【完結】神様と縁結び~え、神様って女子高生?~

愛早さくら

文字の大きさ
25 / 32
第四幕

4-2・私だって

しおりを挟む

 形のいい少女の唇が、ゆっくりと開かれていくのを俺は見ていた。

「……あなた、何がしたいんです」

 少女が告げたのはそんな言葉で、俺は微笑んだまま、首を横に振る。
 俺が何をしたいのか。そんなの、わかりきっている。

「此処に何度も立ってますよね。そんなに長い時間じゃないけど、休日になると毎週。近所でも噂になってますよ。不審者が何度も出るって聞いて見に来たら貴方じゃないですか。正直気持ち悪いです」

 少女の言葉は辛辣で、なるほど噂になっていたのかと知る。
 この子から気持ち悪いと言われるのは二度目だ。そうだろうと自分でも思う。
 少女からすると、見ず知らずの成人男性が、数年前に死んだ姉の名前を出し、その上、休日の度に毎週現れる。ちょっとストーカーのようだ。
 だけど俺はそれに縋るしかなかった。
 傘を差しかけてくれている少女を見る。
 影になっていてもはっきりわかる、キレイな顔。何処までも然乎ぜんこさんにしか見えない。なのに違うだなんて。

「俺は……ただ、会いたくて」

 然乎さんにもう一度会いたくて。
 絞り出すように告げた言葉に、少女が唇を噛みしめた。

「そんなの……そんなの、私だって幸凪ゆきなに会いたいっ! でも、もう会えないんです! だって、だって幸凪はもう……」

 もう。
 感情を爆発させたかのような少女の声には、涙の気配が滲んでいた。
 堪らなくなる。
 会いたいのは、この少女も同じなのか。
 当たり前だ。だってこの少女は双子の妹なのだ。
 望んでももう会えなくなった姉に、会いたくないはずがない。
 少女の目尻に光る涙がキレイだった。
 雨が傘を打つ音がする。
 風に葉が揺れている。
 俺はそれ以上何も言えず少女を見ていた。
 しばらくして少女は涙の滲む目尻もそのままに、やはり不機嫌な表情をしたまま顔を上げた。
 俺を見る眼差しはきつく、見るからに不本意そうで。だけど、差し出していた傘を俺の手に強引に押し付けて来たので、俺は思わずそれを受け取ってしまう。
 俺が傘を手にしたのを確かめてから、少女はすっと少しだけ体を離した。
 一度、唇を嚙んでからやはり不本意そうに口を開く。

「着いて来てください。会わせたい人がいます」

 本当は合わせたくないけれど、仕方がないとでも言いたそうだった。
 少女の雰囲気にのまれるように、ぎこちなく頷く俺に、もう一度顔を歪めてから、踵を返した少女が歩き出す。
 俺は少女が差し出してくれた傘を握り締めて、慌てて少女の後を追った。
 振り返らない少女の背は、やはり改めて見てもあの日の然乎さんと同じで。双子の妹だということも含め、俺には何が何だかよくわからない。
 雨はしとしとと降り続けていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!

飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。 貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。 だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。 なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。 その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

処理中です...