人気アイドルになった美形幼馴染みに溺愛されています

ミヅハ

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ロケ現場にて(複数人視点)

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〈side.番組スタッフ〉

 今日は待ちに待った【soar】の収録日!
 テレビ局のスタッフになって早三年。デビューした彼らを見た瞬間、私のハートが今まで経験した事がないくらい高揚して興奮したのを今だに鮮明に覚えてる。
 他のアイドルより群を抜いてビジュアルの良い彼らは主に都内で活動していて、ライブやイベント等で地方に来る事はあってもその忙しさからローカル番組に出演する事がほとんどなかった。
 でも今回は新しくプロデューサーになった方と【soar】の事務所の社長さんがお知り合いらしく、念願叶って出演して頂ける事になったそうだ。
 もうすぐメンバーが現場入りする時間。私含め、女性スタッフはみんなソワソワしていた。

「【soar】さん、入られまーす」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いしまーす!」

 来たー!
 や、ヤバい! 何てキラキラしてるの! この世にこんなキラキラした人達がいていいの!? っていうか存在してる事が奇跡!
 全国的に大人気の【soar】をタクシーや電車でなんて移動させられない為、交通手段はこちらが用意したロケバスだ。そこから降りて来た志摩さんと風音さんのにこやかな顔に心の中で手を合わせる。でも真那さんがまだだから待っていたんだけど、なかなか降りて来なくてそっと中を覗いた私は目を瞬いた。
 バスの後ろの方に真那さんともう一人小柄な男の子がいて、その子の頭を真那さんが優しく撫でててから。

「水島さんが様子を見に来てくれるから、ここから動いたら駄目だよ」
「分かってるって。撮影頑張ってな」
「うん。もし何かあったら叫んで」
「それは事件になるだろ」

 な、何だかただならぬ雰囲気を醸し出してる…とか思ってたら真那さんがその子のおでこに口付けた。も、もも、もしかしてあの二人って…。

「すみません」
「!?」

 内心興奮しながらその様子を見ていると、突然後ろから声をかけられて肩が跳ねた。慌てて振り向くと、【soar】のマネージャーである水島さんがいて困った顔をしている。
 バスの中をちらりと見た水島さんは、やれやれと首を振って苦笑し頭を掻いた。

「あの二人の事は内密にして頂けますか? 彼は真那にとってとても大事な子なので、何かあると真那が駄目になるんです」
「そ、そうなんですか…」
「真那はバレても気にしないのですが、彼が落ち込んでしまうので。宜しくお願い致します」
「わ、分かりました。決して誰にも言いません」
「ありがとうございます」

 にこっと笑う水島さんは俳優さんでも通じるくらいカッコ良くて思わずときめいてしまったけど、残念な事に既婚者だ。
 それにしても、まさか真那さんにそんな人がいるとは思わなかった。テレビで拝見しても、今何を考えてるんだろうって思う事の方が多いくらい感情を表に出さないから、私生活が本当に謎な人なんだよね。
 確か少し前にモデルの奏音さんと熱愛報道が出たけど、あれは全くのデタラメらしく以降は何の情報も出なかった。
 なるほど、本命はあの子だったのか。

「真那、みんな待たせてるから早く降りなさい」

 何だか見てはいけないものを見た気持ちでソワソワしていると、水島さんが真那さんへ声をかけ少ししてからご本人が降りてくる。
 見事なまでの王子様フェイスに固まる私に頭を下げ、真那さんは志摩さんと風音さんのところへ歩いて行った。思った以上に背が高くてちょっとビクッとしてしまったのは許して欲しい。
 でもあの子、真那さんが戻って来るまで一人なのよね。ちょっと心配だな。

「あの、もし良ければ私がちょくちょくバスまで来ましょうか?」
「え?」
「私や数人のスタッフは何かあった時の為にここで待機になっているので、恐らく水島さんよりは時間があると思いますし」
「大変有り難い申し出ではありますが…本当に宜しいのですか?」
「もちろんです」

 何より私が落ち着かない気がする。
 大きく頷くと、水島さんはホッとしたように頭を下げて来た。

「すみません、有り難うございます。宜しくお願い致します。ちょっと彼に伝えて来ますね」
「はい」

 水島さんがバスに乗り込んでから少しして手招きされた為バスへと近付くと、外から見えないギリギリのところに男の子がいて目を瞬いた。
 さっきは真那さんに隠れて半分しか見えなかったけど、正面から見た彼は何とも可愛らしい顔立ちをしていて驚く。目がくりっとしてて小動物みたい。
 ……というか、彼の首筋に赤い痕が点々と……あわわ。

「あの、オレの事気にして下さってありがとうございます。オレ、陽向って言います」
「あ、わ、私は早瀬です! 一人だと心細いかと思って…いらないお節介かもしれませんけど、必要なものとかあったら言って下さい」
「お節介だなんてとんでもない、凄く嬉しいです。でもお仕事もありますし、無理はしないで下さいね。何なら寝てますので」

