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一時の間
旧式重巡未だ止まらず
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重巡洋艦「青葉」が探照灯の光束を夜の海に照射した瞬間
それは自らを「格好の標的」として敵に差し出す、壮絶な決意の表明だった。
光が闇を切り裂いた直後、米軍警戒部隊
特に重巡洋艦「ボルチモア」「キャンベラ」からの
集中射撃が青葉に浴びせられた。
米軍のレーダー射撃は正確無比だった。
ボルチモア級の20.3cm砲弾が次々と青葉の艦体に命中する。
轟音と閃光、そして鉄の悲鳴が、夜の南シナ海に響き渡った。
「艦首に命中!一瞬で吹き飛びました!」
「中央構造物にも被弾多数!衝撃波で機器類が壊滅!」
青葉は竣工から20年近く、海風に接してきた装甲板が悲鳴のような軋む音を立て
二番煙突下の垂直装甲が大きく割れる。
艦内はたちまち、煙と火、そして血の匂いに包まれた。
そして最悪の事態が起こる。
艦橋にも敵重巡からの命中弾が突き刺さった。
第六戦隊司令官の大川内伝七中将は、至近弾の弾片が腹部を切り裂き
臓腑が見えるほどの重傷を負った。血に染まった艦橋で、部下が必死に叫ぶ。
「司令!今すぐ救護室へ!」
大川内中将は、床に倒れながらも
その強い意志を目に宿して拒否した。
「構わん!どうせこの怪我なら死ぬ。まだ戦える者を運べ!」
「しかし…!」
「目標、敵重巡!艦がどうなろうと
輸送船団へは向かわせるな!撃て!撃て!」
彼の命令は、青葉の砲術員を突き動かした。
青葉の20.3cm2号連装砲が、血と炎の中で再び咆哮する。
その時、またもや致命的な命中弾が青葉を襲った。
今度は、三番砲塔の防楯を喰い破って砲塔内で爆発。
装填中だった装薬に引火し、砲塔天蓋がまるでびっくり箱のように吹き飛んだ。
青葉は、ただでさえ少ない主砲の一基を、開戦早々に失った。
「損傷報告!急げ」
「三番砲被弾!装薬引火の模様!使用不能!」
「砲塔員全滅!」
「弾庫注水急げ!誘爆を防げ!」
米重巡「ボルチモア」級は55口径8インチ三連装砲を三基九門持つのに対し
青葉型は50口径20.3cm連装砲三基六門。
その攻撃力の差は元から大きい上に、さらに一基が使用不能になったのだ。
青葉の状況は、極めて厳しいという他なかった。
圧倒的な戦力差、そしてレーダー射撃の優位性において
この1945年の日本海軍が、相変わらず米艦隊に対して唯一有利である点があった。
それは、熟練の見張員……否
負傷してなお戦う精神力でもない…否
今まで多くの戦いで格上の艦級を数多く屠ってきた、その兵器
九三式第二空気魚雷。後の世にいう「酸素魚雷」である。
大川内中将は、自身の命が尽きる前に、青葉の最後の切り札を使うことを決断した。
「右舷反航魚雷戦用意!測距始めぇ!」
機関科は、被弾と浸水の中でも懸命に艦を動かし続けていた
「速力29ノット維持!目標、敵二番艦(重巡キャンベラ)!雷速調定52ノットに!」
九三式魚雷は、その圧倒的な速度と射程で米艦隊を驚愕させることができる。
「角度120度よーい、てっ!」
合図とともに、圧搾空気で駆動された魚雷が、青葉の側面から海面へと躍り出た。
魚雷は航跡を残さず暗闇の中を高速で敵艦へと向かう。
「貴様らの命、残り三分だ**!」
大川内中将は、血まみれの艦橋でそう叫んだのを最後に、意識を失った
青葉は囮としての役割を果たし、今まさに沈没の危機に瀕しながらも
最後の一撃を放った。この一撃に、輸送船団の運命が懸かっていた。
青葉が魚雷を放ったのと、ほぼ同時刻だった。
敵艦隊の右舷同航、すなわち青葉の真の狙いとは反対の方向に
重巡「加古」と駆逐艦「曙」「潮」が回り込んでいた。
位置で言えば、青葉と敵艦隊の縦列陣を挟撃する形になる。
米艦隊の全注意と全射撃が、探照灯を浴びている「青葉」に集中している。
この機を逃す手はない。
加古の艦長、白雪三雄大佐は
青葉の壮絶な奮戦を双眼鏡で確認し、低くつぶやいた。
「青葉がうまいこと引き付けてくれたな。青葉の分もたっぷりお返ししてやろう」
加古は、青葉と同型の旧式重巡であり性能的には米重巡ボルチモア級に劣る。
しかし、この奇襲的な側面攻撃は、その差を覆すチャンスだった。
「主砲一斉撃ち方始め!全砲門開け!
