異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん

文字の大きさ
38 / 70

38話 もう元には戻れない、悪意に取り込まれたフィンレイ

しおりを挟む
「お前……」

「動くな!!」

 アンドリューさんたちに、動くなと言う人物。

 え? 何? 私は状況が呑み込めず、思わず動いて周りを確認しようとしたよ。だけど、ぐいっと体を強く締められて、危機を感じて動くのをやめる。アンドリューさんも、手で軽く私に、動くなと合図してきたし。

 ただ、やっぱり周りの状況と、自分の状況が気になったから、今度は聞こえてくる音で、状況判断をしようと思ったんだけど。そんな私に聞こえてきた、さっきの声。

「くそっ、くそっ、お前たちのせいで、なぜ俺がこんな惨めな思いを!!」

 音に集中したおかげか、しっかりと声を聞くことができてね。そうして、あることに気づいたんだ。この声、聞いたことあるって、私とピィ君、そしてミッケがよう注意人物に指定している、あの人物の声に似ているって。

 それから、アンドリューさんに群がっているピィ君とミッケが、私の後ろに向かって、その人物にする、いつもの威嚇をしていたんだ。あー君たちの威嚇は初めて見たよ。

 相手を刺激しないように、私はゆっくりと、振り向ける範囲で後ろを向いた。何せ私は今、誰かに抱え込まれていて、体が動かし辛かったから。

 そうして振り返った私の目に映った、私を抱え込んでいる人物は……。人間の方の第1騎士団、副団長のフィンレイ・ストーンフォードだった。

 何でフィンレイがここに? それに、何で私のことを抱え込んでいるの?

「おい、お前、どういうつもりだ? リアを離してもらおうか」

「まったくです。いきなり現れたと思ったら。何故こんなことをしているのかは分かりませんが、早くリアを離してもらいましょうか」

「皆、今は動くな」

 たぶん、アルバートさんの今の言葉は、私たちというよりも、あー君たちに向かって言ったんだと思う。今、あー君たちはそろそろと、私の方へ来ようとしていたんだ。それが、アルバートさんの言葉で止まったからね。

 と、それよりも、何でフィンレイがここにいるんだ? 相変わらず黒い物が……って。私は息を呑んだ。

 初めて会った時、フィンレイには、黒い何かがまとわりついていて、それから体から煙みたいな物も出ていて。とても気持ち悪く、ピィ君と一緒に警戒をした。

 その次は、ついこの間。みんなが獣衰病にかかった時。あの時は、フィンレイの姿がほとんど黒い物に覆われていたから、姿を確認するのが大変で。それでも何とか見える状態ではあった。それからミッケに注意をされて、私たちはさらに警戒することに。

 そして、今は……。完璧に姿が見えなくなっていたよ。こう、黒い物がさらに進化して、黒い炎みたいになっていてね。炎人間? みたいになっているの。それで赤い大きな目で、私たちを見ているんだ。

 それでハッ!! とした私。急いで掴まれている場所を確認する。だって黒い物が、私にも付いたら嫌でしょう? こんな得体のしれないものがさ。

 ただ、これに関しては、すぐにホッとしたよ。どうなっているのかは、分からなかったけど。黒い炎が私の体に触れようとすると弾かれて、散っていっていたんだ。

「さぁ、早くリアを離せ」

「今ならまだ、命までは取らずに済みますが、これ以上問題を大きくするのならば、どうなるか分かりませんよ」

「勝手に、俺に口をきくんじゃない! この野蛮人が!!」

「「!?」」

「え?」

 私だけじゃない、アンドリューさんたちも全員、一瞬だったけど驚いた顔をした。そりゃあ、そうもなるよね。

 私は、黒い炎に中身が本当にフィンレイなのか、どうにか確認できないかと、黒い炎を覗き込む。だけど、隙間も薄くなっている箇所もなく、確認することができなかったよ。

 今の声は、確かにフィンレイだった。だけど口調が……。今までのフィンレイとは、全く別物だった。あんな、乱暴な口調じゃなかったし、野蛮人なんて言葉を使う人じゃなかった。ヒルドレッドさんほど、丁寧じゃないけど、誰にでも丁寧に話していたはず。

