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第四章 動き出す歯車
第十七話 ブリュンデル城
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分厚い雲の中で、今にも雷が産声を上げそうな稲光を見せる中、コロッセオの少し外れた一角の上空を覆う雲を割って、何か巨大な物体がゆっくりと降りて来る。
観客が何事かと見上げ、今まで戦っていた参加者達も動きを止めて空を見上げる。
「あれは……城!?」
空飛ぶ島、正にそう呼ぶに相応しい巨大な大地の上に立つ立派な城が、雲の上からゆっくりと降りて来る。
よく見ると、大地の最下部には何か巨大なプロペラの様なものが廻転しており、浮力を生み出しているのだろう。
「あの城は確か、ブリュンデル城ではないでしょうか?」
記憶を辿りながら口を開いたのはシャルロアだ。
「ブリュンデル城? 確かルジオーネ国の城よね」
「はい、私が幼き頃、お母様と共に所用で訪れた事があって、美しい城だったのでよく覚えてるんです」
「でもあの国は、二年程前に国そのものが忽然と消えてしまったと聞いているけど」
「私もそう聞いています」
コロッセオにいる全員がブリュンデル城に釘付けになる中、オルタニアの王族が並ぶ貴賓席の背後に漆黒の魔獣召喚陣が現れ、そこからフラムが追っていたローブの男が姿を現した。
「全く、自ら来ずとも良いと言っておいたのに、信用がないものだ」
愚痴を溢す男の声に気付き、王族達は後ろを振り返る。
「何だ、貴様は!?」
「何処から現れた?」
直ぐに近くにいる衛兵が駆け寄って来る。しかし、ローブの男との間に漆黒の魔獣召喚陣が忽然と幾つも現れ、フラムを襲った死魔獣が飛び出して来て衛兵に襲い掛かる。
「デリオン王子、おとなしく来て貰いますよ。それとも、アルド博士とお呼びした方が宜しいかな?」
苦々しい面持ちで立ち上がったデリオンがスッと挙げた手に嵌められた指輪から数本の触手が伸び、ローブの男に襲い掛かるが、コロッセオの場外から上空に現れたグリーゼから黒い影が降りて来て、触手の全てはずたずたに切り裂かれた。
ローブの男の前には、三叉戟を構えたラファールが立っている。
「余計なお世話でしたかね」
俄かに騒がしくなって来た観客席に、ブリュンデル城を見上げていた観客達の視線がそちらへと向かう。
「フラム、あの男でヤンスよ!」
「ええ。それに大会に忍び込んでいたあの男も。仲間だったの。とにかくあっちに━━」
慌てて席を離れようとしたフラムだが、
「何か来るぞ!」
ブリュンデル城を見上げている客達の声に足は止まり、再びその視線はブリュンデル城に戻される。
ブリュンデル城の方から飛び出した無数の黒い点が落ちて来て、次第に大きくなって来るそれが様々な魔獣であると目視出来るようになるのに、そう時間は掛からなかった。
着地を失敗した魔獣はそのまま絶命してしまったが、上手く降り立った魔獣達は、人の姿を認めるなり、襲い掛かって来た。
人々が逃げ惑い、フリード達参加者も降りて来た魔獣と戦う事となり、試合どころではなくなってしまった。
「これじゃあ、あっちに行くどころじゃあ……」
フラムもまたそれどころではなく、更に歯噛みする事態は続く。
「ねえ、どう言う事よ。あれって、クリスタじゃあ……!?」
驚愕の表情で立ち尽くすイグニアは見上げるその先には、一匹のフィールが降下して来て炎を吐いていたが、その背にはブレアが乗っている。
「そんなはずは……クリスタはあの時、私を助ける為に……」
「違う。あれはクリスタじゃないわ」
「違う? どう見てもあれはクリスタでしょう」
「よく見なさい。乗っているのはフィールよ。クリスタが召喚するならサウロンでしょう」
「確かに。でも、だったらあれは誰なのよ?」
「名前はブレアって言っていたわ。クリスタを知っているみたいだったけど、それ以上は……」
「ブレア……?」
フィールで上空を駆るブレアは、フラムの姿を捉え、降下して来てフラム達の近くにフィールから飛び降りて来た。
「覚えているぞ。あの時の女だな」
「あなた一体何者なの? クリスタとどう言う関係?」
思わずイグニアが矢継ぎ早に訊ねる。
「お前こそ何だ?」
