炎の魔獣召喚士

平岡春太

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第九章 サバイバル

 第十六話 秘められた笑み

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 ライオの首に嵌められたアルドの魔導具から、物凄い勢いで無数の触手が飛び出して来た。

「遅かった!」

 襲い来る無数の触手をフラムは縦横無尽に振るいながら斬って行く。

「さあ、私の魔力を存分に吸い尽くすがいい!」

 大きく開けたケイハルトの口の中に触手が次々と潜り込んで行き、その体も無数の触手が覆い尽くして一瞬にして見えなくなってしまった。

「何なんだこれは!」

 ライオの意識とは関係なく、首に嵌められた魔導具から飛び出す触手の数と勢いが止まらない。

「何なのよ、この多さは!」

 過去に二度、アルドと対した時に触手の攻撃を受けたが、その時とは比べ物にならない数に、フラムも必死に剣を振るう。

「このままじゃあ持たない……」

 迂闊に近付いただけに、増え続ける触手の圧倒的な数に徐々に疲れが見え始める。

「フラム、ここは引け!」

 追って来たビエントが加勢に加わる。

「でも、ライオが!」
「これではとても近付けん。逆に取り込まれるぞ」

 そこにフリードが剣で、パルが炎を吐いて加わって来た。

「これは凄いな」
「無茶苦茶な数でヤンス」

 近くに居た者達は成す術もなく触手が口の中に潜り込み、魔力を吸われてミイラになって行く。
 主人の異変にライディオスもライオの元に戻ろうと駆けつけて来たが、奮戦の甲斐もなく触手に体を絡めつけられ、その口に触手が潜り込み、魔力を奪われると共に干乾びてしまった。
 更にパルもその体に触手が絡み付く。

「助けてでヤンス!!」
「パル!」

 フラムが助けに入ろうとするも、自分の身を守るのに手一杯だ。
 パルの口の中に数本の触手が潜り込む。
 これで終わりかとパルが覚悟したその時、フラムが居る周辺の触手が一瞬にして凍り付き、粉々に砕け散った。

「アインベルク様! シャルロア!」

 二人が地面に刺した錫杖から伸びる氷の道が一帯に広がって触手を凍らせていた。

「助かったでヤンス……」

 ただ、魔導具から絶え間なく出続けている触手が休む間も与えずに襲い来る。

「何なんですか、この悪趣味極まりない生き物のようなものは?」
「アルドが作った魔導具が、魔力を取り込んでいるんです」
「では、ライオの首にあるあれが。それにしてもこれは、手が付けられませんね」

 さすがに五賢人と言えど、これ以上前に進む事は出来なかった。
 その時、全ての触手の動きが急に止まったかと思うと、今度はライオの首に嵌められている魔導具の中へと戻り始めた。

「今度は何ですか?」

 これはシャルロアだ。

「あれはケイハルトか? 何と言う姿に」

 あわれみの顔でビエントが言う。
 再び露となったケイハルトの姿は、骨と皮だけになって地面に横たわっていた。
 あちらこちらに魔力を吸われて干乾びた人や魔獣の変わり果てた姿が見られた。
 やがて全ての触手がライオの首に嵌められている魔導具の中に消え去った。

「一体何が?」

 魔導具の中央にある宝石が淡く青白い光を放ち始める。

「何も変わったようにはみ……みえ…………」

 突然ライオが大きく目を見開き、胸を押さえる。

「何だ、これは。く、苦しい……」

 苦しみながらしゃがみ込んだライオの首に嵌められている魔導具の宝石の光が、青白いものから徐々に黒く、やがて漆黒に変わり、突然黒いガス状のような物が噴き出し、ライオの体を包み込んでしまった。

「何が起こっているのです?」
「あの魔導具によって、ライオをアルドの意志が乗っ取ろうとしているんです。でも、どうしてケイハルトはライオをアルドに……?」

 アインベルクの問い掛けに答えるフラムもまた、腑に落ちなかった。
 漆黒の闇の中からライオの悲鳴が聞こえて直ぐ、黒いガス状の物は一瞬にして消え去った。
 何事もなかったかのように立ち上がったライオの肌には、今まで無かった黒いアザのような文様が浮かび上がっていた。
 フラム達の方に向けた不敵な笑みは、今までのライオならば絶対に見せないであろう表情であった。
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