If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ

文字の大きさ
114 / 198
決戦 あ号作戦

第二次攻撃隊発艦

しおりを挟む
1944年9月30日、午後5時過ぎ
マリアナ沖の海は、硝煙と油の匂いで満ちていた。
空母『翔鶴』は、艦全体から黒煙を噴き上げ、見るも無残な姿で漂っていた。
一方、『瑞鶴』は、前部から火炎が上がってはいるものの、航行を続けている。
その姿は、日本海軍の誇りを示すようだった。


瑞鶴の艦橋では、艦長が、炎上する前部格納庫を見つめていた。
格納庫内では、応急班が、必死の消火活動を続けている。

「応急班、消火急げ!散水栓、格納庫内開放!散水開始!」

艦長の声に、応急班は、全力で消火活動に当たった。
幸運にも、翔鶴のような大規模な誘爆は発生しなかった。
それは、直前に可燃物を収納するか、艦外に投棄していたからだ。

「機関部、状況は!」

艦長が、機関部に無線で問いかける。

「こちら機関長。全速航行に異常なし。最大戦速発揮可能。艦外は如何なりか」

機関長の声は、力強く
瑞鶴の機関が、まだ健在であることを示していた。

「敵空襲は終了。前部一番格納庫にて火災発生中なれど、消火見込み」

「よーし。機関部、好調。消火に全力を注がれたし」

通信が終わり、艦長は、静かに安堵の息を漏らした。
瑞鶴は、翔鶴のような悲劇を免れた。
しかし、一番エレベーターが損壊したことで、艦載機の発艦は不可能となっていた。

駆逐艦たちは、瑞鶴と翔鶴に寄り添い、負傷者の収容や消火活動に尽力する。
しかし、翔鶴の火勢は、一向に治まらない。
それどころか、弾火薬の誘爆で
さらに炎が立ち上り、艦の破片が、周りの艦に降り注ぐほどだった。


大鳳に座乗する小沢治三郎長官は
艦橋から、その惨状を目の当たりにし、苦悩していた。
彼の心の中には、二つの選択肢があった。

このまま作戦を続行するか、それとも、正規空母二隻が戦線離脱したことで
作戦続行は不可と判断し、作戦を中止するか。

「…作戦中止か…?」

彼の脳裏には、日本海軍の最後の希望である、この『あ号作戦』が
失敗に終わる未来が去来した。もし、ここで作戦を中止すれば、日本に未来はない。

しかし、彼は、敵空母二隻を撃破したことを換算し
残る軽空母と、最新鋭の大鳳だけでも、勝機はあると考えた。

「…まだ、戦える…!」

小沢は、決断を下した。

「第二航空戦隊、第三航空戦隊は、一航戦旗艦大鳳近辺に集結せよ。
 発艦中の艦載機は、大鳳、飛鷹、隼鷹に着艦せよ」

彼の命令は、全艦隊に伝わった。
残された艦載機は、各空母に集められ、第二次攻撃隊が編成された。


日本海軍の残存艦隊は、未だ、堂々たるものだった。

第一航空戦隊: 大鳳
第二航空戦隊: 飛鷹、隼鷹、龍鳳
第三航空戦隊: 千歳、千代田、瑞鳳

そして、護衛艦隊も、健在だった。

第五戦隊: 妙高、羽黒
第十戦隊: 矢矧、霜月
第十駆逐隊: 朝雲、風雲
第十七駆逐隊: 磯風、浦風、谷風
第六十一駆逐隊: 初月、若月、秋月
第四駆逐隊: 満潮、野分、山雲
第二十七駆逐隊: 時雨、五月雨、白露
第二駆逐隊: 秋霜、早霜、浜風

