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【第三部】堅物騎士団長に溺愛されている変装令嬢は今日もその役を演じます
10.子どもの時間です(2)
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「やはり、彼女はただ者では無いな」
エレオノーラを支えた右手を見つめながら、アレックスはその言葉を吐いた。
「私の笑顔にも動じない」
「会長。あんまりエレンちゃんのことをいじめないでくださいよ。私の友達なんだから」
ドロシーがお菓子をつまみながら言った。
「わかっている。だが、やはり彼女は気になる。特に、あの鍛えられた腹筋」
「会長。あんまりエレンちゃんにセクハラしないでくださいよ。私の友達なんだから」
ドロシーはもう一つお菓子を口に放り込んだ。
「サイモンも見ただろう。今の彼女の動き。私が手をとった瞬間に、どの行動をするのが正しいのかを判断してから、私に倒れ掛かってきた」
「ええ。会長が彼女のお腹にきっちりとその手で触れているところを、しっかりと見ていました」
「ああ、素晴らしい腹筋だった」
学院の男子生徒の中でも、あれほどの腹筋を備えている者はいないだろう。
「会長、エレンちゃんはあっちでも演劇部だったみたいですから、発声練習の賜物じゃないですかね? あんまり女の子に向かって腹筋腹筋って腹筋ばっかり褒めるのもいかがなものかと思いますよ」
ドロシーはそこでお茶の残りを一気に飲み干した。
「会長がエレンちゃんを生徒会に誘いたいって言うから連れてきたんですよ。いじめたりセクハラしたりするんなら、許しませんからね」
ドロシーは立ち上がって、手を腰に当てた。どうやらアレックスを威嚇しているらしい。
そこへ生徒会室の扉が開き、二人の男子学生が入ってきた。会計のハリーと書記のイアンである。
「なんだ、なんかあったのか? もしかして、来てはいけないところに来てしまったのだろうか」
入り口で立ち止まったまま、ハリーが不穏な空気を察した。
「あー、ハリー先輩。今、会長が私の友達にセクハラをしたから説教していたところです」
「セクハラで説教だと? 一体、何をやらかしたんだ、アレックス」
ドロシーと同じように、ハリーも腰に右手を当てて大きくため息をついだ。
「卒業間近なんだ、問題を起こさないでくれよ」
「その言い方は、まるで私が問題ばかり起こしているような言い方だな」
「自覚が無いって恐ろしいですね」
イアンがそっとハリーの耳元で囁いたので、ハリーは小さく頷いた。
「あ、そうだ。ドロシー。今、エレンさんとすれ違ったけど、もしかして会長のセクハラの相手って彼女?」
「そう、そうなのよ。イアン、ちょっと聞いてよ」
ずかずかとイアンの方に回り込んで、彼女は身を乗り出してきた。それを制するように顔の前に両手を出し、
「うん、わかった、わかったから。君の話は聞いてあげるから、まずは落ち着こう。ほら、お茶でも飲んで。僕が準備するからさ」
イアンは苦笑を浮かべながら、てきぱきと人数分のお茶を淹れなおした。ドロシーは膨れながら、しぶしぶとソファに座る。
アレックスがお誕生席に座り、ハリーとイアンが並んで座り、その向かいにドロシーとサイモン。
「で。アレックス。君は留学生に何をやらかしたんだ? ドロシーがここまで怒っていると言うことは、本当にセクハラしたのか?」
「人聞きが悪いことを言うな。セクハラではない。事故だ」
「事故で触れたからって、エレンちゃんの腹筋がいいとか、すごく言いまくってるんですよ。本人がいないことをいいことに。ちょっと、女性に対して失礼じゃないですか?」
ドロシーはぶーっと膨れた。膨れているにも関わらず、お茶を飲む。
「失礼か失礼ではないかで言ったら、失礼だな」
ハリーも頷いた。だが、と言葉を続ける。
「アレックスがべた褒めする腹筋とやらにも興味はある」
「ちょっと、ハリー先輩まで」
ドロシーの頬は余計に膨れた。まあまあ、とサイモンが宥めている。
「それよりも、なんで彼女がこの生徒会室に? 何か用事でも?」
腹筋からの話題を反らすために、イアンが口を開いた。
「生徒会役員に誘った」
アレックスが静かに答えた。
「ですが、彼女は短期留学だったはず。こちらにいるのは三月だけですよ」
イアンのその答えに。
「え、やっぱりそうなの?」
「ドロシー。君は先生の話を聞いていなかったのかい? 彼女は短期留学で二学年が終わるまでの三月だけの留学だよ」
「えー、そうなの? もう、がっかり」
落ち込むドロシーに、まあまあ、とサイモンが宥めている。
「で、会長。なぜそんな彼女を生徒会に誘おうと思ったんですか?」
イアンが横目でアレックスを見た。
「なぜ?」
アレックスは足を組んで、腕を組んだ。
「なぜ、と言われても。彼女が気になったから、だろうな」
アレックスの気になると言う言葉には、嫌な予感しかない。けれど、エレンという留学生が気になる、という意見には激しく同意できる。
「アレックス。一言だけ言っておくが。彼女は留学生だ。いくらお前の立場であっても、下手すれば外交問題に関わることになるかもしれない。それだけは気を付けておけよ。しかもお前は婚約者がいる身だ。あまり留学生にちょっかいを出すな」
「ハリー。それは一言とは言わない」
