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姫様にはなれない
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『姫さま』
と呼ばれることに彼女が違和感を覚えたのは妹ができてからだった。
侍女たちは第一王女である彼女を美しく着飾ることが好きで、でも長いリボンも重ねられたスカートも木に登ったり茂みに隠れることに向かないから彼女は嫌いだった。
外へ出たがる彼女と違って屋敷の中での人形遊びが好きな妹をみて『姫さま』と言うものの正しいあり方を知った彼女はただしい『姫さま』は妹に任せた。弱く美しく守られるのが姫ならばそういったものは彼女にはむいていない。
大声で話し、虫やカエルなどに怯えず外で跳ね回るのが好きな彼女は第二次性徴期が来るまで男の格好をして過ごすことが多かった。
乳母は嘆き悲しんだが念願の男子を授かったばかりで、さして彼女に興味のない両親は怪我をしない程度ならと勝手を許してくれた。王族としての女性としての最低限の教育は義務としてこなしたが幸い隣国との関係も良好で長いこと戦争もなく暇を持て余し気味な騎士たちに紛れ体を鍛え剣を扱い馬に乗り野をかけた。
彼女がまだ騎士見習いをしていたゲオハルトと出会ったのはその頃だった。
背の低い目付きが悪い生意気そうな少年だという第一印象はその後不器用で優しいその性格を知ることになり消えた。不器用だから言葉が足りない。目付きが悪いのは相手をじっと見る癖があるから。そうとわかれば彼女はゲオハルトを年の近い遊び相手として手放さなかった。
だが時が経ちその視線を受けると彼女の胸がいつもと違う鼓動を刻むのに気づいたのはゲオハルトの背が彼女をゆうに越した頃だった。
友達と呼びつづけるには立場も違う。だからなおのこと彼女は彼と対等であるように振る舞った。
御前試合でもひょろりと背だけが高い少年が彼女に怪我をさせないようにと遠慮がちに木剣を打ち合わせてくるのを、なんども足技で転がしては悔しがらせてみせた。
力を競えば負けるに決まっている、相手の力をうまく利用するようにと教えてくれた騎士団長たちが試合場のわきで二人を眺めて笑っていた。
彼女は立場としては『姫』ではあったが彼が守るべき存在としての『姫』では無いと振る舞っていたし周りもそう扱った。同じ場所で汗を流し笑い合うことのできる友達、それが彼女達の作り上げた幻とはわかっていても、彼女たちはそれに縋ることができるくらいはまだ子供だったのだ。
隣で笑いあい、頬で風を受けながら野を馬で駆けた日々が過ぎ、ゲオハルトが彼女の近衛として付き従うようになっても彼女達はほんとうの意味で『姫』と『騎士』ではなかった。
自由奔放を絵に書いたような日々が終わりを告げたのは彼女達の国のある大陸の遠くの小国が戦を始めてからだった。またたく間に周辺国をやぶり巨大な帝国を作った王は大陸の端にある小国である王国にさして興味がなかったらしい。
後宮へ姫を差し出せば属国としての立場を認める。そう鷹揚な態度を示した帝王に国王も従った。
王族とはそういうものだ。婚姻に個人の意志は必要ない。
たった一人、国から出されることが決まった第一王女。
彼女は父からできることなら寵愛をかちとり、出来ないならば国に迷惑をかけぬよう騒ぎをおこすなと言い含められ国を離れることになった。
近衛騎士として帝国への彼女の護衛隊に参加したゲオハルトとは堀にかこまれた巨大な城の跳ね橋を渡る前で別れを告げることになった。
泣くことは許されない、第一王女として能面のような顔を保ち騎士たちへねぎらいの言葉を告げ城へとむかう彼女。彼の視線が彼女の後ろ髪をチリチリと焦がすようだったが振り向くことはしなかった。
二度と会えない彼に見せるのが『姫』としての自分であることを思うと彼女の鼻の奥がツンとしたが己一人の命で国の平和が買えるなら安いもの、帝王へ平伏しながら挨拶を済ませ能面を崩すことはしなかった。
(民もお前も守ってみせる)
「長旅ご苦労そのうちまた声をかける」
鷹揚に声をかけられ顔も見ずに夫との対面は終わった。
小国の姫がまた一人後宮へ入れられただけのこと。度々起こる事なので彼女のためにこれといった宴も開かれず城の後ろに作られた巨大な後宮へと足を踏み入れた。
後宮へ集められたのは各属国の王族の姫、美貌の貴族の子女たち。1年かかっても伽の番が回らないほどたくさんの若い女がひしめく広大な後宮は彼女の常識が一つも通じない世界だった。
青空のもと剣を振り回していた彼女が女同士のお茶会での権力争いなど出来るわけもない。そうそうに後宮の女達の争いにさじを投げ我道を歩んでいた彼女は帝王の留守中に意地悪な他国の姫の差し金で涸れ井戸に落とされた。
『かわいそうな猫が井戸の底で鳴いているようなのです』
そう彼女に告げた下働きは今思えば極度に緊張していた。
あれは脅されていたのだと今更ながら気づく。
井戸を覗き込んだところを後ろから突き飛ばされしたたか頭を打ったらしい。
彼女は温かい何かが額から流れ耳へと伝わっているのを感じた。
「まずいな・・・・」
誰の仕業かはわからないが『姫さま』としての技能に優れた彼女たちは異物を排除しただけ。
美しく教養のある女性たちの中で他人の目を気にせずへつらわない彼女が気に食わなかったのだ。
女性同士の付き合い方を知らなかった故の敗因だった。
井戸の底に横たわったまま彼女は心当たりを探る。
『私を拒んだこと、後悔させて差し上げますわ』
彼女に向かってそう叫んだのは確か南の国の姫だったか。
その姫は一年中夏の続く国のものらしくつややかな黒髪に見るものを虜にするような肉感のある肢体をしていた。自分の薄っぺらい筋肉質の身体と比べると同じ女であることが不思議なほどであり、彼女は姫をついつい不躾に眺め回してしまった。
その彼女の視線が気に喰わなかったのかその後やたらと茶会でからまれるようになり、ついには今後一番の友だちにしてやるから足の甲に口づけをしろと言われたので拒んだのだ。
それともある日の夜声をかけてきた『妾のことお姉さまと呼ばせてあげるわ』といった北の国の姫の誘いを断ったのがまずかったのか。
その他にも色々と彼女を嫌っていそうな姫たちの顔が頭に浮かんだがズキズキと頭が痛み思考がまとまらない。
「今回は一敗か・・・・」
だが負けたからといってこのまま井戸の底で朽ちるのもの彼女のプライドが許さない。
幸い高さ自体はそこまでないように見える。手足がおれていなければよじ登ることができるだろうと丸く切り取られた青い空をみて見当をつける。
ちょっと休んでから戻ればいい。
そう思い目を閉じかけた視界に一瞬鳥の影が見えた気がした。
彼女はゲオハルトの飼っていた鷹のキィのことを思いだした。急に寂しさが胸を締め付ける。
(また一目でも会いたいなど、女々しいことだ)
目を閉じているのになんだか急にグラグラと意識が揺さぶられ渦の中へ放り込まれるような感覚に気持ちの悪さを覚える。
「ゲオ・・・・」
照れたような優しい笑顔が彼女の瞼の裏にうかんで消えた。
頬を滑り落ちる涙の感触が彼女の前世での最後の記憶になった。
と呼ばれることに彼女が違和感を覚えたのは妹ができてからだった。
侍女たちは第一王女である彼女を美しく着飾ることが好きで、でも長いリボンも重ねられたスカートも木に登ったり茂みに隠れることに向かないから彼女は嫌いだった。
外へ出たがる彼女と違って屋敷の中での人形遊びが好きな妹をみて『姫さま』と言うものの正しいあり方を知った彼女はただしい『姫さま』は妹に任せた。弱く美しく守られるのが姫ならばそういったものは彼女にはむいていない。
大声で話し、虫やカエルなどに怯えず外で跳ね回るのが好きな彼女は第二次性徴期が来るまで男の格好をして過ごすことが多かった。
乳母は嘆き悲しんだが念願の男子を授かったばかりで、さして彼女に興味のない両親は怪我をしない程度ならと勝手を許してくれた。王族としての女性としての最低限の教育は義務としてこなしたが幸い隣国との関係も良好で長いこと戦争もなく暇を持て余し気味な騎士たちに紛れ体を鍛え剣を扱い馬に乗り野をかけた。
彼女がまだ騎士見習いをしていたゲオハルトと出会ったのはその頃だった。
背の低い目付きが悪い生意気そうな少年だという第一印象はその後不器用で優しいその性格を知ることになり消えた。不器用だから言葉が足りない。目付きが悪いのは相手をじっと見る癖があるから。そうとわかれば彼女はゲオハルトを年の近い遊び相手として手放さなかった。
だが時が経ちその視線を受けると彼女の胸がいつもと違う鼓動を刻むのに気づいたのはゲオハルトの背が彼女をゆうに越した頃だった。
友達と呼びつづけるには立場も違う。だからなおのこと彼女は彼と対等であるように振る舞った。
御前試合でもひょろりと背だけが高い少年が彼女に怪我をさせないようにと遠慮がちに木剣を打ち合わせてくるのを、なんども足技で転がしては悔しがらせてみせた。
力を競えば負けるに決まっている、相手の力をうまく利用するようにと教えてくれた騎士団長たちが試合場のわきで二人を眺めて笑っていた。
彼女は立場としては『姫』ではあったが彼が守るべき存在としての『姫』では無いと振る舞っていたし周りもそう扱った。同じ場所で汗を流し笑い合うことのできる友達、それが彼女達の作り上げた幻とはわかっていても、彼女たちはそれに縋ることができるくらいはまだ子供だったのだ。
