ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

文字の大きさ
223 / 848
第十章 続・ハテノ男爵領再興記

第223話 感動の再開となりそうだね

しおりを挟む
 その日は、チャラいシトラス兄ちゃんの話で時間が遅くなっちゃった。
 ライム姉ちゃんの婿取りの打ち合わせまで話が進まなかったの。

 仕方がないので、おいら達は王宮に泊めてもらうことになったんだ。
 広い王宮の敷地の中に、離れとして建てられている迎賓館に部屋を用意してくれたよ。
 外国から来た大事なお客さんを泊めるための建物だということで。
 部屋も立派だったし、夕食も見たこと無い豪華な料理が並んでいたよ。

 豪華な夕食を済ませて一息つくと、おいらはアルトにちょっとしたお願いをしたんだ。

「おや、これはアルトローゼン様ではないですか。
 このような時間にいったいどのようなご用件でございますかな?」

 アルトがその部屋の扉を叩くと、ウエニアール国の代表のお爺ちゃんが顔を出して尋ねたの。
 お爺ちゃんの問い掛けに答える間に部屋の中に入ったアルトはすぐに扉を閉めさせると。

「用があるのは、私じゃなくてこの子よ。
 この部屋に入るところを他の人に見られたくないんだって。」

 そう言って、アルトは『積載庫』の中からおいらを出しくれたんだ。

「名乗っていなかったよね、おいらはマロン。
 ごめんね、遅い時間に急に来ちゃって。」

「おや、お嬢ちゃんのような幼子が、こんな爺に用とは珍しい。
 さっきは、この爺のために口を利いてくれて有り難うね。
 おかげで、心安らかに余生が遅れそうだよ。」

 お爺ちゃんは、謁見の間でおいらがハテノ領に来ないかと勧めたことに、感謝してくれたんだ。

「お爺ちゃん、いきなり、立ち入ったことを聞くけど。
 もしかして、行方不明の娘さんってパターツさんじゃないの?」

 パターツさんはグラッセ侯爵家の分家の出身だと言っていたもんね。
 このお爺ちゃん、グラッセ子爵と言っていたし。
 簒奪騒動の最中に行方をくらましたって、ドンピシャだよ。

「お嬢ちゃん、私の娘を知っているのかい。
 娘は、今、何処にいるのだい? 元気にしているのだろうか?」

「あっ、やっぱり。
 パターツさんなら、今アルトが雇っている。
 アルトが抱えている芸人集団の事務仕事をするためにね。
 お爺ちゃんがこれから仕えるライム姉ちゃんの屋敷に住んでいるよ。」

 おいらがお爺ちゃんの問い掛けに答えると、アルトはオヤッという顔をしたんだ。
 どうやら、アルトは気付いていなかったみたい。
 
「アルトローゼン様、それは真でございますか?
 私の娘が、そちらにお世話になっていると。」

「ええ、パターツさんなら、私が雇っている。
 芸人のマネージメントを中心に、ライムとのパイプ役もしてもらっているわ。
 でも、マロン、良く気付いたわね。」

「うん、お爺ちゃん、グラッセ子爵と呼ばれていたから。
 王都で初めて会った時に、パターツさんが話していたんだ。
 アルト、途中からしか聞いてなかったのかな。
 パターツさん、グラッセ侯爵家の分家の生まれだと言ってたの。」

 王都でパターツさんと出会った日、アルトは王立劇場を借りる手続きに王宮に行ってたんだ。
 その帰りにおいら達が滞在しているクッころさんの屋敷を見張っている怪しい連中を見つけたの。
 そいつらが、おいらを捜索に来ていたウエニアール国の騎士だったんだけど。

 その時アルトは、おいら達とパターツさんの会話を聞いていたと言ってたんだ。
 だけど、最初から聞いていた訳じゃないみたい。 

「何と言う偶然、これが神のお導きというモノでしょうか。
 まさか、娘がアルトローゼン様の許にいるとは。
 もう生きて会うことは叶わないと諦めていたのに…。」

「そう良かったわね。
 これから、親子二人で静かに暮らせば良いわ。」
 
 歓喜の涙を零しているお爺ちゃんに、アルトは優しい言葉を掛けてあげたの。

「はい、有り難うございます。
 そちらのお嬢ちゃんも、本当に有り難う。
 娘に再会できるのも、お嬢ちゃんが謁見の間で声を掛けてくれたおかげだ。」

 改めておいらの方へ向き直って、お爺ちゃんは感謝してくれたんだけど…。
 おいらの姿をマジマジと見て、ハッとした表情を見せたんだ。
 そして、それまでの泣き顔から、一転表情を引き締めて。

「先ほど、マロンと名乗られていましたが…。
 もしかして、あなた様はマロン姫様ではございませんか?
 今まで気付きませんでしたが、本家の姫君の幼き頃に瓜二つでございます。」

「おいら、姫君と呼ばれた記憶はないけど。
 パターツさんが、八年前に実の母ちゃんから託された娘というのはおいらの事みたい。
 ついこの間知ったばかりだけど。」

「やはり、あなた様はマロン姫様でございましたか。
 良くぞご無事で。
 ご壮健にお過ごしのご様子、亡き殿下ご夫妻もさぞかしお喜びのことでしょう。」

 お爺ちゃんはおいらがマロン姫だと気付くと、無事に過ごしていることを喜んでくれたんだ。

「マロンがウエニアール国の王家の生き残りだと言う事はくれぐれも内密にね。
 最近、マロンのことをコソコソ嗅ぎ回っている連中がいるようだから。
 マロンは平民の娘として平穏に暮らしているのだから、余計な騒動に巻き込まないでよ。」

