人気アイドルになった美形幼馴染みに溺愛されています

ミヅハ

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やり直し

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 ちょっとした旅行気分を味わい余韻も冷めやらぬまま月曜日。
 登校して千里と円香にお土産を渡したオレは、教室に入って来た日下部を手招きして階段のところへ連れて行くと、真那にバレないようこっそり買っておいたご飯のお供セットを差し出した。

「へ?」
「お礼も兼ねて。真那には内緒にしたから、絶対誰にも言うなよ」
「律儀やなぁ。自分の恋人が嫌っとる相手に、恋人に隠し事してまで土産買うてくるとか」
「その言い方はチクチクくるからやめろよ」
「ウソウソ。ホンマ嬉しいわ、ありがとうな」
「ったく…」

 あの時はしおらしかったのに、いちいち嫌味な言い方しないとお礼も言えないのか。……お礼を言ってるのはこっちだけど。
 物珍しそうに土産の表裏を交互に見ている日下部に、オレはずっと気になっていた事を聞く事にした。

「…あの、さ…奏音さん、あれからどうしてる?」
「……お前な、お人好しも大概にしぃや。奏音にひどい事されたんに、何で気にするんや」
「だって、あのあと絶対大変だっただろうし…オレはブチ切れた真那を見た事ないから分かんないけど、怖かったんじゃないかなって」

 奏音さんはモデルだけあって女の子にしては背が高めだけど、オレよりは小さくて華奢だから長身過ぎる真那に本気で睨まれたりしたらそれだけで怖いはずだ。確かにされた事や言われた事は胸に刺さったけど、それとこれとは別だし。
 眉を顰める日下部からふいっと顔を逸らしてそう言えば盛大に溜め息をつかれた。

「こんなん真那やなくても心配になるわ」
「何?」
「何もない。……奏音には真那の事諦めるように言うとる。本気で惚れとったけど、真那がむちゃくちゃ陽向の事が好きやいうのは分かったやろうからもう纏わり付かんやろ」
「……怖がってなかったか?」
「ちょっとだけな。今はもう普通に仕事しとるし、陽向が気にする事ないで」

 気にする事ないって言われても、間接的とはいえオレにも原因があるんだし奏音さんのトラウマになったら可哀想だ。

「アイツ、案外強かやから。新しい恋を探すとか言うとったし」
「そっか…」
「せやからホンマに気にすんな。あんま気にされるとまた真那に睨まれる」
「それは日下部が真那を嫌ってるからじゃないのか?」
「他人に無関心な奴が自分嫌われとるわーって気にする訳ないやろ。俺が陽向と仲良うしとんのが気に食わんだけや」

 そういえば、オレにちょっかい出すから好きじゃないとか言ってた気が…日下部の言う事、案外間違ってないのかもな。真那は人が見ても分かるくらいのヤキモチ妬きらしいから。

「じゃあ仲良くするのやめるか」
「え、何それ。新手のイジメ?」
「真那に睨まれるの嫌なんだろ?」
「別に嫌ちゃうし、腹立つだけやし」
「子供か」

 不貞腐れたような言い方と表情がおかしくて吹き出すと痛くも何ともないチョップが頭に降ってきた。反射的に首を竦めたらそのままガシッと頭を掴まれ回れ右させられる。
 あれ? と思ってると、予鈴が鳴って日下部の手が離れた。

「お、タイミングばっちりやな。予鈴鳴ったし、教室行こか」
「? うん」
「陽向は自分から話し掛けるタイプやないけど、一旦心許したら犬みたいに懐くな。悪い気はせんけど、いろいろ気ぃ付けや」
「大丈夫だ。オレは人を見る目がある」
「やからそういうんが……」
「何だよ」

 日下部が何を言いたいのか分からず振り返るもお土産が入った袋で軽く叩かれビクッとなった。地味に痛い。
 ヒリつく顔面を押さえてると、日下部が困ったように笑ってしっしっとオレに向かって手を払うような仕草をする。それにムッとし、はいはい行きますよと大股で教室に向かうオレの後ろで日下部は小さく何かを呟いてたみたいだけど、少し先を歩くオレには聞こえなかった。

「アカン…可愛く見えてしゃーないわ…」




 次の日が祝日だからと真那の家に呼ばれたオレは、ソファに座らされ目の前に並べられるものに目を瞬いていた。

「真那?」
「もう少し待ってね」
「待つけど…これは一体?」
「誕生日のやり直ししようと思って」

 何となくそんな予感はしてたけど、微笑んだ真那が答えながら小さめのホールケーキを真ん中に置くから喉奥がキュってなった。
 いろいろあったからオレ自身は十六歳になったんだなって感覚しかなかったけど、真那はずっと気にしてくれてたんだな。
 全部並べ終えたのか、一本の長いローソクと六本の短いローソクに火を点けた真那は、リモコンで電気を消し隣に腰を下ろしてオレの頭を撫でる。

「誕生日おめでとう、ヒナ。当日、一人にしてごめんね」
「真那のせいじゃないだろ。…でも、ありがとう」
「来年からは絶対、何があっても一緒に過ごそう。約束」
「うん、約束な」

