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第一章 悪魔の科学者
第二話 依頼
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立ち上がり、魔獣召喚陣から出たフラムは、その前に立ち、両手で素早く印を組む。
「魔界に住みし炎の魔獣よ。開かれし門を潜り出でて我が命に従え」
両手の印が形を変える。
「出でよ、炎魔獣フラント!」
魔獣召喚陣が強烈な光を放ち、その中から大柄な獣が飛び出した。その体は一瞬にして炎に包まれる。
「さあフラント、向かって来るギュームをやっちゃいなさい」
フラムの命に応えるように、天に向かって咆哮したフラントは、全身の炎をなびかせながら駆け出し、一瞬にして向かって来る五匹のギュームの間を駆け抜けた。
ただ駆け抜けた━━そう見えたのだが、フラントが駆け抜けて直ぐ、五匹のギュームは動きを止め、その体は炎に包まれた。ただ、パルの炎に包まれた時とは違い、その体は一瞬にして灰と化し、炎と共に消え去った。
フラントは再び咆哮してから駆け出し、フラムの足元で輝く召喚陣の光の中に消え、フラムが印を解くと共に召喚陣も消え去った。
フラムは大きく深呼吸してから依然としてへたり込んでいる男の子に歩み寄る。
「もう大丈夫よ。でも、こんな所を君一人で歩いているなんてとても危険じゃない。さあ、家まで送ってあげるから」
手を差し出すと、男の子は緊迫した顔を向けて来た。
「お姉ちゃんは魔獣召喚士なんだよね?」
「ま、まあね」
「オイラからするとまだまだ一人前とは言えないでヤンス」
肩にとまって来たパルにフラムの冷ややかな目が向けられる。
「ギューム五匹に手も足も出なかった奴に言われたきゃないわよ」
「お腹が空いてなきゃあオイラだってギュームの五匹や十匹だってささっとやっつけたでヤンスよ」
「どうだか」
「何でヤンス!」
「何よ!」
一触即発の雰囲気を止めたのは、男の子のすすり泣く声だった。
「ほら、あんたが大きな声を出すから」
「大きな声はお互い様でヤンス」
男の子は慌てて涙を拭い、首を横に振る。
「違うんだ。こんなに早く魔獣召喚士に出会えたのが嬉しくて」
更に真剣な眼をフラムに向けて来る。
「お願い。村を━━僕の村を助けて!」
「何か訳ありなようね。それってお金になる話?」
男の子は大きく頷いた。
「じゃあ決まりね。まずは話を聞こうじゃないの。ただその前に、この辺に体を休める所はないかな? 魔獣を召喚するのも結構疲れるのよね」
誰のせいかと言わんばかりにパルに目を向けるも、パルは直ぐに目を逸らす。
「それなら、この先に川があるよ」
男の子の先導で、さほど遠くない場所を流れる緩やかな流れの川までやって来た。
その道すがら互いの自己紹介は終えていた。男の子の名前はウィル、目の前を流れる川の下流にあるバルバゴと言う名の村から来たと言う。
川で喉を潤したフラムは、服の袖で口を拭いながら近くにある岩に座っているウィルの元に歩み寄り、隣に腰を下ろした。
「ねえ、パルって魔獣なの?」
ウィルの視線は依然として水を飲んでいるパルに向けられている。
「ああ、驚いたでしょう。喋る魔獣が居るなんてね。まあ、一応あれでも魔獣らしいわよ。他にあんな生き物、見た事ないもの」
「一応って、パルはお姉ちゃんが呼び出した魔獣なんでしょう?」
「違う。違う。パルは私を育ててくれた魔獣召喚士の師匠が亡くなる時に背中の剣と一緒に託してくれた形見なの。だから大事にしてるんだけど、どうせなら私が召喚出来ないような魔獣を召喚してくれていたら嬉しかったんだけどね」
そこに水を飲み終えたパルが力なくフラフラと飛んで来た。
「フラム、早く村に行くでヤンス。水だけじゃあ腹の足しにもならないでヤンスよ」
