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本編
たんたんと罠にはめる(3)
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第四騎士団は地方勤務が主だ。地方の治安を守るのが第四騎士団の役目。そのため、団員たちは交替で長期休暇を取ることができる。それは王都に置いてきた家族と会うためだったり、一人の時間を有意義に過ごすためだったり。
カリッドがこの第四騎士団の団長に就任してから、彼は一度も長期休暇を取得していなかった。いくら団長であっても休暇は取得すべきと副団長であるジョージアはしつこく口にしていたし、彼の事務官であるイアンも同じようなことを何度も言っていた。それでも長期休暇を取得しようとしなかったカリッドは、休暇を取ってもやることが無いためとかなんとか、そんな言い訳をしていた。
ところが、そこに一通の手紙。見合いのために帰ってこい。見合いが嫌ならそれなりの女性を連れて帰ってこい、という父親からの手紙だった。
カリッドも年は三十を過ぎた頃。両親の気持ちもわからなくはないが、騎士団に入団した時点でこのように女性と縁遠くなることは察しておいて欲しい。いや察したうえで、さらに現状を理解したうえでの見合いの話なのだろう。
「それで、その見合いが嫌であるため、モニカ殿にあなた様の恋人役を頼んだわけですか」
お茶をコトリと執務用の机の上に置きながら、あきれた声でそう言ったのが事務官であるイアン。彼はカリッドの事務官でありながら、カリッドが屋敷から連れてきた優秀な使用人でもある。
「でなければ、見合いだ」
はあ、とカリッドは大きく肩で息をついた。
「見合い、すればよろしいではないのですか?」
この優秀な使用人もモニカと同じようなことを口にする。
「俺はまだ結婚したくない」
机の上で両手を組み、カリッドはそこに顔を埋めた。
「それは、厳密には好きではない女性とは結婚したくない、ということですよね? 相手があなた様の思い人であれば結婚したいのではないですか?」
「どういう意味だ?」
カリッドは埋めていた顔をあげて、優秀な使用人を睨んだ。
「さっさとモニカ殿に気持ちを伝えればいいものの……」
「なっ、ちょっ、イアン。き、貴様、何を言っている」
そこでイアンは深くため息をついた。恐らくモニカ本人は気付いていないだろう。この上官の思惑に。そして周囲も。そうやって気持ちを周到に隠してきたこの主には、イアンも敬意を払いたいとは思っているのだが。
「物で釣って好きな女性でかつ部下に恋人役を頼むとか、新手のパワハラですか」
「パワハラではない。断じて違う。任務だ。モニカにもそう言った」
「まあ。彼女が本物の恋人ではなく、恋人役であることがばれないように、しっかりなさった方がよろしいのではないでしょうかね。ああ見えても、あの方たちも鋭いですからね。カリッド様が結婚する気がないことを知っての今回の呼び出しでしょうね」
イアンはもう一度ため息をついた。息子が息子なら、親も親、という気持ちがどこかにあった。昔から仕えてきている主だから、よくわかる。
「どうしたらいい?」
そう尋ねるカリッドは情けない顔をしていたと思う。なぜなら、イアンが今度こそ盛大にため息をついたからだ。
「ご自分でお考えください、と言いたいところでありますが。それがきっかけでカリッド様の望まぬ結果になられても困りますからね。まして、この団を退くことになるとか。それでは、騎士団の皆様にもご迷惑をおかけしてしまいます。円満に結婚をしていただいて、それなりにここの団長を務めていただくのが、何よりでございますね」
そこでイアンはくいっと右手の人差し指で眼鏡を押し上げた。
「モニカ殿に恋人役を頼んだ手前、彼女と恋人らしい振舞をなされたらいかがでしょうか。不自然さから偽物の恋人であるとばれてしまったら、元も子もないでしょう」
恋人らしい振舞。
その言葉がさらに、カリッドを悩ませる羽目になった。
カリッドがこの第四騎士団の団長に就任してから、彼は一度も長期休暇を取得していなかった。いくら団長であっても休暇は取得すべきと副団長であるジョージアはしつこく口にしていたし、彼の事務官であるイアンも同じようなことを何度も言っていた。それでも長期休暇を取得しようとしなかったカリッドは、休暇を取ってもやることが無いためとかなんとか、そんな言い訳をしていた。
ところが、そこに一通の手紙。見合いのために帰ってこい。見合いが嫌ならそれなりの女性を連れて帰ってこい、という父親からの手紙だった。
カリッドも年は三十を過ぎた頃。両親の気持ちもわからなくはないが、騎士団に入団した時点でこのように女性と縁遠くなることは察しておいて欲しい。いや察したうえで、さらに現状を理解したうえでの見合いの話なのだろう。
「それで、その見合いが嫌であるため、モニカ殿にあなた様の恋人役を頼んだわけですか」
お茶をコトリと執務用の机の上に置きながら、あきれた声でそう言ったのが事務官であるイアン。彼はカリッドの事務官でありながら、カリッドが屋敷から連れてきた優秀な使用人でもある。
「でなければ、見合いだ」
はあ、とカリッドは大きく肩で息をついた。
「見合い、すればよろしいではないのですか?」
この優秀な使用人もモニカと同じようなことを口にする。
「俺はまだ結婚したくない」
机の上で両手を組み、カリッドはそこに顔を埋めた。
「それは、厳密には好きではない女性とは結婚したくない、ということですよね? 相手があなた様の思い人であれば結婚したいのではないですか?」
「どういう意味だ?」
カリッドは埋めていた顔をあげて、優秀な使用人を睨んだ。
「さっさとモニカ殿に気持ちを伝えればいいものの……」
「なっ、ちょっ、イアン。き、貴様、何を言っている」
そこでイアンは深くため息をついた。恐らくモニカ本人は気付いていないだろう。この上官の思惑に。そして周囲も。そうやって気持ちを周到に隠してきたこの主には、イアンも敬意を払いたいとは思っているのだが。
「物で釣って好きな女性でかつ部下に恋人役を頼むとか、新手のパワハラですか」
「パワハラではない。断じて違う。任務だ。モニカにもそう言った」
「まあ。彼女が本物の恋人ではなく、恋人役であることがばれないように、しっかりなさった方がよろしいのではないでしょうかね。ああ見えても、あの方たちも鋭いですからね。カリッド様が結婚する気がないことを知っての今回の呼び出しでしょうね」
イアンはもう一度ため息をついた。息子が息子なら、親も親、という気持ちがどこかにあった。昔から仕えてきている主だから、よくわかる。
「どうしたらいい?」
そう尋ねるカリッドは情けない顔をしていたと思う。なぜなら、イアンが今度こそ盛大にため息をついたからだ。
「ご自分でお考えください、と言いたいところでありますが。それがきっかけでカリッド様の望まぬ結果になられても困りますからね。まして、この団を退くことになるとか。それでは、騎士団の皆様にもご迷惑をおかけしてしまいます。円満に結婚をしていただいて、それなりにここの団長を務めていただくのが、何よりでございますね」
そこでイアンはくいっと右手の人差し指で眼鏡を押し上げた。
「モニカ殿に恋人役を頼んだ手前、彼女と恋人らしい振舞をなされたらいかがでしょうか。不自然さから偽物の恋人であるとばれてしまったら、元も子もないでしょう」
恋人らしい振舞。
その言葉がさらに、カリッドを悩ませる羽目になった。
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