異聞坊ノ岬沖海戦      此れは特攻作戦に非ず

みにみ

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沖縄沖の鎮魂歌

第58任務部隊

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満身創痍の大和は、ミッチャー提督の航空攻撃隊による猛攻を耐え抜き
なおもその巨体を海上にとどめていた。機関は損傷しながらも
26ノットの速度を保ち、主砲は無傷だった。
しかし、その時、遥か彼方の水平線に、日本の将兵たちを
絶望の淵に突き落とす新たな影が現れたのだ。米海軍最強の
そして最新鋭のアイオワ級戦艦4隻が、この戦場に参戦してきたのだった。


「見張り員より報告! 南方より、新たな敵戦艦部隊接近中!」

大和の艦橋に、緊張した声が響き渡った。
疲弊しきった将兵たちの顔に、新たな絶望の色が浮かび上がる。
そこには、すでにデヨ艦隊という強大な敵が立ちはだかっていたのだ。

「艦影識別、急げ!」

有賀艦長の声が震える。双眼鏡を覗き込んだ見張り員が
その巨大なシルエットを捉え、息を呑んだ。

「アイオワ級戦艦! 4隻です!」

その報告に、艦橋にいた誰もが絶句した。
アイオワ、ニュージャージー、ミズーリ、ウィスコンシン。
米海軍が誇る最新鋭の高速戦艦である。その速力、防御力
そして何よりも、強力な40cm SHS(スーパーヘビーシェル)砲弾を放つ主砲は
日本の将兵たちにとって、まさに悪夢だった。

「距離3万メートルより、砲撃を開始しました!」

凄まじい轟音が、遥か彼方から響いてきた。
それは、これまでのデヨ艦隊の砲撃とは異なる
より深く、より重い響きだった。米海軍の技術の粋を集めた40cm SHS砲弾が
夜明けの空を切り裂き、大和へと向かって飛翔してきたのだ。


大和は、既にデヨ艦隊の旧式戦艦群と激しい砲撃戦を繰り広げていた。
しかし、アイオワ級の参戦は、戦況を完全に覆すものだった。
デヨ艦隊の砲弾は、大和の分厚い装甲を破ることができなかったが
アイオワ級のSHS砲弾は、話が違った。
その貫通力は、大和の装甲をも貫きかねない威力を持っていたのだ。

「長官! このままでは、アイオワ級の集中砲火を浴びてしまいます!」

幕僚の一人が、伊藤長官に進言した。デヨ艦隊と
アイオワ級の両方から砲撃を受ければ
いかに大和といえども、その抗堪性には限界がある。

伊藤長官は、深く息を吸い込んだ。
彼の目は、無傷で迫りくるアイオワ級の艦影を捉えていた。
旧式戦艦群は、既に大和に多大な損害を与えてはいたが
致命傷には至っていなかった。しかし、アイオワ級は
まさに大和を沈めるために設計されたような存在だった。

「旧式戦艦群を無視せよ! その巨砲を、アイオワ級に向けろ!」

伊藤長官の命令は、冷静かつ明確だった。
それは、大和に残された、唯一の選択肢でもあった。
致命傷にならない旧式戦艦群との消耗戦を続けながら
アイオワ級の攻撃に耐えることは不可能だった。
ならば、敵の真の脅威を排除する。それが、大和の最後の使命だったのだ。

「主砲、目標、アイオワ級一番艦! 用意!」

大和の46cm主砲が、軋むような音を立てて旋回し
その巨大な砲身を、米海軍の最新鋭戦艦アイオワへと向けた。

ドォォォォォォォォン!!

轟音と共に、大和の主砲が火を噴いた。
1.5トンもの九一式徹甲弾が、唸りを上げて空を切り裂き、アイオワ級戦艦へと向かって飛翔していく。

それは、アメリカの技術の結晶である最新鋭の高速戦艦アイオワ級と
日本の技術の結晶である世界最大の戦艦大和が
その全てを賭けてぶつかり合う瞬間だった。互いの巨砲が火を噴き
砲弾が夜明けの空を交錯する。
それは、この戦争における、まさにクライマックスと呼ぶにふさわしい光景だった。


しかし、状況は、依然として大和にとって絶望的だった。
大和は既に、航空攻撃で多数の魚雷と爆弾を被弾し
艦体は満身創痍だった。速度は低下し、回避運動もままならない。
そして、最も致命的だったのは、15m測距儀が破壊され
正確な砲撃が不可能になっていることだった。 頼みの綱である主砲も
その威力を最大限に発揮することができなかったのだ。

対して、アイオワ級は、真新しい巨体と、精密なレーダー射撃装置を擁していた。
彼らは、大和の砲弾を巧みに回避しながら
その40cm SHS砲弾を、次々と大和へと浴びせかけることができたのだ。

ドォォォォン! ドォォォォン! ドォォォォン!

アイオワ級からの砲弾が、大和の周囲に次々と着弾し
巨大な水柱を立ち上げる。それは、まるで大和の周囲を
巨大な水の壁が囲んでいるかのようだった。
そして、時折、装甲を叩きつけるような轟音と共に、被弾を示す衝撃が艦体を襲う。

「艦橋右舷に被弾!」
「後部マスト、倒壊!」
「浸水、止まりません!」

次々と届けられる被弾報告に、大和の艦橋は、もはや混乱を極めていた。
将兵たちの顔には、疲労と絶望が色濃く刻まれている。
それでも、彼らは、その持ち場を離れることなく
最後の瞬間まで戦い続けることを決意していた。

この壮絶な戦いも、そろそろ終わりを迎えようとしていたのだ。 
大和は、その巨体と、日本海軍の誇りを賭けて戦い続けた。
しかし、物量と技術、そして圧倒的な数の差は
いよいよこの巨艦を深淵へと引きずり込もうとしていた。
夜明けの沖縄の海に、砲声と爆発音が響き渡り
大和の最後の咆哮が、虚しくこだましていたのだ。
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