再出撃可能な艦載機は
集計の結果、210機が残っていることが判明した。

601空: 烈風6機、零戦36機、彗星21機、天山19機、二式艦偵8機
652空: 零戦58機、彗星18機、九九式艦爆21機、天山23機

小沢長官は、これらの航空隊を以て、第二次攻撃隊を編成した。


午後5時20分。大鳳から発艦した8機の二式艦偵のうち3番機が
索敵線三十六度線で、敵艦隊を発見した。

「…敵艦隊、発見…!」

その報に、小沢長官は、静かに頷いた。ついに、最後の時が来たのだ。

午後5時38分。大鳳の飛行甲板から、第二次攻撃隊が発艦した。
隊長機には大鳳飛行長入佐俊家中佐が搭乗する天山艦攻が
その巨体を揺らしながら、飛び立っていった。

「…さぁ、決着だ…!」

入佐中佐は、その言葉を、自らの心に刻み込んだ。
彼は、この一撃に、日本の未来がかかっていることを知っていた。

彼に続き、601空、652空の艦載機が、次々と発艦していく。
直掩に残る零戦30機を除く190機が、一路、敵艦隊へと向かった。

第5部:陸海軍、最後の共同攻撃

その直後、午後5時46分
サイパンの基地航空隊からも、第二次攻撃隊が出撃した。

三式戦24機、四式重爆12機、キ7414機、烈風10機
零戦4機、銀河13機、一式陸攻11機からなる、総勢88機の大編隊だ。

「…全機、急げ!小沢艦隊の攻撃と、同時攻撃をかける!」

基地司令官は、命令を下した。
彼は、この同時攻撃が、米軍に致命的な打撃を与える、唯一の機会だと確信していた。

彼らは、陸軍と海軍の垣根を越え、一つの目的のために、空を飛んでいた。
それは、故郷を守るという、ただ一つの目的だった。

小沢長官は、敵艦隊に接近していく味方機を見つめ、静かに呟いた。

「…さぁ、決着だ」

日本海軍は、一部の隙もなく、米海軍機動部隊を叩きつぶすつもりでいた。
しかし、彼らが知る由もなかった。
この攻撃は、米軍の反撃を呼ぶ、更なる悲劇の序章に過ぎなかったのだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

改大和型戦艦一番艦「若狭」抜錨す

みにみ
歴史・時代
史実の第二次世界大戦が起きず、各国は技術力を誇示するための 「第二次海軍休日」崩壊後の無制限建艦競争に突入した 航空機技術も発達したが、それ以上に電子射撃装置が劇的に進化。 航空攻撃を無力化する防御陣形が確立されたことで、海戦の決定打は再び「巨大な砲」へと回帰した。 そんな中⑤計画で建造された改大和型戦艦「若狭」 彼女が歩む太平洋の航跡は

徳川慶勝、黒船を討つ

克全
歴史・時代
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 尾張徳川家(尾張藩)の第14代・第17代当主の徳川慶勝が、美濃高須藩主・松平義建の次男・秀之助ではなく、夭折した長男・源之助が継いでおり、彼が攘夷派の名君となっていた場合の仮想戦記を書いてみました。夭折した兄弟が活躍します。尾張徳川家15代藩主・徳川茂徳、会津藩主・松平容保、桑名藩主・松平定敬、特に会津藩主・松平容保と会津藩士にリベンジしてもらいます。 もしかしたら、消去するかもしれません。

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

大和型重装甲空母

ypaaaaaaa
歴史・時代
1937年10月にアメリカ海軍は日本海軍が”60000トンを超す巨大戦艦”を”4隻”建造しているという情報を掴んだ。海軍はすぐに対抗策を講じてサウスダコタ級戦艦に続いてアイオワ級戦艦を4隻建造することとした。そして1941年12月。日米は戦端を開いたが戦列に加わっていたのは巨大戦艦ではなく、”巨大空母”であった。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

戦国九州三国志

谷鋭二
歴史・時代
戦国時代九州は、三つの勢力が覇権をかけて激しい争いを繰り返しました。南端の地薩摩(鹿児島)から興った鎌倉以来の名門島津氏、肥前(現在の長崎、佐賀)を基盤にした新興の龍造寺氏、そして島津同様鎌倉以来の名門で豊後(大分県)を中心とする大友家です。この物語ではこの三者の争いを主に大友家を中心に描いていきたいと思います。

異聞対ソ世界大戦

みにみ
歴史・時代
ソ連がフランス侵攻中のナチスドイツを背後からの奇襲で滅ぼし、そのままフランスまで蹂躪する。日本は米英と組んで対ソ、対共産戦争へと突入していくことになる

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...