炎の魔獣召喚士

平岡春太

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第四章 動き出す歯車

 第十六話 騒ぎの始まり

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 夜は何事もなく静かに過ぎ、朝を迎えた。
 食事は部屋で取る事になっており、トイレだけは部屋の外に出ることを許されていたが、トイレまでも監視の兵士が付いて来た。

「これじゃあ外に行けませんね」
「何言ってんの。外に出るなら方法があるでしょう。シャルロアだって自分の城から逃げ出したでしょうに」
「確かに窓があればここからは出れるでしょうけど、外に居る兵士はどうするんです? 私の場合は自国の兵でしたから傷付ける恐れがあるので強引に捕らえには来ませんでしたけど、ここは他国ですから無理にでも捕らえに来るでしょうし」
「確かにそうね。あの窓の大きさから言ってフィールやサウロンは通れそうもないし。揉め事は起こしたくないんだけど……」

 手詰まりで思案に暮れていると、ドアをノックする音が聞こえて来た。
 ドアを開けると、イグニアが立っていた。

「何してんのよ。もう直ぐ大会の続きが始まるわよ。見に行くんでしょう」
「行くのは行くけど、兵士は?」

 フラム達は、他の人間と接触するのも禁じられていた。

「ああ、会うのはダメだってうるさい事言うから、眠っといて貰ったわよ」

 部屋の外で監視に就いていた二人の兵士は床に倒れて伸びている。

「あらあら、あんたらしいって言えばらしいけど、せっかく大会を通過したのに、失格にされたらどうすんのよ」
「まあ、その時はその時よ」
「あんたね……」

 フラムは勿論、パルとシャルロアも苦笑いするしかない。
 とは言え、お陰で表から堂々と出た事で、全く呼び止められる事もなく城から出られた。
 その後で倒れている兵士が見つかって騒ぎになったのは言うまでもないのだが。


 
 コロッセオの周りでは、昨日と同じく大勢の人が行き交っていてお祭り騒ぎの賑わいだ。
 昨日と同じく、また出店からの芳しい香りが漂って来たのだが、大会の開始時間が差し迫っている事もあって、ぐっと堪えて先を急いだ。
 今日は出場者ではなく観覧者の入り口から中に入り、既に大勢の客で埋まるスタンドに出て、何とか三つ空いている席を見つけて座った。

「フラム、フリードが居るでヤンスよ」

 フラムの肩に乗るパルが、真っ先に七番のゼッケンを付けたフリードを見つけて言う。

「出場者なんだから当然でしょう」
「フラムさん、あそこにこの間の人が」

 シャルロアは、十五番のゼッケンを付けたエレーナを見つけた。
 何とかフリードの元に行こうとしていたが、柄の悪そうな連中に絡まれて、試合開始にも拘らず、一触即発の雰囲気になっている。
 コロッセオの上空には既にグリーゼが飛んでおり、その背にはディユロの姿がある。

「さて皆さん、お待たせしました。昨日来られてない方もおられるでしょうから、まずは自己紹介から。今大会の進行を仰せつかっているディユロと申します。お見知り置きを」

 観客から惜しみない拍手が送られる。
 ディユロは拍手が自然と鳴り止んで行くのを待って再び話し始める。
 昨日同様に他国の要人が並ぶ特別席の一角にある貴賓室に並ぶオルタニアの王族が紹介され、王位継承戦の概要を説明する。

「……昨日、魔獣召喚士同士の闘いは意外な結末を迎えましたが、今日はどんな闘いが繰り広げられるのでしょうか。まず、魔獣を手懐けておられる方もおられるでしょうが、魔獣召喚士と区別する為に今回の魔獣の使用は禁止とさせて貰います。その代わり、それ以外の武具ならば何でも使用は可能となっております」

 昨日の試合と同様に相手を殺すことは禁止、その時点で失格とし、殺人罪を問われる事とする。

「さあ、それでは始めたいと思います!」

 ディユロは、腰にぶら下げている角笛を手にすると、目一杯吹き鳴らした。
 始まりの合図の角笛の音を掻き消さんばかりの歓声が巻き起こる中、参加者達も一斉に動き出す。
 まずコロッセオを沸かせたのはフラムも良く知るあの男だった。

「フラムさん、フリードさんって凄いんですね。周りに居た十人ぐらいの人が何も出来ずに一瞬にして倒れちゃいましたよ」
「まあ、剣に関しては私も一目置いてますからね」
「へえ~、あんたが一目置くなんて珍しいわね」
「剣に関してはだけど」
「念を押さなくてもいいでヤンス」

 次に沸かせたのはエレーナだ。

「昨日のあの女の人もフリードさんに負けてませんよ」
「本当だ。あんた突っかかれてたみたいだけど、また凄いのに目を付けられちゃったわね」
「あんたがそれを言う? それもこれも、全部あいつのせいだわ」

 フラムがフリードを睨み付けていると、フリードは派手にくしゃみをする。

「あれ、風邪ひいたかな?」

 次々と人数は減って行き、試合は滞りなく進んでいるように見えたが、それは突然に訪れた。
 試合開始時は晴れ渡っていた空が徐々に曇り始め、それは分厚く、あっと言う間に空一面を覆ってしまった。
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