不安になった」
やっぱり……恋人の他人との熱愛報道なんて見たくもなかったよね。改めてあの女と写真を撮った記者に腹が立ってきた。
「ごめんね、ヒナ」
「真那は悪くないだろ。……でも、おかげで気付いた事あるんだ」
「気付いた事?」
「オレ、自分が思ってる以上に真那の事が好きなんだなって。真那が〝触らせないで〟とか、〝俺だけ見て〟って言う気持ちよく分かった」
「ヒナ……」
腕を降ろし、持ったままだったグラスをテーブルに置いたヒナは、今度は両腕を俺の首に回すと唇が触れ合いそうなほど顔を近付け、熱っぽい視線で見上げてきた。
「仕事上無理なのは分かってるけど、あんま他の人に触らせんな。真那が触っていいのはオレだけ。オレに触っていいのも真那だけ。オレは真那だけのものだから、真那もオレだけの真那でいてな?」
そう言ってヒナは目を瞬く俺に口付けてきた。
初めて明確な独占欲を露わにしたヒナにどうしようもない嬉しさが込み上げてくる。
「ヒナ…好きだよ、ヒナ。約束する。この先どんな事があっても、俺はヒナだけのものだから」
「ん、絶対だぞ」
「うん」
ヒナから贈られる拙いキスに応えながら誓い合う。息が上がるまで唇を触れ合わせてたんだけど、我慢出来なくてズボン越しに丸いお尻を撫でるとピクっと肩が跳ねた。
「ヒナ…したい」
「でも、明日も仕事だろ?」
「明日は昼から。それに、ヒナを抱いたらもっと元気になる」
「……どっちの意味で?」
「どっちの意味でも?」
「それはダメだろ。こっちが元気なのは…オレの前だけじゃないと怒る」
少しだけ意地悪に返したらムッとしたヒナが既に反応している俺の中心を指差して上目遣いに見てきた。恥ずかしがり屋のヒナがさっきから大胆な事を言ったりしたりするおかげで、自身がどんどん膨らんでいくのが分かり俺は片手で額を押さえた。
「……可愛すぎて困る」
「オレは死ぬほど恥ずかしい」
あ、恥ずかしいは恥ずかしいんだ。見事に首まで真っ赤になってるヒナに微笑んだ俺は火照った頬に触れ額に口付ける。
「安心して、ヒナ以外には勃たないから」
「勃っ…たないとか、そんな恥ずかしい事言うな…っ」
「だって本当の事だし。ヒナも、そんな可愛い顔は俺の前でだけにして」
「……真那だけに決まってるだろ…」
本当に、今日は可愛さが振り切れてる。
これを天然でやってるんだから、ヒナも性質が悪いよね。こうやってどんどん俺を深みにハメていく。
「愛してるよ、陽向」
「……!」
せめて年上の余裕は見せたくて耳元でちゃんと名前を呼べば、ヒナはあんぐりと口を開けてこれ以上ないほど真っ赤になった。
恥ずかしすぎるのか少しだけ目が潤んでる。
何も言えなくなった代わりか、体当たり並の勢いで再び抱き着いてきたヒナを抱き締めた俺は、細い首筋に鼻を寄せヒナの香りを思いっきり吸い込んだ。
354
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる