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雨が上がって
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ふと目が覚めた時、部屋が真っ暗で驚いた。雨もいつの間にか止んでいたようで、窓の外はすっかり静かになってる。
起き上がろうとして身体が動かない事に気付いたオレは、その原因が自分の腰元に乗せられた腕だと知り顔だけで振り返った。そこには寝息を立てて眠っている真那がいて、帰ってきた時とは違い穏やかな顔に安堵の息を吐く。
起こさないよう腕を外し、そっとベッドから降りると少しだけフラついた。腰は怠いし股関節も痛いけど、結構寝たおかげか歩けない事もないから一歩一歩慎重に歩いてリビングに向かう。
前もそうだけど、最終的に気を失ったオレの身体を真那は綺麗にしてくれたらしく、前も後ろもベタベタしてる感じはない。しかも服まで着せてくれたみたいで、裸でウロウロしなくて済んだのは素直に有り難かった。まぁ、真那の服だからブカブカだし肩は出るけどな。
リビングに行き背凭れ側からソファを覗くと数時間前の事を思い出して頬が熱くなるのを感じた。
「ぐちゃぐちゃ…」
脱ぎ散らかされた服が生々しくて何となく目を逸らしながら拾い集める。
あのままここで始めてしまったのは宜しくなかったかもしれない。ベッドはともかく、座るたびに思い出しそうでなんか嫌だ。
『ヒナ…気持ちいい…?』
見慣れたはずの綺麗な顔が、色気を纏うと途端に男臭く感じるのは何でだろう。最中の真那、めちゃくちゃカッコ良くてオレの心臓ずっとドキドキしてた。
お互いの汗や体液で汚れた服を洗濯機に入れてスイッチを押し、テーブルに置いたままのグラスを洗って水を注ぐ。ウォーターサーバー、便利だな。
「…ヒナ…っ」
寝室からバタバタと足音が聞こえ目を瞬いていると、勢い良く開いたドアから慌てたように真那が出てきて、オレと視線が合うなりあからさまにホッとした顔をして近付いて来た。
その勢いのまま抱き締められ、危うく水が零れそうになったグラスを置いてから背中に腕を回す。
「目が覚めたらいないから…帰ったのかと思った……」
「何も言わずに帰らないって」
「身体平気?」
「大丈夫。それより、冷蔵庫に何もないのが問題だな。夜ご飯どうするんだ?」
「デリバリー?」
「オレのスマホには登録されてないぞ?」
「……俺も今はスマホなかった」
オレはクレジットカードは作れないし、デリバリーアプリ自体使った事がない。オレが買いに行ってもいいんだけど服は今洗濯中だし。
加減はしながらもぎゅーぎゅー抱き着いてくる真那の背中を軽く叩いて腕の力を緩めて貰い、顔を上げたオレは真那と目が合うなり笑ってお願いした。
真那がこんな夜……と言っても二十二時にオレを外に出す訳がなく、結局真那がコンビニで買って来てくれた弁当を温めてさぁ食べるかとソファに座ったんだけど、何故か今は真那の膝に横向きで座らされ手ずから食べさせて貰ってた。いつかと逆で今は俺が雛鳥の気分だ。
「ヒナ、あーん」
「あー」
これもさ、小さい頃からだし何なら真那がアイドルになるまでは昼休みに毎日のようにやってた事だけど、恋人って立場になると物凄く恥ずかしいものがあるな。
一口にしては大きな唐揚げを口に入れられ頬張る。
「ひょっほへはい……」
「じゃあ半分ちょうだい」
「?」
何をと思っていると口が塞がれ、真那の舌が入って来て唐揚げを奪っていく。目を瞬いて真那と視線を合わせたまま固まってたら半分に噛み切られた唐揚げが戻って来て唇が離れた。
「……ん、美味しいね」
ゆっくりと咀嚼し飲み込んでから頷いたけど、こういうのどこで覚えてくるんだ? それともオレが知らないだけで、恋人の間では当たり前なのか?