「それは……クリスタは私のせいで……」
「違う。あれはクリスタの優しさよ」
「そうか。どうやらお前もあの学校にいたんだな。だったら同罪だ。二人まとめて殺してやる」
観客が何事かと見上げ、今まで戦っていた参加者達も動きを止めて空を見上げる。
「あれは……城!?」
空飛ぶ島、正にそう呼ぶに相応しい巨大な大地の上に立つ立派な城が、雲の上からゆっくりと降りて来る。
よく見ると、大地の最下部には何か巨大なプロペラの様なものが廻転しており、浮力を生み出しているのだろう。
「あの城は確か、ブリュンデル城ではないでしょうか?」
記憶を辿りながら口を開いたのはシャルロアだ。
「ブリュンデル城? 確かルジオーネ国の城よね」
「はい、私が幼き頃、お母様と共に所用で訪れた事があって、美しい城だったのでよく覚えてるんです」
「でもあの国は、二年程前に国そのものが忽然と消えてしまったと聞いているけど」
「私もそう聞いています」
コロッセオにいる全員がブリュンデル城に釘付けになる中、オルタニアの王族が並ぶ貴賓席の背後に漆黒の魔獣召喚陣が現れ、そこからフラムが追っていたローブの男が姿を現した。
「全く、自ら来ずとも良いと言っておいたのに、信用がないものだ」
愚痴を溢す男の声に気付き、王族達は後ろを振り返る。
「何だ、貴様は!?」
「何処から現れた?」
直ぐに近くにいる衛兵が駆け寄って来る。しかし、ローブの男との間に漆黒の魔獣召喚陣が忽然と幾つも現れ、フラムを襲った死魔獣が飛び出して来て衛兵に襲い掛かる。
「デリオン王子、おとなしく来て貰いますよ。それとも、アルド博士とお呼びした方が宜しいかな?」
苦々しい面持ちで立ち上がったデリオンがスッと挙げた手に嵌められた指輪から数本の触手が伸び、ローブの男に襲い掛かるが、コロッセオの場外から上空に現れたグリーゼから黒い影が降りて来て、触手の全てはずたずたに切り裂かれた。
ローブの男の前には、三叉戟を構えたラファールが立っている。
「余計なお世話でしたかね」
俄かに騒がしくなって来た観客席に、ブリュンデル城を見上げていた観客達の視線がそちらへと向かう。
「フラム、あの男でヤンスよ!」
「ええ。それに大会に忍び込んでいたあの男も。仲間だったの。とにかくあっちに━━」
慌てて席を離れようとしたフラムだが、
「何か来るぞ!」
ブリュンデル城を見上げている客達の声に足は止まり、再びその視線はブリュンデル城に戻される。
ブリュンデル城の方から飛び出した無数の黒い点が落ちて来て、次第に大きくなって来るそれが様々な魔獣であると目視出来るようになるのに、そう時間は掛からなかった。
着地を失敗した魔獣はそのまま絶命してしまったが、上手く降り立った魔獣達は、人の姿を認めるなり、襲い掛かって来た。
人々が逃げ惑い、フリード達参加者も降りて来た魔獣と戦う事となり、試合どころではなくなってしまった。
「これじゃあ、あっちに行くどころじゃあ……」
フラムもまたそれどころではなく、更に歯噛みする事態は続く。
「ねえ、どう言う事よ。あれって、クリスタじゃあ……!?」
驚愕の表情で立ち尽くすイグニアは見上げるその先には、一匹のフィールが降下して来て炎を吐いていたが、その背にはブレアが乗っている。
「そんなはずは……クリスタはあの時、私を助ける為に……」
「違う。あれはクリスタじゃないわ」
「違う? どう見てもあれはクリスタでしょう」
「よく見なさい。乗っているのはフィールよ。クリスタが召喚するならサウロンでしょう」
「確かに。でも、だったらあれは誰なのよ?」
「名前はブレアって言っていたわ。クリスタを知っているみたいだったけど、それ以上は……」
「ブレア……?」
フィールで上空を駆るブレアは、フラムの姿を捉え、降下して来てフラム達の近くにフィールから飛び降りて来た。
「覚えているぞ。あの時の女だな」
「あなた一体何者なの? クリスタとどう言う関係?」
思わずイグニアが矢継ぎ早に訊ねる。
「お前こそ何だ?」
「それは……クリスタは私のせいで……」
「違う。あれはクリスタの優しさよ」
「そうか。どうやらお前もあの学校にいたんだな。だったら同罪だ。二人まとめて殺してやる」
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