 小指同士を絡ませ軽く振る。こんな約束の仕方、何年振りだろう。
 ローソクを吹き消そうと思ったら真那からストップがかかり、まさかのバースデーソングを歌ってくれて驚いた。うわぁ、めちゃくちゃ贅沢。
 耳が幸せになるのを感じ、歌い終わった真那に促されて思いっ切り吸い込んだ息でローソクの火を吹き消した。

「おめでとう」
「ありがとう」

 火が全部消え再び電気がついた眩しさで目を細めていると、肩が抱かれこめかみに口付けられる。

「ヒナ、目を瞑っててくれる?」
「ん? うん、分かった」
「いいよって言うまで開けないで」

 それに頷きで答え目を閉じてじっと待ってると、真那が離れる気配がして少したら嗅ぎ慣れた香りと共にソファが沈み、左手が取られ薬指が一瞬ヒンヤリする。
 何となく察してえっと思ってると唇に何かが触れ驚いて目を開けてしまった。
 綺麗な顔がドアップになってて少しだけビクッとする。

「……まだいいよって言ってないよ?」
「ご、ごめん」

 ふっと微笑んで突っ込んでくる真那に思わず謝ると、そのまま抱き締められて髪に頬擦りされる。
 そういえばと慌てて左手を持ち上げてみると、思った通り薬指に何の飾り気もないシンプルなシルバーリングが嵌ってて身体から力が抜けた。

「ヒナ?」
「これ、何で?」
「だってヒナは俺のだから」
「そりゃそうだけど…指輪は気が早くないか?」
「そう? でもこれ、ヒナと付き合う前から用意してたから」
「え?」

 付き合う前から用意してた? 付き合えるかどうかも分からないのに?
 真那の行動力にポカンとしてると、腕の力が緩んで今度は額が合わせられる。

「オレが振ったらどうしてたんだ?」
「もちろん、好きになって貰えるまで頑張ったよ。俺はヒナ以外考えられないし、ヒナが俺以外の誰かのものになるなんて絶対嫌だから」
「ずっと幼馴染みとしてしか見れないって言ってたら?」
「そうしたら……ヒナの事閉じ込めてたかも」

 まさかの監禁宣言。
 でも、オレにだけ無条件に優しくて笑顔見せてくれてひたすら特別扱いして甘やかしてくれる真那を好きにならないかって聞かれたら……まぁ確実好きにはなるだろうな。オマケに国宝級の美形だし。
 というか、真那に告白されて断る奴いるんだろうか。

「ヒナ、大好きだよ。ずっと一緒にいようね」
「ん。でも閉じ込めるのだけは勘弁な」
「しないよ」

 両手で頬を挟まれ唇が重なる間際に言えばクスクスと肩を揺らして笑った真那が口付けてくる。
 ぬるりと入って来た舌がオレの舌を突つき付け根から掬い上げるようにして絡めてきた。真那の舌に口の中を擦られるのは気持ち良いから好きだ。自分が上手く返せてるとは思わないけど、真那もそう思ってくれてると嬉しい。

「ん…ふ…」

 静かな部屋にリップ音が響き、夢中になって応えていると体重がかけられソファに押し倒された。そのまま角度を変えて何度もキスされ、真那の手が服の下に入ってきたから慌てて押さえる。
 このまま始まってしまうのはマズイ。

「ま、真那…っ」
「んー?」
「せっかく用意してくれたんだし、ご馳走食べたいんだけど…」
「……」

 肩を押しテーブルに並んだ豪華な料理を指差すと、それをチラリと見た真那は数秒黙り込み残念そうな溜め息をついて身体を起こす。ついでにオレの腕を引いて起こしてくれると、とどめとばかりになっがーいキスをしてきた。
 上手く息が出来なくて死ぬかと思ったけど、浅く短い呼吸をするオレを満足そうに見る真那には何も言えなくて睨むだけにしておく。
 とりあえず、オレの為に用意されたご馳走に集中する事にして、ここぞとばかりに真那に「あれ取ってこれ取って」と注文したのだった。



 しばらくして、プチ旅行(?)から帰宅して以来ずっと考えてた事を思い出したオレは、社会人としても先輩である真那にアドバイスを貰おうと聞いてみる事にした。

「そうだ。オレさ、バイトしようかと思ってるんだけど…」
「駄目」
「え?」
「絶対駄目」

 最後まで言わせてくれないどころか被せ気味に否定されてしまい目を瞬く。
 真那と一緒に住むっていう話を進めるのに一番早い方法は自立する事だし、確かにまだまだ子供だけど少しでも社会に出れば父さんも認めてくれるかもって思ったんだけど。
 いっそ内緒でしてしまうか? と考えていたら、「こっそりしたら見えるところに痕付けまくるからね」と笑顔で言われてしまい、学校生活にさえ支障が出そうだと悟ったオレは愛想笑いで何度も頷いた。
 ヤキモチだけじゃなく、独占欲も相当のようだ。
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