「オレばっかりに食べさせてないで、真那も食べろよ」
「あとで食べるよ。今はヒナにしてあげたい」
そう言って微笑んだ真那は、親指でオレの口端を拭いて今度はご飯を食べさせようとする。でもオレはそれに首を振り別の箸を掴むと、真那のハンバーグを一口サイズに切り口元へと運んだ。
「ほら、あーん」
「あー…ん」
キョトンとしたあと嬉しそうに目を細めた真那は口を開けてハンバーグを食べ、咀嚼したあと額と額を合わせて来た。視線だけで見れば少しだけ緑がかった目に自分が映ってて不思議な気持ちになる。
「真那の目の色、小さい頃より緑みが強くなってるな」
「そう? 自分じゃ分からないな」
「ママさんは綺麗な緑だったけど」
「おばあちゃんの血が強いんだろうね。俺の髪もそうだし」
自分の前髪を見るように視線を上げる真那にふっと笑ったオレは、箸を置いて両手を上げると少しだけ乱暴に蜂蜜色の柔らかな髪を撫でた。
真那の髪はママさんのお母さん、つまり真那のイギリス人のおばあちゃん譲りの色でもちろん地毛だ。だから子供の頃とか良く揶揄われたりしてたけど、真那は他人に興味なかったから気にも止めてなかったな。
日に透けてキラキラと光る真那の髪、オレは小さい頃からずっと好きでしょっちゅう触ってた。
「もし真那に子供が出来たら、同じような色になるのかな」
「え?」
「それはちょっと羨ましいな。オレの子だったら真っ黒な髪に真っ黒な目になるだろうし」
「……」
まず見た目からして真那とオレとじゃ全然違うからな。でも、真那の子ならちょっと見てみたいかも。絶対美形に生まれるだろうし。
小さい頃の真那を思い浮かべ、こんな感じかなと思っていると不意に強く抱き締められ目を瞬いた。顔を上げると、笑顔なのにどこかヒンヤリした空気を纏った真那がいて困惑する。
「真那?」
「ヒナの子なら、それはもう可愛くて堪らないだろうね」
「う、うん?」
「ヒナが生んでくれるなら喜んで中に出してあげるけど」
「や、えっと、ちょっと思っただけで…それにオレは男だし……」
「ねぇ、ヒナ。俺はね、ヒナさえいればいいんだよ。ヒナにも俺だけがいればいい。だから例え仮定の話だとしても、他の誰かを連想させるような事は言わないで。嫉妬で気が狂いそうになる」
意図してはなかったんだけど、どうも真那の琴線に触れてしまったらしい。嫉妬心も独占欲も強いとは分かってたけど、こういう話も仕方によってはアウトなんだ。
「ご、ごめん…」
「ヒナを愛していいのは俺だけだからね」
「分かってる。オレだって真那じゃないと嫌だ」
そう答えた瞬間いつもの雰囲気に戻った真那にホッとしたオレは、恐らく世間では重いと言われるほどの愛情を向けてくれる恋人に嬉しさを感じ、真那の頬へと唇を押し当てた。
弁当を食べ終え、少しだけ休憩してから寝る準備を終えた頃にはもう日付けが変わっていて、乾燥機にかけていた服は明日畳むからとソファへ運び真那と一緒にベッドへと入った。
腕枕と背中を撫でる手の温かさにウトウトしていると額に何かが触れる。それが真那の唇だと気付かないくらいには眠い。
「ヒナ。俺、免許取ろうと思ってるから、取れたらドライブデートや旅行しよう」
「いいな、それ…真那とデート出来るとか……幸せだ…」
「ヒナが行きたいところも全部行こうね」
「ん…ありがと……」
背中を撫でていた手が頭に移動し髪を梳き始める。あー…これは心地良すぎてダメだ。とてもじゃないが起きていられない。
「……まな…」
「おやすみ、ヒナ」
「…ん……」
もう限界だと告げようとしたけど口が回らなくて、目が完全に閉じてしまう瞬間に見えた真那の服を緩く掴むと、耳元で真那の優しく囁く声が聞こえた次にはもう意識がなくなっていた。
「愛してるよ、ヒナ。もう二度と不安になんてさせないから」
そう言った真那がオレの首筋に何度も唇を押し当てて強めに吸った事なんて知る由もなくて、翌日にそれを見付けて驚いたオレが驚愕の声を上げたのは仕方ない事だと思いたい。
起き上がろうとして身体が動かない事に気付いたオレは、その原因が自分の腰元に乗せられた腕だと知り顔だけで振り返った。そこには寝息を立てて眠っている真那がいて、帰ってきた時とは違い穏やかな顔に安堵の息を吐く。
起こさないよう腕を外し、そっとベッドから降りると少しだけフラついた。腰は怠いし股関節も痛いけど、結構寝たおかげか歩けない事もないから一歩一歩慎重に歩いてリビングに向かう。
前もそうだけど、最終的に気を失ったオレの身体を真那は綺麗にしてくれたらしく、前も後ろもベタベタしてる感じはない。しかも服まで着せてくれたみたいで、裸でウロウロしなくて済んだのは素直に有り難かった。まぁ、真那の服だからブカブカだし肩は出るけどな。
リビングに行き背凭れ側からソファを覗くと数時間前の事を思い出して頬が熱くなるのを感じた。
「ぐちゃぐちゃ…」
脱ぎ散らかされた服が生々しくて何となく目を逸らしながら拾い集める。
あのままここで始めてしまったのは宜しくなかったかもしれない。ベッドはともかく、座るたびに思い出しそうでなんか嫌だ。
『ヒナ…気持ちいい…?』
見慣れたはずの綺麗な顔が、色気を纏うと途端に男臭く感じるのは何でだろう。最中の真那、めちゃくちゃカッコ良くてオレの心臓ずっとドキドキしてた。
お互いの汗や体液で汚れた服を洗濯機に入れてスイッチを押し、テーブルに置いたままのグラスを洗って水を注ぐ。ウォーターサーバー、便利だな。
「…ヒナ…っ」
寝室からバタバタと足音が聞こえ目を瞬いていると、勢い良く開いたドアから慌てたように真那が出てきて、オレと視線が合うなりあからさまにホッとした顔をして近付いて来た。
その勢いのまま抱き締められ、危うく水が零れそうになったグラスを置いてから背中に腕を回す。
「目が覚めたらいないから…帰ったのかと思った……」
「何も言わずに帰らないって」
「身体平気?」
「大丈夫。それより、冷蔵庫に何もないのが問題だな。夜ご飯どうするんだ?」
「デリバリー?」
「オレのスマホには登録されてないぞ?」
「……俺も今はスマホなかった」
オレはクレジットカードは作れないし、デリバリーアプリ自体使った事がない。オレが買いに行ってもいいんだけど服は今洗濯中だし。
加減はしながらもぎゅーぎゅー抱き着いてくる真那の背中を軽く叩いて腕の力を緩めて貰い、顔を上げたオレは真那と目が合うなり笑ってお願いした。
真那がこんな夜……と言っても二十二時にオレを外に出す訳がなく、結局真那がコンビニで買って来てくれた弁当を温めてさぁ食べるかとソファに座ったんだけど、何故か今は真那の膝に横向きで座らされ手ずから食べさせて貰ってた。いつかと逆で今は俺が雛鳥の気分だ。
「ヒナ、あーん」
「あー」
これもさ、小さい頃からだし何なら真那がアイドルになるまでは昼休みに毎日のようにやってた事だけど、恋人って立場になると物凄く恥ずかしいものがあるな。
一口にしては大きな唐揚げを口に入れられ頬張る。
「ひょっほへはい……」
「じゃあ半分ちょうだい」
「?」
何をと思っていると口が塞がれ、真那の舌が入って来て唐揚げを奪っていく。目を瞬いて真那と視線を合わせたまま固まってたら半分に噛み切られた唐揚げが戻って来て唇が離れた。
「……ん、美味しいね」
ゆっくりと咀嚼し飲み込んでから頷いたけど、こういうのどこで覚えてくるんだ? それともオレが知らないだけで、恋人の間では当たり前なのか?