目標、敵一番艦(重巡ボルチモア)!撃ち方始め!」
轟音とともに加古の20.3cm砲弾が連続で夜空を切り裂いた。
米艦隊は、青葉からの砲撃とは別の、新たな脅威に気づく暇はなかった。
初弾の数秒後、ボルチモアの艦体に閃光が迸り、黒い煙が立ち昇った。
「弾着確認!遠一、近二、命中三!」
初弾からの命中弾
しかも、複数の砲弾がボルチモアの艦体に突き刺さった。
爆轟と炎の中で、ボルチモアの第二煙突と三番砲塔が吹き飛ぶのが、遠くの加古からも確認できた
「敵の三番砲は仰角一杯で停止している!撃破は確実か!」
白雪艦長の顔に、確信の笑みが浮かぶ。
敵のレーダー射撃が青葉に集中している間
加古は予想外の一斉射撃で敵重巡の主力を叩いたのだ。
「次弾装填急げ!修正射表構成も!」
ここから始まるのは、後の世に「ルソン沖海戦」として名を知られる
新鋭重巡と駆逐艦に対しての、旧式重巡「加古」と
駆逐艦 「曙」「潮」の大立ち回りだった。
青葉の決死の囮と、加古の電光石火の奇襲が、戦局を一変させる
それは自らを「格好の標的」として敵に差し出す、壮絶な決意の表明だった。
光が闇を切り裂いた直後、米軍警戒部隊
特に重巡洋艦「ボルチモア」「キャンベラ」からの
集中射撃が青葉に浴びせられた。
米軍のレーダー射撃は正確無比だった。
ボルチモア級の20.3cm砲弾が次々と青葉の艦体に命中する。
轟音と閃光、そして鉄の悲鳴が、夜の南シナ海に響き渡った。
「艦首に命中!一瞬で吹き飛びました!」
「中央構造物にも被弾多数!衝撃波で機器類が壊滅!」
青葉は竣工から20年近く、海風に接してきた装甲板が悲鳴のような軋む音を立て
二番煙突下の垂直装甲が大きく割れる。
艦内はたちまち、煙と火、そして血の匂いに包まれた。
そして最悪の事態が起こる。
艦橋にも敵重巡からの命中弾が突き刺さった。
第六戦隊司令官の大川内伝七中将は、至近弾の弾片が腹部を切り裂き
臓腑が見えるほどの重傷を負った。血に染まった艦橋で、部下が必死に叫ぶ。
「司令!今すぐ救護室へ!」
大川内中将は、床に倒れながらも
その強い意志を目に宿して拒否した。
「構わん!どうせこの怪我なら死ぬ。まだ戦える者を運べ!」
「しかし…!」
「目標、敵重巡!艦がどうなろうと
輸送船団へは向かわせるな!撃て!撃て!」
彼の命令は、青葉の砲術員を突き動かした。
青葉の20.3cm2号連装砲が、血と炎の中で再び咆哮する。
その時、またもや致命的な命中弾が青葉を襲った。
今度は、三番砲塔の防楯を喰い破って砲塔内で爆発。
装填中だった装薬に引火し、砲塔天蓋がまるでびっくり箱のように吹き飛んだ。
青葉は、ただでさえ少ない主砲の一基を、開戦早々に失った。
「損傷報告!急げ」
「三番砲被弾!装薬引火の模様!使用不能!」
「砲塔員全滅!」
「弾庫注水急げ!誘爆を防げ!」
米重巡「ボルチモア」級は55口径8インチ三連装砲を三基九門持つのに対し
青葉型は50口径20.3cm連装砲三基六門。
その攻撃力の差は元から大きい上に、さらに一基が使用不能になったのだ。
