異聞坊ノ岬沖海戦      此れは特攻作戦に非ず

みにみ

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沖縄沖の鎮魂歌

大和舞え

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「敵機、多数接近! 目標、大和!」

大和の見張り員の叫びが、艦橋に響き渡る。空の彼方から
TBFアベンジャー雷撃機20機と、SB2Cヘルダイバー急降下爆撃機20機が
編隊を組んで大和へと向かってくるのが見えた。
ミッチャー提督が、デヨ艦隊の支援と
大和への止めを刺すべく、残された全航空戦力を投入したのだ。

「全砲門、対空戦闘用意! 一機たりとも近づけるな!」

有賀艦長の咆哮が響き渡る。大和の対空火器が
一斉に火を噴いた。三連装25mm機銃、連装12.7cm高角砲が
猛烈な弾幕を形成し、米軍機へと浴びせられた。
空には無数の曳光弾が飛び交い、爆発の閃光が連続して走る。

しかし、航空戦での度重なる消耗により
大和の対空砲火の指揮は連携を欠き、その精度は低下していた。
しかも、この日の空には、日本の護衛戦闘機は一機もいなかった。
大和は、文字通り孤立無援だったのだ。

「右舷より雷撃機隊、突入!」
「左舷からも!」

TBFアベンジャーが、左右から大和を挟み込むように突入してくる。
彼らは、低空で魚雷を投下し、大和の喫水線を狙った。
大和は、必死に回避運動を試みるが、既に傾斜を負い
機関も損傷しているその巨体では、満足な回避運動もできない。

ドォォォォォォォォン!! ドォォォォォォォォォン!! ドォォォォォォォォォン!!

「左舷に被雷! 立て続けに6本!」

衝撃が、大和の艦体を激しく揺るがした。
轟音と共に、左舷から次々と巨大な水柱が立ち上る。
複数本の魚雷が、立て続けに大和の左舷に突き刺さったのだ。

「四番機関区、応答なし!」

信じられない報告が、機関室から届いた。
魚雷の直撃によって、四番機関区が完全に破壊され
機関の一部が機能を停止したのだ。速度の維持に不可欠な機関区の喪失は
大和の戦闘能力に、決定的な打撃を与えた。

「右舷注水区画へ注水開始! 艦の平行を保て!」

浸水を食い止め、艦の傾斜を抑えるため
乗組員たちは必死に注排水作業を開始した。
彼らは、絶望的な状況の中、最後の力を振り絞って艦の平衡を保とうと努めた。


魚雷攻撃の直後、今度はSB2Cヘルダイバー急降下爆撃機が
大和の頭上へと迫っていた。彼らは、雲の合間から急降下し、大和の甲板を狙った。

「敵急爆、直上!」

見張り員の叫び声が、悲鳴に変わった。
その直後、ゴォンという鈍い衝撃が、大和の中央部を襲った。

ドォォォォォン!! ドォォォォォォン!! ドォォォォォォン!!

「艦中央部に被弾! 3発の2000lb爆弾が命中しました!」

凄まじい爆発が、大和の中央部で発生した。
特に、対空戦闘をしていた乗組員が配置されていた甲板上が
直接の標的となったのだ。爆発の衝撃は凄まじく
そこにいた乗組員を肉片に変えて吹き飛ばした。 
血と肉片が飛び散り、甲板は阿鼻叫喚の地獄と化した。

「左舷対空火器、半壊!」

対空砲座も、爆弾の直撃を受け、その多くが機能を停止した。
大和の対空防御能力は、この一撃で著しく低下したのだ。

巨艦の執念 — 「まだいける」

艦の各所より、致命的な報告が次々と艦橋に届いた。
機関の損傷、対空火器の半壊、そして度重なる被弾による艦体の疲弊。
通常の戦艦であれば、とっくに沈没していてもおかしくないほどのダメージだった。
なんなら3回くらい沈んでいてもおかしくはない

しかし、日本の技術の頂点を集めた巨艦大和は、まだ沈まなかった。

信じられないことに、四番機関区が破壊されたにもかかわらず
機関はいまだに速力26ノットを発揮可能だったのだ。
その巨体は、わずかに傾斜しながらも米艦隊へと向かって突き進むことができた。

そして、攻撃力の要である三連装46cm主砲は
その分厚い装甲によって、一切の攻撃を受け付けていなかった。 
大和の主砲塔は、度重なる爆弾の直撃や砲弾の命中にもかかわらず
その機能を保ち、敵艦隊へとその砲身を向けていたのだ。

「まだいける……」
「まだ、まだこの大和は、沖縄でも舞える……」

大和の乗組員たちの間で、諦めないという執念が渦巻いていた。 
彼らは、満身創痍の艦体と、失われた多くの戦友たちの命を乗り越え
この巨艦がまだ戦い続けられることを信じていた。
それは、日本人技術者たちの魂が込められた
大和の驚異的な抗堪性がもたらす、最後の希望だった。

大和は、魚雷と爆弾の嵐に耐えながら、その巨砲を米艦隊に向け
最後の戦いを挑もうとしていたのだ。その姿は、文字通り
日本の不屈の精神の象徴だった。しかし、この戦いが、いつまで続くのか。
そして、この巨艦の最期が、どのように訪れるのか。
誰もがその答えを知ることはできなかった。
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