「くそ!! くそ!! お前たち野蛮人のせいで!! あのまま、死んでいればよかったんだ!! それなのに、全員回復しやがって!!」

「!? ……その言い方。俺たちを病気にかからせたのはお前か? フィンレイ・ストーンフォード」

「お前たちさえあのまま死んでいれば、今頃俺は!!」

「会話することもできないみたいですね。一体何があったのか……。話は後でゆっくりと聞かせてもらいましょう。ですが今はまず、リアを返していただかないと」

 アンドリューさんたちが、少しだけ動いた。だけどその瞬間、フィンレイが魔法攻撃をしたんだ。ヒルドレッドさんたちみたいな、綺麗な魔法じゃないの。初めてみる禍々しい魔法。
 ライトノベルや漫画に闇魔法って出てくるけど、その闇魔法を、もっともっと禍々しくした感じかな。

 その攻撃を、なんとか避けるアンドリューさんたち。ふぅ、ピィ君とミッケ、あー君たちも無事だったよ。すると、そんなミッケやあー君たちが、

『あいつ、取り込まれた』

『悪に取り込まれた』

『もう、戻れない』

『でも時々、元に戻る』

『こいつはどうか分からない。でも、色が濃いから、たぶんもう無理』

『リア、危ない。早く助ける』

 そう言ったんだ。

「どういうことだ」

『悪意が、あの人間を取り込んだ』

『前は、取り込まれる前だったじょ。でも今は取り込まれたじょ。もう、体も顔も見えない、全部が真っ黒だじょ。悪意に囚われたんだじょ。色が薄くなっても、もう元には戻れないじょ』

「悪意……か。そうか」

「何だって?」

「妖精たちが、人や他の種族の悪意を感じ取ることは?」

「もちろん知っています」

「奴は、その悪意に取り込まれたようだ。ミッケたちには、奴が真っ黒に見えているらしい」

「それで、性格まで変わったか?」

「どうだろうな」

「くそっ、くそっ!! お前たちのせいで!! 何故なのです! 何故こんな仕打ちを!! 私を分かってくれていたのではないのですか!? 私ほど、あなたの望みに答えられる者はいないはずだ!!」

「はぁ、あれは、もう意識がまともに働いていないか……。このままだとリアが危ない。少々危険は伴うが、強引にでも行った方がいいな。ヒルドレッド、アルバート、いいか」

「ええ、その方が良さそうです」

「分かった」

 うんうん。今のフィンレイは、絶対におかしいもん。少しくらい怪我しても良いから、フィンレイをどうにかしてください。

 と、私もアンドリューさんの考えに、納得していたんだ。だけどね……。そう考えた瞬間、ブワッ!! とフィンレイの黒い炎が広がって。アンドリューさんたちを襲おうとしたの。

「あぶない!!」

『ぴぃ!!』

『危ないんだじょ!!』

 さっきのアルバートさんの話。アンドリューさんたちは黒い物が見えていないから、攻撃されたことに気づかなかったんだ。

 そんなアンドリューさんたちを、ピィ君とミッケ、あー君たちが、押したり魔法を使って助けてくれて、その場に膝をついたアンドリューさんたち。

「お前か、それともこの子供か。どちらが、こんな野蛮人を助けた!! ……いや、どりらでも良い。これだけでも連れ帰り調べ上げ、もし何も能力がなければ、私の実験体にしてやる!!」

 そう、フィンレイが言った途端、フィンレイの黒い炎が直接、私に付くことはなかったけれど。それでも数秒もしないで、私のことを完全に包み込み、私は周りが全く見えなくなって。ピィ君とミッケ、みんなの声だけが聞こえる状態になっちゃったんだ。

