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来たるべき敵
勝者なき戦
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1944年3月22日、正午過ぎ。
関東沖の海戦は、両軍に甚大な犠牲を強いた末、ついに終結した。
夜明けから始まった激戦は、血と硝煙で海を染め
多くの艦艇がその姿を消した。ハルゼー機動艦隊と日本の第二艦隊は
互いに致命的な傷を負い、もはや戦闘を継続する力は残されていなかった。
エンタープライズ喪失後移乗していた米重巡洋艦「ボルチモア」の轟沈後
かろうじて航行可能な駆逐艦へと移乗した
ウィリアム・「ブル」・ハルゼー提督は
沈痛な面持ちで旗艦の被弾状況を報告する通信員に耳を傾けていた。
「『エンタープライズ』、沈没…」
「『ホーネット』、飛行甲板の損傷がひどく、修理は不可能と判断。自沈させました…」
「『エセックス』、『ヨークタウン』
『プリンストン』、『インディペンデンス』、いずれも大破し、航行不能です…」
次々と報告される艦隊の被害状況は、あまりにも絶望的だった。
わずか数時間前まで、彼は東京空襲という輝かしい勝利に酔いしれていた。
しかし、その代償は、彼の想像をはるかに超えるものだった。
日本の航空攻撃、そして戦艦の砲撃は
彼の誇る機動艦隊を根こそぎ破壊していたのだ。
ハルゼーは、静かに双眼鏡を手に取り
日本の艦隊が停船している方向を見た。その距離、約15キロ
もし彼らが再攻撃を仕掛けてくれば
残された駆逐艦や軽巡洋艦にできることはない。
彼は、日本の艦隊も同様に甚大な被害を負っているだろうと予測していたが
これ以上の戦闘継続は、自らの艦隊の完全な壊滅を意味する。
「……全艦に通達。これ以上の戦闘は不可能と判断。
航行不能艦は放棄し雷撃処分 直ちに後退、戦場を離脱せよ」
彼の声は、静かでありながら、苦渋に満ちていた。
東京空襲という作戦目標は達成した。
しかし、その代償として機動艦隊のほとんどを失った。
この勝利は、果たして本当に勝利と呼べるのだろうか。
彼は、自問自答しながら、駆逐艦の艦橋で静かに東の空を眺めていた。
猛牛ハルゼーの撤退は、彼の長い軍歴の中でも、最も苦い決断の一つだった。
同じ頃、日本の第二艦隊旗艦「長門」の艦橋でも
同様の決断が下されようとしていた。
小柳冨次少将は、艦の被害状況の報告を受けていた。
「『長門』、被弾により浸水。速力が落ちています…」
「『陸奥』、奇跡的に無傷ですが、これ以上、単艦で敵と戦うのは危険です…」
「空母『瑞鶴』、飛行甲板に大穴。発着艦は不可能です。
僚艦の『千歳』、『祥鳳』も大破、横須賀への曳航が必要です…」
「重巡洋艦『鈴谷』、『三隈』は沈没…」
次々と報告される被害状況に、小柳は唇を噛み締めた。
彼は、まだ追撃を諦めていなかった。敵艦隊は目の前にいる。
今こそ、東京を焼いた敵を完全に打ち破る好機だ。
しかし、彼の目の前に突きつけられた現実は、あまりにも厳しかった。
「司令官、これ以上の追撃は危険です。
我々も、これ以上の被害は出せません」
参謀長が、懇願するように言った。
彼は、小柳の気持ちを痛いほど理解していたが
同時に、現実的な判断を下す必要があった。
日本の空母は、事実上、この海戦で戦闘不能となり
主力艦隊も大きな被害を負った。
これ以上、戦闘を継続すれば、日本海軍の戦力は完全に消滅する。
小柳は、静かに双眼鏡を外し、水平線に漂う煙の柱を見つめた。
それは、沈んでいった敵艦艇
そして、その中には、友軍の空母「赤城」も含まれているだろう。
彼は、無念の思いを胸に、最後の命令を下した。
「全艦に告げよ…追撃を断念する。これより
各艦は負傷者の救助と応急修理にあたれ。
沈没艦の乗員は出来る限り回収せよ そして、速やかに帰投せよ」
彼の言葉に、艦隊全体から、安堵と同時に
深い悲しみが広がった。この戦いは、勝者なき戦場だった。
