幼馴染の少女に触れたくても触れられない私は代わりに彼女を求めた……キスをしたのもそんな目で私を見上げるあんたのせいなんだよ

tataku

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第2章

第25話

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 ちび助は深雪の腕を掴んで、揺らす。
 それで、深雪は正気に戻った。

「あ、えっと、ごめんね。少しだけ、熱く語っちゃったかも……しれないよね」

 深雪はうなだれると、藤宮に対して謝罪した。

「別に、構わないわ」

 と、彼女にしては珍しく温かなお言葉。

「私は構わなくなんかないですよー」

 ちび助は上目遣いで、深雪を見上げる。

「えっと……どうしてかな?」
「だってー、私の前でいちゃいちゃしてぇ、嫌がらせのように見せつけてくるんですからー。きっと、嫉妬した私を見てにやにやするつもりですね!」
「そ、そんなつもりなんてないからね」
「じゃあー、どんなつもりなんですかー」

 ちび助の言葉で、深雪は困惑した顔をする。

「桜井」

 藤宮はちび助の、名字を口にした。

「あなたはさっさとその服を着て、水瀬に見せたら? がっかりされるのは早めに済ませた方がいいわよ。そうしたら、その服を買う必要がないと分かるのだから」

 その言葉に、ちび助はムスッとした。深雪の腕から手を離し、何故か私の方に顔を向けた。

「藤宮先輩は頑なに、私に名前を呼ばれることも、呼ぶことも許してくれませんでした。それは何故か――奈々先輩は分かります?」

 話の流れが理解できない。

「さぁ」

 私の態度を見て、ちび助は何故か笑みを浮かべる。
 
「それはですねぇ、藤宮先輩は名前を呼ぶのも、呼ばれるのも、奈々先輩からだと決めて――」

 驚くべき速さで、チビ助の口が藤宮の手により塞がれる。

「あなたの妄想を垂れ流さないでくれるかしら?」

 藤宮は笑っている。笑っているが――なんか、怖い。

 ちび助は自力で抜け出すと、深雪の後ろに逃げ込んだ。そして少しだけ顔を覗かせると、二人は睨み合う。

 深雪は戸惑った表情で、体を震わせた。

「小春、いいからさっさと着替えてきたら?」

 私の言葉に、不満そうにしながらも、深雪の手を掴んで更衣室の方に向かった。

「か、勘違いしないでよ」

 藤宮は顔を向けず、そんなことを言った。

 正直、何のことを言っているのかが分からない。そのため、無難に返事をしておいた。

 しばらく、無言が続く。

「……二人っきりにさせていいのかしら?」

 その言葉に、私は苦笑してしまう。

 二人だけでどこかへ遊びに行っていることも知っているし、二人だけのメッセが大量に積み重なっていることも知っている。
 しかし、私は何もせずに諦観するだけ。

「いいんだよ、別に」

 二人が付き合うと分かっても、私は何もせずにただ苦笑するだけなのだろうか?

 藤宮はちらりと私の方に視線を向けたが、何も言わずにすぐに背けた。



 ちび助はコスプレしたまま、恥ずかしげもなく深雪と一緒に衣装選びをしている。

 完全に二人だけの世界だ。

 私と藤宮はそれを遠巻きに眺めている。

「藤宮はプリクラしたことある?」
「……あなたは、あるの?」
「まあ、一応は」

 たった一度だけの話だが。

「……そう」

 冷たい反応だ。

「一緒に撮らない?」
「……何故?」
「何故って――一緒に撮りたいから?」
「何故、疑問系なのよ」

 藤宮は私を見て、眉を顰める。

「上手い言葉が見つからなかっただけ。一緒に撮りたいって気持ちに嘘はないから」

 そう言って、私は藤宮の傍に寄る。

「駄目なの?」
「……別に、駄目って訳じゃないわ」

 藤宮はそっぽ向く。

「じゃあ、一緒に撮るってことで。その前に、せっかくだから衣装も一緒に探そうか」

 私は藤宮の服の裾を引っ張った。

「分かったから、裾は引っ張らないでくれる?」

 手を離しても、藤宮は私の後を歩いてくれる。

「勘違いしないでよ」
「何を?」
「こうやって、あなたと一緒に衣装を選ぶのも――既にお金を払ってしまったからよ」
「分かってるから。それでも、私は嬉しいけどね」

 私がそう言うと、藤宮は下を向く。

「……馬鹿」

 何故か、罵倒されてしまった。

 とても、理不尽な話だ。
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