そこでアレックスはお茶を飲んだ。
「まあ、いいや。とりあえずは演劇部の卒業公演とやらを楽しみにしておくよ。彼女も出るみたいだしね」
アレックスのそれに、四人は嫌な予感しかしなかった。
エレオノーラを支えた右手を見つめながら、アレックスはその言葉を吐いた。
「私の笑顔にも動じない」
「会長。あんまりエレンちゃんのことをいじめないでくださいよ。私の友達なんだから」
ドロシーがお菓子をつまみながら言った。
「わかっている。だが、やはり彼女は気になる。特に、あの鍛えられた腹筋」
「会長。あんまりエレンちゃんにセクハラしないでくださいよ。私の友達なんだから」
ドロシーはもう一つお菓子を口に放り込んだ。
「サイモンも見ただろう。今の彼女の動き。私が手をとった瞬間に、どの行動をするのが正しいのかを判断してから、私に倒れ掛かってきた」
「ええ。会長が彼女のお腹にきっちりとその手で触れているところを、しっかりと見ていました」
「ああ、素晴らしい腹筋だった」
学院の男子生徒の中でも、あれほどの腹筋を備えている者はいないだろう。
「会長、エレンちゃんはあっちでも演劇部だったみたいですから、発声練習の賜物じゃないですかね? あんまり女の子に向かって腹筋腹筋って腹筋ばっかり褒めるのもいかがなものかと思いますよ」
ドロシーはそこでお茶の残りを一気に飲み干した。
「会長がエレンちゃんを生徒会に誘いたいって言うから連れてきたんですよ。いじめたりセクハラしたりするんなら、許しませんからね」
ドロシーは立ち上がって、手を腰に当てた。どうやらアレックスを威嚇しているらしい。
そこへ生徒会室の扉が開き、二人の男子学生が入ってきた。会計のハリーと書記のイアンである。
「なんだ、なんかあったのか? もしかして、来てはいけないところに来てしまったのだろうか」
入り口で立ち止まったまま、ハリーが不穏な空気を察した。
「あー、ハリー先輩。今、会長が私の友達にセクハラをしたから説教していたところです」
「セクハラで説教だと? 一体、何をやらかしたんだ、アレックス」
ドロシーと同じように、ハリーも腰に右手を当てて大きくため息をついだ。
「卒業間近なんだ、問題を起こさないでくれよ」
「その言い方は、まるで私が問題ばかり起こしているような言い方だな」
「自覚が無いって恐ろしいですね」
イアンがそっとハリーの耳元で囁いたので、ハリーは小さく頷いた。
「あ、そうだ。ドロシー。今、エレンさんとすれ違ったけど、もしかして会長のセクハラの相手って彼女?」
「そう、そうなのよ。イアン、ちょっと聞いてよ」
ずかずかとイアンの方に回り込んで、彼女は身を乗り出してきた。それを制するように顔の前に両手を出し、
「うん、わかった、わかったから。君の話は聞いてあげるから、まずは落ち着こう。ほら、お茶でも飲んで。僕が準備するからさ」
イアンは苦笑を浮かべながら、てきぱきと人数分のお茶を淹れなおした。ドロシーは膨れながら、しぶしぶとソファに座る。
アレックスがお誕生席に座り、ハリーとイアンが並んで座り、その向かいにドロシーとサイモン。
「で。アレックス。君は留学生に何をやらかしたんだ? ドロシーがここまで怒っていると言うことは、本当にセクハラしたのか?」
「人聞きが悪いことを言うな。セクハラではない。事故だ」
「事故で触れたからって、エレンちゃんの腹筋がいいとか、すごく言いまくってるんですよ。本人がいないことをいいことに。ちょっと、女性に対して失礼じゃないですか?」
ドロシーはぶーっと膨れた。膨れているにも関わらず、お茶を飲む。
「失礼か失礼ではないかで言ったら、失礼だな」
ハリーも頷いた。だが、と言葉を続ける。
「アレックスがべた褒めする腹筋とやらにも興味はある」
「ちょっと、ハリー先輩まで」
ドロシーの頬は余計に膨れた。まあまあ、とサイモンが宥めている。
「それよりも、なんで彼女がこの生徒会室に? 何か用事でも?」
腹筋からの話題を反らすために、イアンが口を開いた。
「生徒会役員に誘った」
アレックスが静かに答えた。
「ですが、彼女は短期留学だったはず。こちらにいるのは三月だけですよ」
イアンのその答えに。
「え、やっぱりそうなの?」
「ドロシー。君は先生の話を聞いていなかったのかい? 彼女は短期留学で二学年が終わるまでの三月だけの留学だよ」
「えー、そうなの? もう、がっかり」
落ち込むドロシーに、まあまあ、とサイモンが宥めている。
「で、会長。なぜそんな彼女を生徒会に誘おうと思ったんですか?」
イアンが横目でアレックスを見た。
「なぜ?」
アレックスは足を組んで、腕を組んだ。
「なぜ、と言われても。彼女が気になったから、だろうな」
アレックスの気になると言う言葉には、嫌な予感しかない。けれど、エレンという留学生が気になる、という意見には激しく同意できる。
「アレックス。一言だけ言っておくが。彼女は留学生だ。いくらお前の立場であっても、下手すれば外交問題に関わることになるかもしれない。それだけは気を付けておけよ。しかもお前は婚約者がいる身だ。あまり留学生にちょっかいを出すな」
「ハリー。それは一言とは言わない」
そこでアレックスはお茶を飲んだ。
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