「確かにあれじゃあね」
ウィルの一言に、二人は顔を見合わせ、吹き出す。
「な、何でヤンス? あ、もしかしてオイラの悪口を言ってたでヤンスね」
「違う違う。悪口なんか言ってないって。ねえ、ウィ━━」
ふと見たウィルの顔がいつの間にか曇っているのに、フラムは思わず言葉を飲む。
「こんなに笑ったのって久しぶりだな……」
「随分と深刻そうな話ね。村を助けてって言ってたけど、村で何があったの?」
「一〇日ぐらい前に、村に盗賊団がやって来たんだ。そいつらは魔獣を使って村のみんなをおどして、お金や食べ物を奪って行ったんだ。でも、誰も殺されなかったし、みんなはこれですんだらって、安心してたんだよ。でも……」
「また来たのね」
「うん、金品はなくても食べ物はまた畑から収穫して来るからそれを見計らって来たんだよ。また数日したらやって来るだろうし、このままじゃあみんな飢え死にしてしまうよ」
「魔獣を使う盗賊団か。魔獣召喚士の私には耳が痛い話ね……」
初めての魔獣を召喚する際、その魔獣を従わせるには『操縛の印』と言うものを結ばなければならない。それが失敗すれば、魔獣は召喚士を襲う事になる。
魔獣召喚士の中にはかなりの剣術を身に着けているものが多いが、それは操縛の印が失敗した時に備えての事で、それでも殺されてしまう者も少なくなく、また、逃げ出す者も居て、魔界に戻れなくなった魔獣は先程のギューム達もしかり、野生化してしまう。
そんな野生化した魔獣を盗賊団が調教し、村々を襲う事案が最近増えて来て、魔獣召喚士が民に疎まれる事も少なくない。
「お姉ちゃん、頼むよ。盗賊団を何とかしてくれたらお金は村の人が出してくれるはずだよ。だから村を助けて」
「大丈夫でヤンスよ。お金になるならフラムは断らないでヤンス」
「人を金の亡者みたいに言わないでよね」
「じゃあ断るでヤンスか?」
「冗談。引き受けるわよ」
「本当に!」
ウィルが声を弾ませたその時、
「その話、ちょっと待った」
森の方から誰かの声が飛んで来た。
「魔界に住みし炎の魔獣よ。開かれし門を潜り出でて我が命に従え」
両手の印が形を変える。
「出でよ、炎魔獣フラント!」
魔獣召喚陣が強烈な光を放ち、その中から大柄な獣が飛び出した。その体は一瞬にして炎に包まれる。
「さあフラント、向かって来るギュームをやっちゃいなさい」
フラムの命に応えるように、天に向かって咆哮したフラントは、全身の炎をなびかせながら駆け出し、一瞬にして向かって来る五匹のギュームの間を駆け抜けた。
ただ駆け抜けた━━そう見えたのだが、フラントが駆け抜けて直ぐ、五匹のギュームは動きを止め、その体は炎に包まれた。ただ、パルの炎に包まれた時とは違い、その体は一瞬にして灰と化し、炎と共に消え去った。
フラントは再び咆哮してから駆け出し、フラムの足元で輝く召喚陣の光の中に消え、フラムが印を解くと共に召喚陣も消え去った。
フラムは大きく深呼吸してから依然としてへたり込んでいる男の子に歩み寄る。
「もう大丈夫よ。でも、こんな所を君一人で歩いているなんてとても危険じゃない。さあ、家まで送ってあげるから」
手を差し出すと、男の子は緊迫した顔を向けて来た。
「お姉ちゃんは魔獣召喚士なんだよね?」
「ま、まあね」
「オイラからするとまだまだ一人前とは言えないでヤンス」
肩にとまって来たパルにフラムの冷ややかな目が向けられる。
「ギューム五匹に手も足も出なかった奴に言われたきゃないわよ」
「お腹が空いてなきゃあオイラだってギュームの五匹や十匹だってささっとやっつけたでヤンスよ」
「どうだか」
「何でヤンス!」
「何よ!」
一触即発の雰囲気を止めたのは、男の子のすすり泣く声だった。
「ほら、あんたが大きな声を出すから」
「大きな声はお互い様でヤンス」
男の子は慌てて涙を拭い、首を横に振る。
