21 / 57
第四章
5
しおりを挟む
「おい、どうした。何が起こった」
そこへ騒ぎを聞きつけたヘイデンとイルメリも駆けつけた。
「お兄さま。また、崩落が起こりました。どうやら以前の担当者がやみくもに掘り進めた結果だと思われます。わたくしたちはこれから、このような危険な個所を把握して、対策を行う必要があると思うのですが」
「あ、ああ。そうだな。それよりも、怪我は無いのか?」
「はい。採掘師のみなさんに怪我はありません」
「それもこれもリディア嬢のおかげだ、隊長さん」
ガイルがリューディアのことを嬢ちゃんではなく、リディアという名で呼んだことにヘイデンも気付いた。
「そうか。怪我が無ければ何よりだ。そちらの現場は危険だから、今日は西側五号区の現場の採掘を頼みたい」
ヘイデンが口にしたこちらの現場とは、先ほどリューディアが指示した場所と同じ場所。
「わかった。隊長さんの命令なら仕方ないな。お前たち、今日は西側五号区の採掘だ」
ガイルが言えば、他の採掘師たちはその言葉に従う。それだけ採掘師長の言葉には重みがある。別な現場へと移動する採掘師たちを見送ってから、ヘイデンは崩落した場所の確認を始める。イルメリも同様に。
「ディア。君はここが危険であると、事前にわかったのか?」
「え、あ、はい。なんとなく。お兄さまに見せていただいたこの坑道の地図を確認しまして、それから今までの採掘の状況と、この地層。そこから、そろそろここが崩れそうだと思っておりました。今日は、採掘師たちがこちらに来てしまったので、いつも以上に負荷がかかって崩れてしまったものと思われます」
「なるほど」
ヘイデンは腕を組んで崩れた箇所を見上げる。
「やはり、お前には採鉱の才能があるよ。お前自身に怪我はなかったか?」
「あ、はい。フードもかぶっておりましたし、眼鏡もかけておりましたから」
砂埃が飛んできたときに、この眼鏡がその埃が目に入るのを防いでくれた。眼鏡はリューディアの顔を隠すほかに、このように危険な物から目を守ってくれる効果もあったようだ。さらに今回はレンズが大きく、彼女の顔半分を隠してくれるようなデザイン。それがなおさら功を奏したようだ。この眼鏡をプレゼントしてくれたエメレンスには感謝しかない。と、同時に何かしら御礼を、という気持ちも沸いてくるのが不思議だった。
「どうかしたのか、ディア」
ヘイデンの言葉でふと我に返る。
「いいえ。それよりもお兄さま、まだこの坑道には危険な個所がたくさんあるのです。恐らく、前任者が何も考えず、採掘量を優先させて掘った結果であると思っております。ですから、わたくしはこの坑道の危険な個所を確認し、採掘師たちのスケジュールに影響が出ないように、危険個所を整備していきたいと思っているのですが」
「そうだな。それは俺たち採鉱を担当する者たちの仕事だな。メリー、ディアとこの坑道の危険個所、そうだな、すぐに崩落に繋がりそうな場所の確認をお願いしたい。いつもは、採掘している箇所の確認しかしていなかったからな。あのように、採掘量を気にする採掘師たちにとっては、他の採掘現場の方が魅力的に見える場合もある。だからこそ、俺たちがどの現場でどれくらいの採掘ができるのかということも事前に見積もる必要があるのだが。そうだな、探鉱の者にあらためて採掘量の予測量を出してもらおう」
そこで、ヘイデンは「おい、エリック」と部下の名を呼んだ。どうやら彼も騒ぎを聞きつけてこちらにきてくれたようだ。
「悪いが、君は探鉱のレーネに連絡して、採掘量の再調査をするように言ってくれ。今までの採掘量の予想値と実際の採掘量の比較データも欲しい」
「了解です」
エリックは手をあげて返事をすると、坑道の外にある事務所の方へと戻っていく。その事務所内では探鉱と選鉱に携わっている魔導士たちが、仕事をしている。
「では、悪いがメリーとディア。東側までの現場のこの坑道の安全確認を頼みたい」
「はい」
女性二人組は明るく返事をすると顔を見合わせた。
そこへ騒ぎを聞きつけたヘイデンとイルメリも駆けつけた。
「お兄さま。また、崩落が起こりました。どうやら以前の担当者がやみくもに掘り進めた結果だと思われます。わたくしたちはこれから、このような危険な個所を把握して、対策を行う必要があると思うのですが」
「あ、ああ。そうだな。それよりも、怪我は無いのか?」
「はい。採掘師のみなさんに怪我はありません」
「それもこれもリディア嬢のおかげだ、隊長さん」
ガイルがリューディアのことを嬢ちゃんではなく、リディアという名で呼んだことにヘイデンも気付いた。
「そうか。怪我が無ければ何よりだ。そちらの現場は危険だから、今日は西側五号区の現場の採掘を頼みたい」
ヘイデンが口にしたこちらの現場とは、先ほどリューディアが指示した場所と同じ場所。
「わかった。隊長さんの命令なら仕方ないな。お前たち、今日は西側五号区の採掘だ」
ガイルが言えば、他の採掘師たちはその言葉に従う。それだけ採掘師長の言葉には重みがある。別な現場へと移動する採掘師たちを見送ってから、ヘイデンは崩落した場所の確認を始める。イルメリも同様に。
「ディア。君はここが危険であると、事前にわかったのか?」
「え、あ、はい。なんとなく。お兄さまに見せていただいたこの坑道の地図を確認しまして、それから今までの採掘の状況と、この地層。そこから、そろそろここが崩れそうだと思っておりました。今日は、採掘師たちがこちらに来てしまったので、いつも以上に負荷がかかって崩れてしまったものと思われます」
「なるほど」
ヘイデンは腕を組んで崩れた箇所を見上げる。
「やはり、お前には採鉱の才能があるよ。お前自身に怪我はなかったか?」
「あ、はい。フードもかぶっておりましたし、眼鏡もかけておりましたから」
砂埃が飛んできたときに、この眼鏡がその埃が目に入るのを防いでくれた。眼鏡はリューディアの顔を隠すほかに、このように危険な物から目を守ってくれる効果もあったようだ。さらに今回はレンズが大きく、彼女の顔半分を隠してくれるようなデザイン。それがなおさら功を奏したようだ。この眼鏡をプレゼントしてくれたエメレンスには感謝しかない。と、同時に何かしら御礼を、という気持ちも沸いてくるのが不思議だった。
「どうかしたのか、ディア」
ヘイデンの言葉でふと我に返る。