「ぴぃくん!! みっけ!! あんどりゅーしゃん!!」

「リア!! くそっ!!」

「これ以上、近づけない!? なぜ!?」

「チッ!!」

「これは連れて行く!! いいか、覚えておけ。次こそは、お前たち野蛮人を、全て必ず消してやる!!」

「ぴぃくん!! みっけ!!」

『ぴぃぃぃっ!!』

『リアじょ!!』

 みんなの声が聞こえなくなる。そして数秒後、私を包んでいた黒い炎が離れていくと……。

「……まちのしょと?」

 私の前の方に、街を守っている壁が見えて。一瞬の間に、私は街の外へ出ていたんだ。そして……。

「チッ、これしか移動できないとは。これも全てお前たちのせいで」

 隣には少し黒い炎が治った、顔色の悪いイラついている、フィンレイが立っていたよ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆1/19〜1/27まで、予約投稿を1話ずつ行います。 農家の四男に転生したルイ。   そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。  農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。  十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。   家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。   ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる! 見切り発車。不定期更新。 カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

グラサン幼女の異世界とらべるっ! ~最強の【魔眼】を宿す転生幼女は、もふかわ神獣を連れてスローライフな旅路を楽しみます~

空戯ケイ
ファンタジー
社畜OL、水城愛璃(みずきあいり)は、女神のうっかりミスにより25歳の若さで死んだ。 お詫びとして女神が提案したのは、オッドアイの幼女ボディへの転生。 そうして幼女の姿で異世界転生を果たしたアイリだったが、 特異体質により『感情が高ぶると暴発する魔眼』が宿っていることが発覚! しかも両目!? それを封じるため、女神から与えられたユニークスキルは、『神のサングラス』。 このサングラスをかければ、魔眼の暴発を抑えられるらしいけど……常にグラサンかけてる幼女とか怪しすぎじゃない!? だけど、とある"激レア魔道具"があれば 、なんと魔眼を完治できるらしい。 ならばその魔道具を手に入れるため、異世界を巡るしかないっ! さらに旅の道すがら、もふもふフェンリルや忍者少女、特異スライムを仲間にし、珍道中はさらに加速していって――!! まったりのんびりをモットーに、たまに魔物や刺客に襲われちゃう。 【グラサン幼女】の破天荒な異世界旅が始まる! ※更新は不定期です。

【書籍化決定!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆皆様のおかげで、書籍化が決定致しました!3月中旬頃、発売予定です。よろしくお願い致します。 ※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

王宮メイドは今日も夫を「観察」する

kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」 王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。 ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。 だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……? ※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

元社畜悪役令嬢、辺境のボロ城を全自動ボタニカル美容スパに大改造して引きこもる ~前世コスメで冷徹公爵を完治させたら溺愛されました~

季未
恋愛
「貴様のような悪逆非道な女は、極寒の辺境へ追放だ!」 建国記念の夜会で王太子から婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロッテ。 しかし、彼女の中身は前世でブラック企業に殺された過労で過労死したマーケターだった! (激務の王妃ルート回避!? しかも辺境は誰にも邪魔されないブルーオーシャン! 最高のフリーランス生活の始まりじゃない!) 理不尽な追放を究極のホワイト・スローライフへのパスポートだと歓喜した彼女は、あてがわれた辺境のボロ城を、前世の「DIY・スマートホーム知識」と「土・水魔法」を駆使して爆速で大改造! 隙間風の吹く部屋は、一瞬で「床暖房完備の全自動温水スパ」へ。 辺境に自生する雑草からは「極上ボタニカルコスメ」を開発し、自らも絶世の美女へと変貌していく。 さらに「お前には干渉しない」と白い結婚を突きつけてきたはずの、呪いで顔に火傷を負った氷の公爵に特製マッサージと美肌治療を施したところ……。 「お前が作ったこの空間と、お前自身が……俺のすべてだ」 冷徹だったはずの公爵様が、極上の癒やし空間と彼女の手技で完全に骨抜きにされ、異常なまでの過保護・溺愛モードに突入!? 現代マーケティングと美容チートで辺境を超高級スマート・リゾートへと再生させ、かつて自分を追放した王太子たちを大後悔させる! 爽快&極甘な、異世界リゾート経営×溺愛ファンタジー、堂々開幕!

処理中です...