炎の魔獣召喚士

平岡春太

文字の大きさ
184 / 194
第九章 サバイバル

 第十五話 最初で最後の贈り物

しおりを挟む
 ビエントはケイハルトの体から三叉戟を引き抜くと同時に、向かって来たライディオスの爪を弾く。
 休むことなく襲い掛かるライディオスが、ビエントをその場から引き離して行く。
 支えを失ったケイハルトが倒れそうになるのを、ライオが受け止める。そして、静かにその場に仰向けにして寝かせ、頭を自分の膝に乗せる。

「何故邪魔をする、ライオよ? その男は初めから、お前を自分の子だと思っておらぬのだぞ」

 普通のライディオスなら、ビエントの前に直ぐに串刺しになっていようが、ライオのライディオスは、ビエントの体に触れる事は出来なくとも、足止めにはなっている。
 更に、

「先生!」

 いち早く駆け付けたフラムが割って入るが、ライディオスは臆することなく二人を相手に渡り合い、ライオとケイハルトの元には行かせない。

「ビエントが申す通りだ。先ほども言ったが、私に家族など不要。なのにどうして助ける?」
「分からない。自分でも何故こうしているのか、分からない……」
「初めて会った時より、お前には非情になれぬ甘さがあった。それはあいつに似たのか。実に情けない」

 ケイハルトは徐にライオの手を握った。

「バンディオ」

 ライオの手を握るケイハルトの手が光を放つ。しかしそれは、直ぐに消えてしまった。

「今の言葉、何処かで……」
「今の呪法は譲渡の━━」
「譲渡?」

 ライディオスと一戦交えつつ、フラムは片隅に眠る記憶の引き出しを探る。
 ライオは慌ててケイハルトの手を振り払い、不思議そうに握られていた手を見つめる。

「一体何をした?」
「強くなれるおまじないのようなものだ」
「こんな時に冗談を」
「冗談? 私がそんな事を言うと思うか? ここまでは全て予定通りだ」
「予定通り? 何を馬鹿な」
「刺された事が予定通りと言うのが不思議か? まあ、本来ならビエントではなくお前に刺される予定だったのだがな。それに関しては予定外か」
「それじゃあ、最初から俺に殺されるつもりだったのか?」
「殺される? それも少し違うな。生きる為に死ぬ━━その方が正確だ」
「生きる為に死ぬ? さっきから何を訳が分からない事を」
「お前は知らずとも━━ぐはっ!」

 再びケイハルトの口から血が噴き出す。
 思わず身を乗り出したライオに、ニンマリと笑みを見せたケイハルトは、何やら服の中を弄った後、出したその手を素早くライオの首元に差し出した。
 カチッと言う音と共にライオの首元に何かが嵌まった。

「な、何だ、これは!?」
「私からお前への贈り物だ。最初で最後のな」

 一見きらびやかな首輪にも見えるその中央に、吸い込まれそうなほどの闇のような色をしつつも艶やかに光る宝石が嵌められ、形こそ違いがあるにすれ、それが何かはフラムには分かった。

「あれはアルドの!」
「アルド? では、あれが魔導具か」
「はい。でも、どうして魔導具をライオに? いえ、今はそんなことより早く止めないと」

 そこにパルとフリード、そしてシャルロアが駆けつける。

「丁度いいわ。ここは任せたわよ」

 さすがにこれだけの数が居ては、ライディオスもケイハルトの方に足を向けたフラムを追う訳にはいかない。

「は、外れない」

 ライオは魔導具を必死に外そうとするが、まるでびくともしない。

「それはアルドに作らせていた魔導具だ。お前専用のな」
「お、俺の?」
「最後に私の血を与えて完成となる━━そうアルドが言っていた」

 よく見ると、ライオの首に嵌められた魔導具は、ケイハルトの血に塗れている。

「後はお前が、一言こう言えばいい。ベルビス、とな」
「ダメよ、それを言っちゃあ!!」

 ライオは駆け寄って来たフラムに気付いたが、少し遅かった。

「ベルビス?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

真実の愛のおつりたち

毒島醜女
ファンタジー
ある公国。 不幸な身の上の平民女に恋をした公子は彼女を虐げた公爵令嬢を婚約破棄する。 その騒動は大きな波を起こし、大勢の人間を巻き込んでいった。 真実の愛に踊らされるのは当人だけではない。 そんな群像劇。

侯爵令嬢ソフィアの結婚

今野綾
恋愛
ソフィアは希少なグリーンアイを持つヴィンセントと結婚したが、これは金が欲しいソフィアの父の思惑と高い爵位が欲しいヴィンセントの思惑が一致したからに過ぎない そもそもヴィンセントには美しい恋人がいる 美男美女と名高いヴィンセントとその恋人は身分に大きな差があるために結婚することは叶わないのだ その事をソフィアも耳にしており、この結婚が形ばかりのものであることを知っていた 結婚して早々、ソフィアは実家から連れてきた侍女夫婦とあばら家に住むように言われて… 表紙はかなさんです✨ ありがとうございます😊 2024.07.05

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。  彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。  彼女は思った。 (今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。  今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。  小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。

『働いたら負けだと思ったので、何もしなかったら勝手に勝ちました』

ふわふわ
恋愛
王太子から一方的に婚約を破棄された公爵令嬢、 ファワーリス・シグナス。 理由は単純。 「何もしようとしない女だから」。 ……だが彼女は、反論もしなければ、復讐もしない。 泣き叫ぶことも、見返そうと努力することもなく、 ただ静かに言う。 ――「何をする必要が?」 彼女は何もしない。 問題が起きれば専門家が対処すべきであり、 素人が善意で口出しする方が、かえって傷口を広げると知っているから。 婚約破棄の後、 周囲は勝手に騒ぎ、勝手に動き、勝手に自滅し、 勝手に問題を解決していく。 彼女がしたことは、 ・責任を引き受けない ・期待に応えない ・象徴にならない ・巻き込まれない ――ただそれだけ。 それでも世界は、 彼女を基準にし、 彼女を利用しようとし、 最後には「選ぼう」とする。 だがファワーリスは、 そのすべてを静かに拒み続ける。 働いたら負け。 何もしないのが勝ち。 何も背負わず、何も奪わず、何も失わない。 「何もしない」という選択を貫いた令嬢が手にしたのは、 誰にも邪魔されない、完全な自由だった。 これは、 戦わず、争わず、努力もせず、 それでも最後に“勝ってしまった” 一人の令嬢の、静かなざまぁ物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...