 アルトは、ウエニアール国が不穏な状況にある事を聞かされているからね。
 おいらを巻き込まないように釘を刺してたよ。

「分かっておりますとも、私とて幼いマロン姫様を血生臭い政争に巻き込みたいとは思いません。
 マロン姫様は、亡き我が兄の孫娘でもあるのですから。」

 今の王が簒奪を成し遂げた時、王家に与した幾つかの有力貴族は粛清の対象となり、取り潰されたそうなの。
 その粛清リストに、おいらのお爺ちゃんにあたるグラッセ侯爵は入っていたらしいね。
 分家のグラッセ子爵家はギリギリセーフだったみたいだよ。 

 そんな訳で、お爺ちゃんはおいらのことを内密にしてくれると約束してくれたんだ。

       **********

 アルトの『積載庫』の乗せてもらって、おいらにあてがわれた部屋に戻ってくると。
 おいらのようなガキんちょはもう寝る時間になってたんだ。

 しないといけないことはしたし、もう寝ようと思ってベッドに潜り込むと…。
 ベッドの中にひと肌に温かい大きな塊が入っていたの。

 びっくりして飛び退くと…。

「うん…? どうやら眠ってしまったみたいじゃ。
 おお、マロン、戻って来たのか。
 私はマロンの話が聞きたいと思って待っていたのじゃ。」

 ベッドの上でもぞもぞと何かが動いたかと思ったら、むくっと起き上がってそんな言葉を発したの。
 眠そうな目を擦りながら起き上がったお人形のように愛らしい物体、この国の第四王子だったよ。

「何時の間に…。
 こんな夜遅くに王宮を抜け出して、迎賓館まで来ちゃって怒られないの?」

 おいらが尋ねると。

「私が来た時は、遅い時間では無かったのじゃ。
 周りの目を盗んで王宮を抜け出す仕方は、シトラス兄上から何度も手解きを受けておるのじゃ。 
 シトラス兄上はいつも言っておるのじゃ。
 私がもう少し大きくなったら、風呂屋という地上の楽園に連れて行ってくれると。
 そのためには、日頃から王宮を抜け出す訓練を欠かすなと言われておるのじゃ。」

 どうやら、周りの人にナイショで抜け出して来たみたい。
 あのチャラ王子、こんなに幼気な第四王子に悪い遊びを教えようとしているよ…。
 アルトに言い付けてやろうか。

「それで、王子様はなんでおいらの部屋にやって来たの?
 ガキんちょだけど、おいらも一応女の子なんだよ。
 夜、男の子が女の子の部屋に行ったいけいないと教えられなかったの。」

「王子じゃない、オランジュと呼ぶのだ。
 姉上は私をオランと呼んでいるので、オランでも良いのじゃ。」

 第四王子は『王子様』と呼ばれたのがお気に召さなかったみたい。
 おいらの質問には答えずに、名前で呼べと要求してきたの。
 …意外と自己主張が強いな、こいつ。

「そう、じゃあ、オラン。
 オランは何でここにいるのかな。
 夜、女の子の部屋に行ったらダメと躾けられなかった?」

「何故、ダメなのじゃ?
 姉上は、私が夜一緒に寝ると言うと凄く喜ぶのじゃ。
 姉上の子供の頃の寝間着を着せてくれて。
 お人形のように可愛いと撫でてくれるのじゃ。
 姉上はいつでも私を抱きしめて眠ってくれるのじゃ。」

 どうやら、オランにとって女の子というのは第一王女しか思い当たらないみたい。
 そして、第一王女はオランのことを溺愛していて、オランが一緒に寝ると言うと喜ぶそうだよ。
 溺愛しているというより、まんま、着せ替え人形になっている?

「あっそう…。
 それじゃ、オランは何でこの部屋に来たのかな?」

「私はマロンに外の世界の話を聞かせて欲しかったのじゃ。
 私はこの王宮の敷地からロクに出たことが無いのじゃ。
 今日、あの部屋の中でマロンの話を聞いて羨ましかったのじゃ。
 妖精の長と一緒に色々なところへ行っていると言うのが。
 明日はもう帰ってしまうのであろう?
 今日しか、話を聞ける機会は無いのじゃ。」

 そう言えば、アルトが不良騎士を消し去る間、アルトの積載庫の中で話したね。
 第一王子のお妃様に、平民のおいらがどうして王宮にいるのかと聞かれ。
 話の流れの中で、アルトがおいらをあちこち連れまわしていることも聞かせたっけ。

 まだ幼いオランは、王様の巡幸などに連れて行ってもらえないみたい。
 王宮の敷地から外に出たことが殆どないんだって。

 おいらが自由に外を飛び回っているのを羨ましく思ったそうで。
 もっと外の世界の話が聞きたかったんだって。

 そう、じゃあ、少しご要望に応えるとしますか…。
 でも、もう眠い…。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...