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本編
たんたんと罠にはめる(2)
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モニカにはそこからのその流れがわからなかった。
「ですから、それは新手のパワハラ」
「ではない。その見合いを断るには、俺に付き合っている女性がいることを見せ付けるのが手っ取り早いと思ってだ、な」
「では、そのお付き合いなさっている女性に頼んでください」
「そのような女性がいないから、その役を君に頼んでいる」
うーん、とモニカは唸ってしまった。
「もしかして、君にはすでにそのような相手がいるのか?」
カリッドは不安になって尋ねた。
「いえ、残念ながらおりません」
「だったら、俺の恋人役を引き受けてもらえないだろうか。これは信頼おける者にしか頼めない任務であると思っている」
「新手のパワハラ」
信頼おける者とカリッドが口にしたにも関わらず、すぐにパワハラと結びつけるモニカにとって、やはりカリッドの恋人役というのは耐えがたいものなのだろうか。
「ではない。立派な任務だ」
「任務、ですか」
「そうだ。今後、俺がこのまま団長を続けるか続けないか、その運命が君にかかっている。だから、任務だ」
うーん、とモニカは再び唸った。
仮に、カリッドがこの第四騎士団の団長を辞めたとしたらどうなるか、ということを考え始めた。
カリッドが第四騎士団の団長を務めてから一年が過ぎようとしているところだ。それから少しずつ、女性騎士の地位も向上したようにも思える。というのも、モニカにとって非常に仕事がしやすい環境になったからだ。
男女平等、適材適所、というのがカリッドの考えらしい。
「仮に、団長がその役を退いたとき、次の団長候補としては、どなたになるのでしょうか」
「ああ、そうだな。普通なら副団長のジョージアなのだが、もしかしたら他の団からやってくるかもしれないな」
他の団、と言う言葉が耳に入った時に、モニカは顔をしかめた。この第四騎士団は女性騎士にも優しい団であるが、他の団はそうではない。明らかに男尊女卑がはびこっている。そのようなところから団長となるような人物がやってきたら、自分の立場が危うくなるのは目に見えている。
ということは、ここは不本意ながらもこのカリッドの任務を引き受けるべきなのだろうか。
「団長。念のための確認ではありますが、その、団長の恋人役というのは通常任務の一つでしょうか。それとも特殊任務に該当しますか?」
任務である以上、確認すべき重要事項の一つだ。
通常任務というのはその名の通り、普通の任務のこと。誰でもこなせるような任務だ。だが、特殊任務というのは、選ばれた騎士しかこなせない任務のこと。訓練を積み、経験を重ね、そして団長に認められた者だけがこなすことができる任務。
「もちろん、特殊任務だ。今回の件は、誰でもこなせるような任務ではないからな」
「となると、報酬は……」
「ああ、もちろん出す。特殊任務だからな」
「特別報酬……?」
「ああ」
ジュルリ、とモニカはこぼれそうな涎をカリッドに気付かれないようにすすった。
「一体、どのような特別報酬でしょうか」
つい、モニカは腰を浮かしそうになったのは、その特別報酬に惹かれたためだ。特別報酬というものは、普通のお給金ではない。現物支給の場合もある。
「そうだな。モニカの場合は、あの伝説の魔導具師マルセルの魔導弓とかはどうだ?」
「え、伝説の魔導弓ですか? そのようなものを団長はお持ちなのですか」
「あ、ああ、まあ、な。その、伝手があってだな」
ゴクリとモニカは喉を鳴らした。魔導弓、それは放った矢が自動的に射手に戻ってくるという、弓を射る者にとっては魅力的な弓だ。
「わかりました。ぜひとも団長の恋人役をやらせてください」
モニカは特別報酬の魔導弓に釣られて、つい、そう答えてしまった。
「ですから、それは新手のパワハラ」
「ではない。その見合いを断るには、俺に付き合っている女性がいることを見せ付けるのが手っ取り早いと思ってだ、な」
「では、そのお付き合いなさっている女性に頼んでください」
「そのような女性がいないから、その役を君に頼んでいる」
うーん、とモニカは唸ってしまった。
「もしかして、君にはすでにそのような相手がいるのか?」
カリッドは不安になって尋ねた。
「いえ、残念ながらおりません」
「だったら、俺の恋人役を引き受けてもらえないだろうか。これは信頼おける者にしか頼めない任務であると思っている」
「新手のパワハラ」
信頼おける者とカリッドが口にしたにも関わらず、すぐにパワハラと結びつけるモニカにとって、やはりカリッドの恋人役というのは耐えがたいものなのだろうか。
「ではない。立派な任務だ」
「任務、ですか」
「そうだ。今後、俺がこのまま団長を続けるか続けないか、その運命が君にかかっている。だから、任務だ」
うーん、とモニカは再び唸った。
仮に、カリッドがこの第四騎士団の団長を辞めたとしたらどうなるか、ということを考え始めた。
カリッドが第四騎士団の団長を務めてから一年が過ぎようとしているところだ。それから少しずつ、女性騎士の地位も向上したようにも思える。というのも、モニカにとって非常に仕事がしやすい環境になったからだ。
男女平等、適材適所、というのがカリッドの考えらしい。
「仮に、団長がその役を退いたとき、次の団長候補としては、どなたになるのでしょうか」
「ああ、そうだな。普通なら副団長のジョージアなのだが、もしかしたら他の団からやってくるかもしれないな」
他の団、と言う言葉が耳に入った時に、モニカは顔をしかめた。この第四騎士団は女性騎士にも優しい団であるが、他の団はそうではない。明らかに男尊女卑がはびこっている。そのようなところから団長となるような人物がやってきたら、自分の立場が危うくなるのは目に見えている。
ということは、ここは不本意ながらもこのカリッドの任務を引き受けるべきなのだろうか。
「団長。念のための確認ではありますが、その、団長の恋人役というのは通常任務の一つでしょうか。それとも特殊任務に該当しますか?」
任務である以上、確認すべき重要事項の一つだ。
通常任務というのはその名の通り、普通の任務のこと。誰でもこなせるような任務だ。だが、特殊任務というのは、選ばれた騎士しかこなせない任務のこと。訓練を積み、経験を重ね、そして団長に認められた者だけがこなすことができる任務。
「もちろん、特殊任務だ。今回の件は、誰でもこなせるような任務ではないからな」
「となると、報酬は……」
「ああ、もちろん出す。特殊任務だからな」
「特別報酬……?」
「ああ」
ジュルリ、とモニカはこぼれそうな涎をカリッドに気付かれないようにすすった。
「一体、どのような特別報酬でしょうか」
つい、モニカは腰を浮かしそうになったのは、その特別報酬に惹かれたためだ。特別報酬というものは、普通のお給金ではない。現物支給の場合もある。
「そうだな。モニカの場合は、あの伝説の魔導具師マルセルの魔導弓とかはどうだ?」
「え、伝説の魔導弓ですか? そのようなものを団長はお持ちなのですか」
「あ、ああ、まあ、な。その、伝手があってだな」
ゴクリとモニカは喉を鳴らした。魔導弓、それは放った矢が自動的に射手に戻ってくるという、弓を射る者にとっては魅力的な弓だ。
「わかりました。ぜひとも団長の恋人役をやらせてください」
モニカは特別報酬の魔導弓に釣られて、つい、そう答えてしまった。
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