最強のチート『不死』は理想とはかけ離れていました ~ 人と関わりたくないので史上最強の家族と引きこもりを目指したいと思います

涅夢 - くろむ

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187話 - 消失

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 深夜1時。
 この時間にはエルフは全て寝静まっている。
 今日の為にエルフの行動スケジュール等はすべて把握済みだ。

 僕等は今、世界樹の集落ニヴルヘイムの入口正面の茂みに潜んでいる。

 用意した転移魔石は76個。
 1等級を含めると139個だ。
 ちょっと張り切りすぎた。

 その他の準備も完全に整っている。
 計画は何度も頭で繰り返した。

『話に聞いていた通り、門番1人だな』

『ええ、集落は人数が少ないので。入口も柵を超えて出ない限りはあそこ限りですから』

『わかった。念の為周りも警戒しておく。気にせずにやってくれ』

『わかりました!……あ、あの方は』

 エステルがエルフの門番の顔を見て顔を顰めている。

『ん?エステル知り合いか?』

『私を……エルフの屋敷に連れて行ったものです……』

 あ、あいつか!兄ちゃんの胸倉掴んでエステルをルイズってエロフの領主候補に売ったやつ!
 あれから1年前後経つのにまだ居たのか……

『たまに長期駐在しているエルフもいるのです……。私にあの者を抑える役をやらせてもらえませんか?』(ググッ……)

 そうだな……
 奴隷騒ぎの発端ってあいつだもんな。
 恨み深いよな。

 自分の身を護る為にエルフにエステルを売ったやつだもんな。
 あいつが居なければこんな大騒動にはなってないんだ。

 のんきな顔してウトウトしやがって……
 ああいう奴は自分が手を下さなければ自分とは関係ないって性格してるんだ。

『わかった。最初は見つからないようにな。出来るだけ命は奪わないようにしてくれると助かる』

『ええ、わかっていますよ、ふふ♪何度も計画は聞きましたから。でも少しお灸を添えるくらいは許されるでしょう?』

『それはもちろん。じゃあ時間も押してるしエルフ消失計画、実行だ』

 僕とエステルは実行犯。
 クラマとクラムにはそれぞれの役割を振っている。

 おばあちゃんは逃げ漏れがないように人数をカウントしてもらう係だ。
 あとは何かあったら襟元を掴んででも空に飛んでくれと言ってある。

 最初はクラマからだ。

『クラマ行けるか!?』

『………ん』(フワッ……)

 クラマが頷くや否や尾が2本になって目が金色に変わった。

 2本までなら魔力でコントロール可能になったようだ。
 妖術はこの形態の方が使いやすいらしい。

 ただ、クラマに頼んだ”妖術”には本来尻尾は要らない。
 エステルの話をずっと聞いていて腸が煮えくり返る気持ちなんだろう。

『……妖術……”狐杜寝ことね”』

 怪しい紫色の霧がエルフの屋敷を包み込む。
 この霧に包みこまれたものは意識を失うように寝てしまうみたいだ。
 妖術に包まれ前後の記憶もなくなる。

 ただの睡眠魔法じゃない。
 催眠の類だからね。
 幻覚や幻痛を操ったクラマには簡単すぎる妖術だ。

 ただ、そんな便利な妖術をこれまで使っていなかった理由がある。
 この妖術は魔力抵抗が強いと効かない。
 エステルとおばあちゃんが少しうとっとする程度。
 僕とクラムには全く効果がないんだ。

 妖術というのはどうやら人の脳内に作用しているらしい。
 前回の幻痛は白炎に見せかけて体内に直接妖気をたたき込んだそうだ。
 途中、溶岩竜の体に吸い込まれていった白炎だね。
 表面上だけでは薄い効果しか得られないんだって。

 まぁ僕らの10分の1にも満たない魔力しか持たないエルフには充分すぎる効き目だろう。

 エルフの屋敷は集落”外”にある。
 見張りもたっていない。

 さらに、門番の位置から屋敷は全く見えないんだ。
 集落中に屋敷を建てないで外に見栄の塊をそびえ立たせたことを後悔するんだな。

『……終わった。確認してくる。”天駆”』(シュッ)

『頼んだ!”サイレントルーム”』(ホワッ)

 今回の防音室は完全遮音だ。
 遮音レベルは僕の匙加減でどうにでもなる。
 外部音を通すか通さないかも。

 いちばん簡単なやつだ。
 外と中の音を全て遮断してしまうもの。
 これでエルフは完全隔離だ。

 クラマがエルフを深い眠りに落とす。
 その後に完全に音を遮断してしまう。
 これでもう集落で何が行われても気付くことはない。

『……大丈夫。……みんな寝た。……終わるまで見張ってる』

『助かる。終わったら呼ぶからな!少しの間お願いするぞ!』

『……任せて。ママ……がんばって』

『わかりました!行きます』(サッ)

 よし、作戦1完了だ。

 作戦2。集落入口門番だ。
 こいつは簡単だ。
 単純に気絶させればいい。
 その後クラマが妖術を追加でかけてくれる。

 一緒に寝かせていない理由があるんだ。

『サイレント解除。行ってこいハチ公!』

 AOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!
 AOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!

「なんだ!?魔物か!なんだ……こいつは……すぐに援軍を……」

 門番が目を覚ましたか。
 作戦通りだな。

 AOOOOOOOOOOO!
 AOOOOOOOOOOO!

「た、たすけて……」

『家族の恨みッ!!』(ドコォ)

「ゴフッ……」(バタ……)

 おぅふ……
 強烈なレバーブローだった。
 首トンとかじゃないんだね……

『手加減しすぎてなんの発散にもならないですが……。こんなことをしている場合じゃありませんね』

 全アバラ逝ったな……。
 まぁ手加減しすぎないと多分貫くか消し飛ぶだろうからねぇ。

 よく我慢した!
 消滅しなくてよかった!!

 タッタッタッ……ク~ン。

『あ、ありがとハチ公。先にゲートでクラム城行ってていいよ?』

 ワンッ!!タッタッタッタッ……

『はいよ~!よく働いてくれたね。家でちょっと待っててね~』(フリフリ)

 まぁ色々あったんだ……。
 後日この件については落ち着いてゆっくり……

「……いいよ、寝かせた」

『じゃあ行くか!エステル頼む!”拡声”』

「わかりました!みなさ~ん!準備が整いましたよ~!!」

「おー!!」「まってたぞ~!!」
「こんな日がくるなんてねぇ……」
「エステル!無事だったのか!」

「また後でゆっくりお話ししましょう!今は計画優先です!!」

 ・
 ・
 ・

 半数の人は先に拠点へ転移魔石で向かった。
 この方達は一旦僕等の家で待機していてくれる。
 少し狭いけどその方が落ち着くだろう。

 ハチ公にびっくりするかもしれないけれど一応忠犬だと伝えてある……
 そして一応ハチ公にも隠れていてと伝えてる。

 そして約半数は計画に協力してくれるそうだ。
 ここからは仕上げだ。

「クロムくん。この日を待ちに待ったよ……」

『エルンさん!こっちは任せてくれ!先にゲートをくぐる人を案内してくれるか?あと仮面かぶった人が門にいるからその人と逃げ漏れがないか確認してくれ!その人がティアマトさんね?』

「了解!あと魔物は掃除のフリをして柵の中に纏めておいたからね。ゲートへ入れる方は任せたよ?」

『助かる!クラム~!魔石持って魔物捕まえてきて~!!』

『ち~ず~!!』(ヒューン)

 クラムは魔物をシールドで捕獲してゲートに入れる役だ。
 なんだかんだ時間かかると思うからね。
 これはクラムが最適だ。

「今の子がクラムちゃんかい?あはは♪また話させてほしいな?」

『もちろん、仲良くしてやってくれ。じゃあ頼んだぞ』

「了解!じゃ、行って……」

『あ、待ってくれ!”クリーン”ッ!!』

「これは……体が急に軽く……」

『もういいでしょ?絶望のフリしなくても』

「あはは♪そうだね!これからは希望の未来を創造しないとね?ありがと♪行ってくるね!」

 僕が魔法を創造可能なことは伝えてあるんだ。
 うまい事言うねぇ……

 ・
 ・
 ・

「では皆さん!先にゲートで移転先に行きたい人は門の先まで!あと協力していただける方は私と共に来てください!服はボロボロに割いてそれぞれの家に。こちらが魔物の血になりますので撒くことを忘れないようにお願いします!」