 何ていい子なんだろう。しかも笑った顔がめちゃくちゃ可愛い。こりゃ真那さんも惚れるわ。

「それじゃあすみませんが、あとをお願いします」
「はい、お任せ下さい!」

 ビシッと敬礼してそう言えば小さく笑った水島さんは、陽向くんの頭を撫でてロケの説明を聞いている【soar】の元へと歩いて行った。
 絵になるなぁ。

「じゃあ、オレも引っ込んでますね」
「あ、はい。何かありましたら窓コンコンして下さい」
「はい」

 人懐こい笑顔を浮かべて元の席に戻る陽向くんに癒された私は、遠目で見える【soar】の圧倒的アイドルオーラで集まったギャラリーの数に苦笑しつつ仕事に取り掛かった。





〈side.水島〉

 真那には困ったものだ。いくら前日の現地入りを許可したとはいえ、ロケに陽向くんを同行させるなど本来あってはならない事だ。陽向くんの申し訳なさそうな顔に、逆にこちらがすまないと言いたくなる。
 だが陽向くんが傍にいれば真那の機嫌がいつもより良いのは確かで、社長からも陽向くん関連なら大目に見てもいいと言われているから何も言わないが…彼がいい子だからこそ許されてる事だ。
 スタッフさんに二人の事を見られた時は迂闊だと思ったが、優しい女性で良かった。陽向くんの事も気にかけてくれるようだし、大変有り難い。

「水島さん、ヒナは」
「ああ。待機してる女性スタッフさんが様子を見てくれるそうだから任せて来たよ。いい人そうだし、問題はないだろう」
「は? ヒナを知らない人に任せるなんて信じられないんだけど。何かあったらどうするの? その人がヒナに何かしたら?」
「お前は考えが飛躍し過ぎだ。他にも何人かロケバスの近くにいるから」
「俺は、水島さんだからヒナを任せてるのに」
「それは光栄だな。だが、俺はお前たちのマネージャーだから、陽向くんよりもお前たちが優先なんだよ」

 もちろん真那たち同様陽向くんも気に掛けてはいるが、俺の仕事は【soar】のマネージメントだ。最も優先すべきは彼らで、言い方は悪いが芸能人ではない陽向くんはどうしても二の次になる。
 まぁ陽向くんならそれが当たり前ですとか言いそうだが、陽向くん第一な真那は納得出来ないんだろう。
 不貞腐れる真那を宥めて背中を押し初手の立ち位置へ戻す。志摩の肩に手を置いて真那を示すと苦笑して頷いた。

「水島さん」
「ん?」
「時間あったら、水島さんも見に行って俺に教えて」
「はいはい」

 本当に過保護だな。それだけ俺を信頼してくれてるのは嬉しいけど、さすがに番組スタッフが人目のある場所で何かをする訳がないだろう。
 だが、陽向くんの事が心配になる気持ちは分かるから、時間があれば様子を見に行くかな。

 時間になりスタートした撮影にホッと息を吐き、台本通り進行する志摩を眺めながら無事にロケを終えられるようにと祈った。


 数時間後。ファンが集まり過ぎて一時撮影中断のトラブルに見舞われながらもどうにか終えた三人は、スタッフさんに挨拶をしてロケバスへと戻って行く。待機していたスタッフさんの方も特に問題はなかったようで、早瀬さんを探せばスタッフからは見えない側のバスの後方にいて開けた窓越しに陽向くんと話していた。

「うわー、凄くいい事聞いた。なるほど、隠し味か~」
「入れるのと入れないのとで全然違いますよ」
「今度試してみるね、ありがとう」
「オレの方こそ、今度教えて頂いた料理作ります。ありがとうございます」

 なるほど、料理の話で盛り上がっているのか。すっかり仲良くなった様子に小さく笑い近付く。

「早瀬さん」
「あ、水島さん。お疲れ様です」
「お疲れ様です。撮影が終わりましたので、あの子たちももう戻って来ますよ」
「分かりました。陽向くん、真那さん戻ってくるそうだからもう少し待ってて。私は片付けに行ってくるから」
「はい。ありがとうございます、早瀬さん」

 陽向くんへ手を振り、俺には頭を下げて戻った早瀬さんは何かあった時の為にと用意していた機材を片付け始めた。それとは入れ違いに戻って来た真那は待機スタッフに軽く会釈すると早々にロケバスへと乗り込む。
 その時見えた横顔があからさま過ぎて苦笑しか出ない。
 この後は新幹線で帰るだけなのだが、その前に土産を買いたいと言っていたな。この近辺ならまだ撮影だと思って貰えるかもしれないし、片付け終えるまでにまだ時間があるだろう。

「真那、土産を買うなら今のうちに行って来い」
「いいの?」
「今ならな。一時間くらいしかないけど…」
「一時間…ヒナ、間に合いそう?」
「間に合わせる。ダッシュだ、真那」
「ちゃんとここに戻って来いよ」
「はい!」

 元気よく返事をする陽向くんに対し、真那は頷きだけで返して陽向くんの手を取り歩き出す。だが、逆にその手を引くように陽向くんが走り出したものだから、真那も気怠げにしながらも小走りで追い店へと向かって行った。
 あれが出来るのも陽向くんだけだろうな。