両艦隊は、戦闘を終え、それぞれの基地へと帰投を開始した。
海面には、沈没した艦艇の残骸が漂い
勝者なき消耗戦の悲劇を物語っていた。油が海面に広がり
無数の燃え盛る残骸が、まるで巨大な墓標のように、あたり一面に散らばっていた。
日本の第二艦隊は、損傷した艦艇を曳航しながら
ゆっくりと帰路につく。乗員たちは、互いに言葉を交わすこともなく
ただ静かに、故郷の空を眺めていた。
彼らの心には、勝利の歓喜はなかった。
ただ、失われた仲間たちへの悲しみと
この戦いが残した深い傷跡だけが残っていた。
ハルゼー艦隊もまた、同様だった。
沈みゆく母艦群を最後に一瞥し、東へと針路を取った。
多くの艦艇が、損傷した艦体を抱え、ゆっくりと航行していた。
彼らは、東京空襲という任務は成功したが、その代償として
自らの艦隊のほとんどを失った。
この海戦は、日米両軍のシーパワーを一時的に失わせる、歴史的な転換点となったのだ。
この激しい海戦は、日米双方に決定的な打撃を与え、両艦隊は事実上壊滅した。
米軍(ハルゼー艦隊)
ハルゼーは東京空襲には成功したが、その代償として
旗艦「エンタープライズ」を筆頭に「ホーネット」も自沈。
さらに「エセックス」、「ヨークタウン」
「プリンストン」、「インディペンデンス」が大破
航行不能となりやむを得ず自沈処分という甚大な被害を負った。
重巡洋艦「ボルチモア」「クインシー」他多数の駆逐艦も日本の砲撃を受け沈没。
これにより、米軍は当面、機動部隊による大規模作戦は不可能となる
日本軍(第二艦隊)
日本は、本土防衛という目標は達成したが、その代償はあまりにも大きかった。
主力空母「赤城」は沈没し、他の空母も損傷。
戦艦「長門」も中破し、重巡洋艦「鈴谷」、「三隈」は撃沈された。
日本海軍は、この戦いによって
事実上、艦隊としての機能を一時的に失うことになった。
この戦いは、どちらも決定的な勝利を手にすることはなかった。
しかし、日本の将兵たちが命を賭して戦った結果
ハルゼー艦隊を撃破、撃退し、本土への脅威を排除することに成功した。
これは、日本の未来をかけた、最後の希望をつなぐ戦いだったのだ。
関東沖の海戦は、両軍に甚大な犠牲を強いた末、ついに終結した。
夜明けから始まった激戦は、血と硝煙で海を染め
多くの艦艇がその姿を消した。ハルゼー機動艦隊と日本の第二艦隊は
互いに致命的な傷を負い、もはや戦闘を継続する力は残されていなかった。
エンタープライズ喪失後移乗していた米重巡洋艦「ボルチモア」の轟沈後
かろうじて航行可能な駆逐艦へと移乗した
ウィリアム・「ブル」・ハルゼー提督は
沈痛な面持ちで旗艦の被弾状況を報告する通信員に耳を傾けていた。
「『エンタープライズ』、沈没…」
「『ホーネット』、飛行甲板の損傷がひどく、修理は不可能と判断。自沈させました…」
「『エセックス』、『ヨークタウン』
『プリンストン』、『インディペンデンス』、いずれも大破し、航行不能です…」
次々と報告される艦隊の被害状況は、あまりにも絶望的だった。
わずか数時間前まで、彼は東京空襲という輝かしい勝利に酔いしれていた。
しかし、その代償は、彼の想像をはるかに超えるものだった。
日本の航空攻撃、そして戦艦の砲撃は
彼の誇る機動艦隊を根こそぎ破壊していたのだ。
ハルゼーは、静かに双眼鏡を手に取り
日本の艦隊が停船している方向を見た。その距離、約15キロ
もし彼らが再攻撃を仕掛けてくれば
残された駆逐艦や軽巡洋艦にできることはない。
彼は、日本の艦隊も同様に甚大な被害を負っているだろうと予測していたが
これ以上の戦闘継続は、自らの艦隊の完全な壊滅を意味する。
「……全艦に通達。これ以上の戦闘は不可能と判断。
航行不能艦は放棄し雷撃処分 直ちに後退、戦場を離脱せよ」
彼の声は、静かでありながら、苦渋に満ちていた。
東京空襲という作戦目標は達成した。
しかし、その代償として機動艦隊のほとんどを失った。
この勝利は、果たして本当に勝利と呼べるのだろうか。
