幼馴染の少女に触れたくても触れられない私は代わりに彼女を求めた……キスをしたのもそんな目で私を見上げるあんたのせいなんだよ

tataku

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第1章

第6話

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「奈々先輩も、深雪先輩のこと――好きなんですよね?」
「……」

 好きにも色々ある。

 だけど、それは――おそらく、そう言う意味なのだろう。

 私は、唇をきつく閉じる。

「私――負けるつもりはありませんから」

 その言葉を聞き、私は鼻で笑ってしまった。

「何ですか? 余裕ですか? 私なんて相手にならないって言うんですか?」

 ちび助は走って私の隣まで来ると、顔を覗き込み、そんなことを言った。

 そして、膨らました頬を見せつけてくる。

「まさか。そんなの、ちび助の勘違いだって」
「ち、ちび助!? そ、それ、私のこと言ってますよね!」

 つい、あだ名で呼んでしまった。
 
 たいした付き合いはないけど、背が低いことを気にしていることぐらい――なんとなく気づいている。
 
 そのため、ちび助の呼び名は心の中だけにしようと決めていたのだが。

「違う。それはあんたの気の所為だから」
「気の所為!? そんな訳ないです。絶対に私のことを言ってました! みんな直ぐに私をちび扱いしますけど、そんなことないですから。確かに今は学年で一番背が低いですし、小学生だといまだに勘違いする人がいますけど、そんなの今だけですから。私、最近は嫌いな牛乳を毎日呑んでいるんですからね!」

 未来のことは知らないが、今は小さいことに変わりないなら、ちび助で十分では?

 そう思ったけど、面倒臭いことになりそうなため、余計なことは言わないようにした。

「私が悪かった。私の勘違い。もう言わないから、許してよ」
「……本当ですか?」
「本当だって」

 心の中では言い続けるけど。

「あんたの頭頂部の御団子で十cm以上は身長を稼げてるんだから、気にしなくてもいいんじゃないの?」
「……それ、馬鹿にしてますよね?」
「まさか、そんな訳ないって」

 むしろ、わざわざ慰めてあげたのだ。

 感謝してもいいくらいだと私は思う。

 別に、されたくはないけど。

「……奈々先輩って、本当に意地悪ですよね? 私のこと――嫌いなんですか?」

 本人を目の前にして、嫌いと言えるほど嫌っているわけでもない。

「さっきも言ったけど、別にあんただけじゃない。深雪の前にいる私が少し特殊なだけだから。もしも、そんな私が気に食わないのなら、少しでいいから走れば? そうしたら、お互い顔を合わせずにせいせいすると思うんだけど」
「……それは、昔からなんですか?」
「何が?」
「深雪先輩の前で特殊な自分になったのは」
「そうかもね」
「なんかそれ……嫉妬してしまいます」

 意味が分からない。

 今の話のどこに嫉妬する要素があった?

「昔からってことは、私の知らない深雪先輩をたくさん知ってるってことですから」

 深雪との過去は私にとって何よりも大切なものだ。

 しかし、その過去は私が望む未来には繋がらないことを理解している。

「時々、私の知らないお二人のお話を聞くたび、嫉妬しまくってますからね!」

 ――そんなことを言えてしまう彼女に、私は嫉妬する。

「……深雪に、告白したの?」

 ちび助は眉をしかめた。

 そして、私の顔を覗きながら歩いていたが、普通の姿勢に戻った。
 
「そうですよー、告白しましたー。友達からだって言われちゃいましたけどね!」

 ちび助は、やけになっているのか素直に言ってくれた。
 
 深雪から口止めされていただろうに。

「女同士なのに?」
「それ、深雪先輩にも言われましたけど――好きになっちゃったんですから、仕方ないじゃないですか!」

 あまりにも単純明快な返答に、私は驚いてしまった。
 
 私が何年も悩み――足踏みしていた壁を、彼女は簡単に乗り越えている。

「だから、深雪先輩には早く私を好きになっていただいて、直ぐにでもエッチなことをしたいんです!」

 顔に似合わず、以外にも肉食系。
 
 流石は――元運動部。

 とても、ふざけた話だと思う。

 だから――ここは笑うべきところ。

 なのに、私は笑えそうにない。
 
 ちび助は私が望む未来に向けて一歩前に進んでいる。

 だから、私は取り残された気がして――彼女に嫉妬してしまう。

「何で、深雪のことを好きになったの?」

 こんなにも、人が溢れているのに――なんで、深雪を選んだのだろう。

 選んでしまったのだろうか。

「深雪先輩と奈々先輩だけの思い出があるように、私と深雪先輩にしかない記憶があるんですぅ。それは、私にとって宝物なんですから、絶対に言ってやりませんよーだ」

 ちび助はハムスターのように頬を膨らます。

 私と深雪は殆ど一緒にいるため、全く想像ができないし、人見知りの彼女とこんな短期間で仲良くなった――そんなちび助に、私は苛立ちを募らせた。
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