「あれ、真那は?」
「陽向くんとお土産買いに行った」
「え、俺たちも買いたいんだけど」
「一時間以内に戻って来れるなら行って来ていいよ」
「マジ? じゃあ行こうぜ、志摩さん」
「うん。それじゃあちょっと行って来ます」
「ああ」

 二人はしっかりしてるからまぁ大丈夫だろう。主役のいなくなったロケバスに乗り込んだ俺は、無事ロケが終了した事を連絡するべくスマホを取り出し、社長へと電話をかけ始めた。





〈side.通りすがりのファンの女性〉

 帰り道にあるお店に、アイドルグループ【soar】の真那くんと、仲良さげに話してる男の子がいる。土産を手にあーでもないこーでもないと相談し合ってるけど……これは見てもいいものなのかしら?
 この近辺で【soar】が撮影しているというのはSNSからの情報で知ってて、せっかく早めに仕事を終えて急いで現場に来たのにもう終わってた事にショックを受けてたら、土産物屋で生真那くんを見付けて大興奮。撮影の延長なのかもと思ってたらテレビでも見た事ない子がいて、これはプライベートなんだって分かった。
 だって明らかに真那くんの顔が違う。テレビや雑誌、ライブで見る真那くんは無の申し子みたいににこりともしないのに、あの子には物凄く優しい笑顔を向けてる。というか、あんな顔も出来るんだって感じ。
 不自然じゃない範囲で近付いてみると、二人の会話が聞こえてきた。

「これなんかどうだ? 円香は好きそうだけど」
「いいと思う。ヒナも好きでしょ? 俺買ってあげる」
「え? いいよ。自分のくらい自分で買うって」
「俺が買ってあげたい。ほら、もう一人の子のは?」
「千里は…こっちかな。甘さ控えめなのが好きっぽいし」
「これで決定する?」
「うん。真那は? 欲しいもんないのか?」
「俺はいいよ。ヒナは? 他にある?」
「や、ない。会計する」

 お店の外でスマホを弄る振りをしながら背中を向けて聞いてるだけなんだけど、真那くんの声が思った以上に甘い。もうね、恋人に向けるそれなんだけど、もしかして真那くんってこの子とお付き合いしてたりする?
 奏音との報道が流れた時は「はぁ?」って怒りが湧いたけどこれはこれで逆に驚く。いや、でも、これだけ分かりやすいとショックさえを受けないというか。

「あ、何だよお前ら、ここにいたのか」
「お土産買えた?」
「!?」

 こうまで違うかと思ってると、更に二人増えたらしく顔を上げて固まった。志摩くんと風音くんまで合流したようで、お店の中が一気に賑やかになる。
 ヤバい、顔面偏差値最高レベルの三人が一堂に会しててもう祭り会場並。気付いた人達が足を止めてザワつき始めてるし…ってか、そうなるとあの子の事は大丈夫なのかと心配になる。

「志摩さん、風音さん」
「俺らも買いに来た。あれ、真那も買うのか?」
「これはヒナの」
「相変わらず仲良いな、お前ら」
「幼馴染みなんだから、仲良いに決まってるよね」

 なるほど、幼馴染み。そうだよね、小さい頃からの知り合いならあの表情や声も納得……納得? いや、果たして幼馴染みにあんな甘い声を向けるだろうか。
 たぶん見てる人がいるからわざと言ったんだと思うけど、聞く人が聞けば分かってしまうレベルで真那くんの接し方が違うんだよね。それこそ隠す気ないなってくらい。
 でも私はそこら辺を弁えているファンなので、この話は拡散しないし口外もしない。だって真那くん、物凄く幸せそうなんだもの。

「あ、なぁなぁ陽向。これ美味そう!」
「ご飯に合いそうですね」
「ちょっと辛めなのないかな」
「これとかどうですか?」
「お、いいじゃん。じゃあこれにしよー」
「陽向くんは辛いの平気?」
「ちょっとだけ平気なんですけど、ワサビは苦手です。鼻がツーンとして痛いんですよね」
「それ分かる。あのツーンが好きな人もいるんだけどね」
「お子様だな」
「ピーマンが食べられない風音には言われたくないな」
「うわ、それ引き合いに出すとか卑怯。志摩だってナス食えねぇくせに」
「食べなくても死なないよ」
「ピーマンだって食えなくても死なねーよ」
「…どっちもどっち」

 仲良いなぁ…あの子も志摩くんと風音くんに可愛がられてるみたいだし、ちょっとだけどんな子なのか気になる。ってか、〝陽向〟くんだから〝ヒナ〟なのか。何その可愛い呼び方。
 何だか胸が温かくなり、これ以上聞いているのも申し訳なくなった私は集まったギャラリーの間を抜けてその場を後にした。

 後日、SNSにあの時の写真が載っててムカッとしたけど、意図的なのか偶然なのか、陽向くんの姿は三人のうち誰かで必ず隠れてて見えなかったのはホッとした。
 例えファンみんなが反対したとしても、私は真那くんと陽向くんを応援し続けようと思う。
 推しの幸せは私の活力だもの。
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