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第6章 王家の森
第122話 ドゥム伯爵
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*お昼に1話投稿しました。
お読みでない方はお手数ですが1話戻ってお読みください。
**********
先日王家の森に侵入した二人組の依頼主がやっとわかった。
それを、ミルトさんに知らせたところ返った来た言葉は、
「なんだ、随分と小物がかかったものね、もっと大物が釣れるかと期待していたのだけど。
意外性もないわ。」
という期待外れだったことを示すものだった。
依頼主の名はドゥム伯爵、どこかで聞いた名前だなと思ったら学園祭の打ち上げパーティで私に話しかけてきた人だ。
横柄な態度でわたしに伯爵邸のバラを咲かせろと命令してきたの。
その場でミルトさんにとっちめられていた人だね。
ミルトさんに聞いたところ、ドゥム伯爵家は国の創生期に多大な貢献をして伯爵の爵位と王都の屋敷を下賜された名門の宮廷貴族らしい。
何代にもわたって優秀な文官を輩出し中には省の長官クラスになった人もいるそうだ。
ただ、ここ二代に関しては凡庸な人物が続いておりたいして重要な役職には付いていないみたい。
先代は凡庸だけど謙虚で実直な人柄だったため、最終的には伯爵の爵位に見合うそれなりの地位まで昇進したらしい。
それに対して当代の伯爵は家柄を鼻にかけて、ろくに仕事もできないくせに家柄に相応しい地位が与えられないと常々不満を漏らしているんだって。
そういう人なので猟官運動に熱心で、有力者を招いては頻繁にパーティを開いているらしい。
この間も、パーティを開くので見栄えを良くするために庭のバラを咲かせろって言っていたね。
一所懸命にコネ作りに励んでいるが、伯爵が期待するような成果は上がっていないようだ。
ミルトさんの弁では、この国の官僚制度は成果主義なんでそんな事をしても無駄なのにとのことだった。
パーティに無駄な時間とお金を費やすぐらいなら、その時間で書類の一枚でも仕上げた方がよっぽど地位を得るのに役立つのにと言ってミルトさんは呆れていた。
この人もご多分に洩れず、王宮内で出世できないのであれば王家の森を開発させろと訴えている人の一人だそうだ。
何度も請願書を出されているので、全く意外性がなかったんだって。
二人組に付けたおチビちゃんの情報では、王家の森で遊んでいたハンナちゃんの話を聞いた伯爵はそれなりに興味を示したようだが、誘拐してこいとかの指示は出さなかったみたい。
ミルトさんは、ハンナちゃんに手を出したら許さないといっていたが、
「もし、その二人がハンナちゃんを誘拐したとしたら、それはそれで面白いかもね。
連れてこられたハンナちゃんの顔を見たら、伯爵はどんな顔をするかと思うと笑えるわ。」
とも言っている。
なんと言っても、学園祭の打ち上げパーティの席で、「ハンナちゃんに手を出したら絶対に許さない」と公言しているからね。
伯爵はミルトさんのすぐ隣で聞かされていたから、ハンナちゃんの顔を覚えているはずだ。
もし、ハンナちゃんが誘拐されて伯爵のもとに連れてこられたら、伯爵はさぞかし顔を青くするだろう。
まあ、絶対に誘拐なんかさせないけどね。
**********
「もう少し大物が釣れるかも知れないから伯爵邸を見張らせといて。」というミルトさんの要望もあり、引き続きおチビちゃん達に伯爵邸を探ってもらうことになった。
そして数日後、思わぬ大物が釣れた…。
ドゥム伯爵邸をグラウベ大司教が訪ねて来たんだ。
創世教の本部は海路と陸路で二ヶ月くらいかかる場所にあるらしいので本部まで巻き込んだ事態にはなっていないが、王都の創世教の内部では大司教の影響力が著しく落ちているらしい。
先日のミルトさんとの話し合いに関する噂で、王都における創世教の評判をひどく落としちゃったからね。
どうやらドゥム伯爵は大司教の有力支持者の一人らしい。
苦しい立場におかれた大司教がドゥム伯爵に協力を依頼に来たみたいね。
大司教からドゥム伯爵への依頼は概ねこんなもののようだ。
まず、王都に流れる創世教と大司教にまつわる悪い噂はミルトさんが仕組んだもので事実無根であると言う噂を流して欲しいということ。
次に、ミルトさんが創世教の治癒術師を引き抜いたのは創世教の布教活動に対する明らかな妨害であり宗教の自由の弾圧であると世論を誘導して欲しいということ。
更に、ミルトさんは信仰の自由を謳いながら、その実、王家が信仰している精霊を大衆に対しても信仰するように扇動しているという形に世論を誘導して欲しいということ。
要するに口コミによって傷ついた自分の評判を立て直すため、逆に口コミを利用してミルトさんを落とし入れようということなんだね。
でもそんなことが上手くいくのかな?