彼は、自問自答しながら、駆逐艦の艦橋で静かに東の空を眺めていた。
猛牛ハルゼーの撤退は、彼の長い軍歴の中でも、最も苦い決断の一つだった。
同じ頃、日本の第二艦隊旗艦「長門」の艦橋でも
同様の決断が下されようとしていた。
小柳冨次少将は、艦の被害状況の報告を受けていた。
「『長門』、被弾により浸水。速力が落ちています…」
「『陸奥』、奇跡的に無傷ですが、これ以上、単艦で敵と戦うのは危険です…」
「空母『瑞鶴』、飛行甲板に大穴。発着艦は不可能です。
僚艦の『千歳』、『祥鳳』も大破、横須賀への曳航が必要です…」
「重巡洋艦『鈴谷』、『三隈』は沈没…」
次々と報告される被害状況に、小柳は唇を噛み締めた。
彼は、まだ追撃を諦めていなかった。敵艦隊は目の前にいる。
今こそ、東京を焼いた敵を完全に打ち破る好機だ。
しかし、彼の目の前に突きつけられた現実は、あまりにも厳しかった。
「司令官、これ以上の追撃は危険です。
我々も、これ以上の被害は出せません」
参謀長が、懇願するように言った。
彼は、小柳の気持ちを痛いほど理解していたが
同時に、現実的な判断を下す必要があった。
日本の空母は、事実上、この海戦で戦闘不能となり
主力艦隊も大きな被害を負った。
これ以上、戦闘を継続すれば、日本海軍の戦力は完全に消滅する。
小柳は、静かに双眼鏡を外し、水平線に漂う煙の柱を見つめた。
それは、沈んでいった敵艦艇
そして、その中には、友軍の空母「赤城」も含まれているだろう。
彼は、無念の思いを胸に、最後の命令を下した。
「全艦に告げよ…追撃を断念する。これより
各艦は負傷者の救助と応急修理にあたれ。
沈没艦の乗員は出来る限り回収せよ そして、速やかに帰投せよ」
彼の言葉に、艦隊全体から、安堵と同時に
深い悲しみが広がった。この戦いは、勝者なき戦場だった。
両艦隊は、戦闘を終え、それぞれの基地へと帰投を開始した。
海面には、沈没した艦艇の残骸が漂い
勝者なき消耗戦の悲劇を物語っていた。油が海面に広がり
無数の燃え盛る残骸が、まるで巨大な墓標のように、あたり一面に散らばっていた。
日本の第二艦隊は、損傷した艦艇を曳航しながら
ゆっくりと帰路につく。乗員たちは、互いに言葉を交わすこともなく
ただ静かに、故郷の空を眺めていた。
彼らの心には、勝利の歓喜はなかった。
ただ、失われた仲間たちへの悲しみと
この戦いが残した深い傷跡だけが残っていた。
ハルゼー艦隊もまた、同様だった。
沈みゆく母艦群を最後に一瞥し、東へと針路を取った。
多くの艦艇が、損傷した艦体を抱え、ゆっくりと航行していた。
彼らは、東京空襲という任務は成功したが、その代償として
自らの艦隊のほとんどを失った。
この海戦は、日米両軍のシーパワーを一時的に失わせる、歴史的な転換点となったのだ。
この激しい海戦は、日米双方に決定的な打撃を与え、両艦隊は事実上壊滅した。
米軍(ハルゼー艦隊)
ハルゼーは東京空襲には成功したが、その代償として
旗艦「エンタープライズ」を筆頭に「ホーネット」も自沈。
さらに「エセックス」、「ヨークタウン」
「プリンストン」、「インディペンデンス」が大破
航行不能となりやむを得ず自沈処分という甚大な被害を負った。
重巡洋艦「ボルチモア」「クインシー」他多数の駆逐艦も日本の砲撃を受け沈没。
これにより、米軍は当面、機動部隊による大規模作戦は不可能となる
日本軍(第二艦隊)
日本は、本土防衛という目標は達成したが、その代償はあまりにも大きかった。
主力空母「赤城」は沈没し、他の空母も損傷。
戦艦「長門」も中破し、重巡洋艦「鈴谷」、「三隈」は撃沈された。
日本海軍は、この戦いによって
事実上、艦隊としての機能を一時的に失うことになった。
この戦いは、どちらも決定的な勝利を手にすることはなかった。
しかし、日本の将兵たちが命を賭して戦った結果
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