50 / 208
第三章 氷の国
第十話 氷の女王
しおりを挟む
エドアールが抜き放った剣は、オロドーアに動く間も与えずにその胴を真っ二つにする━━かに見えたが、寸前の所でフラムが抜き放った剣が受け止めた。
「ほう、私の剣を受け止めるとは、女にしてはなかなかやるではないか」
「生意気言ってんじゃないわよ。前に会った時は私に一度も勝てなかったくせに」
「誰が勝てなかったと? お前など知ら、知ら……」
フラムの肩にとまっているパルを見たエドアールの表情が一変する。
「その小竜は、あの時の喋る魔獣か!」
不意にオロドーアが振り下ろして来た拳を、エドアールは飛び退って躱して距離を取った。
「お前はあの時のじゃじゃ馬娘か!」
「誰がじゃじゃ馬娘よ!」
「あれ、フラムさんはお兄様と知り合いなのですか?」
「随分と前だけどシャルル、じゃなくてシャルロア、あなたにも会っているのよ。あなたはまだ小さかったから覚えていないでしょうけどね」
「そうなんですか?」
「そんな事より何故お前がここにいる? そうか、お前がシャルロアに城を出るように唆したんだな」
「失礼な。シャルロアに会ったのはたまたまよ」
「本当です、お兄様」
「ええい、そもそもそれはどうでもいい。力ずくでも連れて帰るぞ」
エドアールが合図を送ると、周りで今まで成り行きを見守っていた兵士達も剣を抜いた。
フラムも剣を構え、オロドーアも威嚇を見せ、一触即発の雰囲気が漂う中、
「双方、そこまでです!」
あらぬ方から、厳格な女性の声が飛んで来た。
その場の全員の視線が集まる中、シャルロアが持つ錫杖に似た錫杖を持ち、売り払った防寒着に似た豪奢な防寒着を着ている年配の女性が姿を見せた。頭上の冠がその威厳を際立たせている。
その周りには、身の周りの世話をしていると思われる男女数人と護衛と思われる兵士達の姿もあった。
「母上!」「お母様!」
剣を抜いていた兵士達も慌てて鞘に戻し、片膝を地に落として敬礼を見せる。
「随分と大勢の気配を感じたので来てみれば、何事です。まあ、察しは付きますが。ただ、どうしてそこにフラムも居るのですか?」
「私はアインベルク様に会いに来たんですけど、たまたまシャルル、じゃなくてシャルロアに出会って、まあ、色々と……」
「まあ、それは後で訊くとして、シャルロア、あなたは早く城にお戻りなさい」
アインベルクの思わぬ申し出に、シャルロアだけではなく、周りの全員が一驚する。
「でも、お母様は私の結婚には反対なのでしょう?」
「そうですよ。ですが、その事で城では大変な事になっているのでしょう。それは感心しません」
「でも……」
「ワガママは許しませんよ。まず、そこのオロドーアを戻しなさい。あなたには従順そうですが、それだけに暴れ出してはエドアールも大変でしょうから」
オロドーアはアインベルクの言葉を理解したのか、その敵意をアインベルクに向けようとしたが、アインベルクの目を見た途端にその体がガタガタと震え出した。
シャルロアはオロドーアの事を思って、渋々ながら召喚陣を作り、その光の中にオロドーラを戻した。
「さすがは氷の魔獣召喚士を冠する五賢人」
「氷の女王でヤンス」
パルの言葉を聞いた途端、アインベルクは急につかつかとフラムに歩み寄って来た。周りのお付きや兵士もそれに続く。
「相変わらずパルちゃんはお喋りね。その呼び方は嫌いだと、以前にも申したはずですよ」
持っている錫杖の飾り部分でパルの頭を木魚のように叩き出した。
「痛いでヤンス! 痛いでヤンス! やめて欲しいでヤンス!」
「相変わらず笑いながら叩くのが怖い」
フラムも苦笑いするしかない。
「母上、感謝いたします」
シャルロアは、エドアールの兵士に連れていかれる。アインベルクにああ言われては、従うしかなかった。
「勘違いしないで。私は今でも結婚には反対ですよ。ただ、城の動揺が民にまで広がっては大変ですからそうしたまでです。あの頑固オヤジにもそう伝えなさい」
エドアールも苦笑いを残し、アインベルクに敬礼してからシャルロアを連れた兵士達と共にその場から去って行った。
「まったく、エドアールも従順過ぎるが故にあの頑固オヤジに似てしまって、困ったもんだわ。さあ、私達も参りましょうか」
「その前に、叩くのをやめて欲しいでヤンス……」
パルの頭は赤く少し腫れ上がっていた。
