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エピローグ
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イリヤは天蓋付きの寝台の上で、目の前の黒髪の男を見上げた。
「それで、クライブ様……いったい、ナニを……?」
「ナニをって。これから夫婦の営みをするのだろう?」
それはイリヤにとって初耳である。
「安心しろ。オレは、お前で勃つ」
「安心できません。別に、私で勃たたせなくてもよろしいのですよ?」
「それは、もう無理だ」
クライブが深く口づけた。それはもうとろけるような甘い口づけで、イリヤの頭はぼんやりとするくらい、心地よいものであった。
「オレの妻はかわいいな……」
妻だけど本当の妻ではありません、とはもう言えない。
二人は今日、大勢の人たちに見守られながら、永遠の愛を誓った。
宰相クライブと聖女イリヤの結婚式。
結婚の誓約だけは交わしていたが、瘴気の件が落ち着くまでは式を挙げないと二人で決めた――
そういう話になっていたのだ。エーヴァルトの作り話でもあるが、彼の作り話は真実になるから権力とは恐ろしいものである。
そしてその瘴気も祓われ、魔物の件も落ち着いたところで式を挙げた。ということになっている。これも権力のなせる業。
その結婚式には、マーベル子爵とサブル侯爵も参列し、祝福してくれた。だが、その二人が心なしか痩せたように見えたのは気のせいだったろうか。
『まぁ。魔物に襲われた集落の後片付けみたいなものだからな。大変なのではないか?』
そうクライブは言っていたが、そんな内容を知っている時点で、彼らがミルトの森近くに行っているのはクライブのせいではないかと疑ってしまう。ここにも見えない権力が働いたのではないだろうか――
そんな彼が、イリヤに熱い眼差しを向ける。
「イリヤ……オレを知って、オレを好きになったか?」
「え?」
「イリヤが言っただろう? 時間をかけて相手を知り、そこから愛情が生まれていくと。オレたちはもう、半年以上も一緒に暮らしている。時間はかけたつもりだ。オレに対する愛情は生まれたか?」
吸い込まれそうなアイビーグリーンの瞳に見つめられると、胸がトクンと高鳴る。
「そ……そうですね……」
いつからだろう。
クライブとマリアンヌとの三人での暮らしを、これからも望むようになったのは。
そこに新しい家族が増えるのも楽しいかもしれないと、妄想を抱くようになったのは。
「イリヤ……」
彼が耳元で愛をささやいた。
嬉しいけれど、恥ずかしい。胸がぎゅっと締め付けられて、目頭が熱くなった。
クライブの手がイリヤのナイトドレスを脱がそうとしたとき。
――ドン!
「わ、私ではありませんよ? きょ、今日は、魔法が暴走しないと思います、多分……」
となれば、こんな音を立てられるような力を使える者は一人しか知らない。
イリヤは少しだけ乱れたドレスを、さっと直した。
控えめに部屋の扉をノックされる。
『旦那様、奥様、おやすみのところ申し訳ありません。お嬢様が――』
クライブは眉を八の字にして、イリヤと顔を見合わせた。
【完】
~~あとがきみたいなもの~~
最後までお付き合いいただきましてありがとうございます。
冒頭の「オレは、お前で勃つ」を書きたかっただけなのに、ちょっと盛大な物語になってしまったなと。
それもこれもマリアンヌがかわいすぎるのと、エーヴァルトのキャラがぶっ壊れたせいだと思います。
こちらもキャラが濃いので、いくらでも続きは書けます。
が、この物語は一度ここで完結となります。
いいね、コメント、エールなど、本当にありがとうございました。
10万字書いてからのすすみが遅くて、更新できなくなるかもと思ったときもありましたが(たいてい月末)、みなさまのあたたかい反応のおかげで、今日という日を迎えることができて、感無量。
それでは、次の作品で。って、連載始まってます!!
よろしくお願いします。
澤谷
「それで、クライブ様……いったい、ナニを……?」
「ナニをって。これから夫婦の営みをするのだろう?」
それはイリヤにとって初耳である。
「安心しろ。オレは、お前で勃つ」
「安心できません。別に、私で勃たたせなくてもよろしいのですよ?」
「それは、もう無理だ」
クライブが深く口づけた。それはもうとろけるような甘い口づけで、イリヤの頭はぼんやりとするくらい、心地よいものであった。
「オレの妻はかわいいな……」
妻だけど本当の妻ではありません、とはもう言えない。
二人は今日、大勢の人たちに見守られながら、永遠の愛を誓った。
宰相クライブと聖女イリヤの結婚式。
結婚の誓約だけは交わしていたが、瘴気の件が落ち着くまでは式を挙げないと二人で決めた――
そういう話になっていたのだ。エーヴァルトの作り話でもあるが、彼の作り話は真実になるから権力とは恐ろしいものである。
そしてその瘴気も祓われ、魔物の件も落ち着いたところで式を挙げた。ということになっている。これも権力のなせる業。
その結婚式には、マーベル子爵とサブル侯爵も参列し、祝福してくれた。だが、その二人が心なしか痩せたように見えたのは気のせいだったろうか。
『まぁ。魔物に襲われた集落の後片付けみたいなものだからな。大変なのではないか?』
そうクライブは言っていたが、そんな内容を知っている時点で、彼らがミルトの森近くに行っているのはクライブのせいではないかと疑ってしまう。ここにも見えない権力が働いたのではないだろうか――
そんな彼が、イリヤに熱い眼差しを向ける。
「イリヤ……オレを知って、オレを好きになったか?」
「え?」
「イリヤが言っただろう? 時間をかけて相手を知り、そこから愛情が生まれていくと。オレたちはもう、半年以上も一緒に暮らしている。時間はかけたつもりだ。オレに対する愛情は生まれたか?」
吸い込まれそうなアイビーグリーンの瞳に見つめられると、胸がトクンと高鳴る。
「そ……そうですね……」
いつからだろう。
クライブとマリアンヌとの三人での暮らしを、これからも望むようになったのは。
そこに新しい家族が増えるのも楽しいかもしれないと、妄想を抱くようになったのは。
「イリヤ……」
彼が耳元で愛をささやいた。
嬉しいけれど、恥ずかしい。胸がぎゅっと締め付けられて、目頭が熱くなった。
クライブの手がイリヤのナイトドレスを脱がそうとしたとき。
――ドン!
「わ、私ではありませんよ? きょ、今日は、魔法が暴走しないと思います、多分……」
となれば、こんな音を立てられるような力を使える者は一人しか知らない。
イリヤは少しだけ乱れたドレスを、さっと直した。
控えめに部屋の扉をノックされる。
『旦那様、奥様、おやすみのところ申し訳ありません。お嬢様が――』
クライブは眉を八の字にして、イリヤと顔を見合わせた。
【完】
~~あとがきみたいなもの~~
最後までお付き合いいただきましてありがとうございます。
冒頭の「オレは、お前で勃つ」を書きたかっただけなのに、ちょっと盛大な物語になってしまったなと。
それもこれもマリアンヌがかわいすぎるのと、エーヴァルトのキャラがぶっ壊れたせいだと思います。
こちらもキャラが濃いので、いくらでも続きは書けます。
が、この物語は一度ここで完結となります。
いいね、コメント、エールなど、本当にありがとうございました。
10万字書いてからのすすみが遅くて、更新できなくなるかもと思ったときもありましたが(たいてい月末)、みなさまのあたたかい反応のおかげで、今日という日を迎えることができて、感無量。
それでは、次の作品で。って、連載始まってます!!
よろしくお願いします。
澤谷
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