ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

文字の大きさ
621 / 848
第十八章【間章】おいらが生まれるよりずっと前のことだって

第621話 タロウの質問タイム

しおりを挟む
 さて、壁のモニターに映し出された映像の中では、シューティング・ビーンズの落とす『スキルの実』が出揃った訳だけど。

「あら、もうこんな時間…。
 マロン、そろそろ帰らないと宰相の機嫌を損ねるわよ。」

 資料映像の観賞はここまでだと、アルトがおいらに告げたの。
 気付くと、アカシアさんの許を訪ねてから二日目の陽が暮れようとしていたんだ。
 おいら、魔物のこととか、レベルのこととか、まだまだ知りたいことが沢山あったのに…。

「あら、せっかく来たのにもう帰っちゃうの?」

 アカシアさんが寂しそうな表情で、アルトに尋ねたの。

「ゴメンね、この子、少し前に他の大陸への遠征から戻ったばかりなの。
 四ヶ月ほど国を空けていたから、公務が溜まっているのよ。
 宰相には三日ほどで帰ると伝えてきたから、そろそろそれは終わりにしないと…。」

 寂しそうなアカシアさんにアルトが謝罪すると。

「それなら、私がしばらくここに残ってアカシア母さんの話し相手になるわ。
 ここに来てから昔の映像を見るばかりで、落ち着いて話も出来なかったからね。
 アルトお姉さまも、マロンちゃん達を送ったら戻って来れば良いじゃない。」

 そんなアカシアさんを気遣ったのか、ムルティがそんな提案をしたんだ。

「ムルティ、そうしてもらえると助かるわ。
 私もマロン達を王都へ送ったら戻ってくる。
 母娘三人、積もる話でもしましょう。
 ゆっくりと。」

 どうやら、アルトもムルティの提案に乗ることにしたみたい。
 この二人の気遣いはタイムリーだったようで。

「あら、悪いわね、気を遣って貰って…。
 私もいよいよ老い先が短いのか、最近無性に人恋しくなってね。
 誰か、話し相手が欲しいと思っていたの。
 嬉しいわ。
 娘が二人も訪ねてくれるなんて、もう何年も無かったから。」

 アカシアさんはとても弱々しく、でも心底嬉しそうな笑みを浮かべていたよ。
 
      **********

「本当はもっと見せたい映像があったのだけど…。
 続きが見たければ、またアルトに連れ来てもらえば良いわ。
 私も、『海の民』の赤ちゃんを見るまでは死ぬつもりは無いからね。
 それと、今何か聞きたいことがあれば言ってちょうだい。
 手短に答えられることなら教えてあげる。」

 資料映像の再生終了を告げたアカシアさん。
 アカシアさんはアルトに時間の余裕を確かめたうえで、質問の時間を取ってくれたの。
 すると…。

「他の大陸から来た連中が、この大陸の言葉を理解できない理由は何となく分かったよ。
 でもなあ…、それじゃ何で俺はこの大陸の人間と同じ能力を持っているんだ?
 俺はこの大陸どころか、この星の人間ですらないんだが。」

 おいらが『魔物の領域』について尋ねようとしてたら、タロウに先を越されたよ。
 まあ、タロウにしてみれば自分に関わることだから、気になるのは当たり前かな。

 すると、アカシアさんは弱々しくタロウの傍まで飛んで行き。
 まじまじとタロウのことを観察し始めたの。

「なあ、飛ぶのがしんどいなら、俺の方がそっちに寄るぜ。
 大人しくベッドに腰掛けていた方が良いんじゃないか?」

 珍しくタロウが他人を労わるような言葉を口にしたの。
 それほど、アカシアさんの体が弱っているように見えたんだね。

「そんなの気にしないで良いわよ、
 たまには飛ばないと、飛び方を忘れちゃうわ。
 それにベッドに寝たきりだと体が弱っちゃうし。」

 タロウの気遣いが嬉しいのかアカシアさんは微笑みを浮かべてた。
 そして…。

「私も他の星から来た人間を見るのは初めてよ。
 あなた、一体どうやってこの大陸にやって来たの?」

「いや、どうやってと聞かれても…。
 気付いたら、マロンの住んでた町の広場に立ってたんだが。」

 それからタロウはあの日の状況を詳しくアカシアさんに伝えていたよ。

「気付いたら広場に立っていた…。
 不思議なこともあるものね。
 正直言って、私にも正確なことは分からないわ。
 さっきも言った通り、異世界人なんて初めて見たからね。」

 アカシアさんの返答にタロウはガッカリした表情を見せたんだ。
 ただアカシアさんは、続けて自分の見解を示してくれたの。
 タロウが異世界から来たってことが本当だとしてと、前提を入れたうえで。
 最初に言ってたのが、異世界人のタロウとこの大陸の人が物質的に同じ組成なんて普通は有り得ないということ。
 そんな奇跡的な偶然がある訳ないとアカシアさんは言ってたよ。
 その上で、タロウが二つの世界を隔てる壁を越える時に、タロウの体に何かが起こったんじゃないかって。
 タロウの体をこの世界に順化させるような作用が働いたのだと、アカシアさんは考えたみたい。
 そうでなければ、タロウの存在自体が異物としてこの世界から排除されたんじゃないかと。

「だから、あなたは出現したこの大陸の人間に同化したのだと思う。
 もし別の大陸に現れていたら、その言語能力は無かったんじゃないかな。」

 アカシアさんはそんな言葉で、自分の仮説を締め括ったんだ。

「でもよ、俺、アルト姐さんから言われたんだ。
 この大陸の娘と子を成すことは出来ないって。
 体の組成がこの大陸の人間と同じなら子供が出来るんじゃないか?」

 そう言えば、アルトと最初に会った時にそんなことを言われていたね。
 魂のあり方が、この大地に住む人間と違っているとか。

「ああ、身体は同化しても、魂がこの世界に溶け込んでいないのね。
 心配しなくても大丈夫よ。
 あなたがこの世界に馴染めば、そのうち子供だって成せるようになるわ。」

 アカシアさんは言ってたよ。
 タロウはまだ心のどこかで、この世界を現実だと認めていないのではないかと。
 漠然と夢の中の出来事だと思っていて、そのうちに覚めるんじゃないかと期待しているんじゃないかって。
 心のどこかで自分を異邦人だと思っているうちは、魂がこの世界に溶け込まないって。
 そのうち、この世界での暮らしが当たり前になって、元の世界に帰ることを諦めれば自然と魂も同化するだろうと。
 
「そっか、ここは夢の中でも、ゲームの世界でも無いんだな…。
 そう言えば、爺さんも日本へ帰ることを諦めた頃に子供が出来たって言ってたっけ。
 俺もそろそろ、日本のことはきっぱり諦めないといけないのか。
 三人、いや五人も嫁さんが出来たんだからな。」

 タロウはアカシアさんの言葉を聞いて一瞬寂しそうな顔をしたけど。
 その言葉を言い終える頃には、何か決意を固めたような表情をしていたよ。 
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...