青葉の状況は、極めて厳しいという他なかった。
圧倒的な戦力差、そしてレーダー射撃の優位性において
この1945年の日本海軍が、相変わらず米艦隊に対して唯一有利である点があった。
それは、熟練の見張員……否
負傷してなお戦う精神力でもない…否
今まで多くの戦いで格上の艦級を数多く屠ってきた、その兵器
九三式第二空気魚雷。後の世にいう「酸素魚雷」である。
大川内中将は、自身の命が尽きる前に、青葉の最後の切り札を使うことを決断した。
「右舷反航魚雷戦用意!測距始めぇ!」
機関科は、被弾と浸水の中でも懸命に艦を動かし続けていた
「速力29ノット維持!目標、敵二番艦(重巡キャンベラ)!雷速調定52ノットに!」
九三式魚雷は、その圧倒的な速度と射程で米艦隊を驚愕させることができる。
「角度120度よーい、てっ!」
合図とともに、圧搾空気で駆動された魚雷が、青葉の側面から海面へと躍り出た。
魚雷は航跡を残さず暗闇の中を高速で敵艦へと向かう。
「貴様らの命、残り三分だ**!」
大川内中将は、血まみれの艦橋でそう叫んだのを最後に、意識を失った
青葉は囮としての役割を果たし、今まさに沈没の危機に瀕しながらも
最後の一撃を放った。この一撃に、輸送船団の運命が懸かっていた。
青葉が魚雷を放ったのと、ほぼ同時刻だった。
敵艦隊の右舷同航、すなわち青葉の真の狙いとは反対の方向に
重巡「加古」と駆逐艦「曙」「潮」が回り込んでいた。
位置で言えば、青葉と敵艦隊の縦列陣を挟撃する形になる。
米艦隊の全注意と全射撃が、探照灯を浴びている「青葉」に集中している。
この機を逃す手はない。
加古の艦長、白雪三雄大佐は
青葉の壮絶な奮戦を双眼鏡で確認し、低くつぶやいた。
「青葉がうまいこと引き付けてくれたな。青葉の分もたっぷりお返ししてやろう」
加古は、青葉と同型の旧式重巡であり性能的には米重巡ボルチモア級に劣る。
しかし、この奇襲的な側面攻撃は、その差を覆すチャンスだった。
「主砲一斉撃ち方始め!全砲門開け!
目標、敵一番艦(重巡ボルチモア)!撃ち方始め!」
轟音とともに加古の20.3cm砲弾が連続で夜空を切り裂いた。
米艦隊は、青葉からの砲撃とは別の、新たな脅威に気づく暇はなかった。
初弾の数秒後、ボルチモアの艦体に閃光が迸り、黒い煙が立ち昇った。
「弾着確認!遠一、近二、命中三!」
初弾からの命中弾
しかも、複数の砲弾がボルチモアの艦体に突き刺さった。
爆轟と炎の中で、ボルチモアの第二煙突と三番砲塔が吹き飛ぶのが、遠くの加古からも確認できた
「敵の三番砲は仰角一杯で停止している!撃破は確実か!」
白雪艦長の顔に、確信の笑みが浮かぶ。
敵のレーダー射撃が青葉に集中している間
加古は予想外の一斉射撃で敵重巡の主力を叩いたのだ。
「次弾装填急げ!修正射表構成も!」
ここから始まるのは、後の世に「ルソン沖海戦」として名を知られる
新鋭重巡と駆逐艦に対しての、旧式重巡「加古」と
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