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第一章:お仕事募集中です(4)
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「これって、番号は? わかる?」
「番号? ここに書いてあるじゃないですか。一、五、四、三、七だそうです」
「う~ん、ちょっと待ってね」
カミラは分厚い帳簿を持ってきて、そちらを確認する。
「番号が一五四三七ね。あ~求人、あるわね。そして、決まってない。っていうか、これ。場所が王城じゃないの?」
「そう、そうなんですよ。それに仕事内容も、家庭教師って。最高じゃないですか」
今まで家庭教師をしてきたイリヤにとっては、慣れた仕事でもある。
「条件も悪くないわね。あなたにぴったり。だけど、王城での仕事をここに依頼なんて、今まであったかしら?」
カミラは不思議そうに首を傾げるが、イリヤにとっては早く紹介状を書いてもらいたい。
「カミラさん。私、この仕事、受けますから。早く、紹介状を書いてくださいよ」
「わかった、わかった。王城といっても広いし、もしかしたら使用人たちの子の家庭教師かもしれないものね」
どうやらカミラは、家庭教師先を心配しているようであった。確か、マラカイト国王には王子が一人いたはず。その王子もまだ三歳であるため、家庭教師をこのような紹介所で探すのもおかしな話である。
となれば、やはりカミラが言ったように、使用人の誰かの子の家庭教師と考えるのが無難だろう。
残念ながら求人票には、そこまで書いていなかった。
『求む! 家庭教師。子どもの相手が得意な方。性別年齢国籍問わず。住み込み可。詳細は面接にて』
そこにお給金が書いてあり、イリヤの心を鷲づかみにした。
「はいはい、紹介状。書いたわ。あなたのこと、べた褒めしておいたし、見た目と噂と違って初心って書いてあげた」
「ありがとうございます。では、いってきます」
「うん。もう、二度とここにはこないでね」
カミラは手を振って見送ってくれたが、そんな彼女が「でも、あの子が手にしていたあの紙……何も、書いてなかったよね? 白紙だと思ったんだけど……」と、イリヤの背に向かって呟いたのは、もちろんイリヤには届いていない。
そしてイリヤは、求人票と紹介状を持って、王城に向かって嬉々として歩いているのであった。
本来であれば馬車を使えばいいのだろうが、そんなお金、もったいなくて使えない。歩けない距離でもないし、毎日片道三十分、往復一時間も歩き、掲示板の前で何時間も突っ立っていたイリヤにとって、紹介所から王城までの片道一時間半の距離を歩くのは、大したことでもなかった。
王城は、侵入者から守るために堅く門が閉じられていた。その前に立つ騎士にイリヤは声をかける。
「あのぅ。こちらの求人を見てきたのですが……」
王城に入るためには、この門を開けてもらう必要がある。
「求人?」
聞いていたか? と、門扉を守る騎士たちが数人、集まって話し始めた。
この隙に門をくぐってしまおう。
と、そのようなことができるほど、警備がゆるいわけでもない。やはり門は、堅く閉ざされている。
「その求人票を見せてもらってもいいか?」
がっしりとした体躯の騎士が、じろりとイリヤを見下ろした。
「は、はい……」
頭二つ分大きいような男からこうやって見下ろされると、萎縮してしまう。
イリヤは身を縮めながら、紹介状と求人票の二つを大きな男に手渡す。
「紹介状は……本物だな。求人票は……ん?」
数人の騎士たちは再び頭を寄せ合って、イリヤが渡した求人票を確認している。
もしかして、すでに他の人に決まってしまったのだろうか。
この仕事だけが頼りだというのに。
わけのわからない焦りが、イリヤを襲う。
「……おい」
「は、はい」
イリヤは背筋を真っ直ぐにして返事をした。
騎士は、威圧的にじろじろとイリヤの顔をのぞき込む。
「番号? ここに書いてあるじゃないですか。一、五、四、三、七だそうです」
「う~ん、ちょっと待ってね」
カミラは分厚い帳簿を持ってきて、そちらを確認する。
「番号が一五四三七ね。あ~求人、あるわね。そして、決まってない。っていうか、これ。場所が王城じゃないの?」
「そう、そうなんですよ。それに仕事内容も、家庭教師って。最高じゃないですか」
今まで家庭教師をしてきたイリヤにとっては、慣れた仕事でもある。
「条件も悪くないわね。あなたにぴったり。だけど、王城での仕事をここに依頼なんて、今まであったかしら?」
カミラは不思議そうに首を傾げるが、イリヤにとっては早く紹介状を書いてもらいたい。
「カミラさん。私、この仕事、受けますから。早く、紹介状を書いてくださいよ」
「わかった、わかった。王城といっても広いし、もしかしたら使用人たちの子の家庭教師かもしれないものね」
どうやらカミラは、家庭教師先を心配しているようであった。確か、マラカイト国王には王子が一人いたはず。その王子もまだ三歳であるため、家庭教師をこのような紹介所で探すのもおかしな話である。
となれば、やはりカミラが言ったように、使用人の誰かの子の家庭教師と考えるのが無難だろう。
残念ながら求人票には、そこまで書いていなかった。
『求む! 家庭教師。子どもの相手が得意な方。性別年齢国籍問わず。住み込み可。詳細は面接にて』
そこにお給金が書いてあり、イリヤの心を鷲づかみにした。
「はいはい、紹介状。書いたわ。あなたのこと、べた褒めしておいたし、見た目と噂と違って初心って書いてあげた」
「ありがとうございます。では、いってきます」
「うん。もう、二度とここにはこないでね」
カミラは手を振って見送ってくれたが、そんな彼女が「でも、あの子が手にしていたあの紙……何も、書いてなかったよね? 白紙だと思ったんだけど……」と、イリヤの背に向かって呟いたのは、もちろんイリヤには届いていない。
そしてイリヤは、求人票と紹介状を持って、王城に向かって嬉々として歩いているのであった。
本来であれば馬車を使えばいいのだろうが、そんなお金、もったいなくて使えない。歩けない距離でもないし、毎日片道三十分、往復一時間も歩き、掲示板の前で何時間も突っ立っていたイリヤにとって、紹介所から王城までの片道一時間半の距離を歩くのは、大したことでもなかった。
王城は、侵入者から守るために堅く門が閉じられていた。その前に立つ騎士にイリヤは声をかける。
「あのぅ。こちらの求人を見てきたのですが……」
王城に入るためには、この門を開けてもらう必要がある。
「求人?」
聞いていたか? と、門扉を守る騎士たちが数人、集まって話し始めた。
この隙に門をくぐってしまおう。
と、そのようなことができるほど、警備がゆるいわけでもない。やはり門は、堅く閉ざされている。
「その求人票を見せてもらってもいいか?」
がっしりとした体躯の騎士が、じろりとイリヤを見下ろした。
「は、はい……」
頭二つ分大きいような男からこうやって見下ろされると、萎縮してしまう。
イリヤは身を縮めながら、紹介状と求人票の二つを大きな男に手渡す。
「紹介状は……本物だな。求人票は……ん?」
数人の騎士たちは再び頭を寄せ合って、イリヤが渡した求人票を確認している。
もしかして、すでに他の人に決まってしまったのだろうか。
この仕事だけが頼りだというのに。
わけのわからない焦りが、イリヤを襲う。
「……おい」
「は、はい」
イリヤは背筋を真っ直ぐにして返事をした。
騎士は、威圧的にじろじろとイリヤの顔をのぞき込む。
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