If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ

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決戦 あ号作戦

運の尽き

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翔鶴が黒煙を上げ、航行不能となったその時
米海軍の攻撃は、小沢機動部隊の別の空母に向けられた。
ワスプIIのアベンジャー艦攻隊を率いるマッキンゼイ少佐は
勝利の興奮に顔を紅潮させながら、次の標的を定めた。
彼の目には、翔鶴の僚艦で、すぐそばを航行中の瑞鶴が映っていた。

「…行くぞ、野郎ども!次は、あの瑞鶴だ!」

瑞鶴は、数多の海戦から生き延び、この戦争の激戦を潜り抜けてきた
日本海軍の誇りとも言える艦だった。
そして、それを迎え撃つのは、百戦錬磨の米軍機。
これは、一世一代の果し合いだった。

「目標一二四度!敵雷撃機、8!」

見張り員の叫び声が、瑞鶴の艦橋に響き渡った。
艦長は、冷静に、だが素早く命令を下した。

「高射装置、測距よし!二群高角砲、全力射撃始めぇ!」

艦橋に設置された高射装置が、正確に敵機の距離を測り
その情報が、艦の各所に配置された対空砲に送られる。
12.7cm連装高角砲A型改二、そして25粍機銃が、一斉に火を吹き始めた。
無数の砲弾と弾丸が、空を切り裂き、米軍機へと向かっていく。

「3番機銃群、てっ!」

機銃の連射音が、甲板中に響き渡る。
瑞鶴の乗組員たちは、一発でも敵弾が命中すれば
母艦としての能力を喪失するのは必至であることを知っていた。
彼らは、自らの命をかけて、弾幕を張り、敵を近寄らせまいとした。


「整備班!格納庫内、装着前弾薬を弾火薬庫に収納!被弾時の延焼を防げ!」

艦内放送が、切迫した声で告げる。
翔鶴の悲劇を繰り返さないために、応急処置が急ピッチで行われていた。

「可燃物、艦外投棄!第一、第二、第四航空機燃料庫区画
 散水開始!立ち入りを禁止とす!」

格納庫内の予備燃料タンクや
発艦準備中の航空機に搭載されていた弾薬や爆弾が
次々と艦外へと投棄されていく。
同時に、航空機燃料庫には、水が流し込まれ
引火の危険性を最小限に抑えようとした。

そして、艦は、最大戦速34ノットで回避行動を取り始めた。
瑞鶴の機関は、ボイラー出力を最大に維持し
タービンの回転数を変えることで、一瞬で速度を上げたり
落としたりすることが可能だった。
この柔軟な動きが、敵機の攻撃を避けるための最大の武器だった。


「敵急爆ヘルダイバー、直上三十度!」

見張り員の声が、艦橋に響く。艦長は、冷静に命令を下した。

「面舵一杯!速力、原速落とせ!」

瑞鶴は、その巨大な船体を、まるで生き物のように
急激に右へと曲げ、速度を落とした。
ヘルダイバーが投下した爆弾は、瑞鶴の進路の少し先に落ち、巨大な水柱を上げた。

瑞鶴は、巧みな操舵と、高速航行を組み合わせた蛇行で
敵機の攻撃を避け続けた。その姿は、まるで海の上を舞う蝶のようだった。

その時、少し離れた場所にいた二航戦の隼鷹、飛鷹、龍鳳から
支援の零戦隊30機が、救援に駆けつけていた。
彼らは、小沢艦隊上空を飛ぶF6Fと、大規模な空戦に突入した。

「瑞鶴をやらせるな!」

零戦のパイロットは、叫びながら、F6Fに突っ込んでいった。
隼鷹の菅原少尉は、目の前を飛ぶF6Fを、巧みに追い詰めていく。
彼は、瑞鶴の淵田大佐に憧れて、パイロットになった男だった。
彼は、尊敬する淵田大佐の乗る瑞鶴を、命をかけて守ろうとした。

空戦は、壮絶なものだった。零戦の優れた運動性能と
F6Fの強力な火力と装甲が、互いにぶつかり合う。
弾丸が空を切り裂き、エンジンが火を噴く。
多くの機体が、炎上しながら海に落ちていった。


無数の雷爆撃が、瑞鶴に降りかかる。爆弾が至近に落ち続け
巨大な水柱が、まるで林のように瑞鶴を包み込んだ。
しかし、その中から、瑞鶴は
何事もなかったかのように、硝煙を吐きながら、その勇姿を現した。

その姿は、日本海軍の誇りを示すようだった。
瑞鶴は、マリアナ沖の空を駆け回り、無数の雷爆撃を躱し続けた。
その艦上では、乗組員たちが、必死に艦の安全を確保しようと努めていた。

しかし、その回避にも、ついに限界が来た。
魚雷を回避したその瞬間、見逃していたヘルダイバーが投下した
1000ポンド爆弾が、甲板に突き刺さったのだ。

「しまった!」

艦長が、叫ぶも、もう遅かった。爆弾は、飛行甲板を貫き
瑞鶴の心臓部へと向かっていく。
それは、瑞鶴が、ついに、その幸運を使い果たした瞬間だった。
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