「違うんだ。こんなに早く魔獣召喚士に出会えたのが嬉しくて」
更に真剣な眼をフラムに向けて来る。
「お願い。村を━━僕の村を助けて!」
「何か訳ありなようね。それってお金になる話?」
男の子は大きく頷いた。
「じゃあ決まりね。まずは話を聞こうじゃないの。ただその前に、この辺に体を休める所はないかな? 魔獣を召喚するのも結構疲れるのよね」
誰のせいかと言わんばかりにパルに目を向けるも、パルは直ぐに目を逸らす。
「それなら、この先に川があるよ」
男の子の先導で、さほど遠くない場所を流れる緩やかな流れの川までやって来た。
その道すがら互いの自己紹介は終えていた。男の子の名前はウィル、目の前を流れる川の下流にあるバルバゴと言う名の村から来たと言う。
川で喉を潤したフラムは、服の袖で口を拭いながら近くにある岩に座っているウィルの元に歩み寄り、隣に腰を下ろした。
「ねえ、パルって魔獣なの?」
ウィルの視線は依然として水を飲んでいるパルに向けられている。
「ああ、驚いたでしょう。喋る魔獣が居るなんてね。まあ、一応あれでも魔獣らしいわよ。他にあんな生き物、見た事ないもの」
「一応って、パルはお姉ちゃんが呼び出した魔獣なんでしょう?」
「違う。違う。パルは私を育ててくれた魔獣召喚士の師匠が亡くなる時に背中の剣と一緒に託してくれた形見なの。だから大事にしてるんだけど、どうせなら私が召喚出来ないような魔獣を召喚してくれていたら嬉しかったんだけどね」
そこに水を飲み終えたパルが力なくフラフラと飛んで来た。
「フラム、早く村に行くでヤンス。水だけじゃあ腹の足しにもならないでヤンスよ」
「確かにあれじゃあね」
ウィルの一言に、二人は顔を見合わせ、吹き出す。
「な、何でヤンス? あ、もしかしてオイラの悪口を言ってたでヤンスね」
「違う違う。悪口なんか言ってないって。ねえ、ウィ━━」
ふと見たウィルの顔がいつの間にか曇っているのに、フラムは思わず言葉を飲む。
「こんなに笑ったのって久しぶりだな……」
「随分と深刻そうな話ね。村を助けてって言ってたけど、村で何があったの?」
「一〇日ぐらい前に、村に盗賊団がやって来たんだ。そいつらは魔獣を使って村のみんなをおどして、お金や食べ物を奪って行ったんだ。でも、誰も殺されなかったし、みんなはこれですんだらって、安心してたんだよ。でも……」
「また来たのね」
「うん、金品はなくても食べ物はまた畑から収穫して来るからそれを見計らって来たんだよ。また数日したらやって来るだろうし、このままじゃあみんな飢え死にしてしまうよ」
「魔獣を使う盗賊団か。魔獣召喚士の私には耳が痛い話ね……」
初めての魔獣を召喚する際、その魔獣を従わせるには『操縛の印』と言うものを結ばなければならない。それが失敗すれば、魔獣は召喚士を襲う事になる。
魔獣召喚士の中にはかなりの剣術を身に着けているものが多いが、それは操縛の印が失敗した時に備えての事で、それでも殺されてしまう者も少なくなく、また、逃げ出す者も居て、魔界に戻れなくなった魔獣は先程のギューム達もしかり、野生化してしまう。
そんな野生化した魔獣を盗賊団が調教し、村々を襲う事案が最近増えて来て、魔獣召喚士が民に疎まれる事も少なくない。
「お姉ちゃん、頼むよ。盗賊団を何とかしてくれたらお金は村の人が出してくれるはずだよ。だから村を助けて」
「大丈夫でヤンスよ。お金になるならフラムは断らないでヤンス」
「人を金の亡者みたいに言わないでよね」
「じゃあ断るでヤンスか?」
「冗談。引き受けるわよ」
「本当に!」
ウィルが声を弾ませたその時、
「その話、ちょっと待った」
森の方から誰かの声が飛んで来た。
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