「「「「「おー!!!!!」」」」」

 ここからの計画の流れはこうだ。

 ハイエルフには好きなだけ家を壊してもらう。
 その際、家の中に自分のいらない服を割いて捨ててもらうんだ。
 先に集落から出るものの衣類も近所の人にお願いしている。

 ここまで細かい事が出来るのは皆の協力があってこそだね。

 その後魔物の血を撒いてもらうんだ。
 この世界に血液を整合する技術があるのかはわからないけれどね。
 少しぐらい誤魔化せるでしょ?

 スッキリ消えるより魔物に襲われて全滅した感じを出す方がいい。

 最後にエステルと僕が状況を確認しながら放火する。
 世界樹は住居とは離れているから引火はしないだろう。

 小さい精霊も殆どついて行くみたいだ。
 既に使われだしている転移ゲートに入ってる。

 状況は把握できるんだろうな。
 魔の森の範囲なら世界樹に居なくても生きていけるようだ。

 クラマは見張ってくれてる。
 エステルも行った。
 クラムは頑張って魔物を追い立てている。
 おばあちゃんはエルンさんと人数を数えてくれているようだ。

 さて、じゃあ僕も集落の中に……

『こいつ大丈夫か……』

 目の前にいる門番エルフ。
 エステルを連れ去る原因になったやつ。

 こいつ多分相当素行が悪かったんだろうな。
 かなりの人数のハイエルフに1発見舞われてたぞ……
 既にボコボコじゃん……

 ただ、この痕ちょっとマズいかもしれないし……
 すげぇ不快だけど……

 ”ウォーターエイド”……

 なんで僕がこいつ回復せにゃならんのだ……。

 エルンさんの話の通りかなり状況は悪化していたようだ。
 数人のハイエルフの顔や体にはあざがあった。
 酷い事を……

 お返しだ!
 って台詞を吐きながら殴っている人がいたんだ。
 きっとこいつもかなり加担してたんだろうとおもう。
 打つやつは打たれる覚悟もってしないとな?

 僕も、集落に入る前にっと……
 えっと、噛みついた後ある方がいいかな?

『”アイスファング”』(ガブッ)



 集落の中に入るともう凄かった。

「今までの恨みッ!!」(バキッ)
「こんな集落!消えちまえ!!」(ドカッ)

 そんな声が至るところから聞こえてくる。
 泣きながら家を壊している人もいる。

 もちろん家を壊すことへじゃないよ。
 恨みの強さでね。

 あ、あっちの女性は家自分で燃やしたんだな?
 火精霊使えるのかな?

『あ、ども、クロムです。火精霊をつかえるんです?』

「クロムさんかい!話は聞いているよ!本当にありがとうねぇ……グス。……いや、話はまたの後日の方がいいね!他の所燃やすの手伝うよ!」

『あ、助かるよ!じゃあ準備が出来た家燃やしてくれる?』

「任せときな!他にも燃やせる人はいるよ!声かけてくるからね!」

『ありがと!じゃあ1通り終わったらみんな先に転送しててくれ!』

 この調子じゃ30分かからないかな?
 それにしてもエステルはどこに行った……?