「あら、ごめんなさい」
「ほう、私の剣を受け止めるとは、女にしてはなかなかやるではないか」
「生意気言ってんじゃないわよ。前に会った時は私に一度も勝てなかったくせに」
「誰が勝てなかったと? お前など知ら、知ら……」
フラムの肩にとまっているパルを見たエドアールの表情が一変する。
「その小竜は、あの時の喋る魔獣か!」
不意にオロドーアが振り下ろして来た拳を、エドアールは飛び退って躱して距離を取った。
「お前はあの時のじゃじゃ馬娘か!」
「誰がじゃじゃ馬娘よ!」
「あれ、フラムさんはお兄様と知り合いなのですか?」
「随分と前だけどシャルル、じゃなくてシャルロア、あなたにも会っているのよ。あなたはまだ小さかったから覚えていないでしょうけどね」
「そうなんですか?」
「そんな事より何故お前がここにいる? そうか、お前がシャルロアに城を出るように唆したんだな」
「失礼な。シャルロアに会ったのはたまたまよ」
「本当です、お兄様」
「ええい、そもそもそれはどうでもいい。力ずくでも連れて帰るぞ」
エドアールが合図を送ると、周りで今まで成り行きを見守っていた兵士達も剣を抜いた。
フラムも剣を構え、オロドーアも威嚇を見せ、一触即発の雰囲気が漂う中、
「双方、そこまでです!」
あらぬ方から、厳格な女性の声が飛んで来た。
その場の全員の視線が集まる中、シャルロアが持つ錫杖に似た錫杖を持ち、売り払った防寒着に似た豪奢な防寒着を着ている年配の女性が姿を見せた。頭上の冠がその威厳を際立たせている。
その周りには、身の周りの世話をしていると思われる男女数人と護衛と思われる兵士達の姿もあった。
「母上!」「お母様!」
剣を抜いていた兵士達も慌てて鞘に戻し、片膝を地に落として敬礼を見せる。
「随分と大勢の気配を感じたので来てみれば、何事です。まあ、察しは付きますが。ただ、どうしてそこにフラムも居るのですか?」
「私はアインベルク様に会いに来たんですけど、たまたまシャルル、じゃなくてシャルロアに出会って、まあ、色々と……」
「まあ、それは後で訊くとして、シャルロア、あなたは早く城にお戻りなさい」
アインベルクの思わぬ申し出に、シャルロアだけではなく、周りの全員が一驚する。
「でも、お母様は私の結婚には反対なのでしょう?」
「そうですよ。ですが、その事で城では大変な事になっているのでしょう。それは感心しません」
「でも……」
「ワガママは許しませんよ。まず、そこのオロドーアを戻しなさい。あなたには従順そうですが、それだけに暴れ出してはエドアールも大変でしょうから」
オロドーアはアインベルクの言葉を理解したのか、その敵意をアインベルクに向けようとしたが、アインベルクの目を見た途端にその体がガタガタと震え出した。
シャルロアはオロドーアの事を思って、渋々ながら召喚陣を作り、その光の中にオロドーラを戻した。
「さすがは氷の魔獣召喚士を冠する五賢人」
「氷の女王でヤンス」
パルの言葉を聞いた途端、アインベルクは急につかつかとフラムに歩み寄って来た。周りのお付きや兵士もそれに続く。
「相変わらずパルちゃんはお喋りね。その呼び方は嫌いだと、以前にも申したはずですよ」
持っている錫杖の飾り部分でパルの頭を木魚のように叩き出した。
「痛いでヤンス! 痛いでヤンス! やめて欲しいでヤンス!」
「相変わらず笑いながら叩くのが怖い」
フラムも苦笑いするしかない。
「母上、感謝いたします」
シャルロアは、エドアールの兵士に連れていかれる。アインベルクにああ言われては、従うしかなかった。
「勘違いしないで。私は今でも結婚には反対ですよ。ただ、城の動揺が民にまで広がっては大変ですからそうしたまでです。あの頑固オヤジにもそう伝えなさい」
エドアールも苦笑いを残し、アインベルクに敬礼してからシャルロアを連れた兵士達と共にその場から去って行った。
「まったく、エドアールも従順過ぎるが故にあの頑固オヤジに似てしまって、困ったもんだわ。さあ、私達も参りましょうか」
「その前に、叩くのをやめて欲しいでヤンス……」
パルの頭は赤く少し腫れ上がっていた。
「あら、ごめんなさい」
0
あなたにおすすめの小説
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる