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「ローゼリカ・ミュンバル!貴様との婚約を破棄する!!!」
それは、学園の創立記念の式典が終わり、ホールにて在校生やその親たち、卒業生などが参加するパーティーが始まろうかというときだった。
王太子リュシアールは腕にナナリーを抱き、後ろにフランツ・ヴィルム・キースを付き添わせ、
ホールの国王が座る玉座へ向かう階段に上り、声を張り上げた。
王立学園にはアモーナ国の貴族子女は例外なく入学する。つまりその在校生や親たち、卒業生などが集うこの創立記念パーティーは国中のほぼすべての貴族が参加していっても過言ではない。
なお、国王と王妃も参加予定であるが、公務が押し、まだ到着していなかった。
パーティーでは婚約者がいるものは婚約者からのエスコートを受けて参加していたのだが、
リュシアールはローゼリカを迎えに行かなかった。
そのため、ローゼリカはひとりで参加しており、後ろにはマリオンが付き添っていた。
「ローゼリカ、兄上がすまない…。」
「いいのよ、マリオン。最近のリュシアール様の様子を考えると予想は出来たことだわ。それに私にはあなたが側にいてくれる。」
「俺はローゼリカの側にいることしか出来ないからな…。」
―本当はエスコートが出来たらよかった、でも聖騎士であり婚約者ではない俺は後ろで付き添うことしかできない。
マリオンは終始申し訳なさそうにしていたが、ローゼリカは寂しさはあるものの予想しうる状況であったがために落ち着いていた。
そんな会話をしているとき、声をかけられた。
「ローゼリカ嬢、リュシアール様がお呼びです。階段前にいらっしゃいますのでご案内します。」
そう言って声をかけてきたのは、生徒会の1人であるフランツだった。
ローゼリカはエスコートもしなかったのに、呼び寄せるとはどういうことなのかと思ったが、ここで言い返しては騒ぎになりそうだと思い、大人しく着いていくことにした。
そうして階段前に着き、リュシアールと顔を合わせたと思ったら、挨拶もなしにリュシアールは階段を上り、
声高らかに婚約破棄を宣言したのだった。
「婚約破棄とはどういことでしょうか、リュシアール様?」
なぜこんなところで、そのようなことをとローゼリカは戸惑ったが、表情には出さず聞き返した。
「そのままだ、ローゼリカ。君は罪を犯している。そのような者は王妃にはふさわしくない。よって婚約破棄の上、国外追放を命じる!」
周囲がざわついた。学園での噂は、貴族全体に広がっていた、だがしかし、このような愚かな行動をとるなど思っていたなかったのだ。
「リュシアール様が婚約を解消したいのならばわたくしは応じるつもりでした。ですが罪とはどういうことでしょうか?」
「ふん、白々しい!大人しく許しを乞えばいいものを。それに解消ではない、破棄だ。すべて貴様が悪いのだ。いいだろう、今宵、皆の前で罪を暴いてやる!」
ローゼリカは悲しかった、こんな物言いをするような人じゃなかったのに、こんな愚かなことをしでかすような人じゃなかったのに、でも悲しんでる場合ではない、ここで決着をつけるべきなのだと自身を鼓舞した。
「貴様は、私の寵愛を受けるナナリーの命を狙った!階段から突き落とし、その後も命を狙い続けた!」
「ナナリーはローゼリカ嬢から階段から突き落とされた。幸い、怪我は軽いものでしたが一歩間違えれば命にかかわったかもしれない。あの時のナナリーは震えていて本当に可哀想だった。治療した私が言うんだ、確かに階段から転がり落ちた時に出来る傷だった!」
「僕がナナリーを家に送る途中、人ごみの中ナナリーは誰かから押され、危うく馬車に引かれそうになった!私がついていながら怖い思いをさせてしまった。」
「ついには、ナナリーは暴漢に襲われそうになった!偶然、通りがかった俺がなんとか撃退したが捕まえることは出来なかった…。」
リュシアールに続き、ヴィルム・キース・フランツも次々に言う。
ナナリーはリュシアールに縋り付き俯いている。
「それが、なぜわたくしのせいに?ナナリーがそんなことに遭っていたなんて知りませんでしたわ。」
「ナナリーが階段から突き落とされたのは、ローゼリカから私たちとの距離が近い、馴れ馴れしいと言われた日の放課後だ!そして、その日、階段から突き落としたのはローゼリカだと証言があるんだ!それでもナナリーが私たちから離れないから嫉妬し、さらに罪を重ねた!!!」
「わたくしはそんなことしておりませんわ。ナナリーが階段から突き落とされたというその日、学園が終わりましたらすぐに家に帰りましたのよ。そして、さらに言われたようなことも一切わたくしは知りません。証拠もございますわ。」
「そんなわけないだろう!!家に帰ったのだって本当のことかわからないではないか!証拠なんて貴様や身近なものの証言では意味ないぞ!」
「ナナリーやリュシアール様の様子がおかしくなって来た頃、あらぬ疑いをかけられぬよう、陛下にお願いし、暗部にわたくしの行動を見張らせておりましたの。もちろんすべて陛下に報告するようになっておりますわ。ですから、わたくしはそのようなことをしていないと断言いたしますわ。」
ローゼリカは凛としていた。愛し子と呼ばれた彼女はいつだって笑顔で周囲から大事に守られている女の子だった。でもローゼリカはリュシアールやナナリーが変わってしまい、悲しんだがそこで終わるだけではない、自身の力でなんとかしようとする芯の強い女性となっていた。
「そんなもの、でたらめだ!君が報告をでっちあげるよう差し向けることだって…!」
「暗部は王である私に忠誠を誓っている。どんな権力にも屈しないし、たとえ愛し子であろうとも公平に対応する。それを否定することは国王を侮辱するということだ。確かに、ローゼリカは聖女を害そうなど一切しておらぬ。」
リュシアールの言葉を遮ったのは、アモーナ王国国王ルシアン。
リュシアールたちの騒ぎに気を取られており、パーティーの参加者は王と王妃が来たことに気付かなかった。
みな慌てて、一斉に臣下の礼を取った。
「皆の者、楽にせよ。…それで、リュシアール。何をしておるのだ?」
王はリュシアールに厳しい目線を向けた。
「陛下!ローゼリカは罪を犯しています。ですから、婚約破棄と国外追放を言い渡したのです!」
「リュシアール、最近お前の様子がおかしいと聞いてはいたがここまでとは…。聖女を害したのはローゼリカではない、暗部からの報告書もある。ローゼリカは一切関与しておらぬよ。して、証言者とはだれなのだ?まさか聖女本人ではなかろうな?それは証拠にはならんぞ。罪とは聖女を害そうとしたそれだけか?」
王は厳しい態度を崩さず、リュシアールに言った。
それは、学園の創立記念の式典が終わり、ホールにて在校生やその親たち、卒業生などが参加するパーティーが始まろうかというときだった。
王太子リュシアールは腕にナナリーを抱き、後ろにフランツ・ヴィルム・キースを付き添わせ、
ホールの国王が座る玉座へ向かう階段に上り、声を張り上げた。
王立学園にはアモーナ国の貴族子女は例外なく入学する。つまりその在校生や親たち、卒業生などが集うこの創立記念パーティーは国中のほぼすべての貴族が参加していっても過言ではない。
なお、国王と王妃も参加予定であるが、公務が押し、まだ到着していなかった。
パーティーでは婚約者がいるものは婚約者からのエスコートを受けて参加していたのだが、
リュシアールはローゼリカを迎えに行かなかった。
そのため、ローゼリカはひとりで参加しており、後ろにはマリオンが付き添っていた。
「ローゼリカ、兄上がすまない…。」
「いいのよ、マリオン。最近のリュシアール様の様子を考えると予想は出来たことだわ。それに私にはあなたが側にいてくれる。」
「俺はローゼリカの側にいることしか出来ないからな…。」
―本当はエスコートが出来たらよかった、でも聖騎士であり婚約者ではない俺は後ろで付き添うことしかできない。
マリオンは終始申し訳なさそうにしていたが、ローゼリカは寂しさはあるものの予想しうる状況であったがために落ち着いていた。
そんな会話をしているとき、声をかけられた。
「ローゼリカ嬢、リュシアール様がお呼びです。階段前にいらっしゃいますのでご案内します。」
そう言って声をかけてきたのは、生徒会の1人であるフランツだった。
ローゼリカはエスコートもしなかったのに、呼び寄せるとはどういうことなのかと思ったが、ここで言い返しては騒ぎになりそうだと思い、大人しく着いていくことにした。
そうして階段前に着き、リュシアールと顔を合わせたと思ったら、挨拶もなしにリュシアールは階段を上り、
声高らかに婚約破棄を宣言したのだった。
「婚約破棄とはどういことでしょうか、リュシアール様?」
なぜこんなところで、そのようなことをとローゼリカは戸惑ったが、表情には出さず聞き返した。
「そのままだ、ローゼリカ。君は罪を犯している。そのような者は王妃にはふさわしくない。よって婚約破棄の上、国外追放を命じる!」
周囲がざわついた。学園での噂は、貴族全体に広がっていた、だがしかし、このような愚かな行動をとるなど思っていたなかったのだ。
「リュシアール様が婚約を解消したいのならばわたくしは応じるつもりでした。ですが罪とはどういうことでしょうか?」
「ふん、白々しい!大人しく許しを乞えばいいものを。それに解消ではない、破棄だ。すべて貴様が悪いのだ。いいだろう、今宵、皆の前で罪を暴いてやる!」
ローゼリカは悲しかった、こんな物言いをするような人じゃなかったのに、こんな愚かなことをしでかすような人じゃなかったのに、でも悲しんでる場合ではない、ここで決着をつけるべきなのだと自身を鼓舞した。
「貴様は、私の寵愛を受けるナナリーの命を狙った!階段から突き落とし、その後も命を狙い続けた!」
「ナナリーはローゼリカ嬢から階段から突き落とされた。幸い、怪我は軽いものでしたが一歩間違えれば命にかかわったかもしれない。あの時のナナリーは震えていて本当に可哀想だった。治療した私が言うんだ、確かに階段から転がり落ちた時に出来る傷だった!」
「僕がナナリーを家に送る途中、人ごみの中ナナリーは誰かから押され、危うく馬車に引かれそうになった!私がついていながら怖い思いをさせてしまった。」
「ついには、ナナリーは暴漢に襲われそうになった!偶然、通りがかった俺がなんとか撃退したが捕まえることは出来なかった…。」
リュシアールに続き、ヴィルム・キース・フランツも次々に言う。
ナナリーはリュシアールに縋り付き俯いている。
「それが、なぜわたくしのせいに?ナナリーがそんなことに遭っていたなんて知りませんでしたわ。」
「ナナリーが階段から突き落とされたのは、ローゼリカから私たちとの距離が近い、馴れ馴れしいと言われた日の放課後だ!そして、その日、階段から突き落としたのはローゼリカだと証言があるんだ!それでもナナリーが私たちから離れないから嫉妬し、さらに罪を重ねた!!!」
「わたくしはそんなことしておりませんわ。ナナリーが階段から突き落とされたというその日、学園が終わりましたらすぐに家に帰りましたのよ。そして、さらに言われたようなことも一切わたくしは知りません。証拠もございますわ。」
「そんなわけないだろう!!家に帰ったのだって本当のことかわからないではないか!証拠なんて貴様や身近なものの証言では意味ないぞ!」
「ナナリーやリュシアール様の様子がおかしくなって来た頃、あらぬ疑いをかけられぬよう、陛下にお願いし、暗部にわたくしの行動を見張らせておりましたの。もちろんすべて陛下に報告するようになっておりますわ。ですから、わたくしはそのようなことをしていないと断言いたしますわ。」
ローゼリカは凛としていた。愛し子と呼ばれた彼女はいつだって笑顔で周囲から大事に守られている女の子だった。でもローゼリカはリュシアールやナナリーが変わってしまい、悲しんだがそこで終わるだけではない、自身の力でなんとかしようとする芯の強い女性となっていた。
「そんなもの、でたらめだ!君が報告をでっちあげるよう差し向けることだって…!」
「暗部は王である私に忠誠を誓っている。どんな権力にも屈しないし、たとえ愛し子であろうとも公平に対応する。それを否定することは国王を侮辱するということだ。確かに、ローゼリカは聖女を害そうなど一切しておらぬ。」
リュシアールの言葉を遮ったのは、アモーナ王国国王ルシアン。
リュシアールたちの騒ぎに気を取られており、パーティーの参加者は王と王妃が来たことに気付かなかった。
みな慌てて、一斉に臣下の礼を取った。
「皆の者、楽にせよ。…それで、リュシアール。何をしておるのだ?」
王はリュシアールに厳しい目線を向けた。
「陛下!ローゼリカは罪を犯しています。ですから、婚約破棄と国外追放を言い渡したのです!」
「リュシアール、最近お前の様子がおかしいと聞いてはいたがここまでとは…。聖女を害したのはローゼリカではない、暗部からの報告書もある。ローゼリカは一切関与しておらぬよ。して、証言者とはだれなのだ?まさか聖女本人ではなかろうな?それは証拠にはならんぞ。罪とは聖女を害そうとしたそれだけか?」
王は厳しい態度を崩さず、リュシアールに言った。
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