幼馴染の少女に触れたくても触れられない私は代わりに彼女を求めた……キスをしたのもそんな目で私を見上げるあんたのせいなんだよ

tataku

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第2章

第24話

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 本当に、色んな衣装がある。
 普段着ないような服ばかり。
 ナース服などの職業系の制服や、スポーツ等のユニフォーム、メイド服や巫女服、チャイナドレスまである。
 色違いだけでなく、バリエーションも豊富である。
 アニメ系の衣装もかなり充実しているし、ウィッグなどの小物もたくさんの種類が用意されていた。

「深雪先輩が好きな魔法少女の衣装もありますよ? ぜひぜひ着てくださいよー」
「そ、そんなの、私は絶対に似合わないから、着ないからね! ……でも、小春ちゃんが着ているのは見てみたいかも」

 最後、深雪は小声で恥ずかしそうに呟いた。

 女児アニメの魔法少女もののイベントに付き合わされたことがある。コスプレして演じる女優さんに熱視線を送り、普段聞かないような黄色い声援を送る深雪の姿を思い出す。

「深雪先輩ではなく、私が着るほうがいいんですか?」
「う、うん! 凄く見てみたいかも!」
「おー、まさかの好反応ですねぇ。もしや、この衣装でお泊りしたら、襲われちゃいます?」
「そ、そんなことはしないからね!」
「そんなはっきりと言われたら、傷ついてしまいますよぉ」
「あ、ご、ごめんね。そんなつもりでは――」
「では、襲ってくれるんですか?」
「それは……」

 ちび助は涙目でうるうるして見せる。

「か、かもしれない……かな」
「ではでは、早速この衣装を売ってくれないか交渉してきますね!」

 今すぐにでも駆け出しそうなちび助の頭を叩いた。

「な、何をするんですか!」
「いいから、落ち着け」

 私の言葉で、ちび助は剥れる。

 藤宮は少し離れた場所で他人の振りをしている。
 ――できれば、私もそっち側に行きたい。

「落ち着けと――言うんですか? この私に」

 何故か、ちび助は鼻で笑った。

「深雪先輩への愛が溢れて止まらないこの私に、落ち着けとは――片腹痛いですねぇ!」
「こ、小春ちゃん」

 深雪はあわあわとする。

 騒がしいせいか、ちらちらと視線を感じる。
 店内には人が多く、それなりに騒々しいが――ちび助の声はよく通る。つまり、一際うるさいと言うことだ。

「周りを見たら? あんまりうるさいと、店から追い出されるから」

 ぐぬぬーとうなりながらも、取り敢えずは大人しくなった。
 まるで猛獣を躾けるトレーナーになった気分だ。

 周りの視線を感じてか、深雪は身を縮こまらせる。

 藤宮は先程まで他人の振りをしていたが、こちらに向かってきた。

「水瀬は――プリキラ、好きなのかしら?」
「え!? あ、うん。その……可笑しいよね。こんな年になっても、まだ好きだなんて」

 プリキラ――小さい女児に人気の魔法少女ものアニメである。
 私たちが幼稚園の頃から始まり、爆発的に人気が出た。10年以上経つ今も、シリーズ化し、女児の心を掴んで離さない。

「別に、可笑しいだなんて思っていないわよ。私も見ているしね。――たまたまだけれど」

 そんなたまたまがあるのか?

「本当!? 藤宮さんも、プリキラ好きなの?」
「別に、好きではないわ。たまたま毎週見ているだけよ」

 そんなたまたまがあるのか!?

「でも、毎週みているんだね!」

 深雪が興奮し始めている。

「そうね、本当――たまたまだけれど」

 たまたまたまたま――本当、しつこいな。

 深雪は興奮した。

 彼女は珍しく熱く語り始めた。

 普段より声が大きめだが、元々が聞き取りにくいほど声が小さいため、それほどうるさくはない。周りの声のほうがよっぽど大きい。

 驚きなのは、藤宮が深雪の熱意にちゃんと応えてくれていることだ。

 無表情だが、嫌な顔はせず、頷いて聞いてくれている。
 そして、深雪からの質問にはしっかりと答え、話についていけていることが窺える。

「つ、ついていけません。まさか、深雪先輩があそこまでプリキラ好きだとは思いませんでした」

 もしかしたら、ヒーロー? 願望があるのかもしれない。

「あんたはプリキラ、見たことないの?」
「そりゃー小学校低学年までは見ていましたけど、正直もう、殆ど覚えていません」

 ちび助は悔しげに歯ぎしりした。

「帰ったら、絶対に全シリーズ追っかけます!」

 それは――無謀な決断だ。

「それにしてもまさか、藤宮先輩にまで嫉妬させられるとは思いませんでした」

 ちび助は無念そうに言葉を吐く。

 ――まぁ、気持ちは分からなくもない。

 でも――私は一体、どっちに嫉妬しているのだろうか?
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