炎の魔獣召喚士

平岡春太

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第六章 邂逅(かいこう)

 第十一話 荒野の戦い

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 フラム達は何とかエレーナの目を逃れてケンシルトを出た。
 フラムが地魔獣のボロンゴを二匹召喚し、それぞれにフラムとフリードが乗り、シュレッケ峠を越え、一路ケーレに向かって荒野を走る。

「こいつは楽でいいや」
「あんたは走った方が速いんじゃないの?」
「確かに速いけど、疲れるのは疲れるからな」
「まったく、もう。それで、あんたは何で飛ばないのよ? あんたこそ速いでしょう」

 不機嫌な目が、肩にとまるパルに向く。

「オイラも疲れるでヤンスよ」

 パルは目線を逸らしながら言う。

「どいつもこいつも、私だって二匹のボロンゴを召喚したら疲れるんですからね」

 更に不機嫌になるフラムに、フリードとパルは苦笑いするしかない。

「おい、あそこに誰かいないか?」
「白々しく話を逸らすんじゃないわよ」
「フラム、本当に誰かいるでヤンスよ」

 半信半疑ながらも目を前方に向けると、遠くではあるものの何もないはずの荒野に、何かが見える。
 目を凝らすと、確かに人の姿をしている。

「こんな所に誰が……?」

 荒野を疾走するボロンゴによって、直ぐにそれが誰であるか分かった。

「あいつは!?」

 地面に突き立てた巨大なアックスを杖の様にして立っているのは、ルティアン議会場を急襲して来たヴェルクであった。
 フラムはヴェルクから少し離れた場所で二匹のボロンゴを止めさせた。

「何でお前がここに? 私達を待っていたみたいだけど」

 啖呵を切るフラムの口調には、明らかな怒りが見えた。

「城に戻って来たアローラが、ライオは甘ちゃんだから敵を逃しそうだって嘆いた末に、その尻拭いに行かないかって面倒臭い事言いやがってな。女一人に最初は乗り気じゃあなかったんだが、それがヴァルカンの弟子となりゃあ話は別だ」
「あの女、どうあっても私を殺したいみたいね」
「何処に行くのか分かんねえのに、期待せずに待ってたんだが、本当に来やがった。それも、嬉しいオマケまで連れてな」
「オマケ? 俺の事か?」
「ヴァルカンの弟子に神速のフリードとこの間の続きが出来るんだ。戻ったらアローラに礼を言わなきゃなんねえな!」 

 ヴェルクがアックスを一振りして地面に刃を突きつ立てると、そこから亀裂が幾つも走り、地面が大きく口を開きながらフラム達に襲い掛かる。
 フラムとフリードはボロンゴから飛び降りてこれを躱したが、二匹のボロンゴは開いた地面の裂け目の中に落ちて行ってしまった。

「人のボロンゴをよくも」
「あのボロンゴはお前のか? ヴァルカンの弟子が地魔獣遣いとは思えねえし、だとしたら特異質か」
「だったら何なのよ。あんたのせいでイグニアは━━あんたには謝りに行って貰うわよ」

 背中の剣を抜こうとしたフラムの前に、フリードが背を向けて立つ。

「あいつとは俺一人でやる」
「何のつもり?」
「今のお前が戦えば、ルティアン議会場の二の舞になるかもしれないだろう」
「そんなこと……」

 ないとは言い切れなかった。
 真剣な面持ちの遣り取りに、ヴェルクの笑い声が割って入る。

「噂通りのキザ野郎だな。俺としては二人同時に掛かって来られても構わねえんだけどな。まあ、確かに魔力の暴走だけはこっちも御免だ。それに、一人ずつ殺してもこっちには変わりはねえだろうしな」
「出来るか? 俺は強いぞ」
「あ、ちょっと!」

 駆け出したフリードは目にも留まらぬ速さでヴェルクに迫り、鞘から剣を抜きざまの一刀をヴェルクに浴びせる。
 ヴェルクも寸前の所でアックスの刃を盾にしてこれを防ぐ。

「危ねえ。本当に早えな」

 間髪入れずにフリードは斬り掛かる。
 これもアックスの柄を使って防ぐ。ただ、息も付かせないフリードの剣技に防戦一方だ。

「言うだけあってかなりのもんだ。少しでも気を抜いたらバッサリ行かれそうだな。ただ、そうでなきゃあやりがいがねえからな」

 ヴェルクがニンマリと笑みを見せたその時、フリードの足元の地中から、手を成した岩が突き出し、フリードの足首を掴んだ。

「何だ!?」
「さあ、どうする色男!」

 ヴェルクのアックスが大きく振り上げられた。
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