炎の魔獣召喚士

平岡春太

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第一章 悪魔の科学者

 第一話 フラムとパル

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 ダルメキア━━   そこは魔獣が存在する世界。

 魔獣召喚士のフラムは、森の中を歩いていた。
 鎧を身にまとい、背中にはマントと袈裟けさ懸けに剣が携えられている。

「あ~、お腹が空いたでヤンス」

 フラムの肩にとまっている小さな竜パルが力のない声を漏らす。

「何がお腹が空いたよ。ずっと私の肩にとまっているクセに。羽があるんだから飛びなさいよ」

 フラムは肩を揺すってパルを振り落とそうとする。

「わっ! わっ! わっ!」

 パルも落ちまいと必死に肩につかまる。

「あれ?」

 フラムの動きが急に止まり、更につんのめるも何とか落ちずに留まる。 

「急に動きを止めるなんて卑怯でヤンスよ」
「だって、人の声が聞こえるような気がして」
「ああ、あの声でヤンスか。さっきから聞こえてるでヤンスよ。何かに襲われているようでヤンスけど━━」
「襲われてる?」

 急にフラムの目が嬉々として輝く。

「それなら早く言いなさいよ。商売、商売」

 足取りも軽く、フラムは森の中へと駆け入って行った。


 フラムが木々の間からそっと覗くと、少し先に立つ木を背に小さな体を震わせる男の子の姿があった。
 その周りには、巨大なムカデのような体を持ち、頭全体に無数の牙が並んだような魔獣が五匹、取り囲んでいる。

「ギュームが五匹か。大した相手じゃないけど、襲われてるのが子供じゃあね。お金には……」
 
 嬉々とした目は何処に行ったのやら、フラムは渋い顔を肩に乗るパルに向ける。

「オイラが悪いっていうでヤンスか? だからさっき言わずに聞き流していたでヤンスよ。それよりどうするでヤンス? このまま知らんふりして行ってしまうでヤンスか?」

「人を鬼みたいに言わないでよね。見ちゃったものは見て見ぬ振りなんかできないでしょう。さあ、パル」
「え、オイラが行くでヤンスか? お腹が空いて
 動けないでヤンス。魔獣を召喚すればいいでヤンスか」

 パルは力なく項垂れる。

「何言ってんの。あんたそれでも竜魔獣でしょう。ギューム五匹にそんな弱気なこと言ってないで、さっさと行きなさい。それとも次の村で飯抜きにされたい?」
「それは困るでヤンス。行けばいいんでヤンスね、行けば」

 力なくフラムの肩から飛び立ったパルだが、弾丸のような速さで飛行し、男の子とギュームの間に割って入る。

「お前たちの相手はオイラがするでヤンスよ」

 飛びながら大きく開けたパルの口から炎が噴出し、一匹のギュームを包み込んだ。
 他の四匹のギュームはパルを敵と見なしたか次々とパルに襲いかかる。
 パルは小柄な体を生かしてギュームの間を巧みに飛び回り、残る四匹を炎に包むのにそう時間は掛からなかった。
 ギュームたちは炎の中で悶え苦しむ。しかし、

「やっぱりお腹が空いてると火力が弱いでヤンス」

 炎は直ぐに消え去った。
 ギュームの体には焼け焦げた痕が残っているが、一匹たりと利いた様子もなく、頭部の歯をカチカチと音を立て、再びパルに襲い掛かる。

「こう言う時は逃げるでヤンス」

 パルは依然として震えている男の子の服の襟をくわえて飛び上がり、一目散に逃げ出した。
 五匹のギュームもその後を追う。
 空腹な上に男の子をくわえて飛ぶパルの飛ぶスピードは徐々に落ち、ギュームとの差は縮まって行くが、その先にはフラムの姿があった。
 パルはフラムの横を飛んで過ぎると、男の子を地面に下し、自らも落ちるように地面に転がった。

「後は任せたでヤンス」
「まったくもう、役に立たないんだから」

 フラムはその場にしゃがみ、右手を地面につけた。

魔獣召喚陣アルシオンボルトーア!」

 地面につけられた右手を中心に、大きな魔方陣が光り輝いた。

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