 エステルは世界樹のふもとに居た。
 世界樹の素材を回収している工場だ。

「こんなものが……こんなものがあったせいで………私たちハイエルフは……ずっと………」

『……大丈夫?』

「グス……。クロムさん!?すみません!!もうほぼ終わりました!あとは母が見届けてくれるとのことで……。少し抜け出してしまいました」

 あの中にエステルのお母さんいたんだな。
 ハイエルフ全然年齢わからないからなぁ……

『いや、いいよ。みんなを纏めてくれてありがとう。エステルも辛いだろうに。沢山我慢させたね』

「いえ、これからですから。これからはこの集落とはもうお別れです。明日からは素晴らしい日々が待っているのですから。過去に囚われている暇なんてありません!」

『おう!楽しい毎日にしような!!じゃあ、みんなこっちこーい!!』

「「「「「おー!!!!!」」」」」

「みんな……何故………」

 こんな一大イベント見逃したくないでしょ。
 集落に残った人はほぼみんな来ちゃった。
 もちろん僕の家族もだ。

 先に行った人も何人か引き返してきたくらいだ。

 魔石ゆとり持っててよかった。
 でもハイエルフのチームワークは本当にすごすぎて5個も使われなかったな。

『全力で派手に行こう!エステル派手なの好きでしょ?思いっきりやってやりなさい!!』

「でも……ここは世界樹のふもとなので……」

『だからみんないるんだけど?』

「……危なかったら……避難させる」

「回復は任せるのじゃ!」

『そんなことになんないよ~?おもいっきり~!”スタジアムッ”!』(ゴワッ)

「ありがとう……ございます………グス」

 エステルがクラムの特大ドームシールドの中に入った。

 あ。あれは……
 精霊が……例のやつを………

「消えて失くなれええええええええええええええ!!!」(カッ……)

 ・
 ・
 ・

 翌日早朝……
 あるエルフが目を覚ました。
 門番の交代の為だ。

 そのエルフは集落前に来て絶句する。
 交代するはずの怠け者の同僚はボロボロになり地に伏せていた。

 魔物に噛みつかれた跡が多数ある。

「おい!生きているか!?しっかりしろ!!」

「ぐ……魔物に……襲われた………」

「集落は!?」

 同僚に気を取られており集落が目に入らなかった。
 ふと集落の中へ顔を向けると……

 内部の建物は全壊。
 そして全焼している。

 工場は消失。
 集落は壊滅していた。

 急いで屋敷にもどった。

「起きろ!集落が魔物に襲われた!!」

「なんだと!?門番は何をやって居る!!今日の担当は誰だ!!」

 ・・・


「なんだ……この村の状況は……全焼だと……」

「やったのは何の魔物だ!?炎狼か!?」

「そんな……生易しい魔物じゃない……。黒い……双頭の悪魔が……ゴフッ……」

「おい!しっかりしろ!!生き残りはいないのか!?状況を吐かせろ!縛り上げてもいい!!」

「それが……ハイエルフは……全滅したようです。家の中や外に焼けこげた衣類や血が散乱しています……家畜すら残っていません。すべて……喰われたのかと……」

「全滅、だと……」

「すぐに本国に伝令を飛ばせ!世界樹の集落が滅びたと!!急げ!!!」


 ・
 ・
 ・
 ・
 ・

 こちらは世界樹の集落ニヴルヘイム上空。

「自分達には危害がないことを喜んで頂きたいくらいですね」

「それはそうじゃな。ハイエルフの痛みに比べればこんなもの無きに等しいわぃ」

「……うん。……ぬるい」

『エステルのさいごのわざすごかったね~!?クラムちょっとあぶなかったよ~?』

「すみません!我を忘れてしまいまして!!」

『さて、新しい街に行くとしますか。この集落はもう失くなったんだ。こんなところに気をもむ必要は今後二度とないさ』

「長かったです。皆にとっては……きっと、もっと……。これからは……きっと素晴らしい毎日になるはずです」

『悲しい事や思い出は全部消し飛ばしたからね?これからハイエルフは僕の引きこもり仲間だからな?のんびり平和にスローライフだ!素晴らしい毎日にしてもらわないと困りますね?』

「はい♪これからも、ずっと、家族共々宜しくお願いします!!」

『任せておきなさい!あ、何回も言うけど僕は家族特化型だから!家族だけだからね!?』

「わかってます♪うふふ」

『じゃあみんな入って~!”ゲートッ”』(ボワ~ンッ)

 長かったな本当に。
 僕がエステルと出会ってからですら長かったのに。
 数百年分の恨みなんか僕にはわかってあげられない。

 その代わり……
 出来る限りハイエルフの長い生が素晴らしいものになるよう、土台作りに協力しよう。

 さて、みんな行ったな。
 これからは快適な拠点づくりだ!
 僕も行こっと……



 あ。



 最後に絶対言わないといけない言葉があった。



 ざまぁ。
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