ミルトさんの場合は、目撃者が勝手に流したものでミルトさんが直接関わっていないからこそ真実味を持って流れたんだと思うな。
意図して作られた噂、しかもいまいち頭の回らないドゥム伯爵が流した噂が大司教の思惑通り王都の人達を信じさせることができるのかな。
まあ、そこはわたしが考えてもしょうがないことか。
とりあえずミルトさんに知らせておきましょうか……。
お読みでない方はお手数ですが1話戻ってお読みください。
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先日王家の森に侵入した二人組の依頼主がやっとわかった。
それを、ミルトさんに知らせたところ返った来た言葉は、
「なんだ、随分と小物がかかったものね、もっと大物が釣れるかと期待していたのだけど。
意外性もないわ。」
という期待外れだったことを示すものだった。
依頼主の名はドゥム伯爵、どこかで聞いた名前だなと思ったら学園祭の打ち上げパーティで私に話しかけてきた人だ。
横柄な態度でわたしに伯爵邸のバラを咲かせろと命令してきたの。
その場でミルトさんにとっちめられていた人だね。
ミルトさんに聞いたところ、ドゥム伯爵家は国の創生期に多大な貢献をして伯爵の爵位と王都の屋敷を下賜された名門の宮廷貴族らしい。
何代にもわたって優秀な文官を輩出し中には省の長官クラスになった人もいるそうだ。
ただ、ここ二代に関しては凡庸な人物が続いておりたいして重要な役職には付いていないみたい。
先代は凡庸だけど謙虚で実直な人柄だったため、最終的には伯爵の爵位に見合うそれなりの地位まで昇進したらしい。
それに対して当代の伯爵は家柄を鼻にかけて、ろくに仕事もできないくせに家柄に相応しい地位が与えられないと常々不満を漏らしているんだって。
そういう人なので猟官運動に熱心で、有力者を招いては頻繁にパーティを開いているらしい。
この間も、パーティを開くので見栄えを良くするために庭のバラを咲かせろって言っていたね。
一所懸命にコネ作りに励んでいるが、伯爵が期待するような成果は上がっていないようだ。
ミルトさんの弁では、この国の官僚制度は成果主義なんでそんな事をしても無駄なのにとのことだった。
パーティに無駄な時間とお金を費やすぐらいなら、その時間で書類の一枚でも仕上げた方がよっぽど地位を得るのに役立つのにと言ってミルトさんは呆れていた。
この人もご多分に洩れず、王宮内で出世できないのであれば王家の森を開発させろと訴えている人の一人だそうだ。
何度も請願書を出されているので、全く意外性がなかったんだって。
二人組に付けたおチビちゃんの情報では、王家の森で遊んでいたハンナちゃんの話を聞いた伯爵はそれなりに興味を示したようだが、誘拐してこいとかの指示は出さなかったみたい。
ミルトさんは、ハンナちゃんに手を出したら許さないといっていたが、
「もし、その二人がハンナちゃんを誘拐したとしたら、それはそれで面白いかもね。
連れてこられたハンナちゃんの顔を見たら、伯爵はどんな顔をするかと思うと笑えるわ。」
とも言っている。
なんと言っても、学園祭の打ち上げパーティの席で、「ハンナちゃんに手を出したら絶対に許さない」と公言しているからね。
伯爵はミルトさんのすぐ隣で聞かされていたから、ハンナちゃんの顔を覚えているはずだ。
もし、ハンナちゃんが誘拐されて伯爵のもとに連れてこられたら、伯爵はさぞかし顔を青くするだろう。
まあ、絶対に誘拐なんかさせないけどね。
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「もう少し大物が釣れるかも知れないから伯爵邸を見張らせといて。」というミルトさんの要望もあり、引き続きおチビちゃん達に伯爵邸を探ってもらうことになった。
そして数日後、思わぬ大物が釣れた…。
ドゥム伯爵邸をグラウベ大司教が訪ねて来たんだ。
創世教の本部は海路と陸路で二ヶ月くらいかかる場所にあるらしいので本部まで巻き込んだ事態にはなっていないが、王都の創世教の内部では大司教の影響力が著しく落ちているらしい。
先日のミルトさんとの話し合いに関する噂で、王都における創世教の評判をひどく落としちゃったからね。
どうやらドゥム伯爵は大司教の有力支持者の一人らしい。
苦しい立場におかれた大司教がドゥム伯爵に協力を依頼に来たみたいね。
大司教からドゥム伯爵への依頼は概ねこんなもののようだ。
まず、王都に流れる創世教と大司教にまつわる悪い噂はミルトさんが仕組んだもので事実無根であると言う噂を流して欲しいということ。
次に、ミルトさんが創世教の治癒術師を引き抜いたのは創世教の布教活動に対する明らかな妨害であり宗教の自由の弾圧であると世論を誘導して欲しいということ。
更に、ミルトさんは信仰の自由を謳いながら、その実、王家が信仰している精霊を大衆に対しても信仰するように扇動しているという形に世論を誘導して欲しいということ。
要するに口コミによって傷ついた自分の評判を立て直すため、逆に口コミを利用してミルトさんを落とし入れようということなんだね。
でもそんなことが上手くいくのかな?
ミルトさんの場合は、目撃者が勝手に流したものでミルトさんが直接関わっていないからこそ真実味を持って流れたんだと思うな。
意図して作られた噂、しかもいまいち頭の回らないドゥム伯爵が流した噂が大司教の思惑通り王都の人達を信じさせることができるのかな。
まあ、そこはわたしが考えてもしょうがないことか。
とりあえずミルトさんに知らせておきましょうか……。
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