隣で笑いあい、頬で風を受けながら野を馬で駆けた日々が過ぎ、ゲオハルトが彼女の近衛として付き従うようになっても彼女達はほんとうの意味で『姫』と『騎士』ではなかった。
自由奔放を絵に書いたような日々が終わりを告げたのは彼女達の国のある大陸の遠くの小国が戦を始めてからだった。またたく間に周辺国をやぶり巨大な帝国を作った王は大陸の端にある小国である王国にさして興味がなかったらしい。
後宮へ姫を差し出せば属国としての立場を認める。そう鷹揚な態度を示した帝王に国王も従った。
王族とはそういうものだ。婚姻に個人の意志は必要ない。
たった一人、国から出されることが決まった第一王女。
彼女は父からできることなら寵愛をかちとり、出来ないならば国に迷惑をかけぬよう騒ぎをおこすなと言い含められ国を離れることになった。
近衛騎士として帝国への彼女の護衛隊に参加したゲオハルトとは堀にかこまれた巨大な城の跳ね橋を渡る前で別れを告げることになった。
泣くことは許されない、第一王女として能面のような顔を保ち騎士たちへねぎらいの言葉を告げ城へとむかう彼女。彼の視線が彼女の後ろ髪をチリチリと焦がすようだったが振り向くことはしなかった。
二度と会えない彼に見せるのが『姫』としての自分であることを思うと彼女の鼻の奥がツンとしたが己一人の命で国の平和が買えるなら安いもの、帝王へ平伏しながら挨拶を済ませ能面を崩すことはしなかった。
(民もお前も守ってみせる)
「長旅ご苦労そのうちまた声をかける」
鷹揚に声をかけられ顔も見ずに夫との対面は終わった。
小国の姫がまた一人後宮へ入れられただけのこと。度々起こる事なので彼女のためにこれといった宴も開かれず城の後ろに作られた巨大な後宮へと足を踏み入れた。
後宮へ集められたのは各属国の王族の姫、美貌の貴族の子女たち。1年かかっても伽の番が回らないほどたくさんの若い女がひしめく広大な後宮は彼女の常識が一つも通じない世界だった。
青空のもと剣を振り回していた彼女が女同士のお茶会での権力争いなど出来るわけもない。そうそうに後宮の女達の争いにさじを投げ我道を歩んでいた彼女は帝王の留守中に意地悪な他国の姫の差し金で涸れ井戸に落とされた。
『かわいそうな猫が井戸の底で鳴いているようなのです』
そう彼女に告げた下働きは今思えば極度に緊張していた。
あれは脅されていたのだと今更ながら気づく。
井戸を覗き込んだところを後ろから突き飛ばされしたたか頭を打ったらしい。
彼女は温かい何かが額から流れ耳へと伝わっているのを感じた。
「まずいな・・・・」
誰の仕業かはわからないが『姫さま』としての技能に優れた彼女たちは異物を排除しただけ。
美しく教養のある女性たちの中で他人の目を気にせずへつらわない彼女が気に食わなかったのだ。
女性同士の付き合い方を知らなかった故の敗因だった。
井戸の底に横たわったまま彼女は心当たりを探る。
『私を拒んだこと、後悔させて差し上げますわ』
彼女に向かってそう叫んだのは確か南の国の姫だったか。
その姫は一年中夏の続く国のものらしくつややかな黒髪に見るものを虜にするような肉感のある肢体をしていた。自分の薄っぺらい筋肉質の身体と比べると同じ女であることが不思議なほどであり、彼女は姫をついつい不躾に眺め回してしまった。
その彼女の視線が気に喰わなかったのかその後やたらと茶会でからまれるようになり、ついには今後一番の友だちにしてやるから足の甲に口づけをしろと言われたので拒んだのだ。
それともある日の夜声をかけてきた『妾のことお姉さまと呼ばせてあげるわ』といった北の国の姫の誘いを断ったのがまずかったのか。
その他にも色々と彼女を嫌っていそうな姫たちの顔が頭に浮かんだがズキズキと頭が痛み思考がまとまらない。
「今回は一敗か・・・・」
だが負けたからといってこのまま井戸の底で朽ちるのもの彼女のプライドが許さない。
幸い高さ自体はそこまでないように見える。手足がおれていなければよじ登ることができるだろうと丸く切り取られた青い空をみて見当をつける。
ちょっと休んでから戻ればいい。
そう思い目を閉じかけた視界に一瞬鳥の影が見えた気がした。
彼女はゲオハルトの飼っていた鷹のキィのことを思いだした。急に寂しさが胸を締め付ける。
(また一目でも会いたいなど、女々しいことだ)
目を閉じているのになんだか急にグラグラと意識が揺さぶられ渦の中へ放り込まれるような感覚に気持ちの悪さを覚える。
「ゲオ・・・・」
照れたような優しい笑顔が彼女の瞼の裏にうかんで消えた。
頬を滑り落ちる涙の感触が彼女の前世での最後の記憶になった。
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