「いいえ。それよりもお兄さま、まだこの坑道には危険な個所がたくさんあるのです。恐らく、前任者が何も考えず、採掘量を優先させて掘った結果であると思っております。ですから、わたくしはこの坑道の危険な個所を確認し、採掘師たちのスケジュールに影響が出ないように、危険個所を整備していきたいと思っているのですが」
「そうだな。それは俺たち採鉱を担当する者たちの仕事だな。メリー、ディアとこの坑道の危険個所、そうだな、すぐに崩落に繋がりそうな場所の確認をお願いしたい。いつもは、採掘している箇所の確認しかしていなかったからな。あのように、採掘量を気にする採掘師たちにとっては、他の採掘現場の方が魅力的に見える場合もある。だからこそ、俺たちがどの現場でどれくらいの採掘ができるのかということも事前に見積もる必要があるのだが。そうだな、探鉱の者にあらためて採掘量の予測量を出してもらおう」
そこで、ヘイデンは「おい、エリック」と部下の名を呼んだ。どうやら彼も騒ぎを聞きつけてこちらにきてくれたようだ。
「悪いが、君は探鉱のレーネに連絡して、採掘量の再調査をするように言ってくれ。今までの採掘量の予想値と実際の採掘量の比較データも欲しい」
「了解です」
エリックは手をあげて返事をすると、坑道の外にある事務所の方へと戻っていく。その事務所内では探鉱と選鉱に携わっている魔導士たちが、仕事をしている。
「では、悪いがメリーとディア。東側までの現場のこの坑道の安全確認を頼みたい」
「はい」
女性二人組は明るく返事をすると顔を見合わせた。
17
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された令嬢は、ざまぁの先で国を動かす ――元王太子の後悔が届かないほど、私は前へ進みます』
ふわふわ
恋愛
名門アーデン公爵家の令嬢ロザリーは、
王太子エドワードの婚約者として完璧に役目を果たしてきた――はずだった。
しかし彼女に返ってきたのは、
「聖女」と名乗る平民の少女に心酔した王太子からの一方的な婚約破棄。
感情論と神託に振り回され、
これまでロザリーが支えてきた国政はたちまち混乱していく。
けれど、ロザリーは泣かない。縋らない。復讐に溺れもしない。
「では、私は“必要な場所”へ行きますわ」
冷静に、淡々と、
彼女は“正しい判断”と“責任の取り方”だけで評価を積み上げ、
やがて王太子すら手を出せない国政の中枢へ――。
感情で選んだ王太子は静かに失墜し、
理性で積み上げた令嬢は、誰にも代替できない存在になる。
これは、
怒鳴らない、晒さない、断罪しない。
それでも確実に差がついていく、**強くて静かな「ざまぁ」**の物語。
婚約破棄の先に待っていたのは、
恋愛の勝利ではなく、
「私がいなくても国が回る」ほどの完成された未来だった。
――ざまぁの、そのさらに先へ進む令嬢の物語。
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました
あおくん
恋愛
父が決めた結婚。
顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。
これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。
だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。
政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。
どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。
※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。
最後はハッピーエンドで終えます。
お前との婚約は、ここで破棄する!
ねむたん
恋愛
「公爵令嬢レティシア・フォン・エーデルシュタイン! お前との婚約は、ここで破棄する!」
華やかな舞踏会の中心で、第三王子アレクシス・ローゼンベルクがそう高らかに宣言した。
一瞬の静寂の後、会場がどよめく。
私は心の中でため息をついた。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」
婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からなくなっていました。
婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2022/02/15 小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位
2022/02/12 完結
2021/11/30 小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位
2021/11/29 アルファポリス HOT2位
2021/12/03 カクヨム 恋愛(週間)6位
変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!
utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑)
妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?!
※適宜内容を修正する場合があります
【完結】もう結構ですわ!
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。
愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/29……完結
2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位
2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位
2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位
2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位
2024/09/11……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる