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可愛かった王子 ※ (ゲオハルト視点)
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「ゲオハルトはなぜ結婚しないの?」
リヒト殿下は初めてあった時まだ四つにもならないというのに強面で子供を泣かす俺の容貌にも臆せず話しかけて俺を戸惑わせた。
明日から社交界のシーズンで領地の辺境からいやいや引っ張り出された俺は、ともすれば胸を占める苦い思い出を味わいながら騎士団の練習場で汗を流していた。
そこへどこから来たのか夜空色の髪を揺らしながら少年が現れた。
そして過去十年ほど俺の人生で繰り返しされてきた質問を出会い頭の開口一番に投げつけられた。貴族としての適齢期を迎えても婚約者もおらず三十路近い今、親族一同の疑問は辺境伯の身分を受けて以降は社交界の関心事になったようである。
まさかこんな子供に聞かれるとは思っていなかったが。
ここへ来ることのできる子供なんて数限られているし、第一彼の髪の色に瞳の色がこの国の直系王族であることを示している。この年頃なら第三王子であることは確実。
それならば、それがたとえどんな不躾な質問であったとしても臣下として丁寧にお答えするのが当然。
俺は木剣をおろし片膝を付きながら殿下と目線を合わせた。怖がらせてはいけないとゆっくり優しい口調を心がける。
顔の傷もあり目つきも悪いと言われる俺の顔を直視してくる殿下はきっと肝が座っているに違いない。この可愛らしい少年がこの国を正しく支えてくれるといいがという年寄りじみた思いが一瞬よぎった。
「恐れながら直答させていただきます。殿下にわが名を知っていただけていたとは光栄です。ですが結婚というのは神の導きに寄るもの。このゲオハルト戦の神の御加護は十分いただけども、結びの神のご加護がいただけていないようです」
こんな丁寧な言葉づかいをしたらあの方は吹き出すだろうな。
そう思い心のなかに一瞬、彼女の笑顔が浮かんで消える。
『ぶっくくくくく』
吹き出した声が俺の耳に届いた。
「ゲオハルトも丁寧な言葉で話すのですね。それにしても随分年寄りじみている」
まだ肩を揺らしおかしくてたまらないといいいたげな様子でリヒト殿下が俺を見ていた。
その笑顔、腹を抱えて震える仕草にあの方の面影を見た俺は何も言えずに固まっていた。
「あ、まずいな。ゲオハルト、また会おう」
急に不審な物音に怯えたようなウサギのようにピョンと跳ねた殿下は俺を残して去っていかれた。
「リヒト様ー急にいなくなられては困ります!!」
どうやら練習場の外でお目付け役に見つかったらしい。殿下の高い声が練習場の中にまで届く。
「ごめんごめん!初恋の人を探しにいっていたんだー」
殿下のませた返答に俺はおかしくなって笑ってしまった。
(初恋の人・・・・)
かつてはいつもこの練習場で隣で笑ってくれた彼女がおれにとってのそれだったなんて、気づいてなかったのは彼女だけだったな。
(王族の血とは恐ろしいまでに濃いな)
初恋の人の面影をその甥に見るなんて、我ながら年寄りくさいと思いながら練習場をあとにした。
暗い気持ちにならずには居られない王宮での心が軽くなるような出来事はその後も俺が王宮に来る度に起こることになる。
コロコロと笑い活発な殿下は臣下たちへも気さくでその愛らしい姿から愛されていた。
だが可愛らしい少年が青年へと変わり次の王の継承権候補として名前が上がるようになってからは俺はわざと王宮に来るのを避けるようになった。
リヒト殿下は優秀で美丈夫ではあったが第一、第二王子殿下たちにさしたる欠点があるわけではない、第三王子に辺境伯が肩入れをしていると思われ権力争いに利用されるのはゴメンだった。
初恋の人の甥たちが争うことで彼女の望んだこの国の平和が乱されるなんて見たくなかった。
だから距離をとっていたというのに・・・・・
「ゲオハルト、力を抜いて」
数年ぶりに再会した殿下は俺の上にまたがり熱のこもった目で俺を見下ろしてくる。
「お前のことを傷つけたくないんだ」
そういって俺の尻の穴に指を入れてくるリヒト殿下は何がしたいのか。恐怖を感じているのに媚薬でうずく身体はリヒト殿下の指を受け入れてよがる。
王族特有の色合いが俺の記憶を混乱させる。
長い夜色の髪、金の瞳、守れなかった初恋の人。
「お前のことを守らせてほしい」
そう言ってリヒト殿下は俺の口を彼の口で塞いだ。熱い舌が口内で蠢きその度に快楽と熱が腰へとたまっていく。
人の尻の穴に指を突っ込んでおいて何をいいやがる。そう言いたかったが言えなかったのは口が塞がれていたからだけではなかった。
『守らせてくれ』
それが俺への彼女の最後の願いだったから。
(主を守れなかった後悔を抱えた騎士にあなた方王族は何を求めるのか……)
混乱と後悔と快楽と熱が交じる混沌が俺の思考を奪っていった。
リヒト殿下は初めてあった時まだ四つにもならないというのに強面で子供を泣かす俺の容貌にも臆せず話しかけて俺を戸惑わせた。
明日から社交界のシーズンで領地の辺境からいやいや引っ張り出された俺は、ともすれば胸を占める苦い思い出を味わいながら騎士団の練習場で汗を流していた。
そこへどこから来たのか夜空色の髪を揺らしながら少年が現れた。
そして過去十年ほど俺の人生で繰り返しされてきた質問を出会い頭の開口一番に投げつけられた。貴族としての適齢期を迎えても婚約者もおらず三十路近い今、親族一同の疑問は辺境伯の身分を受けて以降は社交界の関心事になったようである。
まさかこんな子供に聞かれるとは思っていなかったが。
ここへ来ることのできる子供なんて数限られているし、第一彼の髪の色に瞳の色がこの国の直系王族であることを示している。この年頃なら第三王子であることは確実。
それならば、それがたとえどんな不躾な質問であったとしても臣下として丁寧にお答えするのが当然。
俺は木剣をおろし片膝を付きながら殿下と目線を合わせた。怖がらせてはいけないとゆっくり優しい口調を心がける。
顔の傷もあり目つきも悪いと言われる俺の顔を直視してくる殿下はきっと肝が座っているに違いない。この可愛らしい少年がこの国を正しく支えてくれるといいがという年寄りじみた思いが一瞬よぎった。
「恐れながら直答させていただきます。殿下にわが名を知っていただけていたとは光栄です。ですが結婚というのは神の導きに寄るもの。このゲオハルト戦の神の御加護は十分いただけども、結びの神のご加護がいただけていないようです」
こんな丁寧な言葉づかいをしたらあの方は吹き出すだろうな。
そう思い心のなかに一瞬、彼女の笑顔が浮かんで消える。
『ぶっくくくくく』
吹き出した声が俺の耳に届いた。
「ゲオハルトも丁寧な言葉で話すのですね。それにしても随分年寄りじみている」
まだ肩を揺らしおかしくてたまらないといいいたげな様子でリヒト殿下が俺を見ていた。
その笑顔、腹を抱えて震える仕草にあの方の面影を見た俺は何も言えずに固まっていた。
「あ、まずいな。ゲオハルト、また会おう」
急に不審な物音に怯えたようなウサギのようにピョンと跳ねた殿下は俺を残して去っていかれた。
「リヒト様ー急にいなくなられては困ります!!」
どうやら練習場の外でお目付け役に見つかったらしい。殿下の高い声が練習場の中にまで届く。
「ごめんごめん!初恋の人を探しにいっていたんだー」
殿下のませた返答に俺はおかしくなって笑ってしまった。
(初恋の人・・・・)
かつてはいつもこの練習場で隣で笑ってくれた彼女がおれにとってのそれだったなんて、気づいてなかったのは彼女だけだったな。
(王族の血とは恐ろしいまでに濃いな)
初恋の人の面影をその甥に見るなんて、我ながら年寄りくさいと思いながら練習場をあとにした。
暗い気持ちにならずには居られない王宮での心が軽くなるような出来事はその後も俺が王宮に来る度に起こることになる。
コロコロと笑い活発な殿下は臣下たちへも気さくでその愛らしい姿から愛されていた。
だが可愛らしい少年が青年へと変わり次の王の継承権候補として名前が上がるようになってからは俺はわざと王宮に来るのを避けるようになった。
リヒト殿下は優秀で美丈夫ではあったが第一、第二王子殿下たちにさしたる欠点があるわけではない、第三王子に辺境伯が肩入れをしていると思われ権力争いに利用されるのはゴメンだった。
初恋の人の甥たちが争うことで彼女の望んだこの国の平和が乱されるなんて見たくなかった。
だから距離をとっていたというのに・・・・・
「ゲオハルト、力を抜いて」
数年ぶりに再会した殿下は俺の上にまたがり熱のこもった目で俺を見下ろしてくる。
「お前のことを傷つけたくないんだ」
そういって俺の尻の穴に指を入れてくるリヒト殿下は何がしたいのか。恐怖を感じているのに媚薬でうずく身体はリヒト殿下の指を受け入れてよがる。
王族特有の色合いが俺の記憶を混乱させる。
長い夜色の髪、金の瞳、守れなかった初恋の人。
「お前のことを守らせてほしい」
そう言ってリヒト殿下は俺の口を彼の口で塞いだ。熱い舌が口内で蠢きその度に快楽と熱が腰へとたまっていく。
人の尻の穴に指を突っ込んでおいて何をいいやがる。そう言いたかったが言えなかったのは口が塞がれていたからだけではなかった。
『守らせてくれ』
それが俺への彼女の最後の願いだったから。
(主を守れなかった後悔を抱えた騎士にあなた方王族は何を求めるのか……)
混乱と後悔と快楽と熱が交じる混沌が俺の思考を奪っていった。
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