「オレばっかりに食べさせてないで、真那も食べろよ」
「あとで食べるよ。今はヒナにしてあげたい」
そう言って微笑んだ真那は、親指でオレの口端を拭いて今度はご飯を食べさせようとする。でもオレはそれに首を振り別の箸を掴むと、真那のハンバーグを一口サイズに切り口元へと運んだ。
「ほら、あーん」
「あー…ん」
キョトンとしたあと嬉しそうに目を細めた真那は口を開けてハンバーグを食べ、咀嚼したあと額と額を合わせて来た。視線だけで見れば少しだけ緑がかった目に自分が映ってて不思議な気持ちになる。
「真那の目の色、小さい頃より緑みが強くなってるな」
「そう? 自分じゃ分からないな」
「ママさんは綺麗な緑だったけど」
「おばあちゃんの血が強いんだろうね。俺の髪もそうだし」
自分の前髪を見るように視線を上げる真那にふっと笑ったオレは、箸を置いて両手を上げると少しだけ乱暴に蜂蜜色の柔らかな髪を撫でた。
真那の髪はママさんのお母さん、つまり真那のイギリス人のおばあちゃん譲りの色でもちろん地毛だ。だから子供の頃とか良く揶揄われたりしてたけど、真那は他人に興味なかったから気にも止めてなかったな。
日に透けてキラキラと光る真那の髪、オレは小さい頃からずっと好きでしょっちゅう触ってた。
「もし真那に子供が出来たら、同じような色になるのかな」
「え?」
「それはちょっと羨ましいな。オレの子だったら真っ黒な髪に真っ黒な目になるだろうし」
「……」
まず見た目からして真那とオレとじゃ全然違うからな。でも、真那の子ならちょっと見てみたいかも。絶対美形に生まれるだろうし。
小さい頃の真那を思い浮かべ、こんな感じかなと思っていると不意に強く抱き締められ目を瞬いた。顔を上げると、笑顔なのにどこかヒンヤリした空気を纏った真那がいて困惑する。
「真那?」
「ヒナの子なら、それはもう可愛くて堪らないだろうね」
「う、うん?」
「ヒナが生んでくれるなら喜んで中に出してあげるけど」
「や、えっと、ちょっと思っただけで…それにオレは男だし……」
「ねぇ、ヒナ。俺はね、ヒナさえいればいいんだよ。ヒナにも俺だけがいればいい。だから例え仮定の話だとしても、他の誰かを連想させるような事は言わないで。嫉妬で気が狂いそうになる」
意図してはなかったんだけど、どうも真那の琴線に触れてしまったらしい。嫉妬心も独占欲も強いとは分かってたけど、こういう話も仕方によってはアウトなんだ。
「ご、ごめん…」
「ヒナを愛していいのは俺だけだからね」
「分かってる。オレだって真那じゃないと嫌だ」
そう答えた瞬間いつもの雰囲気に戻った真那にホッとしたオレは、恐らく世間では重いと言われるほどの愛情を向けてくれる恋人に嬉しさを感じ、真那の頬へと唇を押し当てた。
弁当を食べ終え、少しだけ休憩してから寝る準備を終えた頃にはもう日付けが変わっていて、乾燥機にかけていた服は明日畳むからとソファへ運び真那と一緒にベッドへと入った。
腕枕と背中を撫でる手の温かさにウトウトしていると額に何かが触れる。それが真那の唇だと気付かないくらいには眠い。
「ヒナ。俺、免許取ろうと思ってるから、取れたらドライブデートや旅行しよう」
「いいな、それ…真那とデート出来るとか……幸せだ…」
「ヒナが行きたいところも全部行こうね」
「ん…ありがと……」
背中を撫でていた手が頭に移動し髪を梳き始める。あー…これは心地良すぎてダメだ。とてもじゃないが起きていられない。
「……まな…」
「おやすみ、ヒナ」
「…ん……」
もう限界だと告げようとしたけど口が回らなくて、目が完全に閉じてしまう瞬間に見えた真那の服を緩く掴むと、耳元で真那の優しく囁く声が聞こえた次にはもう意識がなくなっていた。
「愛してるよ、ヒナ。もう二度と不安になんてさせないから」
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